【俺にとっては朗報】家に戻ったと思ったら超絶美女と同衾してた件について【おまいらにとっては悲報】 作:クラウディ
(頭が)最っ高にハイってやつだぁ!
1:仙衆夜叉の陽天
このスレは俺こと「仙衆夜叉の陽天(またはイッチ)」が出会った異世界からの来訪者に関しての相談をするスレである
荒らしは全スルー(もしくは俺が報告する)
初見さんは歓迎しよう!盛大にな!
ノリにノルのはおk(でも度が過ぎないように)
まとめるのはツンデレニキとスレ民に任せた
そんな感じのアットホームなスレでイクゾー!(デッデッデデデデ! カーン! デデデッ!)
↓事の発端スレ
【俺にとっては朗報】家に戻ったと思ったら超絶美女と同衾してた件について【おまいらにとっては悲報】
と、いうわけで二人とピクニック行ってくるわ
(目元に規制線の入ったおそらく「仙衆夜叉の陽天」と思われる男性のそばでこちら側を不思議そうに見る鍾離とウェンティの写っている画像)
2:名無しのネット民
おうこら
3:名無しのネット民
待てやイッチ
4:名無しのネット民
またいきなり1レス目で爆弾投下するんじゃないよ
5:名無しのネット民
今度はピクニックかぁ……
6:名無しのネット民
もう怒りがわかなくなってきたゾ……
7:仙衆夜叉の陽天
いやまぁ、鍾離が来てからちょうど1週間経ったもんで気晴らしにちょっと近場の山に行こうかなって思ったわけなんだよ
もちろん二人を連れて
8:名無しのネット民
裏山
9:名無しのネット民
裏山
10:名無しのネット民
裏山スィ
11:仙衆夜叉の陽天
……なんか元気ないなお前ら
12:名無しのネット民
仕方ねぇだろ
今日平日だぞ
13:名無しのネット民
あじぃ……なんでこんな時に現場に出なきゃなんだよ……
14:名無しのネット民
社内のワイ、クーラーついてるけど仕事の量がやばすぎて気絶寸前
15:名無しのネット民
スレ見んな仕事やれ
16:名無しのネット民
鬼畜ゥ……
17:名無しのネット民
夏休み入ったばかりのワイ、課題を夏休み始まって数日で終わらせたもののボッチでPCとにらめっこしてる
18:名無しのネット民
学生はいいなぁ……
19:名無しのネット民
年とると体にガタが来るもんな……
20:名無しのネット民
もう歳か……
21:名無しのネット民
全員死に体で草
俺もや(クーラー壊れたバイト先で大勢の客さばいてる)
22:名無しのネット民
ワイも(海の家でバイトしてる。水着のきゃわいい子が店に来るけど大抵彼氏持ち)
23:名無しのネット民
ワイも(農業やってる実家に帰省したら半ば強制的に手伝わされてる)
24:名無しのネット民
ワイも(イベントのファイヤーダンスに出演してる)
25:名無しのネット民
ワイも(一人暮らしで電気代節約するためにクーラー切って窓全開)
26:名無しのネット民
ワイも(日中は海水浴場のライフセーバーやってて、夜には親父の手伝いで漁に出る予定)
27:名無しのネット民
ワイも(クソ暑いのに激辛料理完食しに行こうとダチに誘われた。拒否権はなかった)
28:名無しのネット民
はえー大変なんすねー(北海道民)
29:名無しのネット民
人の不幸で飯が美味いなぁ……(避暑地同然の親戚の家に泊まってる)
30:名無しのネット民
おまいらそんな暑いのか?
俺はいい感じだぞ(一面銀世界な場所でフル・フロンタル)
31:名無しのネット民
>>30 おま寒中水泳ニキ
32:名無しのネット民
>>30 普通全裸でも暑いもんは暑いんだよなぁ……
33:名無しのネット民
>>30 もうお前寒中水泳ニキでいいよ
34:名無しのネット民
そういやツンデレニキと評論家ニキはどこ行ったん?
35:名無しのネット民
そういや全然いないな
誰か知ってるか?
36:仙衆夜叉の陽天
>>35 ツンデレニキは南半球に特別な事情で出張
評論家ニキは海外のなんかすごい展覧会に呼ばれたらしいゾ
37:名無しのネット民
へー……ん?
