“乗っ取られ”の少女、対魔忍世界に迷い込む   作:天木武

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Act93 クリスマス……今年もオレはひとり……

 小太郎とタバサの目の前にそびえる氷の壁は向かう側が見えるもののとても分厚く、生半可な攻撃では破壊できそうになかった。さらに建物を無視して広がっているために回り込もうとすることも不可能、上も天井まで届いているために同様だった。

 

「完全に閉じ込められた、ってことか……」

 

 意識を失ったネイスを抱えたまま、思わず小太郎が奥歯を鳴らす。その間にタバサは氷の壁に近づき、手に持つ剣でその壁を軽く叩いて様子を伺っているようだった。

 

「壊せそうか?」

 

 僅かな希望を持って小太郎が尋ねる。

 

「無理だね。確かにこれは氷だけど、それと別に何か術のようなものがかけられてるように感じる。つまりこの場所一帯を辺りから隔離してるような……。あれ? そういうの前にどこかで……」

「フュルストと戦ったときのあれか?」

「ああ……。うん、そうだね。あいつ()そうだったか。とにかく、その類のものだと思う」

 

 タバサが一瞬言い淀んだのは、フュルストの件よりも先に幻影の魔女こと不知火の件の時のことを思い出したからだった。直感的なものだったが、そっちのほうが似てると感じたのだ。同時に、もしそうであるならば今回も最近名前を聞くことが多くなった死霊卿が絡んでいるのかもしれない。

 

「だったら俺の闇の力で……。くっ……」

 

 タバサが考えを巡らせている間に、小太郎が氷の壁目掛けて闇の力を解放するために右眼を開けようとする。が、うまくいかない。先程一度力を解放しているということも関係しているのだろう。

 

「前にもその力はあんまり使うな、って私言ったと思うんだけど。本当ならさっきも使って欲しくなかったし。今使おうとして使えないってことは、完全に制御できてるわけじゃないんでしょ?」

「さっきはうまくいったんだがな……」

「まあどうせ言っても聞かないだろうから今はこれ以上言わないけど。とにかくこれを壊すのは無理だよ。どうする?」

 

 タバサが尋ねたそのタイミングで、先程離れた場所の方から雄叫びが聞こえてきた。ビョルン=シュトゥルムが生き埋め状態からでてきたのかもしれない。

 

「こんな道の真ん中じゃあいつにすぐに見つかっちまう。とりあえずどこかに身を隠して……。可能なら体も暖めたいところだ」

「ん。とにかく動こう」

 

 2人は移動を始めた。だが、しばらく移動したところでますます吹雪が激しさを増していく。もはや移動もままならない。

 

「クソッ……。まさか地下都市のヨミハラでホワイトアウトに遭遇するなんて……」

「ホワイトアウト?」

「吹雪で辺りが見えなくなる現象のことだ。こうなると自分がどこを移動しているかもわからなくなるし、寒さで体温も体力も奪われちまう……」

「つまり闇雲に動き回ると消耗だけする形になりかねないわけか。 ……あの辺に身を隠すのはどう?」

 

 タバサが指さした先。うっすらと何かが見える。

 

「よし……。あそこに行ってみよう。しかしよく見えたな……」

「まあ、このぐらいなら」

「というか、お前寒くないのか……? 俺は対魔忍スーツの防寒機能を使ってももう寒くてしょうがないってのに……」

「元々冷気を得意にしてるからか、冷気耐性が高いからかな。そんなに気にならない。でもふうまが倒れちゃ元も子もないし」

 

 どうにか吹雪の直撃を避けられる物陰へと到着し、小太郎は抱えていたネイスを地面に降ろす。

 

「ううっ……寒い……。『霜の鬼神』のせいかネイスの体温も低いみたいで余計にきつかった……。見つかるかもしれないがこのままじゃ凍死待ったなしだ。とにかく火を起こすか何かしないと……。サバイバル用の防水マッチでどうにか……」

「霜の鬼神? ……あ、そういえば角が生えてるね。じゃあ人間じゃないのか」

「鬼族だ。『鬼哭』っていうマフィアの幹部でもある。……そういやお前のところの味龍はこいつらと魔草の取引をしてるんじゃなかったか?」

「そうなの? 私は店の内情についてはよくわかってないから。……ところで、火消えちゃってるけど」

 

 話つつも、小太郎はどうにか火を起こして暖を取ろうとしていた。だが、マッチの種火から火を拡大させようとしても、今タバサが指摘したようにうまくいかずに消えてしまう。

 

