“乗っ取られ”の少女、対魔忍世界に迷い込む   作:天木武

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Act92 オボォ……

 ウルグリムが味龍の店員となってから数日。

 キッチン担当が増えたことでさらに余裕が生まれ、結果としてトラジローとタバサはほぼ出前担当となっていた。

 タバサ自身、そのことに不満はない。大分歩き慣れた感じはあるが、ヨミハラの街中を歩くことはどちらかといえば楽しいと思えていた。

 元の世界(ケアン)ではこの規模で無事に残っている街は存在しなかった。加えて、地下という珍しい環境でもある。さらには住人たちも千差万別。よく問題として上がる治安の悪さも終末世界と比べたらかわいいものだ。知らない存在が起こしている揉め事に対しては自業自得として首を突っ込まないという割り切りもできるし、もし彼女自身に火の粉が降り掛かったとして自分で払うだけの力も持っている。

 そういう意味で、無表情無感情を思わせる彼女の好奇心をくすぐるよう特別な環境と言えた。だからこの街を歩くこと自体を楽しんでいる気もあったのだった。

 

 その上今日はクリスマス。地下という立地上、季節のイベントには疎いヨミハラではあるが、さすがにこの日は街全体に少し浮ついた雰囲気が漂っている。出前を持って行ったついでに、昨日の出前の分の器を回収しに行こうと街中を歩くタバサはそんな様子を感じていた。

 もっとも、ケアンではクリスマスなどという風習はない。もしかすると彼女が経験したことがないだけで実はあるのかもしれないが、あったとしてもそんなことをしている余裕など到底無い。街の空気がガラリと変わるというのは、タバサにとって貴重な体験とも言えた。

 

「オボォ……」

「……ん?」

 

 と、そこでタバサは足元から妙な鳴き声が聞こえてきたことに気づいた。いつの間に近づいてきたか、食ったような顔をしている1匹の妙な猫が彼女の足に擦り寄っている。一部が紫色というあまりにユーモラスな毛並みもそうだが、それ以上にタバサは気配を感じ取れないままに接近を許したことに驚いていた。

 

「……猫? 全然気配を感じなかった……。その毛並みといい、もしかしてお前只者じゃない?」

 

 屈んでからまず頭を、次に顎の下を撫でる。「ボ……」というとても猫とは思えない鳴き声ではあるが、その表情は気持ちよさそうだ。

 心なしか、無表情であるタバサの表情もどこか穏やかになっているように見える。だが直後、その表情が強張り、撫でていた手が止まった。

 

「なんだい、こんなところにいたのかい」

 

 その原因がこの声の主であった。

 タバサはかつて、その彼女に会っている。しかし話したことはない。以前会った時は腹の中がまるで読めない、威圧感のある油断ならない相手という認識だったからだ。

 

「……朧」

 

 屈んだままのタバサが見上げるようにしつつ、その声の主を名を呼んだ。目の前の猫は主が現れたとばかりに、今タバサが名を呼んだ女の元へと駆け寄って「ボォ」と鳴きながら足に頬ずりをしている。

 

 紫色のおかっぱ姫カットの髪、大胆に胸元を開いたレオタードのような対魔忍スーツ、貼り付けた不敵で不気味な笑み。裏の世界ではその名を知らない人は言われるノマドの重鎮、朧その人だった。

 

「朧『様』だ。まったく、最近のガキは言葉遣いがなっちゃいないね」

 

 その朧が屈んで猫を抱き上げる。相変わらず猫は嬉しそうに頬ずりを続けていた。

 

「あなたの猫?」

「ああ、そうだよ。いなくなったから、外出できたついでに無理を言って探してたのさ。お前が見つけてくれたって言うなら、その点は感謝してさっきの言葉遣いは目をつぶってやるよ」

 

 その言い方にタバサは違和感を覚える。「外出できた」と「無理を言って」、どちらもノマドの大幹部なら不適当に思えたからだ。

 

「ああ、そうか」

 

 そんなタバサの疑問は、やや遅れて現れたノマドの兵を従えたリーナを見たことで晴れた。

 

「朧様! 申し訳有りませんが勝手な行動は……おわあっ!? た、タバサ!? なんでお前がここに……? というか、朧様と無用なトラブルとか起こしてないんだろうな!?」

「失礼な。出前を持って行ったついでに昨日の分の器を回収に行こうとしたところで、猫を見かけてかまってたら声をかけられただけだよ」

 

 タバサは立ち上がりつつ、おかもちをリーナに見せる。それで仕事中だったと向こうもわかったらしい。

 

