“乗っ取られ”の少女、対魔忍世界に迷い込む   作:天木武

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Act43 バニーKシリーズ……完成していたの……?

「ご主人様、お帰りなさいませー!」

 

 Bunny Kingsの扉を開けた3人を待っていたのは扇情的な衣装に身を包んだバニーガールたちだった。が、その華やかさに反して店の方はガラガラである。やはり相談を受けた幽霊騒動がかなり影響しているようだ。

 

「えーっと、ドロレスは……」

「あそこよ、()()()()()

「あ、どうもありが……え!?」

 

 聞き覚えのある声に加え、自分の名前まで呼ばれたことで、驚きながら思わず小太郎はその声の主へと目を移していた。

 頭にはウサ耳、しかし衣装の方はもはや服とは呼べないほどに露出が激しく、胸などはほとんど全部出してるんじゃないかというぐらいの格好をしていたのは、酒場の店長にして潜入中の対魔忍であると同時にヨミハラ町内会会長でもある静流だった。

 

「し、静流先生!? なんでここに……」

「去年のバニーKの一件では私も絡んでいたからね。それに、町内会の会長として見過ごすわけにもいかないし。……そういうふうまくんこそ、個人で頼みを受けたみたいだけど、それならまずはこっちにいる私に個人的にでいいから連絡すべきじゃないかしら? 私も対魔忍としてこの件に首を突っ込むつもりはないわけだし」

「う……。た、確かに」

 

 カジノに入っていきなり説教をされている小太郎を見て、仮面越しにタバサがため息をこぼした。

 

「……やっぱり今日のふうまダメっぽいな」

「タバサはちょっと普段のお館くんを過大評価しすぎじゃないかな。大体あんな感じだよ」

「うーん……。訓練してる時の指揮を執ってる姿の印象が強すぎるのかもしれない。じゃあ普段のふうまはあのぐらいってことで評価ダウンしておく」

 

 言い回しがいちいち面白い、と紫水はクスッと笑う。

 

「それで、タバサちゃんも連れてきたわけね。もう戦闘状態でやる気満々みたいだけど」

 

 話が一区切りついたのか、静流は小太郎が連れてきた2人へと話す相手を替えたようだった。

 

「まあいつ問題が起こってもいいように、っていうのと、私の仮面(ナマディアズホーン)の角の部分にウサギの耳をつけろって話になったから。これでウサギ成分を出してる」

「……出してる、っていえるのかしら、それ……」

「とにかく助っ人ってことで。あと、これが終わったらヨミハラに残るから。よろしく、町内会長」

「はいはい。上からもオッケー出てるんでしょうから、またよろしくね。……で、そちらのバニーガール姿がよく似合う彼女はふうまくん関連? 本当に君って罪な男よね」

 

 そんな静流の軽口にムッとしたのか。紫水は一歩前へと出てから堂々と答えた。

 

「私は天宮紫水。お館くんと運命を共にする者」

「あら……。運命を共にする、なんて大胆ね」

 

 そうは言ったが、静流はそれ以上追求しなかった。

 雰囲気的にはあまりよろしくないが、紫水も必要以上に静流に対して敵意を見せてるわけでは無さそうだしいいか、とタバサは思うことにする。

 

 とりあえず自己紹介も終わったところでいよいよ本題、と思ったところでタバサは何かが足りないことに気づいた。

 

「……そういえばドロレスは?」

 

 言われて今さっきまで話していた人たちが「あ」と声を揃える。それから静流が向けた視線の先に目を移すと、柱の陰に隠れるようにドロレスが立っていた。バニー姿ではないものの、以前タバサが見たような格好と違ってオシャレでかわいらしい格好をしている。

 

「わ、私が会話に入れない雰囲気……。特にふうまと運命を共にする子……。眩しすぎてもうダメポ……」

 

 相変わらずのドロレスの様子に、彼女を知る小太郎とタバサは思わずため息をこぼしていた。

 

「ドロレスをフォローすべき迷うが……。まあいいか」

「おぉう!? ふうま、ひどい……」

「俺も遊びに来たわけじゃないからな……。原因をさっさと突き止めたい。とにかく本題に入ろう。紫水、頼めるか?」

「うん、やってみる」

 

