“乗っ取られ”の少女、対魔忍世界に迷い込む   作:天木武

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Act75 あの子の友達を死なせはしないわ

「ウフフ……」

 

 ドラァグクイーンを思わせるような超ド派手なインキュバス・淫魔族の大幹部であるアンブローズは、獣人のような死霊騎士のアヌビスと激闘を繰り広げながら思わず笑みをこぼしていた。

 

「何がおかしい?」

 

 一分の隙も見せないまま、アヌビスが問いかける。

 

「ごめんなさい、あなたに対して笑ったわけじゃないの。あなたの空間隔離とシックスティの毒という最悪の組み合わせ……。現在進行系で私は苦しんでいる。そして、私の視線の先で戦っている災禍もそうみたいだった。だから、可能であれば助けに行きたいと思っていたんだけれど……。その必要も無くなったな、って思って」

 

 チラリ、と一瞬アヌビスが自分同様の死霊騎士であるワイトの方を伺う。先程までは有利だったように見えたが、今は2対1で苦戦を強いられているのがわかった。

 

 どうやら災禍が連れてきたという助っ人は思った以上の仕事をしてくれているようだ、とアンブローズは考えていた。1人は災禍のサポートに、もう1人は少し前に館の中に入っていくのを確認している。

 シックスティは自分が担当するとイシュタルが強く主張したために勝手にやらせることにしたが、間違いなく苦戦することはわかっていた。とはいえ、目の前のアヌビスも強敵。迂闊な動きはできないと思っていたところで、助っ人の1人が館に入って行ってくれたのは僥倖ともいえた。

 

「対魔忍に個人的な怨恨があるとワイトは陽動役の方を買って出たのだが……。目論見通りにはいっていないようだな。だが仕方あるまい。戦いとはそういうもの。常に予想外のことが起きるものだ」

 

 アンブローズが考えを巡らせていると、アヌビスがそう言葉を返してきた。

 

「あら、なかなか面白い考え方を持ってるのね。出会い方が違っていればあなたとはお友達になれたかも」

「不要。私は戦いは好まないが、こうやって敵として拳を重ね合うことでしか得られないものがあるのもまたわかっている」

 

 再び、アンブローズの口の端がわずかに上がる。

 

「やはり敵にしておくには惜しいわ。でもそれは叶わぬ話。……拳を重ね合うことでしか得られないもの、か。続き、やるとしましょう」

「望みとあらば」

 

 その言葉をきっかけとして。武術の達人同士、互いの鋭い飛び蹴りがぶつかり合った。

 

 

 

---

 

 タバサは館の内部を疾走していた。敵と味方の小競り合いが時折目に入るが全く気にもかけず、1番危険と感じた気配目掛けて突き進む。

 

(相手が礼拝堂まで入ったか。だとすると本格的にまずい。ミーティアは戦闘に不向きっぽかったし、大幹部って言われてる味方のイシュタルって奴は……。こっちもダメだな、やっぱりシックスティって奴と力の差がありすぎる)

 

 冷静にそう分析しながら、どこか達観的に、ひとつの結論にも達していた。

 

(かく言う私も力の差ってことで言うと分が悪いかも。相手が間違いなく強い。アサギとか稲毛屋のおばあちゃんとかとやるほどの絶望感は無いにしろ、勝てる見込みとしては五分以下ってところかもしれない。……あとはふうまに教えてもらった対人戦の方法がどこまで通じるか、かな)

 

 だとしても止まるわけにはいかない。不知火と直接話をしなくては気が収まらない。そのためにも、不知火には儀式を終えて目覚めて貰わなくては困る。

 

(というか、不知火がさっさと目を覚ませばいいんだよ。見るからにヤバいあの死の力……それを使いこなせたのなら、今襲ってきてる連中なんて相手にもならないだろうに)

 

