“乗っ取られ”の少女、対魔忍世界に迷い込む   作:天木武

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Act20 もしやこれは禁断の百合展開の予感……?

 結局、取り巻きの敵を可能な範囲で片付けていたためにイセリアルセンチネルに攻撃が集中できたことと、そのタイミングでイングリッドが加わったことが大きかった。

 戦況は一瞬で傾き、まさに木偶の坊と化した相手は、大木が切り倒されるようにあっけなく地面へと崩れ落ちた。そこへ一般兵士も加わって袋叩き状態となり、最大の脅威と目したイセリアルセンチネルはその活動を停止したのだった。

 

 イングリッドは後処理をノマドの兵士たちに任せ、リーナとタバサを連れてノマド本部である“闇の宮殿”へと戻ってきていた。まだ一部、リアニメイターやゾンビたちによる攻撃が断続的に起きている地区もあるが、おそらく鎮圧は時間の問題であろう。それを手伝ってもいいが、より優先すべきことがある。

 とりあえず事情聴取、というわけではないが話は聞きたい。そうイングリッドは考えていた。

 リーナには飲み物を用意しておくよう指示し、今はイングリッドとタバサが2人きりで歩いている。リーナを小間使いするようで少し気が引けたが、なるべく信頼できる者以外を部屋に入れたくないというイングリッドの思いがあったからだ。

 

「でも本当にいいの? あなたはここの偉い人だから問題ないとして、私は部外者……。本来なら後始末を手伝うべきだと思うけど」

「だから言っているだろう、お前からは敵についての情報を早く聞きたいと。今後のことを考えれば、その方が優先度が高い」

 

 イングリッドが言うことはわからなくもないと思ったタバサだが、それでもどうしても疑問なことがあった。

 

「……で、どうしてまだ仮面は外すなって指示なの?」

「正体というものはバレない方がいいこともある。少し前に私を襲ったやつも仮面をつけていた。だから、お前の仮面もそれと同じ目的だと思っていたが」

「別に。これをつけてないと力を発揮できないからつけてるだけ」

「なるほど、そういうことだったのか。だがもうしばらく、私の執務室に着くまではつけておけ。その方がお前のためにもなる」

「うーん……。よくわからないけど、わかった」

 

 どうにも調子が崩される、とイングリッドが苦笑を浮かべる。

 戦闘中とまるで別人だ。今も感情があまり出ていないとは思うが、戦闘中はよりそれが顕著、もっと言ってしまえば無感情で敵を殺戮するだけの戦闘マシーンとすら思えたからだ。

 

「戦いを楽しいと思ったことはないか?」

 

 だから、イングリッドはストレートにそう尋ねた。

 

「ない」

「バッサリだな。私も特に戦い自体が好きというわけでは無いが、相手が手練れと分かると本能的に楽しさを感じてしまうことはある。それすらも無い、ということか」

「うん。戦ってる間はその逆で、心は妙に落ち着いてる。それこそ、元の世界じゃずっと心がざわついていたにも関わらず、それすらも忘れるほどに。だからずっと戦い続けてた」

 

 ふむ、という言葉が思わずイングリッドの口から溢れる。

 戦うと我を失ったり、気分が高揚するという例はよく聞く。しかし、逆に落ち着くというのは珍しいようにも思える。

 

「あ」

 

 そこで不意にタバサがそんな声を漏らした。

 

「どうした?」

「……そういえば今は心が落ち着いてる気がするな、って。さっきイセリアルが現れた時は確かにざわついてたはずなのに」

「あいつらがお前の心を乱す原因だったということか?」

「それもあるかもしれないけど……。うーん、まあいいや」

 

 どうにも気になる言い方が引っかかったイングリッドだったが、当人がいいと言っているのだからいいのだろうと、それ以上深く考えないことにした。

 

 そんなことを話しているうちに彼女の執務室に到着した。扉を開けるとリーナが飲み物を用意して待っている。先にそこまで準備ができていたとは、おそらく相当急いだのだろう。しかし飲み物は4つある。