 目を閉じ、紫水が小さく呟く。

 

「魂遁の術……」

 

 不意に、タバサの目には孤路の姿がダブって見えた。彼女の口から紡がれた言葉が、まるで孤路が言ったように思えたからだ。

 

「……霊はいると思う。でも、すごく弱々しいし、何かを警告しているような……」

「警告? じゃあつまり、原因はバニーKじゃないってことか?」

 

 小太郎の質問に紫水は小さく頷いた。

 

「そんな気がする。でも正確なことまでは読み取れない……」

 

 そこまで言ったところですうっと紫水の気配が元に戻っていた。

 

「うーん……。仕方がない、実際に幽霊が出てきたって状況を再現するしかないか。俺が大勝ちをしてみよう」

「そ、それ大丈夫なの……?」

 

 心配そうにドロレスが尋ねるが、小太郎は特に気にしてない様子だ。

 

「多分大丈夫だろ。紫水もタバサもいるし」

「うん、お館くんのことは私が守る」

「タバサ、お前ももしもの時は……」

「言われるまでもない。そのために私が来たんだし」

 

 強力な助っ人2人に改めて確認を取ったことで小太郎の腹も決まったらしい。

 

「……よし、ならやるとするか!」

「はーい! 1名様ごあんなーい!」

 

 静流が小太郎にくっついて腕を取りつつそう声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと静流先生!?」

「今私はここのバニーガールなんだから、お客様はちゃんともてなさないとね」

「じゃあ私たちも!」

 

 客がいないことで暇を持て余していたバニーガールたちも小太郎に寄って来た。

 

「まめ、あんたも来な! ドロレス様も良かったらどうぞ」

「あたしもかい? んじゃあご一緒させてもらうかねえ」

「じゃ、じゃあ私も……」

 

 バニーガールに誘われ、まめ、と呼ばれた訛りが強めのタヌキ耳に尻尾の少女――信楽(しがらき)まめとドロレスも小太郎を取り囲む輪の中へと入っていく。

 一方、タバサはその集団から一歩引いた位置に立っていた。輪の中に入ろうとしていた紫水がそのことに気づき、一瞬迷ってからタバサの方へと近づいていく。

 

「紫水、行かなくていいの?」

「そういうタバサは?」

「ああいう風に密集するのは動きにくいから悪手だと思った。ここなら全体が見渡せるから、何かあったときに対処しやすい」

「なるほど……。私もその考えに乗ろう。お館くんの側にいたい気持ちがないわけじゃないけど……。守るほうが優先だし」

 

 小太郎はルーレットの卓についたようだ。リリノーエと名乗った、やはりバニー姿をした金髪の美女ディーラーが何やら小太郎と話をしている。

 

「あ、そういえば紫水に……というか、コロにもだけど、聞きたいことがあったんだった」

「何?」

「今日、ふうまはコロを連れてくるって行って家を出ていった。でも来たのはコロの体を借りた紫水だった。ふうまが図書室でコロと待ち合わせたとは考えにくいんだけど、その辺どうなってるの?」

「そっか、タバサには細かいところまで説明してなかったんだっけ。なんかごめんね」

「ん、謝らなくていい。別に気にはしてない」

 

 2人が話している間に小太郎のルーレットが始まった。

 とはいえ、幽霊に襲われたという状況を再現するために行っているイカサマの出来レースだ。ディーラーのリリノーエがうまく調整するのだろう。実際、1回目は勝ったらしく、小太郎は喜んでいるようだ。

 

「実はね、コロちゃんは図書室の外でも私が認識できるようになったの。それで、コロちゃんを通すことでお館くんも同じように見えるようになってて……」

「え、初耳……」

「だからごめん、って。原因は……まあ、タバサになら言ってもいいか。……お館くんの魔性の力については知ってるよね?」

「魔性の力……。ふうまの右眼から溢れてくるあのヤバい力か。ライブラリーとの訓練を見てた時に何回か目にしてる。他にも1回死んでも生き返ったとか。正体はわからないけど、あれはよくない。可能なら使わない方がいい」