 心の中で愚痴りつつ、タバサは先程災禍に案内された礼拝堂へとたどり着いていた。

 部屋の中には変わらず佇む不知火と、既に戦うこともままならくなった淫魔族たち。そして、敵の淫魔族であるハデスリリンたちと共に悠然と立ち尽くす敵――シックスティ。

 

 隠そうともせず周囲に振りまかれる殺気に、確認を取らなくてもタバサにはそれが狙うべき相手だとわかった。気配を殺し、背後から猛然と突撃を仕掛ける。

 だが、得意の気配隠蔽をしていたにも関わらず、相手は振り返ってきた。そのままするりと体を捌き、あっさり奇襲を回避する。

 タバサは特にそれにショックを受けた様子もなく、シックスティと未だ目を覚まさない不知火との間に立ち塞がるように位置を取った。

 

「た、タバサさん!?」

 

 ミーティアが驚いた声を上げるのがわかった。床に膝をついたまま、傷ついて立ち上がれないのだろう。元々直接戦闘が苦手な夢魔という話だ、仕方がないとも言える。

 そんな彼女を一瞥だけして、タバサは目の前の敵を仮面越しに睨みつけた。

 

 明らかに強敵だ。これまでの相手と格が違う。ついさっきまで戦っていたワイトがかわいく見えるほどだ。

 

「人間か? なぜ人間がここにいるかわからないが……。私に刃を向けたということは殺されてもいいということだな?」

 

 ハデスリリンたちが威嚇をするが、どいていろと言わんばかりにシックスティの体から瘴気があふれた。それは同時に彼女が得意とする、疫病を操る力となって毒としてタバサに襲いかかる。

 

「聞いてた通り確かに強力な毒だな。でも私に効くのは本来の20%がせいぜい。……ここにいるのは友人の頼みで。それと、後ろで呑気に寝てる魔女に聞きたいことがあって、目覚めてもらわないと困るから。ちょっと勝つ見込みが薄そうだけど、私としてもここは退けないし、どのみち不知火が殺されたら残りも皆殺しに合うだろうから、その前にお前を殺す」

 

 相手に負けじと、タバサも戦意を高めた。

 

「私を殺す? 面白いことを言う人間だな。その大口に見合うほどの実力だといいが。では、まず手始めに……」

 

 シックスティが何かを話しているが、お構いなしにタバサは地を蹴る。

 

「これはどうだ? 疫病の三、“sick-scimitar”」

 

 シックスティが短鞭を振るう。するとそれに呼応するかのように数本の曲刀(scimitar)が宙に現れ、タバサを斬り裂こうと刃を向けてきた。

 

「気をつけて! それに斬られると力が入らなくなります!」

 

 ミーティアが警告を発したが、タバサに驚く様子はない。少し原理が違うが魔力で刃を生み出して扱う技法(ファンタズマルブレイズ)は彼女も使っているし、そもそも警告されたことに対しては当たらなければいい。まず始めに斬りかかってきた2本を、軌道を見切って回避した。

 が、続いて3本が進路を完全に塞いでいる。さらに、回避した2本も背後から迫る気配。

 即座に避け切るのが困難と判断した。相手の魔力の刃と似たように周囲に展開した幻影の刃(リングオブスチール)によって攻撃全てを弾き飛ばした。そうして道を切り開き、一気に飛び込んで高速の三連撃(アマラスタのクイックカット)を放つ。

 

「なるほど、確かに言うだけのことはある」

 

 が、シックスティは手にした短鞭で最初の一撃を、いつの間にか召喚していた曲刀で続く二撃を受け止めていた。そうしつつ、先程タバサが吹き飛ばした曲刀も呼び戻そうとしている。

 このままだとまた包囲攻撃を受ける。そう判断して、タバサは大きく飛び退きつつ天界の力を行使。相手の頭上から氷の槍(ブリザード)を降り注がせた。

 