 

「お待ちしておりました、イングリッド様。私も丁度今来たところですので、紅茶もいい具合だと思われます」

 

 リーナは昔、魔界の貴族の使用人として下働きしていた時代があった。そのためこういったことも難なくこなせるのである。

 

「ご苦労だった。……おいドロレス、お前もこっちに来い」

 

 イングリッドが誰もいないと思われる部屋の隅の方にそう声をかける。すると、そこから声だけが返ってきた。

 

「い、行かないとダメ……? わ、私人見知りするし……」

「リーナが入れてくれた紅茶が飲めないぞ」

「う……。そ、そのうち行く……」

 

 やれやれ、とイングリッドはそのまま椅子に腰を下ろした。タバサはそれより早くちょこんと座っている。

 

「リーナも座っていい。あとタバサ、もう仮面を取っても構わん」

「ん。わかった」

 

 タバサが身につけていた仮面(ナマディアズホーン)を脱ぐ。その下から出てきた、肩口までの雑に切り揃えられた黒髪とくりっとした目を見て、イングリッドは何故か小さく笑い、リーナは「んんー!?」と奇妙な声を上げていた。

 

「フッ……。やはり、か」

「イングリッド様、ご存知なんですか? なんか私もどこかで見たことあるような……」

「それはあるだろうな。お前の行きつけの店のバイトだ」

「行きつけの店……あっ、ああーっ!」

 

 座ったばかりのリーナが思わずタバサを指さしつつ立ち上がる。

 

「味龍の最近入ったバイトか!?」

「ん。そう。……あ、いつも当店を利用してくれてありがとう。これからもご贔屓に」

 

 まるで場にそぐわない、出前の時に言うために用意された挨拶とともにペコリと頭を下げるタバサ。

 

「そんなまさか……。あのバイトがあんなに強かったなんて……。え、でもさっきイングリッド様は『やはり』とおっしゃいましたよね? じゃあ……」

「ああ。仮面をつけていたときから薄々気づいてはいた。雰囲気が似ているな、と。あの店はそこそこ腕が立つ者が多いが、虎娘とこいつだけは頭が1つ2つ分ぐらい抜けて強いのは感じていたからな」

「やっぱり目をつけられてたか。あなたを店で見かけたのは1回か2回程度だったと思うんだけど、明らかに私を意識してるのが伝わってきたし、間違いなく強いという気配も感じ取ってた。だから私の方も印象に残ってた」

 

 タバサとイングリッドが会話で盛り上がっている。自分だけが蚊帳の外だったか、とリーナががっくりと項垂れて腰を下ろした。

 

「そんなバイトが私と二人きりでこの闇の宮殿を歩いていたら皆不思議がるだろうし、これからに影響が出るかもしれないと思ってな。それでここまでは仮面を外すなと言ったのだ」

「そういうことか。気を使ってくれたってことには感謝する」

「気にするな。ここも味龍に食べに行く者は多い。常連のリーナは言うまでもなく、私もあそこの料理は気に入っている。……お前もだろう、ドロレス?」

 

 イングリッドは先程同様、再び部屋の隅の方に声をかけた。今度は違った反応だった。そこにあった影がゆらりと動き、3人の元へと近づいてくる。

 いや、よく見るとそれは人影だった。片目が隠れるほどのボサボサの髪に、見るからにダウナーそうな表情。何より、「働いたら負け」と書かれたシャツを来ているのがあまりにも特徴的である。

 

「ま、まあね……。あ、本当に味龍の店員だ……。こ、これなら喋るのも大丈夫かも……ふひひっ……」

 

 独特な喋り方と笑い方をしつつ席に座り、紅茶を一口。そんな彼女をタバサは物珍しそうな目で見つめていた。

 

「こいつはドロレス。私の遠縁に当たる者だ。この通り少し変わり者だが……まあこれでなかなか役に立つ奴だ」

「お姉ちゃん……そ、それ誉めてるのか貶してるのかわからない……」

 