「タバサもそう思うんだ。……うん、あの力はできるならお館くんには使ってほしくない。でも、私が言ってもどうせお館くんは聞かないから……」

 

 元々「目抜け」と呼ばれ、忍法が使えないことに劣等感を抱いていたであろう小太郎だ。そこで手に入った力ということもあり、どうしても頼ってしまうのであろう。

 

「その魔性の力は、本来お館くんが()()で手に入れた力……」

「前世?」

「そう。……私は、前世から繋がりがある存在で、お館くんの中に残る前世の残滓なの。だから本来はお館くんにしか見えないはずだったんだけど、魂遁の術が使えるってことでコロちゃんに見えるようになって。……でもタバサに私が見える理由はまだわからないんだけど、とにかく魔性の力を使うほどにお館くんの中でその力が強くなって、前世の存在であるはずの私との繋がりが強くなっていってしまうの」

 

 そこまで話すと紫水は言葉を止め、タバサも何も返さなかった。2人の雰囲気にそぐわない、今度は負けたらしい小太郎が大げさに悔しがる声だけが辺りに響く。

 

「つまり紫水はふうまに会いやすくなったけど、それってふうまの中の魔性の力が大きくなったってことだろうから、素直には喜べないってわけか。……なんか悲しいな」

「まあ……そういうこと。でもタバサ、前世とか信じるの?」

「信じる。ケアンにいた私の友達の1人が、おそらく前世で私に会ったことがある、って言ってた。だから前世っていうのは存在すると思う」

「そっか……。その辺りも、タバサが私を見える理由に関係してたりするのかな……」

「うおおおおおおおおっ!」

 

 そんな真面目な2人の話を切り裂いたのは小太郎の勝利の雄叫びだった。空気が台無しにされたと、タバサが明らかに呆れた様子で口を開く。

 

「……ふうまうるさいなあ。こっちの、特に紫水の気も知らないで」

「私はそんなに気にしてないよ。でも……これ出来レースだよね? 最終的に絶対勝つってわかってるのになんでお館くんあんなに熱くなってるんだろう……」

「やっぱり今日のふうまはダメだ。あと賭け事に向いてない。私はそういうの詳しくないけど、あれは有り金を全部奪われる人間のパターンだと思う」

「あー……うん、言えてるかも。コロちゃんも同意してる」

 

 結局小太郎はこの後もしばらく勝った負けたを繰り返し一喜一憂していた。

 

 が、不意に空気が一気に張り詰める。それだけで2人もいよいよ本番だと察していた。

 

「ん、やっと茶番も終わりか」

「周りの様子とかはどう見える? タバサはカンがいいみたいな話だったはずだけど」

「今のところはまだ普通。ここでふうまが大勝ちしてからどうなるか、って感じじゃないかな」

 

 そしていよいよ運命のルーレットが回る。小太郎はチップを0に1点で全賭け。当たれば36倍の大勝ち、外せば一文無しの大勝負だ。……傍から見れば、の話ではあるが。

 相手のリリノーエは凄腕ディーラーである。外れることはない、勝利を約束されたゲームだ。

 

 果たして、ボールは0の位置へと転がり込んでいた。

 

「よっしゃあああああああああっ!!!」

 

 勝つとわかっていても、36倍に全賭けで勝つというのは滅多にできない経験だろう。演技なのか素なのか、小太郎は狂喜乱舞していた。

 

 が、直後。

 

「――ッ!」

「そこか!」

 

 小太郎の背後に強烈な殺気。

 彼を守るためについてきた紫水は“波遁の術”を発動、背後に巨大なガーディアンを作り出し、小太郎を守るように立ち塞がる。

 しかしそれより早く、殺気への反応速度が尋常ではないタバサが動き出していた。その殺気の大元――バニーKの幽霊と見られる、不安定に揺れ動くバニーのような姿をしたサイボーグが小太郎目掛けて放った攻撃を剣で弾き、そのまま攻撃態勢に入っている。

 

「ひ、ひいっ……!」

 

