状況が変わったことは、風遁のレーダーを利用しているあやめからの報告で解っていた。あとは頃合いを見計らって打って出て挟撃に持ち込む。
そう考えていた紅だったが、まさかタバサがそのお膳立てをしてくれたのは、良い意味で完全に予想外であった。先程言ったことを根に持っているような言い方ではあったが、やってくれた仕事だけは確実だった。
紅は確認の意味を込めてあやめの方を見る。タバサの仕事は間違いないと、年上の従者は小さく頷いていた。
「さあ、反撃開始といこうか」
ここまで死守してきた機関室の扉をゆっくりと開ける。そこにはタバサに気を取られているためにこちらに背を向けるゾンビが数体と、その奥に灰色の肌をした女が1人。
「なっ……!?」
その女――ウィスプの顔が驚愕に染まると同時。
「あやめ、援護を!」
2本の小太刀を手に、紅が飛び出そうとした。その瞬間、後方のあやめが手にしていたハンドガンを乱射。前方の主の動きを読んでいるかのように弾は紅を避けて飛び、ウィスプの壁となった前方のゾンビたちへと吸い込まれていく。
あやめの忍法である風遁・“風読み”の本領発揮だ。風の流れを読むことで未来予知に近い先読みを可能にする。この能力で主である紅がどう動くかを予測し、彼女の背後から的確に援護射撃をしたのだ。
「取り回しを最優先にしたからとはいえ、やっぱり威力は足りないわね」
弾倉内の銃弾を全て撃ち切り、ホールドオープン状態となったハンドガンへ新たにマガジンを装填し直しながらあやめはポツリと呟いた。
本来彼女が得意とするのは風読みを使って相手の動きを予測した上でのスナイパーライフル、あるいは
「いや、十分だ」
それでも、今の紅の言葉の通り風読みを利用しての援護は効果的だった。ゾンビ連中にダメージがあったかは怪しく怯む程度だったが、その一瞬の隙を突いて既に紅は自分の間合いへと踏み込んでいる。
あやめが取り回しを最優先にして大口径の拳銃を選択しなかった理由がこれであった。狙撃の場面がないとなれば、自分は主である紅と行動する。たとえ銃兵衛がなんと言おうと、そこは押し通すつもりだった。そうなった際、必要になるのは前へ出る主への援護に他ならない。よって、敵を倒すことは二の次としていたのだ。
「真空の刃は全てを斬り裂く……! 旋風陣!」
そんな従者の援護を受け、紅が攻撃態勢に入る。
あやめ同様の風遁の術ではあるが、こちらは攻撃的に用いた使い方だ。風をまとった両手の小太刀を振るうことで生み出される、荒れ狂う風の刃。ウルグリムと手を合わせた時に反射的に使いかけた彼女の真の力だ。
かまいたちか、あるいは小さな竜巻とでもいったところか。ウィスプの銀の瘴気で強化された不死の軍勢といえどこれには耐えられず、体がズタズタに斬り裂かれていった。
「篝! 後詰めを任せる!」
「了解です、紅様!」
それでもまだ戦闘が可能そうなアンデッドは何体か残っていた。が、紅は残党をもう1人の従者である篝に任せている。その命令を実行すべく、篝は半妖化した体から触手を伸ばして叩きつけて残ったゾンビを処理。そして、当の紅本人はこのアンデッド軍団の中枢に狙いを定めていた。
「くっ……!?」
手薄にせざるをえなかった後方からの紅による奇襲、さらにはソンビの攻撃を物ともせずに突き進んでくる前方からのタバサによる強襲。
挟撃状態に持ち込まれたウィスプは一瞬うろたえ、それから覚悟を決めたように表情を険しくしながら叫んだ。
「……しもべたち! 全力で私を守りなさい!」
最大濃度の銀の瘴気が吹き出す。それを受けてゾンビは硬質化、さらには全身を斬り刻まれて戦闘不能と思われた個体まで這いつくばりながらその命令を実行しようとする。驚くことに、斬り飛ばされた部位が元の体に近づき、強引に再生されようとすらしていた。
「この程度で!」
気合の声を上げつつ紅はさらに踏み込もうとするが、強化されたゾンビたちは少し前ほど簡単には倒れてくれない。それでも小太刀を振るい続け、ウィスプにプレッシャーをかけていく。
「どうした、その手に持った剣は飾りか!?」
さらに言葉でも挑発をしかける。しかしウィスプはそれに乗る様子はない。
「私は戦闘自体は嫌いだと言ったはずよ! 大人しくしもべたちに殺されなさい! ……ええい、もういいわ!」
ウィスプはあくまで剣は使おうとせずに瘴気を放出し続けていた。激しさを増したゾンビたちの攻撃に加え、ウィスプの周囲を跳ぶ蝿型のゴーレムからも援護射撃が飛ぶ。が、紅はそれらを小太刀で斬り裂き、あるいは回避して追い詰めようとしていく。