 そんなドロレスに対してフッと軽く鼻で笑ったところで、「さて」とイングリッドの表情が真面目なものに変わった。

 

「そろそろ本題に入るとしよう。……お前は今回ヨミハラに現れた謎の敵について知っている、という話だった。詳しく話してもらえるか?」

「わかった。でも……うん、まず私のことを話すところから始めたほうがいいかな」

 

 それからタバサはこの世界に来てから既に何度目かになる説明を始めた。

 ケアンのこと、グリムドーンのこと、その天変地異を引き起こしたイセリアルとクトーニックのこと。

 そしてこの世界に迷い込み、紆余曲折あって味龍でバイトをしていること。

 

 何度説明しても話を聞く人の反応は大体同じだ、とタバサは思っていた。まず皆驚く。まあ無理もない。異世界人というだけで普通の存在では無いのだろうから。

 その上で精神エネルギー体であり、“乗っ取る”ことができるイセリアルの話も加わればなおさらだろう。

 

「……というわけで、今回の連中は私同様迷い込んできたんじゃないか、って推測してる。エネルギー源であるイーサーが存在しない上に、別次元と言ってもいいこの世界を侵略しに来るとは考えにくいし」

「しかしあのデカブツ……イセリアルセンチネルと言ったか? あいつにはエネルギー供給源としての役割もあるようにお前は言っていたと思うが。この世界をイセリアルが活動できる環境にするために送り込まれたという線は?」

 

 イングリッドに問われ、タバサは「うーん……」と考え込む。

 

「非効率的だと思う。わざわざイーサーが存在しない世界を無理矢理変化させて攻めるぐらいなら、最初から存在する世界を攻めるほうが楽だろうし。それにはっきり言わせてもらうと、あの程度の戦力しか用意しないというのはあり得ない。……まあ斥候ならわからないでもないけど」

「お前がさっき話してくれた……マルマスだったか、そこはこの規模ではない襲撃があった、ということか?」

 

 リーナの問いに、タバサは重々しく頷いた。

 

「入念な下準備の上に行われた襲撃だったみたいだからね。この街の数倍の規模を誇る都市が数時間と持たずに壊滅したわけだし。実際解放のために私が戦った時は、イセリアルセンチネルだけでもおよそ数十体はいた」

「す、数十体!? あれがか!?」

 

 思わず声が裏返るリーナ。

 

「その他イーサーコラプションやら、イセリアル化された人間やらまで含めると数え切れないほどになる。つまり、イーサーがあればそれだけの戦力を容易に揃えられるのだから、わざわざイーサーが存在しない世界を攻めるのは考えにくい。それに送り込まれた戦力としても少なすぎる」

「それでお前同様迷い込んだ、と推測したわけか。……これまでの話から可能性はほぼゼロだと思うが、イセリアルがこちらの世界のどこかの勢力と手を結んだという可能性は?」

「ありえない。さっきも言った通り、イーサーが存在しない以上長く留まることすら不可能なわけだし。それに連中は自分たち以外を器としてしか見ていない。支配下に置いて、というのならともかく、手を結ぶなんてのは考えられない」

「……やはり考えすぎか」

 

 自分の述べた意見を完全に否定され、イングリッドはそう呟いた。

 少し前に起きたイングリッドの暗殺未遂事件。今回もその件の延長線上にある何かなのではないか、と考えたのだ。

 

「実際、死霊卿も特務機関Gの連中も、もう一度仕掛けてくるならばこのタイミングに乗じただろう。私自身も姿を晒したというのにそれが全くない以上、イセリアルの特徴をよく知っているタバサの推測が妥当、というわけか。……ふむ」

 

 そう言ってイングリッドが考え込む様子を見せたところで、場は沈黙に包まれた。妙な緊張感が辺りを覆うが、ただ1人、タバサだけは全く気にしていない様子で、ここまで手を付けていなかった紅茶を口に運んでいる。

 