 が、幽霊と思われたその存在は、タバサの攻撃対象が自分だとわかるとそこから一目散に逃げ出し始めたのだ。

 

「なんだこれ。……ふうま、なんかこいつ変だけど、殺していいの?」

 

 必死の回避をされたために初撃を外したタバサがぼそっと呟き、手を止めて小太郎へと尋ねる。小太郎たちも元々違和感を覚えていたようだが、これが決め手になったらしい。

 

「なんか幽霊っていうには変だな……」

「ウサギのようなサイボーグ姿の剣士……。確かに見た目は去年見たバニーKそのものと言ってもいいのだけれど……」

「あれは霊の類いじゃない。お館くんを攻撃してきたのも普通の攻撃っぽいし」

 

 紫水が指さした先、最初にタバサが弾いた攻撃は矢によるものだったらしい。

 

「ああ、ありゃ誰かが化けてるねぇ」

 

 タヌキ娘のまめが不意にそう言った。

 

「化けてる? 幽霊として化けて出てる、という意味じゃなくて?」

「違う違う、変化(へんげ)の術みたいなもんだぁ」

「タバサ、ストップだ! そいつはバニーKの幽霊じゃないっぽい。話を聞きたい」

「ん、了解。……死にたくなかったら正体を見せたほうがいいよ」

 

 斬ろうと思えばいつでも斬れる。そんな威圧感をこめたタバサの言葉に相手も観念したようだ。

 

「おのれふうま小太郎……またとんでもない女を連れてきやがって……!」

 

 恨み言とともにぼんっ、という音が響いた。その七色の煙が晴れた後に立っていたのは、見るからにピエロといった風貌の相手。

 

「ミスター・フールか!?」

 

 過去に因縁のある小太郎はすぐその名に思い当たったが、その過去を知らないタバサは首を傾げるしか無い。

 

「誰?」

「ああ、まあ正確に説明すると長くなるんだが……」

 

 ミスター・フールはかつてヨミハラでBunny Kingsと並ぶほどの大カジノであった、「ラビリンス」のボスだった。しかしボスのくせに自分の店に飽きて面白半分で自作自演の襲撃事件を起こし、たまたまその時に潜入していた小太郎たちと衝突。店を捨てて逃げていったのだ。

 その後も悪さをしていたところでまたしても小太郎とぶつかり、今度こそ捕らえられた。……はずだったのだが。ミスター・フール特有の変化の術で脱走していたらしい。

 

「あー……。もうその時点で殺すに十分値するんだけど、どうする?」

 

 小太郎の説明を聞いて半ば呆れつつ、それでも殺気だけは本物のままタバサが尋ねた。

 

「待て待て、まだこいつから話を聞いてない。……おい、ミスター・フール。なぜヨミハラに帰ってきた? Bunny Kingsに恨みでもあるのか?」

「ああ、あるね! 私の店が潰れたっていうのに、ここはバニーKが死んだにも関わらず繁盛してる。それが気に入らないのさ!」

「……え? さっき自分で店潰したってふうま言ってなかった?」

 

 至極真っ当なタバサの矛盾の指摘に小太郎はうんざりしたように頷いた。

 

「言ったぞ。……話を聞いた限り、完全にこいつの逆恨みだろう」

「逆恨みとはなんだ! 気に入らないBunny Kingsを潰そうと思ったら、憎きふうま小太郎までいるとなれば一石二鳥。まとめて始末できるってものさ!」

「……だ、そうだけど。そろそろこいつ殺していい?」

 

 タバサの殺気が一気に膨れ上がる。

 

「な、なんだこの殺したがりの娘は!」

「別に殺したがりなわけじゃない。お前はふうまに害を及ぼそうとしたから殺す、それだけのこと」

「ふん! 殺す殺すと気軽に言ってくれるが、これでもお前は私を斬れるのか!?」

 

 ぼんっ、という先ほど同様の音と煙とともにミスター・フールの姿が変わる。不気味な仮面と頭巾、そして場違い気味に雑につけられたうさ耳。赤いショートマントや黒い体防具など、その姿はどう見ても――。

 

