【俺にとっては朗報】家に戻ったと思ったら超絶美女と同衾してた件について【おまいらにとっては悲報】   作:クラウディ

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海回





服屋にて

「あらぁ~ん♡ やっぱり写真で見るよりもかわいいわねぇ~♡」

「「「「…………」」」」

「あらん? どうかしたのん?」

 

「今度の土日に海に行かないか?」そう言ってきた青年に案内された服飾店にて、鍾離達は混乱の境地にあった。

 

眼前に立つのは、筋肉の塊とも表現できる頑強な肉体を袖の先から惜しげもなくさらし、時折それは彼女……彼女?の歓喜に呼応するように「ピクピク」と痙攣している。

そんな歴戦の戦士とも形容できる肉体を備えているにもかかわらず、その服装は華やかな少女が着るようなロリータ調な服である。

そして、それらの要素を差し置いて一番正気を削り取ってくるのは、その峡谷のように彫りの深い顔。

ギャップ萌えなんて軽く通り越し、ハッキリ言えば「情報の暴力」であった。

 

「あー、この人は俺がよく覗いてるネット掲示板のスレ民である『スケバンネキ』……の働いてる店の店長さん。今回の海水浴に行くための水着を作ってくれるんだってさ」

「そ、そうか……それは、ありがたい、ことだな……」

 

全員が固まってしまったことに気まずそうな表情で説明を付け加えたのは、彼女らを引き合わせた青年である。

青年は異世界からの来訪者である鍾離たちを受け入れ、彼女たちのことをネット掲示板の住人たちに相談しながら、目的もない現状を何とかしようとしていた。

そんな時にふと海へ行こうということが思いついたのである。

そのことを鍾離達へと話した青年であったのだが、とあることが脳裏によぎったのであった。

 

――「あれ? 鍾離達の水着どうすりゃいいんだ?」と。

 

「水着」……それは海水浴をするためには欠かせない特殊な衣服。

世の中には着心地、伸縮性など機能だけで選ぶ者もいるのだが、鍾離達と接してきた青年からしてみれば、「いや、皆にはできれば喜んでほしいし……」と、無自覚な独占欲を出していたのだ。

確かに世の中には機能性だけで選ぶことはおろか、普段着で泳ぐ者もいる。

だが、正直言ってそれでは風情がない以前に、自分を好いてくれている女性にそれをさせてしまうのは男としてみっともない。

そう考えた青年は、持てる伝手(ネット掲示板)を活かして、なんとか水着を作ってもらえる相手を見つけたのだ。

 

 

 

それが、目の前に立つヘラクレスと見まごう程の巨人であった。

 

 

 

容姿に関しては前述している。これが店の扉を開けた途端現れたのだ。

誰だって\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!(正気度喪失からの運命のダイスロール)である。

いくら異世界の大国を収める七神といえども、節穴(リハク)みたいになるのは必然であった。

 

「…………(目を閉じてこれは悪い夢だと心の中で何度も繰り返している)」

「お、大きいわね……千代と腕相撲しても勝てそう……」

「は、陽? この人は本当に神の目を持っていないの……?」

「残念ながら持ってないらしい。魔神でもないらしい。いやなんでこんなすげぇ人いるんだか……」

「あらん? 怖がらせちゃったかしらん? ごめんね~。乙女を磨いてたらこうなっちゃったの~」

 

「磨いてるのは漢女(おとめ)だろっ!」そう言いたくなった青年であったが、そこはかみ殺してことを進める。

 

「と、いうわけで、この店長さんとスケバンネキが水着作ってくれるとのことなので、頼んだ店長さんとスケバンネキ」

「任しときな。最高の仕事をしてやるよ」

「うふふ♡ 腕が鳴るわね~♡」

 

ココアシガレットをかみ砕きながら獰猛に笑った長身長髪の女性――「スケバンネキ」と、コキッコキッと肩を鳴らしながら笑みを深める店長。

見方を変えればアビス教団のような悪の組織幹部かと思われそうだが、その実態は街の片隅で服飾店を営んでいるただの店員とその店長である。

 