38:名無しのネット民
いやちょっと待てイッチ
流しそうになったけどなんだその情報
39:名無しのネット民
ツンデレニキはまだいいとして……いや、ツンデレニキもおかしいけど、評論家ニキそんなすげぇやつなの?
40:名無しのネット民
叫ぶ気力もないから流しそうだったけど……それもそうだな
41:名無しのネット民
おら吐け
42:仙衆夜叉の陽天
>>41 おけ
まず、このスレを鍵付きにするか云々の話を前回しただろ?
それの試験運用的な感じにツンデレニキと評論家ニキにDM送ったんだ
43:名無しのネット民
ほうほう
44:仙衆夜叉の陽天
そしたらこれ送られてきた
(「奇妙な運命に絡められた少年へ」というコメントが書かれた幻想的な鍾離とウェンティのイラスト。その下に流れるような「向井」という評論家ニキの名前らしきサインがあった)
45:名無しのネット民
はえーきれいやなぁ……
46:名無しのネット民
へー、評論家ニキ、絵描けたんか
47:名無しのネット民
いや綺麗だなぁ……
リアリティというか、そもそものモデルが芸術品だったけど、アニメみたいな二次元的表現で描かれてて素直にすげぇ
48:名無しのネット民
言葉も変態的にうまくて、絵も変態レベルでうまいとか、現代のダヴィンチかよ
49:名無しのネット民
はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!?????
50:名無しのネット民
>>49 どうした急に
51:名無しのネット民
>>49 いきなり長文打つなよ
52:名無しのネット民
>>49 なんなんだテメー
発情期かってんだ
53:名無しのネット民
>>49 来月にウ=ス異本が発売されるからあと一か月は待て
54:名無しのネット民
いやいやいやいや!! お前ら向井さんを知らねぇのかよ!?
55:名無しのネット民
知らん
56:名無しのネット民
ネット掲示板に引きこもってて、タイトルが面白いやつにしか行きそうにないやつらが世間を知ってると思うな
57:名無しのネット民
>>56 それ胸張って言えることじゃねぇだろ
58:名無しのネット民
調べてみるわ
59:名無しのネット民
俺も
60:寒中水泳
俺はどうしたらええんや……
61:名無しのネット民
>>60 泳いでろ
62:名無しのネット民
>>60 ヨツンヴァインになるんだよ
63:名無しのネット民
>>60 冷やし土下座でもやっとけ
64:名無しのネット民
>>60 ペンギンと友達になればいいんじゃね?
65:名無しのネット民
>>60 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を作る
66:寒中水泳
>>61 >>62 >>63 >>64 >>65
おk全部やるわ
ペンギンは数キロ先に見えるから早速行ってくる
んじゃ
67:名無しのネット民
ちょww
68:名無しのネット民
マジかよww
69:名無しのネット民
狂ってるww
70:名無しのネット民
マジに南極にいるのか……
71:名無しのネット民
「寒中水泳ニキ、南極在住説」が立証されたな
72:名無しのネット民
その代わり「寒中水泳ニキ、クトゥルフ神話生物説」が発掘されたんだけど……
73:名無しのネット民
神話生物でもあんなに狂ってないゾ
74:名無しのネット民
神話生物より狂ってる言われる寒中水泳ニキisナニモン?
75:名無しのネット民
ニャルの生まれ変わりとか?
76:名無しのネット民
どっちかというなら探索者側だろ
77:名無しのネット民
稀によくあるやつな
78:名無しのネット民
ハイハイ脱線してるぞ
捜索班、見つかったか?
79:名無しのネット民
>>78 見つかった
80:名無しのネット民
>>78 ヤバい(マジ)
81:名無しのネット民
>>78 これ見てみ
(海外のとある場所で開催された大規模な展覧会の動画。その展覧会最高の栄誉を獲得した作品の作者として「ムカイ」の名が呼ばれた)
82:名無しのネット民
は?
83:名無しのネット民
えちょ
84:名無しのネット民
うっそだろお前ww
85:名無しのネット民
速報「評論家ニキ、世界の向井だった件について」
86:名無しのネット民
マジか!?