「あ、私だ」

「そうだ! これぞ私自慢の華麗なる変化の術! お前は自分を斬れるのか!?」

「何言ってんの? お前は私じゃないじゃん。そんな上っ面だけ似せたところで意味なんて無いし、関係ない」

「じゃ、じゃあこれならば!」

 

 ぼんっ、ぼんっ、ぼんっ、とミスター・フールは次々に姿を変化して見せる。店の中にいるバニーガール、リリノーエ、静流、ドロレス、そして紫水に化けた後は小太郎に。

 

「あ、まずい」

「ん? どうした紫水」

「あいつ、地雷踏んだ」

 

 タバサは無言だった。が、怒りのオーラが溢れているのがわかる。「この場にいる者に化ければ斬られない」、相手がそう高を括っているとわかったからだ。その中でも特に斬りにくい、静流、ドロレス、紫水、何より小太郎の姿を真似られたのが気に障ったのだ。

 

 さすがに小太郎もこれは空気としてあまり良くないことは感じていた。

 とはいえ、斬られるとしても小太郎からすれば因縁のあるミスター・フールだ。確かに紫水の言ったように完全な自爆だし、自分と同じ顔の相手が斬られるのはあまり見たいものではないが、「まあ散々迷惑かけてきたあいつならどうなろうと別にいいか」と思い、そのまま静観を決め込もうとしていた。

 

「ちょっといいかい?」

 

 と、そこで場に全くふさわしくない呑気な声が聞こえてきた。独特の訛り具合のその声の主はタヌキ娘のまめだ。

 

「何? 今からこいつを斬るから、邪魔するならお前も斬る」

「いやあ、斬られたくはねえなあ……。でも、おめえさんも仲間の人と同じ顔の存在を斬るのはあんま気持ちいいもんじゃねえだろうと思って。……あたしから言わせてもらえば、あんな大したことない変化の術に怒るのも馬鹿らしいし、あんたの剣を汚すほどの価値もねえんでねえかい、って言いたくてよ」

「なんだと!? この私の変化の術を大したことがないだと!?」

 

 ぼんっ、とミスター・フールの姿が元のピエロ姿に戻る。そんな彼の怒りの矛先は完全にまめへと向けられ、気づけばタバサが蚊帳の外に追い出されてしまっていた。それまで剣呑だった雰囲気を少し和らげつつ、呆れた様子で呟く。

 

「……うまくいなされた。斬る気が失せた」

 

 タバサは仕方なく成り行きを見守るポジションに移行することにした。その間にもまめはミスター・フールを口先で追い詰めていく。

 

「さっきそこの娘っ子が言ったとおり、おめえさんの変化は上っ面だけでしかねぇ。そんなので得意げになるのは小っ恥ずかしいんでねえかなあ」

「聞いていればさっきから私の変化の術を馬鹿にして……! ならばお前は私よりうまく変化できるとでも言うのか!?」

「言えなきゃさっきみたいなことは言わねえ。んじゃ、まずはあの金髪バニーさんに変化して……」

 

 ぽん、という音と共にまめの姿が静流に変わる。

 

「ほれ、花吹雪」

 

 それから静流の木遁の術のように手のひらから花びらを舞わせてみせた。

 

「な、なんだと……」

「これは驚いたわね」

 

 ミスター・フールだけでなく、当の静流本人も目を丸くしている。

 

「見た目と能力だけじゃない。気配まで似てる。……これは上っ面だけ変わってるそいつとは全く別なレベル。意識しないと区別がつけられない」

「そんな褒められると照れちまうなあ。じゃあ次は褒めてくれたおめえさん……と思ったけど、こりゃ真似るのもなかなか難儀だな。底が見えねえ」

 

 言いつつも、まめはタバサに変化してみせた。それから手を振って小さな閃光を生み出す。

 

「フラッシュバンまで再現できるんだ」

「本物はもっとすごいんだろうけど、あたしじゃこれが限界だな。それに他にも色々ありすぎてとても真似らんねえ。でもこのぐらいのこともできねえで華麗とか自分で言っちまうのは、あたしとしてはちとどうかなあと思って……あら?」

 

