現在49階層まで到達しています。
あー...今の時刻は?
時刻は午後2時32分15秒です。
なら、次の階層に降りたら下調べをして戻ろう。
了解。...警告。この先に詳細不明な生体反応を検知。
人間の反応も多数確認しました。
襲われている可能性は?
推測。...98.5%の確率で襲われていると思われます。
救援へ向かおう。BT!タイタンフォール、スタンバイ!
了解。パイロット。
鼓膜を劈く様な轟音。燃えた事で周辺に漂う異臭。
フィンは眼前に突如出現した異形の怪物に目を奪われた。
手にしている武器や左肩から伸びた四角い箱状の物体から飛び出した
何かが爆発し、新種のモンスターは一掃されていく。
他の団員達も逃げる足を止め、呆然と立ち尽くしてしまっていた。
そんな中、爆発を逃れた新種のモンスターがナルヴィの背後から
ヌッと姿を見せ、口を開き腐食液を吐こうとしていた。
「ッ!?ナルヴィ!」
「え?...ぁ...」
既に開かれた口から少量の腐食液が漏れており、逃げるのは
不可能だった。
ナルヴィは死を悟り、その場から動かず目を瞑って顔を逸らした。
ところが、不意に体が宙を浮く様な感覚に襲われて思わず目を開いて
しまう。
見ると、あの異形の怪物に掴まれていた。
それも無駄に力を入れず、傷つけず潰さないように。
新種のモンスターは口から腐食液を吐き出すも、異形の怪物が
前に翳した左手から太陽の如く燃えている円形の盾を作り出し、
腐食液を焼滅させ、更に驚異的な脚力で接近すると、その盾を
新種のモンスターに押し付け始めた。
凄まじい熱を帯びているようで新種のモンスターに触れた瞬間、全身が
燃え上がった。
『了解。オートタイタンモードに移行します』
異形の怪物の胴体が何と扉の様に開き、中から人間が出てきた。
ナルヴィが状況を飲み込めず硬直していると、自身を掴んでいた手が
開いて、近付いてきたその人間に抱き抱えられる。
「え?え!?ちょ、ちょっと...!?」
『大丈夫、危害は加えない。BT、頼んだ!』
『了解』
「喋ったぁ!?」
BTと呼ばれた異形の怪物が言葉を発した事に驚くナルヴィ。
声で男だとわかった人物は、そんなナルヴィを抱き抱えながら
手の上から跳び上がった。
常人では有り得ない様な跳躍力で、男は被害が及ばない所へ着地し
ナルヴィを下した。
『負傷は?』
「い、いや、大丈夫...ですけど...」
『よかった。BTは紳士的だけど女の扱いには慣れてないから』
『皮肉を検知』
『はは...』
BTからの返答に乾いた笑い声を出した男はナルヴィの震える手を
見た。
あの時、死を覚悟していたので、生き延びた反動によりその恐怖心が
今になって襲って来たようだ。
すると、男は徐に被っているヘルメットを脱ぎ始め、その素顔を
晒した。
男、というよりも正体は中性的な少年だったのだ。
7:3分けにした白い髪を頭部の右側だけ刈り上げ、頬には爪痕らしき
深い傷跡が残っている。
ナルヴィはその赤い瞳に見据えられ、何も言えなくなっていた。
詰まる所、見惚れたようだ。
「もう大丈夫。君は生きているんだ。
あの気色の悪い虫共は僕が全滅させる。
...信じて。」
ナルヴィの手を握りながらそう宣言する少年は、優しく微笑んでいた。
一方、当のナルヴィは頬を染めてまた何も言わず、頷くだけだった。
少年は手を離すとヘルメットを被り直し、大きく深呼吸をしてから
BTの元へ駆け出す。
「あ...!」
ナルヴィは握られていた手を伸ばし、引き留めようとするも既に
少年は背負っていた武器で襲い掛かって来る新種のモンスターを
怯ませながら突き進んで行った。
伸ばした手を下ろそうとした時、その手を誰かが掴んできた。
アリシアだ。隣には剣を構えているクルスも居る。
「ナルヴィ!今すぐに避難しましょう!」
「あ、は、はい...」
「お前、さっきの奴と何か話してたのか?」
「え、えっと、その...信じて、って...」
それだけしか言えなかったのは、その言葉のみが耳に残っていた
からだった。
アリシアとクルスはその意味を理解出来ず、顔を見合わせて
首を傾げた。
本来の会話の意味を伝えられず終いとなったが、ナルヴィは気にせず
少年がBTの肩に着地しようとしている一部始終を見ていた。
新種のモンスターに囲まれているにも関わらず、少年とBTは
怯む事なく倒し続けていく。
『バーストコア、スタンバイ!』
『了解。搭乗を推奨します』
少年は新種のモンスターを1体倒すと、開かれた箇所からBTの
内部へ入り込んだ。
操縦席のコントロールスティックを握り締め、モニタディスプレイに
表示されているバーストコアのコマンドを押す。
『バーストコア・レディ』
BTが承認したと同時に、20mmオートライフル「XO-16」のマガジンを
装填。
先程とは比較にならない程の射撃で銃口から火を噴いた。
周囲を囲んでいた新種のモンスターは瞬く間に消滅し、次の狙いとなる
壁を這う個体も文字通り瞬殺していく。