「そ、そうか……。ならいいんだが……」

「こいつには何もされちゃいないし、こちらからも何もしてないよ。それに勝手に歩いて悪かったね。こっちの方にいそうな気配がしたもんだからつい、ね」

「やっぱりリーナは監視役か。本来ならイングリッドの下についてるはずなのになんで朧と一緒にいるのかなって思ったけど……。フュルストの一件で当初はフュルスト側についてたから処罰されてるんだっけ」

「朧『様』だと言ってるだろうが。……腹立たしいけどお前が今言った通りだよ」

 

 小太郎たち独立遊撃隊、二車忍軍、さらには静流と災禍に、表向きは傍観の態度を取ったリーナたちイングリッド一派のノマド、そしてタバサ。多くの存在を巻き込んだ末に解決されたフュルストによる反乱だったが、元々は朧もフュルスト側の立場であった。

 しかし明らかに風向きが悪くなったと見るとあっさりと離反。その辺りの状況をつぶさに捉えられるのは、良くも悪くも彼女が「狡猾」と評される由縁であろう。

 結果、フュルストのように命を奪われることはなく、大幹部の座を剥奪こそされたものの、現在はノマドで幽閉の身にある、という話のはずだった。

 

「クリスマスだからって久しぶりにシャバの空気を味わわせてもらったのさ。ついでにスラムの炊き出しの様子も確認したくてね。……そうしたらこいつがどこかに行っちまったからリーナと一緒に探してた、ってわけだ」

 

 頬ずりする猫を引き剥がすように、首根っこを掴みながらそう言う朧。猫は「ボォ……」と相変わらず猫らしくない鳴き声を上げるだけだった。

 

「そっか。まあ今現在自由が制限されてるとはいえ、イングリッドならぞんざいな扱いはしないと思うよ。私はノマドのことはあまり詳しく知らないけど、フュルストの奴は部下からも見限られてる感じがあった一方、あなたは部下からの信頼もあるみたいだし」

「フン……」

 

 不愉快そうに朧は鼻を鳴らした。

 実際、朧の部下たちは彼女を慕っている。ストリートチルドレンだったところを朧に拾われた者が多いからだ。味龍の面々が利用しているジムでの噂や、クリスマスにスラム地区で特別に行われている炊き出しを確認しに行ったという今の話と合わせても、朧は担当しているエリアの管理はしっかりとしているようである。そのために、担当エリアの住人からの評判は悪くない。

 そのため、下手に粛清でもすればそう言った面々の反感も買いかねないとも言える。イングリッドならばその辺りも踏まえてうまくやるだろう、とタバサは考えていた。

 

「そういや、フュルストの奴は表向きは二車忍軍との小競り合いで死んだってことになってるらしいけど、耳にした噂によるとあのふうま小太郎率いる独立遊撃隊がいたってことはわかってる。さらには、実質的にとどめを刺したのはその場にいた異世界の女だってことも。……お前だろ?」

「まあ一応は。見るに見かねて最後は手を貸した。でも私がいなくてもなんとかなってたかもしれない」

「いやいや、最後だけ見ればそうだったかもしれないが、フュルストがお前の世界の存在であるイーサーにまで手を出してたのは予想外だった。お前がいなかったらあの場にいた全員がまともに動けずにやられていただろう」

 

 リーナが口を挟んできた。が、直後、「ノマドは表向きは傍観していた」という建前の事実を思い出したのだろう。「あ!」とまずそうな表情と共に言い繕うように続けた。

 

「い、今のは私の独り言だ! 私はたまたまあの場にいただけだし、特に手を貸したりもしていないからな!」

「まったく……。実力はイングリッドも認めるほどだってのに、そのポンコツっぷりだけはほんとどうしようもないね。そんなあんたが私の監視役ってのもちょっとばかり癪ではあるが……。ま、こいつを探すために同行してくれたことは感謝してるよ」

 

 言いつつ、朧は抱きかかえた猫の顎の下を撫でる。ユニークでユーモラスとしかいいようのない猫は「オボォ……」とまた独特の鳴き声を上げた。

 

「さて、炊き出しはいつもどおりやってるようだし、こいつも見つかったってわけでまた穴ぐらに逆戻りと行こうか。魔界騎士様、先導を頼むよ」

「はい。……じゃあな、タバサ。クリスマスだが仕事頑張れよ。またそのうち食いに行く」

「あ、うん。待ってる。でもリーナはいいとして……」

 

 タバサの視線が朧の方へと向けられる。

 