 まめが元の姿に戻りながらミスター・フールの反応がないとここでようやく気づいたが、見ればまめの変化に対抗することさえできずに固まってしまっていた。どうやら実力差をまざまざと見せつけられてショックを受けた結果のようだ。

 

「あれま、固まっちまった」

「……で、幽霊騒動の犯人ってそいつだとしたら、もしかしてこの一件ってこれで終わり?」

 

 もはや殺す気も完全に削がれてしまったのだろう。半ばうんざりした様子でタバサが誰に聞くでもなくそう尋ねた。

 

「……ってことになるのか?」

「わ、私に聞かれても……。で、でもこのオチって、わざわざふうまを呼ぶ意味も薄かったような……。なんか申し訳なく思えてきた……スマソ」

 

 小太郎に問われてドロレスがそう答えた。依頼人が解決という見解を示した以上はそうなのだろう。やれやれ、とタバサも溜息をこぼした。

 

「紫水と一緒に外に出られたのは楽しかったけど……。1日中ずっと思ってた通りになったか。やっぱり今日のふうまは……」

 

 タバサが最後の「ダメだった」を言い終えようとした、その時。

 何かに気づいたように彼女は小太郎の側へと飛び寄り、そのまま両手に剣を握りしめていた。

 

「な、なんだ!? タバサ、一体何が……」

「ヤバい気配を感じる。……もしかしたらこっちが本命?」

「お館くん、気をつけて! バニーKが警告を発してる!」

 

 タバサだけでなく、紫水までも注意を促してきたことで間違いなく何かが起きようとしている、と小太郎は疑問を確信へと変えた。

 

「紫水! どうなってる!?」

「そうか……! もうすぐ日付が変わって8月21日(バニーの日)になる!」

「ってことは、本番はここからってことか」

 

 そのタバサの言葉は間違っていないのだろう。カジノの奥からさっきミスター・フールが化けていたバニー姿のサイボーグが大量に現れたのだ。

 

「あ、あれは……ば、バニーKの量産型……? ハッ!?」

 

 そこで何かに気づいたように、突如ドロレスは咳払いをした。そしてわざとらしく硬い声で仕切り直すように切り出す。

 

「バニーKシリーズ……完成していたの……?」

「何!? ドロレス、何か知っているのか!?」

「あ、す、スマソ……。なんかこういう場面でこのセリフを言うべきな気がしたし、言いたい気分になっちゃったからつい……」

「おまっ……! 紛らわしいことを言うな! じゃあ実際は何も知らないのか!?」

「し、知らないよ! バニーKが自分の量産型だとかコピーだとか、そういうのを作ってたなんて聞いたこともないし!」

「じゃれ合ってる場合じゃないよ」

 

 紫水がピシャリと2人を止める。

 声色がここまでで1番の緊張感を帯びている。さっきタバサが言った通りの「本番」。おふざけの時間は終わりということだろう。

 

 事実、バニーK軍団の後ろから現れた敵を見て目を見開いた小太郎は、否応なしにそう思わざるを得なかった。

 

 分解したドローンで補修に補修を重ねて全身を作り上げたであろう、ツギハギだらけの人型の機械。カジノの天井に届くほどの巨体を震わせて、見るからにこの軍団のボスという出で立ちの存在が現れたのだ。

 

「あれはバニーKの悪夢の集合体。おそらく、バニーKがずっと警告してたのはあいつだと思う」

「悪夢の集合体……。ナイトメア・バニーKといったところか」

 

 そう呟いた小太郎だったが、チラリと背後を振り返ったタバサと仮面越しに目が合った。

 

「……『昨日』のふうまはダメダメだった。でも……日付が変わったし『今日』のふうまは大丈夫だと思いたい。指揮、任せた」

「おう。任せとけ。……それに昨日もダメじゃなかったぞ」

「……自覚なしは1番タチが悪い」

 

 軽口を叩きつつ、タバサが敵陣へと切り込む。

 

 本当の意味で、バニーの日の騒動が始まろうとしていた。




夜会大人ゆきかぜを引きにいったらすり抜けまくって天井直前まで行って五車祭が近いはずなのに石が心もとなくなりました……。
特にすり抜けてローンチゆきかぜ2回は効いた……。確かにゆきかぜ欲しいけど君じゃないんだ……。