やがて射撃の勢いが弱まっていき、残る数体を残してマガジンの弾丸が
尽きた。
素早くリロードをしたBTは照準を合わせようとする。
だが、新種のモンスターの前を横切る影を見て咄嗟に銃口を頭上へ
上げた。
モニターを拡大してみると、美しい金髪金眼の少女や灰色の髪をした
左頬に入れ墨を入れている狼人が残った新種のモンスターを倒して
くれていると確認する。
『後は任せて...僕らは怪我人の救助に当たろう』
『了解。パイロット、こちらへ接近してくる3名を確認』
『じゃあ、挨拶をして救助を申し入れようか』
少年は開かれたハッチから飛び降りる。
BTが気を遣って屈んでくれていたので、足に負担は無く着地した。
顔を上げた少年の前にはフィン、リヴェリア、ガレスの幹部である
3人が対峙していた。
どうやら警戒はしているようで、武器をすぐにでも使える様に
持っている。
それならと少年は再びヘルメットを外し、背負っている武器を地面に
置いて両手を見せながら敵意は無い事を示した。
『負傷者を運ぶ事くらいしか出来ないが、救助活動を申し入れたい。
僕はヘスティア・ファミリア所属のベル・クラネル。
後ろに居るのは相棒のBTだ』
『初めまして、私はBT-7274。
正式なシャーシ番号はBRAVO・TANGO 7・2・7・4です』
「喋っただと...!?」
屈んだ状態で自己紹介をするBT。
どうやら、鎧か何かと思っていたリヴェリアが一番に驚いて
目を見開いていた。
フィンとガレスも最初は驚いていた様だが、すぐに興味深そうに
BTを見始める。
「ほぉ、これはまた...お主の予想を上回る代物のようじゃ」
「まったくだよ。すまないね、つい失礼なマネをしてしまって。
救助の申し入れを喜んで承諾するよ」
『いや、気にしなくていい。慣れてる方だからな...
そういえば、そちらの所属と名前は?』
「あぁ、すまないね。僕はフィン・ディムナ。
ロキ・ファミリア所属で団長を任されているよ」
『ロキ・ファミリア...そうか。まぁ、ここまで降りて来られるファミリアも多くはないから、驚く事でもないか。』
「まぁ、そういう事じゃな。っとと、ワシも名乗らんとな。
ガレス・ロックじゃ。若造、大した腕だな。
BTじゃったか?お主の健闘ぶりも目に焼き付けたぞ」
『私とパイロットであれば向かうところ敵なしとなります。
何度か敵なしになった事があります』
「ハッハッハッハッ!そうかそうか!
それなら納得しなければのう」
豪快に笑うガレスにつられてフィンも控えめに笑みを浮かべていたが、
ふとリヴェリアの姿が忽然と消えた事に気付き、周囲を見渡した。
そして、BTの舐める様に観察しているのを見つけた。
「どういう事だ...
鎧でもなければゴーレムでもなさそうだが...
一体、どうやって動いているんだ...?」
『私はバッテリーを動力源とし、2万5千パーツで駆動しています。
しかし、この次元では魔石で動く事が可能となっており、それを説明するのは現在の所不可能です』
『そういう事で、話は一度そこまでにして負傷者を運ばないといけないんじゃ?』
「っ、あ、ああ。そうだな、すまない...」
そうして話し終えた頃、新種のモンスターを倒し終えたようで
静寂が訪れたとフィンは気付く。
散り散りとなった団員達を集合させ、18階層へ避難すると
指示を出した。
ベルやBTの事は一先ず救援に来た冒険者とだけ伝え、板状に木を並べて
簡易的な担架を作り、負傷者を運べるようにも指示を出す。
担架を作る作業を手伝っている中、ベルに駆け寄ってくる1人の少女の
姿があった。
「あ、あの...さっきは助けてくれて、あ、ありがとう。
ベル・クラネル、でいいんだよね?」
『ああ。君は?』
「私はナルヴィ・ロールだよ。その...
君、すごく強いんだね。私、あの時はもう諦めちゃってたけど...
BT?にも感謝してるよ。本当に...」
『君みたいな可愛い女の子がピンチになっていたら、必ず助けるよ。
だから気に病む必要はない』
「...う、うん...
そ、それじゃあ、本当にありがとうね!」
ナルヴィはそそくさとベルから離れていく。
その表情は明らかに気があると思われるのだが、ベルにはそれが
わからなかったという。
「あれ?ナルヴィ、どうかしたんっすか?」
『いや、僕にもさっぱり...ところで、僕に何か用でも?』
「あ、あっちの方が先に完成したので、BTさんに運んでもらうっすね」
『了解。揺れるのは勘弁してもらうよう言っておいてほしいな。
デカい分、動きも合わせてデカいから』
『皮肉を検知』
「ははは」
「...(な、仲良しではあるんっすね...)」
惑星群 フロンティア出身のベル・クラネル。
6-4所属のタイタンのパイロット。
ゲーム本編と異なるBTと共に無事に帰還したエンディングを迎え、6-4に所属しフロンティアの自由のために戦い続けていた。
しかし、アークの残留エネルギーの爆発に巻き込まれた事でダンまち世界へと異世界転移してきた。
これも続きは書きません。