「あ、これおいしい」

「入れた本人としてはその感想は嬉しいが……。今それを言う場か? あと冷めちゃってるだろう……」

 

 よくポンコツなどと言われるリーナだが、目の前の異世界人の方が大概ではないかと思ってしまう。

 

「というか、戦ってる時と今とでお前は差がありすぎだ。体を焼かれてダメージを受けていたにも関わらず、機械かと思うほどそれを無視して淡々と作業のように敵を斬り刻んでいた。それが今、間の抜けたタイミングで冷めた紅茶を飲んでうまいと言ってる。正直、本当に同一人物か疑いたくなるぐらいだ」

「……まあさっきイングリッドには言ったんだけど、戦闘中は心が妙に落ち着くから。だから作業ってイメージを持たれるのかも」

「心が落ち着くから、って言われても……。はっきり言うがお前の戦い方は異常だぞ? ああいう自分の身を危険に晒すような戦い方がお前がいた世界のスタンダードなのか?」

 

 戦闘中に感じたことをリーナは包み隠さずぶつけてきた。

 

 本来ならここまでの話の大筋から脱線しつつある。イングリッドとしてはそこを指摘すべきか迷ったが、この少女をもっと知りたいという好奇心に負けた。リーナにこの話を任せることにする。

 

「違う……と言いたいけど、まあ“戦争神”である“オレロン”の話を考えると否定しきれないか」

「戦争神? オレロン?」

 

 リーナが聞き覚えのない単語をオウム返しに口にする。

 

「そう。私がいた世界、ケアンで戦争神として祀られているのがオレロン。……民族滅亡の危機に瀕した際、戦士であったオレロンは命を賭して戦い、見事勝利を収めた。しかし、その代償として妻とただ1人の子供を失った。以降オレロンは家族との再会を望み、死に場所を求めて無謀な戦いを続けたが、結局戦場で彼の願いが叶えられることはなかった、と言う伝説」

 

 一瞬、沈黙が部屋の中に広がった。

 

「それは……なんというか、悲劇だな……。それなのに戦争神なのか?」

「悲劇、という表現には私も同意する。でも……」

 

 それからタバサは今答えたリーナから、その師であるイングリッドの方へ視線を移した。

 

「イングリッド、あなたならどう捉える?」

「確かに悲劇ではあるだろうな。が、死に場所を求めて無謀に戦い、なお死ぬことはなかった。その『死なない』という部分にあやかって戦争神と呼ばれているのではないか?」

「お見事。そのためにケアンの軍隊にはオレロンを崇拝し、その名を叫びながら死を恐れず突撃する部隊さえある。だから私の戦い方もその影響があると言われると否定しきれない気はする」

 

 そこまで話したところでタバサはひとつ小さく息を吐いた。

 

「……とにかく、傍から見たら無茶に見えるのかもしれないけど、あれが私の戦い方だから仕方ない。戦闘中にも言ったけど、私の剣には体力還元能力があって斬れば死にはしないから。やられる前にやれ、死にたくないならとにかく剣を振れ。それが私の戦い方。でもまあ、心配はありがたく受け取っておく」

「受け取る前に心配をかけさせるな。……私がどうこう口を挟むことでもないのかもしれないから、これ以上は言わないが」

「次に会ったときに心配できる側ならいいがな。……忘れていないか、リーナよ。さっき言っていたが、仮にもこいつは対魔忍の保護下にいるわけだ。もしかするといずれ敵としてぶつかることがあるかもしれないのだぞ」

 

 あ、という声がリーナの口から漏れていた。一方でタバサはよくわからないという表情を浮かべている。

 

「対魔忍とここの組織……ノマドだっけ、仲悪いの?」

「一応は敵対関係だ。とはいえ、顔を合わせたら即殺し合いというほど劣悪なわけでもない。確かお前の保護者はふうま小太郎だとさっき言ったはずだ。ならば確証はできないがおそらく安心だろう。私は奴のことを噂で聞いて遠目に見たことしかないが、リーナとドロレスは何度か顔を合わせていて結構仲がいいらしいからな」

