名もなきその少女にとって、戦うことこそが全てだった。
“残忍な時代の始まり”を意味する“
そんな小さな戦いはやがて人類のための戦いへとなっていき、人類反撃の旗印として祀り上げられ、気づけば狂信者が呼び出した異形の化け物を討ち滅ぼし、精神体である異世界からの侵略者の支配者を
それでもなお、少女は戦うことをやめようとはしなかった。
戦っているときだけは、心の中に漫然と抱く嫌な感覚を忘れることが出来た。
彼女は
ここで待っているのは永遠とも言える闘争。ひっきりなしに襲いかかってくる敵を力で殺戮し、その砕かれた魂を集めることでより深い
そして到達した75シャード。俗に“ボス部屋”と呼ばれる、強力なモンスターがひしめく
既に部屋の中には3体の死体があった。あまりにも巨大すぎる獣、同じく巨大で腕を4本持つ化け物、腹部だけが異様に肥大化した人間からは程遠い緑色の人型の怪物。
最後に残されたのは翼を持つ二足の“悪魔”と呼ぶのがふさわしい存在。しかしそれも無数に繰り出された剣技と、ケアンの星々から授かった魔法とも呼べる天界の力、そして彼女が使役する刃を放つ精霊と獅子のような獣の猛攻の前についに崩れ落ちた。
とはいえ、少女の方も無傷ではない。彼女の力を奪うように足元に絡みついていた、相手が放った禍々しいオーラが消えてようやく体が少し楽になった、と感じる。が、直後にこれまでの戦いの反動でガクンと膝が折れた。それぞれの手に握りしめた一対の剣で体を支えつつ、荒い呼吸がこぼれる。
しかしその表情を窺い知ることは出来ない。“金切り声のナマディア”というモンスターから入手した、不気味な仮面と角のようなものがある頭巾を頭防具として装備しているからだ。
首元の赤いショートマントと肩当ての下から覗く黒い体防具の胸の部分がわずかに膨らんでいるという点と、身長が低めという点以外で、外見からは彼女を女性と判断することすら難しいだろう。
「
と、命のやり取りをしていた場所とは思えないほどにゆったりとした声が響いた。
下を向いて呼吸を整えていた少女は顔を僅かに上げ、自分と同じように仮面をつけた男がその場にいることを確認する。
男はマザーンと呼ばれていた。
彼はこのシャッタードレルムの研究者で、一応の管理人ということになっている。ボス部屋を攻略するとこのように突如として現れ、次のシャードに進むか、それとも終わりにして報酬を受け取るかを尋ねてくるのだ。
「お見事だ。望みであれば先の道を開くが……。この辺りで一度引き返してはどうかね?」
少女は何も答えない。荒れた息を次第に整えるように呼吸するだけだった。
「ウェイストーンについては知っているだろう? このシャッタードレルムを途中から開始できる魔法の石だ。君は75シャードをクリアしたからウェイストーンを使えば次はここから始めることができる。この75シャードは再開可能なシャードの最下層だ、そう思っての提案……なのだが」
マザーンはふう、とひとつ息をこぼした。
目の前の相手は何の反応も示してくれなかったからだ。
「……了解した。あくまで次のシャードに進もうというのだね。ならば止めまい。頑張ってくれたまえ」
いつものようにポータルが開く。ちょうど息も整ったと彼女がそれをくぐり――。
降り立った先で彼女は強烈な違和感を覚えていた。
確かにシャッタードレルムはボス部屋以外のチャンクはバラバラだ。見覚えがある街の中ということもあれば、薄暗い森の中ということもある。さらには本来つながるはずのない異界のような場所ということさえあった。
それ故にもうひとつの現実、“
だが今回は何かが明らかに違う、と直感していた。
見たこともない景色だった。きらびやかな光を放つ建物は彼女の知識の中には無いものだったし、地面も石畳や土とも全く違う。
何より空気が別物だ。ケアンでは常に感じられた、自分の心を侵していたあの嫌な感覚が消えているように感じられる。同時に、この領域内で常に自分に向くはずの敵意もない。
シャッタードレルムの中ではどんな奇妙な場所に転移したとしても、周囲にいたのは全て敵だった。例外なく敵意を放っていた。
時には敵の姿が見当たらず、無造作に宝箱だけが置いてあったチャンクもあったが、開ければ敵が現れる罠だ、という予感を察知することは出来ていた。
ところがそういったことをまるで感じない。
周囲を見渡してみる。
見える範囲で目についたのは少年が1人、少女が
化け物だけ怪しい気配があるが、そのどれもが敵意を放っていない。強いて抱いていそうな感情を言うならば困惑、といったところであろうか。
「お、おいふうま……。あんな仮面の人、さっきまでいたか……?」
「いや、俺も気づかなくて……。ってそれどころじゃない! そこの人! 今この場所は危ないから離れて!」
不意に、
さて、どういうことだろうか。
不思議と言葉はわかる。もしかしたらポータルが予期せぬ場所とつながってしまい、シャッタードレルムではないどこかに迷い込んでしまったのかもしれない。
兎にも角にも、まずは話をして自分が置かれた状況を理解するのが最優先と判断したが――。
『呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪!!』
化け物に敵意、いやそれよりも強い殺意を向けられたと感じた。
瞬間、無意識のうちに体が戦闘態勢に移行する。
敵だ。殺す。
『オマエモワレラガ“恨み”ヲ、アジワウベキダ……呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪!!』
不気味な声とともに迫りくる無数の黒い塊。
その化け物に対し、仮面の下で少女が叫んだ。
「そうかもな。死ね!」
Grim Dawn(グリムドーン)
用語の意味としては本編中に書かれている通りのケアンを襲った大異変の名称で、それをタイトルとした、いわゆるDiabloライクのハックアンドスラッシュゲーム。
セール時には本体がワンコインで買えたりする。とはいえ追加システムを考えると大型DLC2つは前提のゲームではあるが、それでもセール時なら多分大体10連ガチャ1回我慢すれば揃えられるぐらいのお値打ち価格。
むしろハマってしまった場合時間の方が危ない。プレイ時間3桁は入門レベル、4桁は当たり前、下手すりゃ5桁の人すらいるレベルで時間を食われる。
ハクスラといえばほぼ同義となりつつあるトレハン(トレジャーハント、要はアイテム収集のこと)は勿論のこと、2つのマスタリー(ジョブ、職業みたいなもの)を組み合わせて1つのクラスにするデュアルクラスシステム、クラスのスキルとは別に祈祷ポイントを使用して得られる天界の力、装備によって火炎属性だったスキルを冷気属性に変えてしまうようなスキル変化システムなどによって途方もない量のビルド(マスタリー、装備、スキルなどの組み合わせ)が構築可能であり、かつ作るためにトレハンが必要になってしまうことがおそらく主な原因。
加えて、発売から約6年半(2016年2月発売。アーリーアクセスは2013年11月になるので実に約9年)経過しているにも関わらず、未だにアップデートが行われており、突如思いついたかのようなバランス調整や、新規アイテムが追加されるのも影響していると思われる。
ゲームを起動しないでシミュレーターを回す時間の方が増えてきてからが本番とも言われたりする。