「……よろしく頼むぞ店長殿」

「はぁ~い♡ 1名様ごあんな~い♡」

「じ、爺さん!? 本当に行くつもりなの!?」

「そうおびえるなバルバトス。この方には悪意がない。それに、私と陽天、そして彼女との間には『水着を作る』という契約が結ばれている。契約の神として、契約をなかったことにはできない」

「そうだったっ! こいつ契約バカだったッ!」

 

「畜生ッ!」と言わんばかりに自ら死地(採寸部屋)に赴こうとする鍾離の背中を見送るウェンティ。

確かに、「契約」を掲げる神として契約を破るのはいかがなものかと思うが……まぁ死ぬことはないので大丈夫だろう。

 

そんな感じの一幕があった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

案内された採寸部屋で鍾離はある種、生きてきた中で久方ぶりと言っても過言ではないほど、心を虚無にしていた。

 

「鍾離ちゃ~ん? きつくないかしら~?」

「……いや、そのようなことはない」

「うふふ~♡ それならよかったわ~♪ 早く終わらせて陽天君に見せてあげないとね?」

「……そう、だな」

 

口癖のように「うふふ♡」と言いながら、目を見張る手際と繊細さで採寸していく店長。

なるほど、こじんまりした店とはいえ経営が続けられるほどの技術と実績はあるようだ。

 

採寸部屋に入る前にあった、モデルとなる服がマネキンに着せられて置かれている店頭。

そこに置かれていた服たちは素材もそうだが、「天衣無縫」と言わんばかりの綻びの無い出来だったことから大体は察せられる。

 

「物や技術が多く流通する璃月であっても、これほどの物は早々お目にかかれるものではない」と、神である鍾離からしてもそう思うほどだった。

そして、店長自身の外見からしてのインパクトの強さと、その心は上質な霓裳花(げいしょうばな)で織られた絹以上に繊細で丈夫だ。

どこまで行っても俗人である陽天と接してきた鍾離であるからこそ、相対する人の機微には聡い。

 

先程の気圧されていた態度は、ただ単純にすさまじいまでの情報量の塊と表現できる店長と出会ってしまったからだ。

 

肉体はテイワットにいた頃の部下――「浮舎」と同等……いや、それ以上の巨大さを誇り、それに対し心はそこらの貴女なんかよりもずっと乙女である。

 

こんな明らかに食い違っている情報が一度に襲ってきたのだ。

気圧されるのが普通である。

 

もっと言えば、時折見える服に隠されていた、素肌に浮かぶ「傷跡」。

それを持っている店長には何があったのか。

 

しかし、それを鍾離が尋ねる前に店長から切り出された。

 

「うふふ♡ やっぱり神様と言っても、同じ生きている存在で……一(・)人(・)の(・)男(・)の(・)子(・)に(・)恋(・)す(・)る(・)乙(・)女(・)なのね~。……昔の私とは違って、力もあるけどすっごく乙女でいられた。受け止めてくれる存在がいた……」

「……店長殿は、なぜそのような肉体を持っているのだ?」

「うふふ。それだけじゃ言葉が足りないわよ?」

「……店長殿はこの地球に住む一人の女(・)性(・)であるはずだ。私たちのいたテイワットのように女にも力がいるほどではない。……それほどの肉体を有しているのは、却って人から避けられてしまうのでは……?」

「そうね……。少しだけ昔話をすることになっちゃうわね」

 

そう言って店長は、採寸する手を止めないながらも自身の過去について話しだした。

 

「私の家は武家の家。それはこの現代であっても変わらない。言ってしまえば、頭の固い人たちがまだ自分は必要なんだと誇示したいがために続いた家ね。男が強いだの女は弱者だの、そんなことばっかり口にするような嫌な家。そんな家に、私は生まれたの。……とてつもない力を持ってね」

「……それがその肉体、か……」

「そうね。幼いころはここまでじゃなかったけど、それでも大人を投げ飛ばしたり、丸太を担いだりすることができるくらいには人間離れだった……。田舎で育ったその時の私は常識が分からなかったけど、学校に通い出してから自分がおかしいことに気づいたわ」

 

――「天性の肉体」と言えば聞こえはいい。

 

