ようこそ雪ノ下雪乃がいく教室へ   作:ゆうき35

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勉強会 3バカ

「ゆきのん、いる〜?」

 

放課後、奉仕部の部室(保健室)に櫛田さんがやってきた。

 

「ここに来るなんて珍しいわね」

 

「今日は依頼にきたんだよっ」

 

「??」

 

「なんで不思議そうな顔してんの?」

 

「あなたから依頼があるとは思わないもの」

 

「今日はただの仲介役。依頼者は平田くんだよ。もう少ししたら来ると思うよ」

 

少しすると平田くんがやってきた。

 

「櫛田さんから依頼があると聞いたけど、何かしら?」

 

「須藤くん達の事なんだ。先日からクラスで勉強会を開いているんだけど、須藤くん、山内くん、池くんは参加してくれないんだ。僕はクラスから退学者を出したくない。櫛田さんに相談したら奉仕部の事を教えてくれてね」

 

「つまり…櫛田さんは面倒だから私に丸投げしたと言う事かしら」

 

「ゆきのん?ここ私達の部屋じゃないよ?」

 

「平田くんの依頼は須藤くん達3人の退学を阻止したいという事でいいのかしら?」

 

「うん。そうなるね」

 

「奉仕部は依頼を達成した際にはいくらかポイントを貰うことになっているわ。それは理解しているのかしら」

 

「櫛田さんから聞いているよ。僕にできる範囲なら問題ないよ」

 

「星乃宮先生、少しいいでしょうか」

 

雪ノ下に呼ばれ星乃宮先生がやってくる。

 

「なになに?ゆきのん」

 

「生徒1人の退学を阻止する為に必要なポイントはいくらですか?」

 

「2000万ね」

 

「では、この依頼6000万ポイントと言う事でよいかしら?」

 

「そ…そんな…」

 

「ふふっ。冗談よ」

 

「ゆきのん…全く冗談に聞こえないよ…」

 

「それにしても退学を阻止するだけなら、そんなに難しくはないんじゃないかしら?テストまでの期間死ぬまで勉強させるだけでしょう」

 

「それも冗談なの?」

 

「いえ、本心だけれども」

 

「……」

 

「私が彼らに勉強を教える事自体は問題ない。ただ、やる気のない人間の手助けをするつもりはないわ。勉強会を開く時間に彼らを連れてくる事、それが最低条件よ」

 

「それが難しいから相談にきてるんだ」

 

「あら?あなたならできるでしょう。櫛田さん」

 

「え〜。私がやるの?」

 

「できないのかしら?」

 

「できるけど…」

 

次の日の放課後。

 

「連れて来たよ〜!」

 

座って待っていた私の元に櫛田さんがやって来た。その背後には

 

「櫛田ちゃんから勉強会を開くって聞いてさ。入学式したばっかで退学なんてしたくないしな。よろしくな!」

 

池くんと山内くん、須藤くんの3人と綾小路くんがいた。

 

「なぜ、綾小路くんもいるのかしら?」

 

「いや、須藤に誘われてな。うれしくて、つい」

 

「チョロ小路君には必要ないと思うのだけど…」

 

「綾小路も前回の小テスト50点だっただろ。せっかくだから誘ったんだ」

 

「みんながんばろうねっ」

 

「まずはあなた達の実力が知りたい。簡単なテストを作ってきたから解いてもらえるかしら。分からない所は白紙で問題ないわ」

 

「…おい、最初の問題から分からないんだが」

 

須藤は雪ノ下を睨みつけるように見た。

 

「最初の問題が1番簡単とは限らないでしょう。黙って続けなさい」

 

それから10分程経過したが、須藤の手は全く動きを見せない。

 

「ダメだ。やめる。こんなことやってられるか」

 

間もなくリタイアを宣言する須藤たち。

 

「では、これでお終いね」

 

「ま、待ってよ皆。もうちょっと頑張ってみようよ。ゆきのんもすぐに諦めないで」

 

どうして私がこんな役やってんだろ…

 

「俺はバスケでプロ目指してんだ。勉強なんざ、将来なんの役にもたたないんだよ」

 

「バスケットボールのプロという事だけれども、それは日本でかしら?それともバスケットボールの本場アメリカでかしら?」

 

「目指すはアメリカだ!当然だろっ」

 

「……」

 

「なんだぁ?馬鹿にしてんのか」

 

「ごめんなさい。少し考え事をしていただけよ。夢に向かって努力している人間を私は貶めたりしないわ。むしろ、尊ぶべきではないかしら」

 

「た…たっとぶ??」

 

「尊重するって意味だ」

 

「お…おぅ。それぐらい常識だよなっ!」

 

「そうね。あなたがアメリカでプロになると言うのなら、勉強は必要よ。サボっている時間はないわ」

 

「関係ねぇだろう」

 

「仮にプロになって活躍したとしましょう。インタビューを受ける機会があった時、あなたはどうするのかしら?」

 

「通訳なりなんなりいるだろ」

 

「では、外国から日本にきた外国人選手が通訳を通じてインタビューに答える姿をみて、どう思うのかしら?」

 

「日本にきてんだから日本語でしゃべりやがれ」

 

「つまりあなたはアメリカ人からそう思われるわけね」

 

「…」

 

「チームメイトとのコミュニケーションもそうね。あなたがアメリカに渡りたいと考えているのなら、英会話は必須よ。あとの教科もそう。無駄なものはないと言っていいわ」

 