87:名無しのネット民
世界の向井とか俺みたいなネットの底辺ですら知ってるやつじゃねぇか!?
88:名無しのネット民
なんで評論家ニキ、こんな深層ウェブみたいなところに来たんだろ……
89:仙衆夜叉の陽天
>>88 本人曰く「新たな性癖を感じ取ったからだよ」とのことだ
90:名無しのネット民
ファーwwww
91:名無しのネット民
マックスダイソウゲンww
92:名無しのネット民
草に草を生やすな
93:名無しのネット民
いやー、イッチといい、寒中水泳ニキといい、評論家ニキといい、このスレは面白いなぁ!!
94:名無しのネット民
面白いというか、もはやスタンドバトルになり始めてるんだが……
95:名無しのネット民
変人は変人とひかれあう……
96:名無しのネット民
「イ ッ チ の 奇 妙 な 冒 険 ヘ ン ジ ン ・ ス レ ッ ド ・ ラ ン」
97:名無しのネット民
凪木先生に怒られるぞ
98:名無しのネット民
おいイッチ
もうお前鍾離さんとウェンティちゃんの写真投稿するだけのbotになれよ
99:名無しのネット民
いや、イッチがいるからこそこのスレは面白いだろ?
100:名無しのネット民
それもそうだな
101:名無しのネット民
これはお前が始めた物語だろ?
102:仙衆夜叉の陽天
話ずれそうだから戻すゾ
というわけで俺は今から美女と美少女侍らせて山登るわ
103:名無しのネット民
氏ね
104:名無しのネット民
見せつけてんなぁオイ
105:名無しのネット民
ケッ、幸せにしてやれよな
106:名無しのネット民
>>105 おまツンデレニキ2世
107:名無しのネット民
優しい
108:名無しのネット民
優スィなぁ……
109:名無しのネット民
実際、俺たちが変われって言っても実際に変わったら幸せにはできないと思う
110:名無しのネット民
それな
111:名無しのネット民
ほんそれ
112:名無しのネット民
初見です。噂の異世界スレはここですか?
113:名無しのネット民
お
114:名無しのネット民
初見さんだ!
115:名無しのネット民
丁重に囲って、洗脳しろ!
116:名無しのネット民
安心しろ
安心しろよ、花京院
私たちは友達だ……
117:仙衆夜叉の陽天
初見さんいらっしゃい
このスレは俺ことイッチの周囲で最近起こった出来事を相談するスレであり自慢するスレだ
荒らしは即刻BAN、主張するのはいいけどやりすぎないように
俺をけなすのはいいとしても、異世界からの二人をけなすのは絶対に許さないからそのつもりで
118:名無しのネット民
分かりました
119:名無しのネット民
礼儀正しそうな初見さんが来たな……
120:名無しのネット民
もし荒らし云々とか愉快犯だったら俺らの力が火を噴くからな
121:名無しのネット民
俺たちの力が火を噴く前にクーラーが煙を吹くだろ
122:名無しのネット民
HAHAHAHAHAHA!!
123:名無しのネット民
やかましいわ!
124:名無しのネット民
と、こんな感じのスレだ
気楽に行こうや
125:名無しのネット民
ってか、こんなスレ見なくてもリア友とかき氷食いに行ってもろて(善意)
126:名無しのネット民
友達にハブられたのでここ来ました……
127:名無しのネット民
悲しいなぁ……
128:名無しのネット民
同志よ……
129:名無しのネット民
俺たちがついてるぜ……
130:仙衆夜叉の陽天
まぁ、それはそれとして(デビルマーン!)
この光景見てもろて
(戦場もかくやと言わんばかりに荒れに荒れた敷地を映した画像)
131:名無しのネット民
ワァオ……
132:名無しのネット民
戦場の跡地かな?
133:名無しのネット民
うわぁ……地盤めくれあがってんじゃん
134:名無しのネット民
木が根元からへし折れてら……
135:名無しのネット民
え、なにこれ
136:名無しのネット民
>>135 初見君か?
これがイッチのそばにいる二人の美女がキャットファイト(ラグナロク)した結果だ
137:名無しのネット民
改めてみても規模がイカレテんな
138:名無しのネット民
実際に見てみるとここまでひどいとは
139:名無しのネット民
これがイッチを取り合っての結果とかマ?