「ダメだ、うまくいかない……。この空間が異常だから、普通の火じゃかき消されるのかも……。いや、待てよ。普通じゃない火ならいけるかもしれないか……!?」

 

 何かに気づいたように小太郎はタバサを見つめた。

 

「タバサ、ブラックウォーターカクテルだ。異世界のお前の力ならこの状況下でも火を起こせるかもしれない」

「でも私の火炎属性は冷気属性に変換されて……。あ、そうか。装備で変換されてるってことだけは認識できてるんだから、外せばいいんだ」

 

 それまで身につけていたフード付きの仮面(ナマディアズホーン)を脱ぎ、胸のメダルも外す。それらをインベントリへと収納したのだろう。手から消した後で、タバサは地面へと不可思議な力で生み出した火炎瓶を放り投げた。

 

「おお、消えない! 暖かさを感じるから確かに炎だし、これならいけそうだ! あとは燃やせそうなものを……」

「いいよ。大した負担じゃないし私が定期的に使う。それともテルミットマインにする? そっちの方がより高温だろうし長い間展開できるけど……」

「それはダメだ。あれじゃおそらく温度が高すぎる。寒いからと言って高温の火元で暖を取ろうとすると、温度に対する感覚が麻痺していて気づかないうちに火傷を負う危険性もある」

「なるほど……。ふうまは博識だね。じゃあ火が消えそうになったら使い直すから」

 

 暖を取っていた火が消えそうになってきたところでそう言うと、タバサは再び火炎瓶を生み出して火を起こす。

 

「……どういう原理だからわからないけどすげえよな」

 

 タバサが生み出しているのは確かに火炎瓶だ。そのため、瓶の破片も地面にはある。

 ところが、火が消えるとその破片もまた消えてしまうのだ。つまるところ、火炎瓶自体を召喚している、という考え方がもっとも妥当なのかもしれない。

 

「以前は集団戦の訓練の後、冷気化されたこれで涼んだっけな。今は暖を取るのに役立つとは……」

「本来こういう使い方じゃ無いはずなんだけど……。まあいいか。……で、寒さの方はマシになった?」

 

 炎に手をかざしている小太郎だが、まだその震えは止まらない。

 

「多少は、ってところだな……。かといってもっと強力な炎じゃさっき言ったみたいに火傷の危険性がある。現状これでどうにかするしかないな」

「そっか。じゃあそろそろ気になってることを聞いてもいいかな。そもそもあの大男は何者で、なんでこんな雪が降ってるの?」

「俺にも詳しいことはわからないんだが……」

 

 そう前置きをした上で、小太郎は話を始めた。

 

 まだ気を失ったままのネイスも、先程暴れまわっていたビョルン=シュトゥルム霜の鬼神。さらには口ぶりからして、今回はきららが関係しているというような雰囲気だった。

 霜の鬼神は冷気を操る能力を持つ。きららは父が対魔忍だが、母親は霜の鬼神だ。つまりきららはハーフに当たり、冷気を操る能力は母親譲りということになる。彼女の頭には実は角が生えているのだが、目立たないように大きなリボンともさもさのの髪で見えないようにしていた。

 そんなきららの両親はともに亡くなったという話のはずだった。しかし、ここで霜の鬼神の一族が出張ってくるということは、その母親絡みで何かあったのではないか、と小太郎は予想を話していた。

 

「でもきららの母親はずっと前に死んでるんでしょ? なんで今さら?」

「わからない。きらら先輩が霜の鬼神の一族の娘であることは事実だから、後継者問題で何かあったのかもしれない。あるいは、亡くなったと思われていたお母さんも実は生きていて、何か事情があって死亡を偽装していたとかそういうことも考えられる。とにかく現時点では判断しきれない」

()()親子間での問題ってこともあるのか」

 

 どこかうんざりした様子でタバサはそう言った。その口ぶりから、おそらくはゆきかぜと不知火の親子のことを言っているのだろうと、以前の件で一枚噛んだ小太郎にはわかった。

 

「まあ話は大体わかった。でも今はそれを一旦置いておくとして。……ふうま。あれ、敵?」

 

 と、そこで会話を一旦中断してタバサが尋ねてきた。彼女の視線の先に目を移すと、この雪の中を自力で歩く雪だるまの姿が目に入る。しかも何か独り言をブツブツと呟いているようだった。

 

『クリスマス……今年もオレはひとり……。クソリア充どもめ……。ブツブツ……』

「あいつは……!」

 