「今日は特別に外出できたってことは、またしばらく外に出られないんでしょ? 出前の許可が出れば持っていけるけど、捕まってるならそれも無理?」

「さあね。ま、最後の晩餐の時なら多少の無理も通してくれるかもしれないから、その時は考えてやるよ」

「ん、わかった。でも最後の晩餐で持って行きたくはないな。客が減るのは寂しいから、寛大な処置が下ることを祈ってる」

「そうかい。……私にそんな事を言うなんて、あんたも物好きだね。まあいい。リーナ、帰るよ」

 

 本来なら朧は監視される側のはずだ。が、仕切ってその場を後にしようとしている。リーナはタバサに向かって手を上げて別れの挨拶をしてから、慌てたように先導を始めた。

 

(……なるほどね。最初会った時はまったく腹の中を読めなかった。でも……今ならちょっとわかるかも)

 

 背反、と言ったところか。タバサは2つの相反する感情を抱く相手を見かけることが多くなり、見分けられるようになっていた。

 

(朧の中には得体のしれない悪の感情がある。でもそれとは別に……朧本人のものとでも言うべき感情も同在して、2つの魂がせめぎ合ってるような気がする。……悪の方が勝った場合、“乗っ取られ”ることになるのかな)

 

 好奇心が強いということは決して無いはずなのに、なぜかそんな妄想を抱いてしまっていたということにタバサは気づく。

 ひとつため息をこぼして仕事に戻ろうと、昨日の出前の分の器の回収へと向かうのだった。

 

 

 

---

 

 ヨミハラは地下都市だ。だからこそ季節のイベントには疎いわけだが、もうひとつ地上と大きく異なるところとして天気が上げられる。

 地下である以上、基本的に天気は無関係だ。だが、この街には時折「雨」が降る。地上で降った雨が地中を伝い、年月を経て降り注ぐという現象である。タバサもこれには驚いたものだったが、今ではすっかり慣れてしまっていた。

 

 しかし、今現在目の前で起きている現象は、さすがのタバサをもってしても疑問を隠しきれないでいた。

 

「……雪? 雨じゃなくて? 地下にあるこの街で?」

 

 ヨミハラに雪が降っていた。通常ありえないその光景に、タバサはポツリと独り言をこぼしていた。

 

 雪自体はケアンで目にしたことがある。

 ケアン破滅の元凶と呼ばれたクトーニアンであるログホリアン。その化け物のボスを葬るために北へのルートを移動中、アスターカーンと呼ばれる地方を抜ける時に目にしていた。時には極寒の吹雪に閉ざされるその山とは比べ物にならない程度の降雪であるが、そもそもこの状況が異常であることに変わりはない。

 だがタバサはその「大した雪の量ではない」という考えをすぐに改めることにした。昨日の分の出前の器を回収したのであとは味龍へと戻るだけだが、その帰り道を進むにつれて雪の量が増えているように感じたのだ。

 

(確か……今日はクリスマスとかいうこの世界では特別な日なんだっけ。それで静流がバイトを頼んだからふうまがヨミハラに来てるとかだったはず。ってことは原因は多分それでしょ)

 

 ふうま小太郎がトラブルメーカーであるということは彼女もよく知っている。奇妙な物事の中心に彼がいることは多い。

 そんな男がヨミハラに来たタイミングでこの奇妙な現象だ。何かしら絡んでいると考えるのは当然と言えるだろう。

 

 タバサは雪が激しくなる道を進みつつ、懐から携帯を取り出して小太郎の番号をコールする。呼び出し音が鳴るが、出る様子がない。

 

(これだと別な人と話し中ってことかな。ふうまがこの街で異常を感じたとしたらまず静流に連絡を取るはず。今現在その状態だと仮定するなら、これは異常だってことはほぼ確実か)

 

 そんなことを考えながら呼び出し音のままタバサがしばらく待っていると。

 

『タバサか!? 今いるのはヨミハラか?』

「ん。出前の帰りなんだけど、雪が降ってる。今日はふうまがヨミハラに来てるはずだし、原因だろうなと思って電話をかけた」

『いや、なんでもかんでも俺のせいにされるのは不本意だし、今回は俺が原因じゃないんだが……。どうやらこの状況が起きているのは一部エリアだけらしい。それでお前も雪を見てるってことは近くのはずだ。もしものことを考えて合流したい』

「わかった。場所は?」

 

 小太郎はヨミハラの外れにあるエリアにいる、と告げた。タバサからすれば丁度味龍への帰り道の途中に当たる。

 

「雪の量でここから近いんじゃないかって予想はついてたけど、そこならあんまり時間はかからない。急いで行く」

『頼む。……どうもこの先から戦闘の音が聞こえてるみたいだ。俺は静流先生からの指示を仰ぎながら、その戦闘の様子を伺おうと思う』

「私が行くまで無理しないでね」

 