 しかしシックスティは召喚していた曲刀を頭上へと展開させ、タバサの攻撃を防ぐ。曲刀は消滅して相殺した形となったが、肝心のシックスティ本人には全くダメージを与えられていない。

 

(……やっぱまずいな。館の外にいた時は大したこと無かったけど、この距離だと耐性があっても結構体に来る)

 

 天界の力は当たれば儲けもの、後退の時間を稼ぐために放ったとは言え、肝心の自分の踏み込みが本来より遅い。剣を振るう速度もまた同様。本来ならもう一撃攻撃を繋げる予定だったが、反撃の方を先に食らう予感がして諦めていた。

 

 それでも、今の攻防はシックスティ相手に手も足も出なかった淫魔族たちからすれば驚愕に値したようだ。ここまでの戦闘にボロボロになったイシュタルが、同じくもはや戦えそうにないミーティアに尋ねる。

 

「ミーティア、お前はあの人間のことを知っていたようだが……一体何者だ……?」

「災禍さんが連れてきた助っ人のタバサさんです。災禍さんが強いとはっきり言い切っていたのですが、これならばそれも納得です……」

 

 それを耳にして、楽観的すぎないかとタバサは思ってしまう。同時に、力量の見定めを間違えている、とも。

 

 単純な力量差で言えば当初の見立通りよくて五分、それでも絶望的な差ではない。が、シックスティが振りまく病の能力が厄介すぎる。8割分効果をカットしたとしても今現在自分の体が蝕まれつつあるのは事実だ。結果、悔しいが力が届かないというのがタバサの冷静な予想だった。

 敵の能力のせいで長期戦は不利。かといって、短期決戦で倒せるほど甘い相手ではない。小太郎に教えてもらった対人戦の戦法、相手が嫌がることをしようと思ってもそれも見当たらない。

 

(つまるところ、認めたくないけど今の私に勝ちの目がない。……これは実にまずい)

 

 ケアンでは危険と判断すれば撤退の判断を下すこともあった。ワープポータルであるリフトを使えたために、それは思いの外容易だった。

 が、最後に彼女がいたシャッタードレルムを始めとして、リフトが繋がらない場所もあった。そこでは撤退できないということを念頭に置いて警戒度を一段階上げ、危険な相手と遭遇して無視できないダメージを受けたら一旦引き、態勢を立て直してから再び攻撃するという方法で切り抜けてきた。

 

 しかし、今それは出来ない。ここで退けば、不知火が殺される。

 

 押すも引くも不可能、さらには折角この世界で得た対人戦の知識も活かせぬ状況に、さすがのタバサも無意識のうちに舌打ちをこぼしていた。

 

(そもそもは娘のことを放り出した挙げ句、呑気に眠ったままの不知火が悪い。さっきも思ったことだけど、さっさと目を覚まして体の周りに纏わせている死の力を使いさえすれば、今戦った感じだと目の前の敵程度ならやっぱりなんてことは……)

 

 らしくなく、考えがないものねだりの後ろ向きになっている。逆に言えば、前向きな考えができずに心が弱い方に流されていることに他ならない。

 

 が、そこでタバサはふとあることに気づいた。一瞬、不知火の方を振り返り、「ああ、そうか」と小さくこぼす。それから大きくバックステップ。未だ目を閉じ佇んだままの不知火の直ぐ側まで寄ると、右手の剣(ネックス)を床へと突き立てた。

 

「どうした? 降伏か? もっとも、そうしようとしたところで殺すことに変わりはないが」

 

 不敵にシックスティが嗤う。一方、タバサはそれを無視し、突如不知火へと語りかけ始めた。

 

「だってさ。早く目を覚まさないとお前も含めてここにいる全員殺されるよ。……って言っても、どうせ聞こえてないんだろうけど。だから……」

 

 いつの間に、どこから取り出したか。不意に、タバサの空いた右手に緑の塊が握り締められていた。

 以前の戦闘の際、魔人化したフュルストが自身の体に押し当てて異世界の力を取り込んだものと同じ――イーサークリスタルの塊。それをタバサは握り砕いた。

 