そんな紅を見てウィスプは脅威に感じたらしい。嫌がるように距離を空けてアンデッドたちと入れ替わり始め、自分を守るための壁を厚くしていく。だがそれは、つまるところタバサとの距離が近づいたという意味でもあった。
「タバサ、そっちに行った! 仕留めろ!」
狙い通り。そう思いつつ、邪魔をしてくるゾンビを斬り裂きつつ紅が叫んだ。
今は敵が壁になってしまっていて、紅の位置からはウィスプもタバサもその姿を見ることはできない。だが、殊に戦闘に関してはタバサの腕前は間違いなく本物であるだろうということはよくわかっている。船に乗り込む前は口論になってしまったものの、紅は自分より敵への距離が近いであろうタバサを信じ、すべてを任せることにした。
「ん、見えた。いける」
そしてタバサはそれに応えようとした。屍の兵による壁で見え隠れする状態だった使役者の姿がついに明確に視界に入る。ここまで同様、多少無理をしてでも飛び込む。そう彼女が決心した、その時。
「残念、ここまでよ。私は戦い自体は嫌いだって言ったでしょう? それに……目的はもうとっくに達してるし」
突如ウィスプの頭上に漆黒の空間が広がった。そこから黒のベールと長いコートを纏い、手に香炉のような呪具を持った存在が2体現れる。死霊卿の配下である兵士のレイスだ。
そのレイスと入れ替わるようにウィスプが開いた空間に飛び込もうとする。
「転移ゲート……!? まずい、逃げる気よ!」
タバサの背中側から扇舟の声が響いた。つまり、ウィスプとしてはこのゲートを開いて逃げるだけの時間が必要だった、というわけだ。させまいとタバサが床を蹴って飛び込もうとしたが。
「じゃあね、小さな恐ろしい戦士さん。もう2度と会わないことを願うわ」
それよりわずかに早く、ウィスプの体はゲートの中へと消えて閉じられていた。
「……気配が完全に消えた。ねえ、扇舟。さっき転移ゲートって言ったけど、リフトみたいなワープポータルの一種ってこと?」
攻撃目標を失ったタバサが振り返って扇舟へと問いかける。が、今彼女がいるのは敵陣のど真ん中だ。
「タバサちゃん、そんなことより周り!」
至極真っ当な指摘が扇舟からとんだ。それに対してどこか億劫そうにタバサはため息をこぼす。が、直後。ウィスプと交代する形となって現れたレイス目掛けて無数の斬撃を浴びせていた。手にした呪具のような香炉をタバサ目掛けて叩きつけようとしていたレイスだったが、そんな間もなく斬り刻まれて実体が消滅する。
さらにタバサはもう1体の方へも剣を振るって、こともなげに倒していた。
銀の瘴気が消えた今、もはや残りの敵はこの場のメンバーにとって有象無象に過ぎない、というわけだ。
「ゾンビを強化してるあいつが厄介だっただけで、あとは大したことはない。油断をするつもりはないけど、もう押し切られるほどの数も残ってないから話を聞こうと思った。……まあいいや、さっさと片付けよう。ものすごく気になったけど、転移ゲートとかってのの話は後から聞けばいいか」
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「そうか。君の望みを叶えられたのならば幸いだ。貴重な私の部下を捨て石にしただけの見返りがあったことを祈っているよ。……何、気にしなくていい。確かに君からの頼みではあったが、別にこれをひとつ貸しだなどと言うつもりはない。お互いの関係性を重要視して行っただけのことだ。……ああ、では、また」
とあるビルの執務室。スーツを着込み、左目に傷を持つ男がそう言って通信を終えた。
彼の名はデイヴィッド・ダール。元米連海兵隊少将にして特務機関Gを指揮する司令官。すなわち、今回の不可解な貨物船襲撃の司令を出した張本人である。
「私の友人はどうにも人使いが荒くて困るな」
やれやれ、と言った様子でダールは座っていた背もたれ椅子により深く背中を預けた。
「捨て石とはよく言う。元々捨てるつもりだったのだろう?」
そう言ったのは、軍服に身を包んで左目に黒い眼帯をつけた、ダールと向かい合うように座っていた初老の男だった。見るからに軍人という気配を纏っている。
神田少将。海兵自衛軍の中でも特殊な存在である「神田旅団」の長だ。非合法活動や裏工作などの汚れ仕事まで担当する荒らくれ部隊。だが仕事を選ばず確実にやってのけるという点で、扱いにくいものの優秀な部隊と言えた。
「無論だ。だからこそ君の部隊を使わなかった。とはいえ、捨てた連中の装備もタダでは無いんだがな」
ダールが今回の作戦で集めた6人は、特務機関G内でも鼻つまみ者にあたる面倒な連中だった。加えて、指揮官に選んだ隊長も先の作戦で任務を失敗している。