「そう、よかった。リーナはいい人だから戦いたくないし、イングリッドとはそのままの意味で戦いたくないから」

 

 その言葉に素直に称賛されたイングリッドは小さく笑い、リーナは「いい人かぁ……」とどこか複雑そうに笑っていた。

 

「とにかく、そろそろまとめに入らせてもらおう。今回の襲撃の原因はイセリアルに詳しいタバサをもってしてもわからない、迷い込んだということで偶発的な事故として見るのが妥当、ということでいいな?」

「うん、私はそう考えてる」

「とりあえず敵の正体が一応は掴めただけでも話を聞けてよかった。感謝する。あとはこのようなことが今後起きなければいいがな。イセリアルの死骸は焼却処分する予定だ。街の中の残留イーサーは学者連中にモニタリングさせるが……。お前はさっき自分の感覚だと薄れていると言ったな?」

「私の心の苛立ちがイーサーに関連しているならば、だけどね。処理に関しては今イングリッドが言った方法でお願い。イーサーはこの世界にとって未知の物質だから研究したがる人もいるだろうけど……。その研究で保管してたイーサーの管理が杜撰だった結果、この世界にもイーサーが溢れてイセリアルを呼び込む原因になるって可能性もある。できることなら完全破棄が望ましい」

「了解した。そのように徹底させよう」

 

 それでタバサからの聴取は終わりのようだった。椅子に深く座り直して、イングリッドは一度天を仰ぐ。それからこの部屋にいる同組織の2人に声をかけた。

 

「ドロレス。さっきの戦闘映像は記録してあるのだろう?」

「も、もちろん。ばっちり」

「ならばそれのコピーを入れた記録媒体を用意しておけ。余計なものを入れるなよ。それからリーナ、手間を掛けさせるようで悪いが、街に行って高坂静流を呼んできてくれ。タバサを引き渡す」

「はっ! かしこまりました!」

 

 リーナは立ち上がって部屋を出ていき、ドロレスは持ち込んでいたタブレットをなにやら操作し始めている。そんな様子に、タバサは少し戸惑ったように口を開いた。

 

「……別に私1人でも帰れるよ?」

「さっき言っただろう、ノマドと対魔忍は一応は敵対関係だと。それ故に色々と手順というものがあるのだ。……まあ対魔忍側に今回の件を話すとなった場合、すまないがお前を通すよりも直接静流と話したほうが確実だから、というのもある」

「前半はよくわからないけど、後半は納得した。多分私じゃちゃんと説明できないというのはごもっともだと思う」

 

 異世界人とはいえ、本当に変わった奴だと、イングリッドは今日何度目かわからない苦笑を浮かべていた。

 リーナが戻ってくるまでもうしばらくかかるだろう。ならばそれまで話してみるのも悪くないかもしれないかもしれない。彼女にしては珍しく、そんなことを考えていた。

 

「タバサよ、迎えが来るまで話さないか? 戦争神オレロンの話、なかなか興味深かった。それ以外の神々の話や、異世界人のお前から見てヨミハラはどう映ったか。味龍で働いてみてどうか。そういった話をもう少し聞かせてほしい」

「ん。いいよ」

「お、お姉ちゃんが興味を持つ相手って珍しい……。もしやこれは禁断の百合展開の予感……? リーナが嫉妬しそう……。フヒヒ、テラヤバス」

「……いいからお前は黙って作業をしていろ。まったく……」

 

 からかわれたが仕事を任せている以上あまり手荒に怒るのも気が引ける。やれやれ、とイングリッドはため息をこぼすだけに留め、恨み言は飲み込むことにしたのだった。




オレロン

本編中に述べている通り、悲劇の伝説が残るケアンにおける戦争の神。
戦争神ということもあり、オレロンが関係するスキルやアイテムは主にソルジャー向けに攻撃的なものが多い。
そして、怒っているものばかりである。もっとも大切な家族を何も出来ずに失ってしまったという己の無力さか、神の無慈悲さ辺りに怒っているのだろうか。
しかし、残念なことにそれらは他と比べて扱いづらかったり今ひとつな性能だったりすることが多い。このことに関してオレロンさんは怒っていいと思う。