規模がデカすぎんだろ……
140:名無しのネット民
神の戦いは異世界でもヤバいんやな……
141:仙衆夜叉の陽天
あ、そうだ(唐突)
2人が全力出したら日本が真っ二つになるかもしれへんのでそのつもりで
142:名無しのネット民
え、なにそれは
143:名無しのネット民
初耳情報を投下するな
144:名無しのネット民
こっちの神も大概だけど、テイワットの神である二人は、片方戦神で片方それに食らいついてるからね
145:名無しのネット民
えぇ……
146:仙衆夜叉の陽天
何と二人曰く、「鍾離は自身と同じ神という格に分類される『魔神』を岩の槍ぶん投げて封印し、その跡地が沖合に浮かぶ大きな島となった。ウェンティは、モンドという国を拓くために、邪魔な岩や山々を風で吹き飛ばし、海洋に浮かぶ島々を造った」そうな
147:名無しのネット民
ふぁー……
148:名無しのネット民
規模がやばすぎるんディスが……
149:名無しのネット民
日本壊れるでこんなん
150:名無しのネット民
うっそだろお前
151:仙衆夜叉の陽天
他には、海洋隣国「稲妻」の神は、その無想の一太刀で島もろとも魔神を両断したそうな
152:名無しのネット民
……うん、死ぬなよイッチ
153:名無しのネット民
神様に挟まれて巻き込まれる云々より、外的要因で死傷するのが一番ヤバいなこれ……
154:名無しのネット民
イッチ、強く生きろ……
155:仙衆夜叉の陽天
おけ丸水産よいちょまる
ほな言ってくるで~
156:名無しのネット民
……行ったな
157:名無しのネット民
熊とか出てきませんように……
158:名無しのネット民
割とマジで日本の危機だからな
159:名無しのネット民
イッチの死=犯人もろとも日本滅亡とかシャレになんねぇ……
160:名無しのネット民
イッチの住んでる場所が田舎なのと、こんな場所に情報提供してくれて助かったわ
161:名無しのネット民
最初に知らせていたのが警察とかだったらめんどくさくなってたな
162:名無しのネット民
あんなん周りに警備兵たくさん置かれるで
163:名無しのネット民
あれ? そういや初見さんは?
164:名無しのネット民
情報量の暴力で耐えられなかったんやろ
165:名無しのネット民
奴には早すぎたんやな……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「~~♪」
「……なぁウェンティ」
「ん~?」
「ちょっと降りてくんない? 流石に暑苦しい……」
「ふふっ♪ 重いとは言わないんだね♪ 流石陽天♪」
「……んでお前は降りないんだな」
「いつでも君を感じていたいからね~♪ ほれほれ♪ ギューッと♪」
「ったく……」
「…………」
大きな入道雲が空に浮かぶ夏真っ盛りの空の下、額に汗を浮かべる青年と鼻唄を歌うほど上機嫌なウェンティ、少し離れて真顔の鍾離が山道を登っていた。
この山道は青年がいつも日課として上っている山で、標高は見上げられるほどに高い。
そんな山をいつもなら、
まず先頭として道をよく知っている青年が、特訓ついでにそれなりの荷物が入ったバックパックを背負って歩き、その後ろから鍾離とウェンティがついてくるという並びで最初は歩いていたのだった。
――そう、『最初は』である。
このメンバーの中では一番小柄で、肉体も鍛えられてるとはお世辞にもいえないほど細く華奢なウェンティは早々に疲労を訴えたのである。
それに対し、青年はどうしたものかと考えていたのだが……そのときウェンティが起こした行動があまりにも鍾離の精神を逆撫でた。
『陽天♪ おんぶして♪』
『……分かったよ』
『やたっ♪』
なんと、自身の大切な存在である陽天に、背負ってほしいと頼んだのである。
これには流石の鍾離も怒りの感情がわく。
ただでさえ、風情というものを全く理解してないことで嫌っていた飲兵衛が、自身の宝物に触れるだけに飽き足らず、彼に媚びるように体を押し付けているのだ。