 以前のクリスマスの際、小太郎は蛇子に誘われてまえさき市へとイルミネーションを見に行ったのだが、その時に現れたのがこの雪だるまの怨霊――雪の悪霊であった。

 クリスマスというのは基本的に明るいイベントだ。だが、光があれば闇がある。恋人や家族と仲良く過ごすクリスマスを恨むような怨念が集まって悪霊化したのが、雪の悪霊と呼ばれるあの雪だるまだ、と小太郎はタバサに説明した。

 

「え? 他人の幸せを妬んで悪霊化したってこと? 他人の不幸を願うなんて無駄な労力を割けるぐらいなら、それを自分のために使おうとか考えないわけ?」

「……タバサ、ド正論だがあいつには言うなよ。絶対逆効果だ」

「別に言っても言わなくても変わらないと思うよ。敵ってことだろうし、消すだけだから」

 

 早くもタバサは戦闘モードに入ろうとしていた。だが、戦闘用の仮面(ナマディアズホーン)を装備すれば今使っている火炎が冷気へと変わる。とはいえ、冷気属性を得意としているために、装備しない場合は戦闘能力が大きく低下することにもなってしまう。そのためにさっさと片付けて暖を取る小太郎の邪魔をしたくないと考えていた。

 

「待て待て、俺にいい案がある。緊急事態だ、あいつを利用させてもらおう」

「利用? 大丈夫なの?」

「多分な。まずくなったらタバサになんとかしてもらえるって保険つきだ。やるに越したことはない。あと、それと別なことでお前に協力してもらうことになるかもしれないが、大丈夫か?」

「私にできることなら」

 

 タバサの了解を取り付け、「よし……」と小太郎はひとつ息を吐いた。

 

「……おい、お前! 久しぶりだな!」

 

 それから意を決したように雪だるまへとに声をかける。その間、タバサは装備を一部外してこそいるものの、いつでも臨戦態勢に移れる状態を保ちつつ、暖を取るためのブラックウォーターカクテルを地面に放り投げていた。

 

『その声……。お前はあの時のリア充! クソッ……今日も別な女を連れて……。しかもよく見たら霜の鬼神の女までいるじゃないか! これだからリア充は……』

「やべえ、やっぱ無理だったか、これ……。言っておくが霜の鬼神は気を失ったから助けただけだし、こいつも別に俺の彼女ってわけじゃない。だろ、タバサ?」

 

 不意に話を振られたタバサは、数度瞬きをしてから相変わらずの無感情で答えた。

 

「彼女っていうのは恋人ってこと? ふうまのことは友達だとは思ってるけど、私は愛とか恋とかそういう感情はわからないから、恋人とは違う」

『え……。あ、そういう系の子か。でも無愛想だけどかわいい系だしポイントは高い』

「お前……。本人がわかってないみたいだからいいようなものの、その言い方は失礼だぞ……。それに『そういう系』でもない。タバサはこの世界の人間じゃない。そのせいもあってか、少し特殊なんだ」

『やっぱりそういう系ってことか。まあ色んな女の子がいるんだ、少しこじらせてるぐらいならオレは気にしない』

「だから違うっての!」

 

 どうも漫才のようなやり取りになってしまっている。話が進まないと小太郎がじれ始めていると。

 

「全く話についていけないんだけど、もしかして私馬鹿にされてる? ……ふうまが役に立つみたいに言ってたけど、敵ってことでいいの?」

「も、もうちょっと待ってくれ! こいつを説得するから!」

「なんなら言うことを聞かないなら私が叩き斬るって言えば……。あ、ダメだ。暴力を背景にした説得はやめろってアサギに言われたんだった。まあそういうのは私の分野外だからふうまに任せる。まずくなったら言って」

 

 あくまで臨戦態勢を保ったまま、タバサはそう言うとブラックウォーターカクテルを一定間隔で投げ続けていた。

 

『……なあ、その子、よく見ると火炎瓶投げてない?』

「投げてるぞ」

『なんで瓶の破片が残らないんだ?』

「さっき言っただろ、異世界のちょっと特殊な人間だって。これでわかったか? ……ちなみに、あいつは敵とみなした相手には容赦ないが、そうじゃないならまあそれなりに接してくれる。つまり、お前次第で女の子と一緒にクリマスを過ごせるってことだ。……どうだ、ちょっと俺に手を貸してくれないか? お前だってひとりぼっちのクリスマスは嫌なんだろ?」