盲目的激怒(Blind Fury)

天界の力、つまり星座スキルのひとつ。
Tier3の、その名も「オレロン」の星の中にあり、最短5ポイントで取得可能。
スキル名を見てわかるとおり怒っている。
アサインしたスキルでクリティカル時100%の確率で発動、1秒間隔でRoSのように周囲に刃を作り出して敵を斬り裂く。
発動条件がクリティカルなのがややネックだが、スキル自体の威力と発動間隔の短さに加えて星座の効果も強力なために、物理主体ビルドにとっては性能だけを見れば切り札となりうる存在。
ただ、取得条件が非常に厳しいために諦めざるを得ないビルドも多く、強いが取りにくいことからネタ扱いやロマン扱いされたりもする。



オレロンの激怒

ソルジャーの排他スキル(超強力な常駐スキルだが、そのカテゴリ内で1つしか発動できないスキル)のひとつ。
やっぱり怒っている。
効果は実数体内損傷ダメージ追加、割合の物理・体内損傷・刺突ダメージ強化、OA%強化、移動速度強化。
物理ビルド向けの性能が揃っており、特にOA%強化は強烈で、これによってクリティカル乱発に繋がるために上記の星座オレロンとの相性が良い。
しかしソルジャーのもうひとつの排他スキルである「メンヒルの防壁」がディフェンス面をカッチカチにしてくれる上にオフェンス面も多少サポートしているために、ほとんどの場合そっちの取得を推奨される。
ただ、メンヒルは条件として「盾か両手持ち近接武器を要する」ため、そこに当てはまらない二刀流や遠隔ビルドなどが、もう片方のマスタリーの排他スキルにいいものがない場合にオレロンを頼る形となる。
とはいえ、ソルジャー絡みの物理ビルドは盾か両手近接の場合が多いために「排他のオレロン取るビルドってある?」とかたまに言われる事態も発生しており、実数体内損傷じゃなくて素直に実数物理ならば、とか、移動速度じゃなくて総合速度ならば、と思わなくもない。



オレロンの憤怒

ソルジャー向けレリックのひとつ。
案の定怒っている。
効果はソルジャーの全スキル+1、実数物理ダメージ追加、割合の物理・出血ダメージ強化、OA強化。
同名のレリックスキルは攻撃時10%発動、1.6秒間隔で円形範囲に衝撃波が発生し、物理と出血ダメージを与える。
性能は悪くないのだが、物理出血のハイブリッド型向けということもあり、純物理ビルドの場合にはこれよりも他のソルジャー向けレリックや汎用レリックが優先されがち。



オレロンの鍛え直した鎖

レジェンダリーベルト。
なんと怒っていない。
ソルジャー全スキル+1を始めとして物理、体内損傷、刺突、出血、クリダメ強化と攻撃的なベルトで、一時期は物理ソルジャーが絡むビルドなら大体これでいいという風潮があった。
が、その後のアップデートにより同じくソルジャー全スキル+1のMIベルトが登場。
50%酸→物理変換や装甲10%強化に加え、MIのために接辞による強化があり、しかも店売りもしているため接辞厳選が比較的楽という条件も重なって、ソルジャー用ベルトの座を一気に奪われた。
これにはオレロンさんも激怒待ったなし。



他にレジェンダリーグローブに、オレロンの名前は無いがフレーバーテキストで関わっていることを匂わせているものがあり、アイテムスキルが「タガを外した激怒」でお約束どおり怒っていたりもする。
あとはコンポーネント(武具につけられるアイテムのこと)にオレロンの鎖やオレロンの血、増強剤(同じく武具にコンポネと別につけられるアイテムのこと)にオレロンの情熱といった物がある。
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