だが、その実態は明らかに人間ではない過剰なまでの力を持ったバケモノ。

これが妖怪などが蔓延り、英雄的力を持つ人が求められる時代だったらどれだけ喜ばれたことか。

 

しかし残念ながら、時代は現代。

それも戦争を経験し、戦うことを忌避するようになった国に生まれてしまえばさもありなん。

 

そこにいるのはバケモノだ……ということになる。

 

「いじめばっかりだったけど、仕返ししたら自分の力が強すぎて相手が被害者。一方的に私が悪くなってしまうわ。それなのに、家の人たちは戦うことしか教えてくれない」

「だが、今ここにいるということは……」

「ええ。逃げ出したわ。逃げて逃げて、山の中でずっと泣いたの。『なんでこんな力を持ったんだ』『私はバケモノなの』って」

「っ……!」

 

あまりにも悲痛な言葉に、鍾離は口を開けなくなる。

せめて時代が違えば……せめてもっと別の力があれば……こうはならなかっただろう。

鍾離自身、自分は人ではなく神だと定義しているが、もし自身が封印した渦の魔神のように人々から恐れられる存在となったら……。

想像することすら忌避するべきことだ。

 

――だが、鍾離には守るべき人がいたように、店長にも自身を変えてくれた人がいたのだ。

 

「でも、そんな時に私を引き上げてくれた人がいたの」

 

『ヘーイお嬢ちゃん! 俺っちとランデブーしない?』

『え?』

『レディの泣いてるフェイスは見たくねぇんだ! 今がバッドなら俺っちの愛車でドリームの彼方までテイクオフしようぜ!』

 

「言葉は滅茶苦茶だったけど、それでも私を変えてくれたすごい人なの。それこそ……恋に落ちるほどね……」

「そうか……」

「うふふ♡ そんな人が鍾離ちゃんにとっての陽天ちゃんみたいなのかもね? さぁ! 採寸は終わったわよ! 水着、楽しみにしておいてね?」

「……ふふっ、感謝する店長殿」

「殿なんて堅苦しいわよ~。気軽に店長でいいわ?」

「本当に感謝する店長。楽しみにしている」

「は~い♡ 次はウェンティちゃんよ~」

「僕、これが最後じゃないよね……」

 

そんな言葉を背に、採寸部屋を出る鍾離の顔は、非常に晴れやかなものだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

それから数日後……。

 

「せいっ!」

「せりゃあっ!」

「はぁっ!」

「影!」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「おいイッチ! 流石に下がれよ!」

「なんでビーチバレーで大砲みたいな音なるんだよ!?」

「ゲームってレベルじゃねぇぞオイ!」

 

 

 

「あの……」

 

 

 

「バルバトス! もっと高く上げろ!」

「無茶いうなよ爺さん!」

「姉さん私が受けます!」

「お願いね影!」

 

 

 

「その……」

 

 

 

「待て待て待て!! それ以上はアカンッて鍾離さぁん!?」

「雷落ちてるんですけど!? 突風どころじゃない風吹いてるんですけど!? 空晴れてるのに!!」

「収拾つかねぇぞこれ!」

 

 

 

「…………どうしてこうなったんやろなぁ……」







※後書き※

筆全然乗らねぇや……ブランクデカすぎんだろ……。





※登場人物紹介※

・イッチ
鍾離先生達と店長を引き合わせた張本人
皆が採寸されてる間、オフ会で何をするか掲示板の皆と考えていた
次回かわいそうな目に会う人ナンバーワン


・店長
過去がクソ重いけど、ファンキーな人に救われた頂上生物。
腕は確かだけど顔がやばい。
優しいんだけど顔がやばい。
作ってくれるのもすごいんだけどやっぱりやばい。
そんな人だけど人生謳歌してます。


・鍾離先生たち
店長の過去話とか踏まえていろんな話ができた。
店長とは友人になれて、結構うれしい。
次回、かなーりやばいことを起こす面々である



色々とあったけど頑張っていこうと思ってます。

感想や高評価、ここすき等などたくさんしてもらえると私のモチベーションが爆上がりします!

それでは皆様、また次回~

(・ω・)ノシ




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