「纏っている死の力、少しでいいから私によこせ。代わりになんとかしてやる」

 

 敵を倒すだけの力なら、目の前にある。その使い手がいないだけ。ならば一時的にでも自分がそれを使えばいい。

 相変わらずの常識を無視した思考である。危険極まりない力ではあるが、それは相手にとっても同じこと。ならば、それを相手にぶつけてやろうと、タバサはイーサーを纏った手で紅い魔力の奔流へと触れた。

 

「くっ……!」

「タバサさん!?」

「お前、何を考えて……!」

 

 ミーティアとイシュタルが叫ぶのがわかった。

 だが、激しい目眩とともにその声もすぐに聞こえなくなって、意識が遠のいていき――。

 

 

---

 

「……あれ?」

 

 目眩が治まった時、タバサは何もない真っ白な空間にいた。

 さっきまでいた礼拝堂とは全く別な場所。そもそも現実の場所ではない、と直感的にわかる。感覚としてはシャッタードレルムでワープポータル(リフト)をくぐった直後に近いかもしれない。

 

『私の精神世界に入り込んだのは誰かしら?』

 

 と、その時タバサの頭に響くように女性の声が聞こえてきた。

 

「この声、不知火?」

 

 起きている現象は全て非現実的だ。にも関わらず、タバサに動揺した様子はない。

 

『ええ、そうよ。……全く驚いていないことに逆に私が驚いているのだけれど、今度はさっきのこちらの質問にも答えてもらえる?』

「タバサ。でも、本当の名前は知らないというか、無い。異世界からこの世界に迷い込んだ時にふうまがつけてくれた」

 

 不知火からの返答が止まった。そのことにタバサは首を傾げるが、今の発言に情報量が多すぎたということに気づいていない。

 

『……あなたは異世界人のタバサちゃん、そういうことはわかった。そんな異世界人が、おそらく現実の私が纏う死の力に触れた結果、ここに来たと思うのだけど、なぜそんなことを?』

「今シックスティってやつが礼拝堂まで来てる。私も戦ったけど、勝ち目が無いと言わざるを得ない状況になってる。そこで不知火が纏ってる死の力が目に入った。あれをぶつければなんとかなるかもしれないと思って触って、気づいたらここにいた」

 

 再び不知火からの返答が止まった。死の力に触れるだけでなく、使おうとしたということに、今度は呆れているのかもしれない。

 

『どうしてそこまでしようとするの? あなたは私が知っている人でもなければ、淫魔族でもない。命を賭ける義理は無いと思うのだけれど』

「友達の母親が殺されるのを黙って見ているというのは私の仁義に反する。それに聞きたいことも山ほどあるから、不知火には現実世界で目を覚ましてもらわないと困る」

『友達……。そう、あなたは、あの子の……』

 

 聞こえてくる声が、ひとつ息を吐くのがわかった。艶めかしくもありつつ、どこか憂いを帯びたようなため息だった。

 

 やや間を置いてから、再び不知火の声が聞こえてくる。

 

『……いいわ、行きましょう。儀式は今終わった。本来なら死の力に触れた者は命を落とすけど、あなたは不思議な力を使ったみたいね。まだ体が死に蝕まれていない』

「ん、そう。私がいた世界を襲ってきた、精神生命体のエネルギーの結晶を砕いて体を保護してる」

『だったら大丈夫。それに、現実世界のあなたも同じ。……あの子の友達を死なせはしないわ』

 

 目の前が眩しくなる。同時にまたしても目眩が。

 再び先程と同じような感覚にタバサは飲み込まれ――。

 

 

 

---

 

「……サさん……タバサさん……!」

 

 不意に、ミーティアの声が聞こえてきてタバサは我に返った。

 確かに今さっきまでこことは別の空間――不知火曰く、精神世界と言った場所にしばらくの間いたはずだ。だが、目の前の状況は時が止まっていたかのように何も変わっていない。

