こちら、ニコニコ海上放送局!   作:就鳥 ことり

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2話 色を知らない子供達 2

 始めからドクターを疑っていた訳じゃない。与えられた環境が常識を作るので、白に囲まれることも味のしない食事も、子供たちが大人になれないのも普通だった。

 先生に、お外で流行ってる病の薬の研究だと聞いた。戦争を止めるための研究だとも言っていた。これはきっと誰かのためになる。良いことをしていると聞いていた。ドクター達がしていることは信じてたし、受け入れてた。

 

 沢山居た子供たちは2歳まで生きれたのが半分。3歳になることが出来たのは100人。5歳の頃には4人しか残っていなかった。5年で996人がいなくなっても。ドクターの行いに疑問は持たなかった。ドクターの言葉以外の正解があることを知らなかったから。

 

 疑問には思わなかったが、離れ離れは嫌だった。知らない外の世界のためだとか、自分たちに正当性があるかとかどうでもよかったのだ。

 子供なので。大人が何と理屈をこねようが、嫌なものはイヤのである。

 

 痛いのも辛いのも我慢するから、引き離されたくない。たった4人の家族で仲間で戦友。何も与えらなかった、自分たちが唯一持っている色彩で宝物。何としても守らねばならない。奪われてはならない。

 

 1人、また1人と減っていった子供たち、お部屋が移動になったって聞いた。いつ引き離されるか分かったものじゃなかった。ついぞ、大好きなセイヤ……40125も連れていかれて、戻ってこなかった。少しでも長く一緒に居るため、子供だからと隠されている情報を知る必要があった。

 

 そんなわけで全ての大人を警戒して、常に神経を張り詰めて極限状態にずっと身を置いて来た彼らは、大人達の全てに敏感になった。 

 世でいう見聞色の覇気という技能が、いつの間にか身についていたのである。

 

 最初に人の気配が分かるようになったのはミノリ、次にヒナが研究員の思考が洩れ聞こえるようになった。

 

「読み聞かせの時間です」

 

「わかった。……いいぞ」

「どうしたの、誰か連れかれるの」

 

 ある日、覇気によって研究の概要が聞こえてしまったヒナは、秘密会議の合図を出した。見聞色で索敵を済ませたミノリの返事を待ってヒナは告げる。

 

「新薬の研究なんて行われて居ませんでした! 原子爆弾の二次被害を防ぐ研究でもありませんでした! ひな達によって救われる平和も人も居ません! 大人は皆うんちでした!!」

 

「……僕らが逃げたせいで、病気が治らなくなる人は居ないって、こと?」

「朗報だな」

  

 3人は顔を見合わせてコクリ頷きあった。 

 

「よし、外に出よう」

 

 逃げても誰にも迷惑はかからない!! 困るのは嘘つき達だけ! よかった!

 

 そういうことである。

 

「じゃあ結局なんの研究施設なんだ?」

「んとね、悪魔の実って単語は聞こえたよ。それを作りたいみたい」

「悪魔の実……本で見た気がするな、なんか食べるとビックリ人間ショーになるんだって」

「何だそれ」

 

 要領を得ない。まだまだ情報不足であった。

 

「はいっ、はいっ! 」

「はいヒナちゃん、発言どうぞ」

 

「あのねあのね、ひなね、やりたいことあるの」

 

 そんなことより。とヒナが広げた巨大な地図。

 黒で線が引かれただけの、真っ白な地図だった。

 

「今居るのはね、ここ」

 

 ちょん。と指で示されたのは、黒豆程のちまこい楕円。

 

「いや、ちっっさ」 

「それただの点じゃねぇか……せめてその右隣のぐらいあるだろ」

 

「昔の人が書いた予想図だから、正確では無いみたいなんだけれどね。それでもお外はこんなに広いんだって。変な島や国が沢山あるんだって。お外に出たらこの真っ白な地図に、どんな場所だったか書いて行こうよ。3人で世界地図を作るの」

 

 ちっちゃな子供のでっかい夢が生まれた瞬間だった。

 

「いいんじゃね。じゃあ最後は東の海が目的地だな。1番平和で穏やかなとこらしいぜ」

「えー楽しそ。僕はそうだな……とりあえずここを出たら空をみたいな」

 

 

 ヒナが神経を張りつめて集中を高めれば、人の思考が読めることが分かったので、これを用いてとりあえず当面は情報収集をすることにした。

 