 通話を切り、タバサは指定された場所へ向け駆け出した。次第に雪の勢いが強くなっていることから、道は間違えていないとわかる。さらには、小太郎が言ったように戦闘の音も耳に入ってきた。

 戦っているのは1対1と戦闘音から予想できる。もしも戦っているのが小太郎なら即座に援護に入るべきだろう。フル装備に身を包み、雪が積もる地面の上におかもちを置いて愛剣をそれぞれの手に握りしめる。それでいて可能な限り気配を殺して近づいたところで――。

 

「……誰だ、あれ」

 

 戦っている2人は全く見たことがない存在だった。

 片方は巨大な大男だった。頭から氷の角を生やし、巨大な斧を振り回している。そのたびに冷気が辺りに振りまかれ、これが雪の原因だとタバサは推測していた。

 もう片方は女のようだった。だが、明らかに大男に押されている。攻撃をどうにか回避しているが、それもそろそろ限界のように見える。

 

 とはいえ、タバサからすれば知らない2人。「路上で偶然出会った者」に過ぎない。ここで圧倒的不利な状況にある女が倒れようが、次の矛先が自分に向かないのであれば関係ないし、それをきっかけとしてこの雪がやむという可能性もある。

 そう考えをまとめてこのまま静観していようとしたタバサだったが。

 

「……ん? ふうま?」

 

 大男の背後、小太郎が忍者刀を手に隙を伺っている様子に気づいた。タバサが自分に気づいたと分かると、小太郎は彼女に向けてハンドサインを送ってくる。

 

 ここまでは戦っている2人は、タバサにとって無関係を決め込める相手だった。が、小太郎からのハンドサインを受け取った瞬間、その相手は戦闘に介入すべき存在へと変わった。

 

 タバサが地を蹴る。得意の消えるほどの速度の突進(シャドウストライク)。形勢が不利で防御に徹していた女を追い越し、大男の懐に潜り込んで両手の2本の剣を突き刺そうとする。

 

「お前……!?」

「硬いか」

 

 背後から聞こえてきた、戸惑ったような女の声を聞き流し、タバサはさらに高速の斬撃(アマラスタのクイックカット)を叩き込む。とはいえ初撃がまともに通らなかった相手だ、これもダメージに期待はできない。が、タバサの狙いはそこではない。

 

「ガアアアアアアアアッ!」

 

 大男の狙いがタバサへと切り替わった。それを受け、タバサは小太郎の指示通りに動く。

 まずは大男が振り回したせいで崩れかけた建物付近へと誘導。相手が突進してきて攻撃を仕掛けようとした瞬間、その眼前にフラッシュバンを炸裂させた。

 

「いいぞタバサ!」

 

 そのタイミングで男の背後から隙を伺っていた小太郎が右眼を開く。「目抜け」と呼ばれる理由となった、長い間閉じられ続けていた右眼。ある時をきっかけとして開くようになり、同時にその眼を通して闇の力を発現できるようになったのだが、タバサはその力を異質で危険だとして、あまり使わないように忠告している。

 それでも元来の自己犠牲の精神からか、あるいはずっと疎まれ続けたことをもどかしく思っていたからか。彼は躊躇なくこの力を使っていた。

 

 果たしてその人外の力は歴然たるものであり、タバサの超速度の突進(シャドウストライク)を思わせるかのような加速で大男に追いつくと、眼を通して生み出された闇の刃ですれ違いざまに斬り裂いていた。

 

「グガアアアアアアアアッ!?」

 

 タバサの攻撃で怯むことすらなかった男の巨体がバランスを崩す。そのまま突進の勢いを殺しきれず、崩れかけた建物へと直撃。小太郎の狙い通りに生き埋めの状態を作り出すことができた。

 

「離脱する!」

「チャンスじゃないの?」

「いや、俺達じゃ無理だ。闇の刃ですらダメージを与えた感触がなかった」

「……まあ私も攻撃が通ってるか怪しい感じだったし、従うしかないか」

 

 ずっと大男と戦い続けていた、今は膝をついていた女性を抱えるようにして、小太郎とタバサは崩落場所から離れていく。

 

「おいネイス、大丈夫か!?」

「感謝する……ふうま小太郎……。だが……あの程度ではあいつ……ビョルン=シュトゥルムは倒せない……」

 

 小太郎に抱えられた、ネイスと呼ばれた女性は息も絶え絶えにそう言った。

 