要するに全て厄介払い、銃兵衛が船内で隊長に言った通りの捨て駒だったのだ。
「わざわざ回りくどいことをしたんだ、あの男からの依頼のついでに金崎銃兵衛を消しておけばセンザキでも動きやすくなったのではないか? それこそ、私の部隊に加えて、そこにいる君の懐刀……アレスと言ったか? 彼を使えばよかっただろう」
神田少将がダールの傍らに立つ、アレスと呼んだ男へとチラリ視線を向ける。だがその相手の表情を窺い知ることはできない。鬼を模したような不気味な仮面に素顔を隠しているからだ。さらには全身をローブで覆っている。たった今「彼」と呼ばれたが、実際のところは本当に男かどうか怪しいような佇まいである。
「確かに神田旅団とアレスの部隊をぶつければそれはできたかもしれないな。だが、センザキはそこまで重要視していない。我々が動こうとしている。そう見せかけるだけでいい。それだけで牽制になって向こうもこちらを無視できなくなる。それが狙い……というよりは、
失った部下のことなど気にかけた様子もなしにダールはそう言い切った。
「しかし、気になることも耳にした。奴は今回の件の前に、部下に幻影の魔女への襲撃をさせている。それ自体は失敗に終わったわけだが、その際に敵対者として今回と共通の存在が確認されているらしい。1人は義手の女。もう1人は……」
ダールが傍らのアレスを見上げる。
「彼のように仮面をつけた二刀流の使い手だったそうだ。それも相当腕が立つ、と」
「対魔忍か?」
神田少将からの問に「『元』だが、1人目の方はな」とダールは答える。
「井河扇舟と言っていた。そちらの義体を使っていた峰舟子こと葉取星舟は覚えているな? 奴の娘だ。五車総攻撃の際に対魔忍に捕まったと聞いていたからてっきり処刑されたか投獄されたと思っていたが、今はヨミハラにいるそうだ。だがもう1人の仮面の方は素性が不明と言っていた。タバサと名乗って普段は扇舟同様ヨミハラにいるらしい。しかしそれより興味深いこととして、奴の部下が言うには……どうも異世界人のようだと」
「異世界人か。ブレインフレーヤー絡みか何かか? ……その2人が今回センザキに現れたのはやや疑問が残るが、まあいずれにしろヨミハラを根城にしているというのではお手上げだな。闇の街と言う割には闇の街なりの秩序があって入り込むのも楽ではない。君の友人が興味を持ったなら、勝手に動けばいいといったところだな」
無意識のうちに、ダールは鼻で小さく笑っていた。
「勝手に動けばいい、確かにその通りか。結局のところ、ヨミハラは我々に対する警戒が強まったせいでしばらくは手出しができないからな。だが……奴は果たして生きている者に興味を持つかが疑問だ。……何と言っても奴は魔界9大貴族の1人である“死霊卿”――テウタテスなのだから」
Grim Dawnのバージョン1.2に軽く触ってみました。
元にした冷気二刀サバタービルドでSR75-76は問題なく回れそうです。ただ、追加されたサンダーのせいかベンジャールに捕縛された後に突如即死攻撃を食らわされましたけど……。
SRの次チャンクへのポータルが目の前に開くのはかなり便利になってます。回避スキルも実質移動スキルが増えてるようなものなのでいい感じ。
とはいえサンダーはかなり痛いので、耐久が怪しいビルドは食らったら大人しく防御に徹したほうがいいかも知れません。サンダーのトリガーがブリッツなせいで距離開けると余計に危険になる鋼鉄ゴリラ女とかいるけど。
SR90とかはいける気がしないのでパス。
何より問題なのは日本語訳を本体内蔵にしたせいで今までと勝手が違うということ。
DLの手間が減った……と思いきや、会話が途中で途切れる、カラフル翻訳が使えない、従来の翻訳とニュアンスが違うと言った具合です。
一応1つ目2つ目までは日wikiに対策のコメントがありますが、やはり手間なのでどうにもこうにもと言った具合。
そのせいもあってか、アプデ後はあんまりグリドンに触れていません。まあ触れられる時間もあんまないんですけどね……。
色々書きましたが、サンダーと翻訳関係以外は面白そうになってるのは事実だと思います。
ボスMIドロップが100%になったらしいのでトレハンが捗りますし、モータートラップやストームトーテムといった設置スキルの一度の召喚数が増えたりもしているようです。
特にモタトラはリチャージが2秒短縮されてデフォで2.5秒になってるので、スキル変化を積みまくれば一瞬にして大量の迫撃砲が設置可能となっています。
もしやデモリッショニストの時代が来た…?