「ねぇ、先生の研究が上手く行けば僕らヒーローになれるんだよねー?  へへ、先生も褒められるよね。」

 

「そうだな。長年の病魔から解放されるんだ。きっと皆お前たちに感謝するだろう。お前たちは必ず報われる、だから共に頑張ろう」

 (レプリカが上手く行けばお前たちは立派な人間兵器。悪魔の実の疑似能力者となる。そして、私は人工悪魔の実で、名実ともにベガパンクを超える頭脳であるという証明を得るだろう。真の大天才はこの私だと、誰もが認めざるを得ないっ!  世界を裏で牛耳るのも容易い。あぁ、お前たちはカネとユメのたまごだよ)

 

「〜っ、(うんち)だ!! 」

「すんません、ヒナが便所行きたいみたいです」

 

 

 ヒナは常に見聞色の覇気を使い些細な情報でも得ようと必死だった。どうしても知りたいことは、こんな具合で確信には触れず、思考で連想しそうな質問をする。こうして着々と情報収集を進めることができたのだ。

 

 孤島パンクハザードの極秘研究機関。ミノリ達には戦争を止めるため、病気の新薬の研究のためと聞かせていた。

 その正体は人工的に悪魔の実を作り出そうという研究機関だった。食べた人間に異能を与える悪魔の実、世界政府も出資している代々続く研究だ。多くの生命と長い年月を経て精製に成功した可能性のあるレプリカが13個できた。まだまだマグレのような成功率だが、10を超えたことで、今度はその被検体の研究も並行して動き始めたのだ。

 

「研究に成功した悪魔の実のレプリカは、地下と2階のいくつかの部屋に分けて保存してるみたい」

 

「あー。2階に行くって話をしているのを何度か聞いてるな……確か」 

 

『あれ、カードキーがない。2階に置いてきたか』 

『ドジなやつだな。……上に行くならついでにこの鍵を返して置いてくれ』

 

「何階建てか知らんがここは2階より下の階だな。地下か地上1階か」

「地下に行くとか下に降りるとかって発言を聞いた事ないから、ここが地下なんじゃない」

 

 レプリカの成功例が増えたため、世界政府もさらなる予算を回してくれるようになった。かの有名な七武海ドフラミンゴも支援を名乗り出てくれた。成功は近い!

 

 そう思われたが、容易くはいかなかった。レプリカに用いた化学物質がほとんどの生物でアナフィラキシーショックが起きることが分かったのだ。ほぼ即死である。

 このままでは冗談にならない程扱えぬ代物だった。

 

「ひな達に投与されてるのは毒物だけど、レプリカに使われてる有害物質を中和するためのもの。いつも交互に飲んでるお薬が有害物質と中和剤」

 

「投薬が終わったところで死にはしないのか。セイヤが投薬を拒んだから死んだなんて大嘘だったな」

 

 適合体になるための薬物の研究は、幾万の命を使い潰すことで着実に進み、4万人目の子供たちの代でようやく10歳を超える個体が現れた。間もなく浪費した生命もカネも、大成せず朽ちていった先代達も全てが報われる。その兆しが見えた。

 

「ひな達より前に15歳まで生きた個体があるんだって」

 

「俺たちは過去最高傑作だそうだ、15以上にはなれるだろう。まだ半分ある。」

 

「……このままだと、最初にレプリカの試験投与されるのは十中八九ヒナちゃんかな」

 

「みのりは大本命、はるも綺麗な広告塔。だもんね」

 

「タイムリミットはそれまで。それまでに必要な情報を手に入れるんだ」

 

 カードキーはドクターのものがあればいい、それでだいたいの物が開く。いつも1人や2人しかここに来ない。対してこっちは3人だ。男のドクターには、わかりやすい急所がある。容赦しない。男の痛みを知らぬヒナが全力で握り潰す所存である。

 

 この部屋の暗証番号も知ってる。

 ここの階に保管されてる2つのレプリカの場所も解除キーも知ってる。持ち出せばお金になるはずだ。

 南側に緊急脱出用の非常食を積んだ小船があるのも知ってる。

 

 研究を奪われるようなことがあれば、誰にも渡す前に全てを闇に葬るための爆破装置のスイッチも知ってる。

 

 あとは外までの経路を考えなくちゃ。

 

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