ネメシス(敵のクラス)

ヴァルダランが該当する敵クラス。敵対派閥の悪評を最大まで上げると特定の位置にランダムで登場する。強力な敵ばかりが揃っている。名前は赤文字で表示され、ミニマップ上でもドクロマークでネメシスの出現を知らせてくれる。
敵対可能な各派閥ごとにネメシスが存在する(クトーニアンだけ例外的に2種類)。なお、マルマスを襲ったイセリアルは「イセリアルの先鋒」という派閥になるためイセリアルと別扱いになる。こちらのネメシスである「アークマージ アレクサンダー」の危険度はヴァルダランの比ではなく、特大のイーサーメテオを落としてきて当たれば場合によっては即死というヤバさ。
このようにネメシス内でもそれなりに強さの格差が存在する。
通常マップでネメシスを倒すとアイテムを大量にドロップするネメシスの財宝のロックが解除され、それぞれモンスターごとのMI防具が手に入る。ネメシスモンスターのMIは2種類存在する。
主に肩とパンツでスキル変化はないが、スキルブーストと接辞がつくためにキャラによっては最終装備になりうる。これらはSRの宝箱からも落ちるので、75-76周回がトレハンに推奨されている理由とも思える。
また、エルドリッチネメシスのカイザンのみMIがアミュレットであり、SRの宝箱からドロップしないという特徴がある。落とすMI2種類とも全スキル+1がついているので非常に強力なのだが、欲しい場合はマップを探して歩き回らないといけない。
ちなみに、最初期の頃はそのようにしてネメシスの出現位置を巡ってネメシスを狩ることがエンドコンテンツだったりもした。
対魔忍RPGで例えるなら、劇中で明らかに強いと明言されているキャラは多分このレベル。教師の方のさくらとか紫とか。あとはイングリッドとかもここのレベルな気がする。ゆきかぜ、凜子、アスカとかはここか下のボスクラスか難しいところ。未来の方ならこっちって感じ。

他の敵クラスは

・スーパーボス(赤文字):主に神とか裏ボス。(極々一部を除いて)特殊な条件を満たすと戦闘可能で超強い。強さの次元が違う。ネメシス余裕とかSR75-76周回可能みたいな完成形のビルドでも瞬殺される可能性がある。一時期階段が弱点だった神もいたけど無事克服した様子。対魔忍RPGで例えると覚醒アサギとかブラック様とか○○卿とかの明らかにやべー連中は大体ここだと思う。覚醒リリムとか人間やめた不知火ママとかもここに片足突っ込んでると思われる。稲毛屋の夏おばあちゃんとかナーサラみたいな便利キャラももうここでいいんじゃないかな。

・ボス(紫文字):その名の通りActごとのボスだったり、アイテムを使って入場できるローグライクダンジョンのボスだったり、特にどこのボスってわけでもないけどボス扱いされてたり。特定の位置に出現する。強さはピンキリで、ネメシスより強くね?って感じの敵もいれば、ひとつ下のヒーローと大して変わらない敵もいる。大体のボスはMIを持っているので狩りの標的にされることもある。強さピンキリということもあり、対魔忍RPGで強そうな感じのキャラは大体ここに入るような気がする。

・ヒーロー(橙文字):特殊な能力を持った敵。こちらの攻撃を反射したり、減速させてきたりと厄介。SRでは群れて襲いかかってくるので事故の元になりやすく、特にバフを消してくる「アルケイン」の名前がついているのが危険。気づいたらバフが消えてて墓が立つのはSRの日常、マジで許せねえ。対魔忍RPGだと名前ありだけど戦闘が得意とは言い難いというキャラはほぼこの辺りか。

・チャンピオン(黄文字):雑魚であるコモンに毛が生えた程度の敵。正直コモンと変わらない。対魔忍RPGでいうとモブ対魔忍とかオークとかがこの辺。

・コモン(白文字):雑魚。対魔忍RPGだと戦闘力のない一般人モブ。

といった感じになっている。
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