 

 唯一変わっていたことは、タバサが右手で触れていたはずの紅い魔力の奔流――死の力が消えていたことだった。それも不知火の体に纏わりつくようにあったもの全てが、である。

 だが不知火はまだ目を覚まさない。そんな彼女を見て訝しげな表情を浮かべたタバサだったが。

 

「おい人間! 魔女より自分のことだ!」

 

 不意に聞こえてきたイシュタルの声にハッとして敵であるシックスティの方へ視線を移した。

 迫ってきたりはしていない。だが、攻撃を仕掛けてくるとわかり、床に突き刺していた愛剣(ネックス)を握り締めた。

 

「戦闘中によそ見か」

 

 これまで同様、魔力によって生み出された曲刀の攻撃。突然現れた2本の斬撃をタバサは両手の剣によって防いだ。――のだが。

 

「まずい……!」

 

 もう1本、未だ佇んだままの不知火の眼前に曲刀が出現した。タバサは自分の防御で手一杯である。嫌な予感が背中を駆け下りた、その時。

 

「……大丈夫よ」

 

 ほんの少し前、真っ白な空間で脳内に響いてきた声が、今度は耳を通して聞こえてきた。

 

 次の瞬間、礼拝堂の中を荒れ狂う風が駆け抜け、禍々しい光が溢れていた。それはシックスティが呼び出した曲刀を難なく吹き飛ばしていく。

 やがて光が収まった時、不知火が佇んでいたはずの場所に、1人の「魔人」と化した彼女が立っていた。

 

 青い肌、角が生えた頭、不気味に青い光を帯びた目。

 幻夢卿から受け継いだ死の力を携えた幻影の魔女――水城不知火の人ならざる姿であった。

 

「これが幻夢卿の……死の力……」

 

 ついに目覚めた不知火は、噛みしめるようにポツリとそう呟いた。

 

「き、貴様……! その魔力は……!」

 

 一方、ここまで冷静さを保ち続けていたシックスティが目に見えて動揺している。

 理屈ではなくわかったのだろう。目の前の相手が、幻夢卿の力を間違いなく受け継いだということに。

 

「ようやくお目覚めか。見た目もそうだけど、ヤバい力を持ってるってのが嫌でも伝わってくる。それだけの力があればあいつはなんとかなるでしょ?」

「ええ、勿論」

 

 タバサの問いかけに答えた不知火の足元から、紅い水が生まれてシックスティ目掛けて溢れ出す。直感的に危険と判断したのだろう。これまで余裕を見せるような動きしか見せなかった彼女が慌ててその場を飛び退いていた。

 本命にこそ水流は避けられたが、その背後にいた手下のハデスリリンは逃げ遅れていた。足がその濁流に触れる。

 

「ギャアアアア!?」

 

 悲鳴とともに、ハデスリリンがその場に崩れ落ちていた。

 

「マジか、あれに触ると死ぬのか。あの大元ってさっき体に纏ってた死の力でしょ?」

 

 相変わらず本当に驚いているか怪しい様子でタバサが不知火に尋ねる。

 

「ええ。あなたはどれだけ危険な力に触れようとしていたかわかった? ……でも触れると死ぬ、というのは違う。厳密には死の力を操っている、ということ」

 

 不知火の足元から溢れる紅い水が、今度はタバサと、さらには傷ついたミーティアとイシュタルの方へと迫った。

 一瞬身構えたタバサだったが、不知火からは敵意を全く感じない。それどころか、近づいてくる液体も先程敵に使ったものとは別とさえ思える。

 己の感覚と不知火を信じて、タバサはそれに体を任せた。

 

「……ん? なんか体が軽くなった?」

 

 紅いエネルギーの塊の流体がタバサの足元に触れると、シックスティの毒のせいで重くなっていた体が楽になったように感じていた。気のせいかと思ってミーティアとイシュタルの方へ視線を移すと、2人も傷が癒えているようだ。