正直にいえば、即座に反対側の山まで投げ飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、そこは青年がいる手前自重した。
だが……
「~~♪」
「ほんとに上機嫌だなウェンティ」
「当たり前だろう? 君と触れ合えて、君の体温を感じ、君の声を聞いているだけで、僕は溶けてしまいそうなんだ♪」
「ほーん」
「むぅ……こんな美少女に愛を語られて嬉しくないの?」
「……そら嬉しいけどさ。まだ実感がわいてねぇんだよ。俺にとっては鍾離もウェンティもたった数日前に会ったばかりの美女美少女だし、でも、心の奥底では懐かしいような嬉しいような気持ちがわいてる……。だから、余計に実感がわかねぇんだよ」
「ふ~ん? それなら、体で確かめてあげようか?」
「ばっ!? やめろって! 服ン中に手ぇ入れてまさぐんな!」
「ふっふっふっ……ここがええんじゃろ? ここがええんじゃろ? 陽天の家の押し入れにあった、お爺さんが陽天に残した秘蔵本に書いてあったんだ。グイグイ押せばなんとかなるって!」
「クッソあのジジイ! 変なもん残していきやがってぇ!」
「っ……!」
目の前でじゃれ合う二人の姿をみて、心の中にドロッとした『ナニカ』が生まれるのを鍾離は感じとる。
テイワットの七神の中でも一番長く生きてきたがゆえに様々なことを知っている鍾離はその『ナニカ』がどういうものなのかすぐに分かった。
――「これは『嫉妬』だ」と。
自身は
そんな立場であることを自分に言い聞かせる必要がなかった
彼から自身に手を出してくれるならまだ良いが、自身から手を出してはそれはただの卑しい雌だ。
だからこそ、自身は今なお「彼を愛する女でありながら、彼を見守る義理の親」という契約を課していた。
我慢したのだ。
彼がいなくなっても。
我慢し続けたのだ。
それがどうした。
今目の前では、横合いから割り込んできた雌に、彼の隣を奪われかけている。
もし、このまま奪われてしまうなら、今ここで――!
そんな考えが頭によぎったところだった。
「暗い顔してどうしたんだ鍾離?」
「……え?」
「いや、『えっ?』ってどうしたんだよ鍾離。疲れたのか?」
「い、いや、バルバトスはどこへ行ったのかと思っただけだが……」
「ウェンティなら、あんまりにもうるさかったんで黙らせた。てきとーにこの無駄にデカイバッグに詰めてみたんだ」
「もがー! もがもが!(ひどいよ陽天!)」
「んで、後ろ振り返ったら鍾離がすっげぇ暗い顔しててな。だから気になって戻ってきた」
「そうか……すまない、心配をかけさせた。早く登ろう」
戻ってきた彼の姿をみたことで、衝動のままに動こうとした体を制止する。あと少し遅ければ、ウェンティを潰していただろう。
そんな、一時的に霧散した激情を彼に悟らせては行けないと、鍾離は足早に先へと進もうとする。
しかし、
「いや、流石にそのまんまじゃダメだろ」
「なっ!? こ、これは!?」
青年が鍾離の腕をつかみ止めたかと思えば、流れる動作で自然に腕を絡み付かせる。
その感触に鍾離は顔を真っ赤にさせて慌て出した。
「腕組んでるだけだろ? そんな驚くか?」
「い、いや! そういうわけではなくむしろ嬉しンンッ! 迷惑をかけるかもしれないから! 出来ればその……離れてほしい……」
「…………フゥ……なら、もっと近づくからな」
「!?」
弱々しく離れてほしいと告げる鍾離の懇願を聞かず、腕に痛みを与えない程度に強く絡ませる。
これには鍾離もたまったものではない。
顔が真っ赤になり、思考回路はショート寸前だった。
「……ウェンティばっかにかまってたからか?」
「……そうだ。私の大切な子であり、愛しい存在なのに、気に食わない飲兵衛がかっさらっている光景を見せられるのはなかなかに心に来る」
青年の問いかけに、隠すことはできないと悟った鍾離は、自分の心のうちにある醜い感情を吐露する。
それはまるで、犯した罪を懺悔する罪人のようであった。
「だから、奪われるくらいなら、と、動きかけたんだ。ハハッ、笑ってくれ陽天。こんな醜い感情を持つ女のことなど」