「きららが……狙われてる……」

「きらら先輩が!? おいネイス、どういうことだ!?」

 

 返事はなかった。

 

「死んだ?」

「気絶してるだけだ。……タバサ、その聞き方はどうかと思うぞ」

 

 相変わらずなタバサに小太郎が渋い顔をした時、背後から大男――ネイスがビョルン=シュトゥルムと呼んだ男の咆哮が聞こえてきた。自分に乗っかっている建物の残骸を押し返そうというのだろう。

 

「あいつが出てくるのは時間の問題だと思うけど、どうする?」

「とりあえずきらら先輩が関係してるらしいから連絡が最優先だろう」

「きららも今日ここに来てるの?」

「ああ。俺と一緒でバイトで静流先生の店にいる」

「そっか。後で会おうかな。まあとにかく、私もバイトの途中で抜けてきてるし、一応店に連絡を……。あれ?」

 

 異世界人に似つかわしくない文明の利器であるスマホを操作して戦闘時に装備する仮面(ナマディアズホーン)越しに話そうとし、タバサは首を傾げていた。

 

「どうした?」

「なんか繋がらない」

「繋がらない? まさか……。ああ、クソッ! 電波が死んでる!」

 

 文句をこぼしながら自分のスマホを確認していた小太郎だったが、静流の店に行く道の途中で足を止め、「そういうことか……」と思わず呟いていた。

 

 彼の眼前。地下都市であるヨミハラの天井まで届くほどの分厚い氷の壁が行く手を阻み、この一体を隔離していたのだ。

 




2022年のクリスマスの時期に開催された限定ストーリーイベント、「故郷からの刺客」が元になっているお話。
ちなみに原作では朧はイングリッド、リーナ、ドロレスと一緒に静流の店に行ったところだけ描かれているので、前半部分は勝手に付け足したオリ展開になってます。



おぼ猫

人を食ったような顔をして頭は紫の毛というユーモラスな猫。
もっと噛み砕いてわかりやすく言うならば、デフォルメ化した朧の頭部が付いた猫。
鳴き声は「オボォ……」「ボォ」「ボ……」等。
生みの親は神尾96氏。対魔忍のギャグイラストや、「ゆるゆる対魔忍」という題名で4コマ漫画を書いている方なのだが、その中で登場した朧っぽい猫がいつの間にか「おぼ猫」として公式に逆輸入された形でRPG内に登場している。

朧は原作PCゲームにおいて卑怯・残忍・狡猾を絵に描いたような悪女キャラ・敵キャラであったが、RPG内ではギャップ萌えと言わんばかりにかなり性格が丸くなっており、特にこのおぼ猫が登場してからはその傾向が加速することになったように思える。
具体的にはオーナーをやってるクラブの食い逃げ犯を追いかけるもちゃんと金を払ってくれたら見逃したり、必死になってチアダンスに打ち込んだり、本編中でも述べられているようにヨミハラのストリートチルドレンの面倒を見てスラムで炊き出しを行ったり。
おぼ猫が言いたいことを鳴き声だけで理解する場面も描かれた。
そんな感じでRPG独自の方向性で変化したキャラであり、そろそろ完全に味方ポジに付きそうな勢いですらある。
一方、以前のあの敵役ポジの悪女っぷりが薄まってきてしまって寂しいという声もちらほら聞かれたりしないでもない。

また、おぼ猫はいわゆる大人ゆきかぜがいる未来世界にも存在しており、対魔忍世界において公式チートキャラの1人でもあるナーサラと一緒に行動している。
修羅場をくぐり抜けた影響か、ナーサラでさえも一目置くような不思議な力を持ち合わせており、RPGにおけるデウスエクスマキナになりかねない可能性を秘めている。
そのためにナーサラと合わせて便利さ故にストーリーが陳腐化しかねないと懸念を示すファンもいる模様。
でも個人的にはゆるキャラっぽくてすごく好きだから適度に出してもらいたかったりする。

ちなみに、神尾96氏のイラストはこのおぼ猫に代表されるようにデフォルメ化されて描かれるキャラが多く(勿論キリッと決まってるキャラも描かれている)、特に鹿之助、リリム、ミナサキ辺りにその傾向が強いように思える。
おぼ猫もそうだが、大体の場合は目が「ニ」の間に「・」が入った形というか、「エ」の縦棒が上下にくっついていない形というか、そんな感じで描かれていて脱力系な顔をしている。
RPGでは大分殺伐感は薄れてきているが、本来なら殺伐としている対魔忍世界にシュールな笑いを届ける清涼剤のような存在。それがおぼ猫である。
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