 

「す、すごいです! 魔女様!」

「これが幻夢卿の……死の力……! まさか人間がこの力を受け継ぐことになろうとは……」

 

 大喜びのミーティアと、元々は淫魔族が幻夢卿を継ぐべきと主張していたイシュタル。反応は違ったが、共に不知火の力に驚いていることは間違いないらしい。

 

「死の力を操る。つまり、反転させれば今みたいに傷を癒やすことも可能ということよ。……さて、ずっと眠っていた私も悪いとは思うけど、皆を傷つけたそもそもの原因はお前ね。覚悟しなさい」

 

 不知火はシックスティに対して明確に敵意を見せた。一瞬それに怯んだ様子だが、己を奮い立たせるようにシックスティは口を開く。

 

「確かに恐るべき力だが……。まだ貴様は目覚めたばかり。今のうちにその脅威の芽を摘み取らせてもらう!」

 

 シックスティの周囲に瘴気が渦巻く。彼女の得意技にして、ここまで多くの者を苦しめてきている病の力だ。

 

「無駄よ。もうお前の攻撃は私には通じない。それに……。この戦いももうおしまい」

「何……?」

 

 訝しげに目を細めた相手を無視して。不知火は力を解放した。

 先程から見せている紅い水流を、さらに激しくしたような濁流。それが生み出され、部屋に溢れる。

 

「くっ……!? があああああっ!」

 

 濁流に巻き込まれて悶絶の声を上げるシックスティ。不知火が解放した幻夢卿の力はそのまま館の壁をぶち抜き、外へと流れ出していった。




レヴナント

Tier2に位置する星座。ワイトが自分のことをレヴァナント(死霊騎士)と言ったことで、タバサが名前の近いこの星座のことを思い出している。
完成に6ポイント必要、必要親和性は赤8、完成ボーナスは赤1青1。赤8は赤の中でももっとも高い必要親和性の値になるので、岐路で要求を満たしておいて星座を完成させたら外すという方法を取られることが多い気がする。
巨大な鎌を持った死神のような姿を描く星座で、死と苦悩を表す者とされている。
星座ボーナスは、ダメージヘルス変換(ADCtH)、エナジー吸収、アンデッドからのダメージ減少、ヘルス増加、攻撃・詠唱速度増加、生命力耐性と、良く言えばビルドを選ばない、悪く言えばパンチに欠けるといった具合。
6ポイント目には「レイズザデッド」という星座スキルがあり、アサインしたスキルで攻撃時に確率で時限式のプレイヤーボーナス型の不死ペットである、その名の通りのスケルトンを呼び出して敵を攻撃してくれるスキルとなる。
一見ネクロのスキルである骨を召喚するレイズスケルトンに似ているが、向こうは常駐+ペットボーナス型であるのに対し、こちらは時限+プレイヤーボーナス型と明確に異なっている。
最大6体召喚可能で存続時間は20秒。生命力とイーサーの混合ダメージを与えるが、プレボペットなので本体がどちらかの属性をメインにしている場合はダメージに期待ができる。
そして何より、スケルトンの攻撃に希少な最大-24の全耐性減少効果を持つため、これだけを目的に取得するビルドもあるほど。
ただ、昔は目玉の全耐性減少が無いどころか、スケルトンに不死属性が無かったり、攻撃時発動ではなく敵死亡時発動のために雑魚を出さないボス戦で空気だったり、プレボでなくペット型ボーナスだったりした時期もあった(その名残か、星座の道中にはいくらかのペットボーナスもあったりする)。
必要親和性はきついものの、テコが入りまくったおかげで「賑やかし」と揶揄されていた星座スキルは実用レベルに達し、星座ボーナスもビルドを選ばないということで、星座スキルの全耐性減少目当てに取られることもある星座である。
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