『む……。ウググ……』

 

 悪知恵使いの小太郎の本領発揮。タバサには少し悪いと思いつつも、雪の悪霊の弱点でもある女子に弱いという点をうまく使おうとしていた。

 実は、小太郎がやったわけではないが、過去に似たような方法でこの相手をうまく利用できたことがあったのだ。雪の悪霊は10年に1度現れる、との伝承があったのだが、初めて現れた翌年にもなぜか現れていた。しかしクリスマスケーキ販売のバイトをしていた“斬鬼”ことあの秋山凜子と、土遁の術の使い手である篠原(しのはら)まりによってマスコットとしてケーキ販売の手伝いをさせられることとなったのだ。女子2人と話せるということでクリスマスにリア充気分を味わえる点が対価になったのだろう。また、万が一のために凜子が常に見張っていたために安全も確保されていた。

 今、状況としてはそこに少し似ている。話し相手も見張りもタバサに任せざるをえないために負担を強いることになってしまうが、そこまでしてでも小太郎はこの相手の力を借りたかったのだ。

 

「お前、冷気を食える能力持ってたよな? この寒さじゃ俺の体がもたない。お前のその能力で俺を助けてほしいんだ」

 

 その力というのが、今小太郎が述べたものだった。初めて現れた際はこの悪霊が冷気を吸収していたせいで、街が異常な暖冬となるほどだった。うまく引き入れられれば、この吹雪を確実に凌げるだろう。

 

『……あの子だけか?』

「え?」

『オレと一緒にクリスマスを過ごしてくれる女の子は、あの子だけかって聞いてる』

 

 だが事はそう簡単には運ばない。女子を餌にすれば食いつくという小太郎の考えは間違えてはいないようだが、決め手に欠ける様子だ。

 一瞬、小太郎は黙り込んで考えを巡らせた。やはり1人だけでは押しが弱いかもしれない。が、閉じ込められている以上、他の女子の都合はすぐにはつけられない。

 

『気絶してるそこの霜の鬼神が目を覚ましたら、オレと一緒にクリスマスを過ごしてくれるか?』

「あ、それは無理」

『ムググ……』

 

 反応が悪い。やはりタバサ1人だけでは説得できるか怪しいらしい。こうなればギャンブルだと小太郎は腹を括った。当人に確認を取っていないが、背に腹は代えられない。命の危機と説明すれば、事後承諾でもきっと納得してくれるだろう。

 そう考え、小太郎は最強の切り札――きららを引き合いに出すことにした。現在の弱い手札(ワンペア)が、懸命のブラフで強力な幻想の役(フォーカード)へと作り変えられる。

 

「もし俺がここから生き延びられたら、巨乳ツンデレのかわいい女の子と一緒にクリスマスを過ごさせてやる! しかもサンタ服だ!」

『きょ、巨乳ツンデレ! サンタ服!』

 

 きららの効果は絶大で、どうやらギャンブルには勝ったらしい。

 甘い提案に雪の悪霊は乗った。目には見えないが能力を発揮したようで、明らかに寒さが和らいでいるのがわかる。

 

「おお、暖かくなってきた!」

「だね」

 

 タバサも同意している以上間違いないだろう。周囲にフィールドが張られたように寒気が薄れ、ブラックウォーターカクテルの火で体感温度が上昇している。

 

『おい、約束通りにしたぞ。それで、巨乳ツンデレサンタ娘はまだ来ないみたいだが、それまではこのこじらせ娘と過ごしていいんだろ?』

「だからこじらせてねえって。あとその言い方は大概失礼だ。……タバサ、焚き火を供給してもらってる中すまないんだが、こいつの相手もいいか?」

「別にいいよ。ただ妙な動きを見せたら斬るから。で、相手って何すればいいの?」

『グフフ……。男女がクリスマスにすることと言ったらひとつしかないだろう……』

「あ、やべ……」

 

 小太郎の約束は「女の子と一緒にクリスマスを過ごさせる」だ。となれば、蛮行に走られる可能性もある。しかし相手はタバサ、そんなことを許すわけもなく問答無用で叩き斬られるのがオチだろう。これでは折角の説得が無駄になると肩を下ろしかけた小太郎だったが。

 

『まずはお互いをよく知るために話そうじゃないか!』

「ピュアボーイかよ!」

 

 思わず小太郎はずっこけながらツッコミを入れていた。

 