自分を省みることができた分、その反動も大きい。
自分のことなど、と言い始めた鍾離を見て、青年は動いた。
「そんなんで笑うかよ。むしろ前世でやらかした俺と今の状況を他人事に感じてる俺が原因じゃん」
「え……」
「だから、そんなんで嫌いになるかよってこと。まぁ、好きだって一概にもいえないけど、大切だってのは実感がなくとも、心では確信をもててる。だからさ、そんな思い詰めるなって」
「いや、それでも私は醜い感情を持ったんだ。だから――」
「人間誰しも醜い感情を持つもんだ。鍾離は神様だけど、俺のことが好きっていう『人』になったんだろ? なら、誰だって持つもんさ。この国の神様だって、自分の子供が母親を殺したから、怒って自分の息子を殺したりしたんだ。神様だって醜い感情を持つんだよ。持たないやつは、真性の狂人か聖人だ。俺はヤダだぞ? 俺は普通の人間が好きになりたい。だから――」
「鍾離は大丈夫だよ」
鍾離の目を真っ直ぐに見てそう言い放つ青年。
しばらく山の間を抜ける風の音が吹いていたが、鍾離が噛み殺すような笑い声を上げることで動き出した。
「クフッ、クックックッ、流石に言ってることが滅茶苦茶じゃないか陽天」
「そうか? 良い感じに決められたと思ったんだけどなぁ……」
「告白というには風情がないが、まぁ合格点は軽く飛び越したな」
「そうか……ん? 告白……?」
「なぁ陽天」
「なんだ――」
その瞬間、青年の口をナニカ柔らかいものが塞いだ。
それは暖かく、まるでマシュマロのように柔らかかった。
そして視界には、鍾離の顔がありその距離はとんでもなく近かった。
やがて数秒して柔らかい感触がなくなる。
先程まで、かなりの至近距離にいた鍾離の顔は離れており、チロリと妖艶に唇をなめていた。
そして、青年はようやく理解が追い付く。
「お、おま、お前――!?」
「フフッ、返事はまた今度で良いぞ陽天。私は長く生きた神であり人なんだ。いつまでも待てる。だが――」
「受け入れたときには、絶対に離さないからな?」
夏の熱い風が空にかかった雲を吹き散らし、日射しが火照った顔をさらに熱くさせていく。
そんな日に起きた、ある甘い出来事の記録であった。
※後書き※
TSってのはさ、何て言うか、救われてないといけないんだ……。
※登場人物紹介※
・イッチ
今回はスパダリ要素が強く出たスーパークソニブ仙人となっていた我らがイッチ。
あのあと、鍾離先生の一挙手一投足全てにドギマギするという鍾離先生と出会った当初のピーチボーイっぷりを見せた。
・TS鍾離先生
本作のメインヒロインであり、もう男には戻れないところまで行ったメス堕ちの最高傑作(作者談)。
書いてるとき、かわいくて死にかけました。
・TSウェンティ
今回は当て馬みたいになっちゃった子。
今度、君のメイン会作るからお姉さん許して……。
・寒中水泳ニキ
だんだんと設定とやってるとこが人外じみてきた人。
今回のスレで「クトゥルフ神話生物説」「リアルTRPG探索者説」「野獣先輩説」「地球側の神説」が出てきたよく分からん人。
たぶん金髪アフロで鼻毛真拳使えるやつの仲間であったり、120億事件起こしたやつの魂を継ぐボンッキュッボンッな葦毛の美少女のトレーナーになってるかもしれない。
最近のマイブームは「ダイオウイカの踊り食い」「俺は……鉄火丼隊長……オルカイツカだぞ……」「空を飛ぶペンギンになること」だそうな。
・評論家ニキ
なんかすごい人だということが判明した人。
結構多芸らしい。
これでファンアートもらってもこの人が描いたやつ云々で出しやすくなった。
・スレ民
鍾離先生とウェンティのヤバさにようやっと気づいた人達。
たぶんダ◯ョウ倶楽部の後継者になれるほど譲り合いの精神がある。
こんな時期に熱湯風呂はやらないけど。
めっちゃ手応えあって、我、満足。
お気に入り登録や感想、評価、ここすき等々をしてもらえると、作者のモチベが爆上がりしますので、皆様の応援お待ちしております!
それでは皆様、また次回~。
(・ω・)ノシ