「百歩譲って英語はわかったが、ほかはそれこそ関係ねぇだろ」

 

「一歩も譲られる余地はないと思うのだけれど…そうね。証明してみせましょう。あなたはフリースローはできるかしら?」

 

「馬鹿にしてんのか」

 

「では、私と勝負しましょう。私が負けたら勉強が必要ない事を認めるわ。でも、もし私が勝ったら大人しく勉強してもらう。どうかしら?」

 

「どうせ、負けるわけねぇんだ。いいぜ。その勝負買ったぜ」

 

「ゆきのん。大丈夫なの?」

 

「私が負けると思っているのかしら?」

 

……

雪ノ下に連れてこられたのは校内にあるバスケットコートだ。

 

「よくこんな場所知っているな」

 

「学校内の施設を把握するのは当然ではないかしら。さて、ルールだけれど、交互にフリースローを放って先に外したほうが負けでいい。私は先行後攻どちらでもいいわ」

 

「なら、俺からいくぜ」

 

須藤は流石バスケ部といったところだろう。危なげなく1本目を決める。次は雪ノ下。まるでお手本のようなフォームでなんなく決めてみせた。

 

「なかなかやるじゃねぇか」

 

須藤は勉強の時と違い楽しそうだ。それからも対決は進み28本目で須藤が外した。雪ノ下はその後なんなくシュートを決め雪ノ下の勝利で終わる。

 

「これで理解できたかしら?」

 

「ゆきのん…ゆきのんが凄いって事しか分からないよ…」

 

「投げられたボールは必ず放物線を描き、地面に落ちる。リングまでの距離、シュートを打つときの打点の高さ、ボールが描く軌跡、それにここは屋外だから風の抵抗もかしら?全てを計算すればシュートが外れる事はないわ。これは全て物理学に基づくものよ。そして、答えをだすには数学は間違いなく必要になるわ。選手のシュート成功率、パスを誰にだすかの確率、性格やその他。暗記力も必須ね。これ以外にもユーモアのあるコミュニケーションをする為には国語は必要でしょうね。また、外国で生活をするにはその国の歴史、地理、文化を知っておく必要があるわ。どれもバスケのプロになる為に必要な事じゃないかしら?」

 

「つまり…バスケのプロになる為に勉強しろって事か…」

 

「それだけではないわ。スポーツ選手は子供たちの憧れの職業でもあるわ。当然、私生活も模範的な対応を求められる。あなたは、あなたに憧れた子供達に高校時代に遅刻やさぼり、居眠りをしていた事が知られても恥ずかしくないのかしら。勉強をする事は当然だけれども私生活も含めて一瞬も気の抜く暇はないと思うのだけど」

 

「ああ…そうだな…」

 

「あと、山内くんと池くん」

 

「な…なんだ…」

 

「水泳の授業の時に女生徒の胸囲で賭けをしてたわね」

 

「いや…あれは…」

 

「恥ずべき行為だけれども、今は糾弾はしないわ。あなた達が女性をランク付けしていたように男性もランク付けされているとは思わないの?」

 

「えっ?」

 

「例えばこれね。イケメンランキングがいいかしら?あら、綾小路くんは3位ね。でも、他の3人は圏外よ」

 

「綾小路っ!てめぇ」

 

「いやいや。俺は何もしてないぞ」

 

「櫛田さんのような可愛い彼女が欲しいんだったかしら?残念ながらあなた達が選ぶんじゃないの。あなた達が選ばれるのよ。まずはその認識をもつべきね。容姿や運動能力は一朝一夕には変わらないわ。でも、勉強は別。効果的な方法で学習すれば、成果は直ぐに目に見える。櫛田さん。勉強ができる男子とできない男子。あなたならどちらを選ぶかしら?」

 

「その他が全く同じなら勉強ができるほうかな?」

 

「では、勉強ができなくても努力している男子と努力もしない男子では?」

 

「努力しているほうかな?」

 

「つまりはそういう事よ」

 

「で…でも、俺たちはよく女の子に『いい人』って言われるぜ」

 

「女子の言う『いい人』は100%『どうでもいい人』の事よ。あなた達のように空気を吸って吐くだけなら、そこらのエアコンのほうがよっぽど優秀よ」

 

「ゆーきーのーん。いーいーかーたー。間違っているとは言わないけど、池くんと山内くん息してないよ?」

 

「そんなはずはないでしょう。これぐらいで死ぬ事はないわ」

 

「例えだからっ!」

 

「あなた達、明日また同じ時間同じ場所で待っているわ。やる気になったら来なさい」

 

そう言って雪ノ下は帰っていった。

 

次の日から3バカと呼ばれた3人は生活態度含め大きく変化する。1日の授業が終了してもクラスメイトはいまだ信じられないようだ。その日、放課後の勉強会に揃って参加していたのは言うまでもないだろう。

 

「櫛田さん、僕から依頼しておいてなんなんだけど…雪ノ下さんはあの3人に何をしたの?」

 

「ごめん。思い出させないで」

 

後日、気になる事があり、オレは雪ノ下に質問した。

 

「なあ、雪ノ下。フリースローの時だがあそこまで計算してシュートしてたのか?」

 

「あなたは馬鹿なのかしら?できるわけないでしょう」

 

「だって、お前、あの時…」

 

「私は物理法則に基づいて計算可能といっただけよ。スーパーコンピューターならできるんじゃないかしら?」

 

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