『何を言う。コミュニケーションは大切だ。こんなのは基本中の基本だぞ』

「……昔は人をリア充だと決めつけて襲いかかってきたやつがどの口で言ってんだか」

『それはそれだ! と、とにかく! ゴホン……。あー、えっと……今日はいい天気だな』

 

 思わず「口下手かよ!」とまたツッコミそうになった小太郎だったが、体力を温存しておこうと頭を抱えながらそれをやめた。

 

「全然よくない。こんな吹雪はアスターカーンでも見たことがない」

『あ、うん……。キミにとってはそうかもしれないけど、オレにとってはいい天気なわけで……』

「雪だるまだから?」

『そ、そうそう! 正確には雪の悪霊なんだけど……。いや、そんな物騒な名前つけられてるけど、別に悪いことばかりしてるわけじゃないから、ほんとほんと!』

 

 完全に女子に免疫がない男子と、全く興味がない女子の構図である。自分で提案しておきながらも、小太郎はどうにもいたたまれない気分にならざるを得なかった。

 

「もう見てられねえ……。タバサ、何か面白い話でもしてやってくれ。こいつ口下手みたいだ。それに、段々暖かくなってきて眠くなってきたけど、ここで寝たら雪山で寝るようなもんで、俺も目を覚ましたいってのもあるから……」

『いいぞ、そのまま寝てろ。雪山で眠るのは最高に気持ちいいらしい』

「それはお前基準だろ。人間はその状況だと命を落としかねないんだよ」

「ふうまが死ぬのは嫌だな。何か目の覚めるような話……。あ、夏にゆきかぜの家でパジャマパーティとかってのをやった時に怖い話をすると目が覚めるって聞いたっけ」

 

 ゆきかぜの家でのパジャマパーティ。そう言えばあの時は鹿之助と一緒に東京キングダムに行ったせいで、蛇子が当てつけるようにそれを企画したんだったかと小太郎は思い出した。

 

「それは怖い話でゾッとして涼を取るためな気もしないでもないが……。その時に何か話したのか?」

「私が話すと洒落にならない話が出てきそうって言われてゆきかぜに止められた。でも……ああ、雪を見て思い出した。怖い話あるよ。お前もそれを聞くってことでいい?」

 

 一応タバサは雪だるまに確認を取る。

 

『え? あ、いいよ。こじらせてる怖い話はちょっと楽しみ』

「何回も言うけどこじらせて無いっての。タバサの話はおそらくガチだぞ。……まあいいや、こいつの許可も出たし、頼む」

 

 小太郎の声にひとつ頷くと、焚き火に薪を追加するようにブラックウォーターカクテルを地面に放り投げてからタバサは口を開いた。

 

「わかった。じゃあ話すね。これは、私がいた世界で読んだ日記にあった話だよ」




アスターカーン

Grim DawnのAct4の中継地点である「アイコン砦」へ向かう際に広がるエリア。
アスターカーンの名前のついたエリアは山地、街道、渓谷と続く。
山地だけでなく一帯が降雪地域のようであり、一般人からするとここを山越えしなければならないために南北の移動の難易度が高まっているようである。乗っ取られには全く関係ないけど。
獣系モンスターが多くいるエリアで、獣人であるグローブルの他にチルメインと呼ばれるイエティのようなモンスターも闊歩している。
アスターカーンに入る前のゲートを出てアイコン砦に向かうまでに上に述べた通りの地名の3つの中継リフトがあり、その長さを窺い知ることができる。
途中には隠しクエのエリアの他、神であるモグドロゲン(通称モグおじ)を祀る祠があり、条件を満たせばここでモグおじ(厳密にいえばそのアバターらしい)にケンカをふっかけることも可能。
この地域を越えてアイコン砦に入るといよいよベースゲームの最終盤へと突入。ネクロポリスと呼ばれる地域を目指し、そこの奥地で召喚されたログホリアンを討伐することが目標となる。

ちなみに、予定されている大型拡張DLC第3弾のタイトルは「Fangs of Asterkarn」(アスターカーンの牙)。つまりこのアスターカーン地方が舞台になる可能性が決定的になっている。
元々この地域の古の存在と思われる冬王ことフロスナー王や、その娘のコルバといった名前は武具で見かけることがあった他、新マスタリーのバーサーカーはアスターカーンの守護者という立ち位置らしい。
しかし逆に言えばそのぐらいしか情報がなく、未だ謎に包まれた地域とも言える。……まあハクスラなんで舞台背景はそこそこに留まると言ってしまえば身も蓋もないのだが。
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