「姉上、本当に許してよかったんですか?」
「勿論よ、だってこの子、面白そうなことをしそうじゃない?」
天照の声と男性の声が聞こえ、俺は目をゆっくりと開けた。
「むっ、起きたようだな」
ゼウスの声が聞こえ、声の方を向くとゼウスと天照、青みがかかった銀髪の美男、黒色の長髪イケメン、そして黄色い衣を身に纏っている者の5人が卓袱台を囲って座っていた。
「起きたらならこっちに来るが良い!」
ゼウスに手招きされ、俺はゼウスと天照の間に空いていた場所に座った。
周りに複数の扉が見えるから、恐らく天照やゼウスと会った空間と同じなのだろうけど、こんな卓袱台なんてなかったぞ?
「ふむ、不思議に思ってるようだな…まずはここの説明をしよう!」
俺が戸惑っているを見て、ゼウスは俺にこの空間の説明を始めた。
「ここはお主の身体の中だ。意外と広いだろう?」
「うん、まぁ…」
ゼウスの言う通り、この空間は俺の身体の中とは思えないほど広い。
「この空間は人々が夢と呼ばれる物を見る時にくる場所…日本語で名前をつけるのならば夢幻空間だな。夢幻空間は人々が寝た際必ず訪れる空間で、この空間では各々が好きな事ができるのだ」
「つまり、今の俺は寝ているということか?」
「その通りだが…今のお主の場合だと、儂と同一化した影響で身体が限界に達し、そして気絶するような形で寝ているという方が正しいな」
数分使っただけで身体が限界に達するとか、神人 『ゼウス』は本当に危険な時に使う方が良さそうだな。
俺が神人 『ゼウス』を今度からは慎重に使おうと決心している中、ゼウスは説明を続ける。
「夢幻空間ではなんでも出来る。試しに何か欲しい物を念じてみよ」
「う、うん…」
ゼウスに言われたとおり、俺はイチゴのタルトケーキを念じてみると、卓袱台の上に無からイチゴのタルトケーキが現れた。
そして、いつの間にか包丁を持った長髪のイケメンが、タルトケーキを六等分に分け、分けたタルトケーキを皿に乗せてフォークと共にそれぞれの前に出して行く。
「このように、夢幻空間はお主の記憶を元に様々な物を出すことができる。そして儂ら神々はお主ら人間の夢幻空間に干渉することができてな、このちゃぶ台というものもお主の記憶から引っ張り出してきたのだよ」
ゼウスは説明をしながら、出されたタルトケーキをフォークを使わず、片手で食べていく。
「さて、この夢幻空間について説明も終わったし、お主にはやるべきことがあるだろう?」
いきなりゼウスにそう言われ、一瞬ハテナマークが浮かんだが、ゼウス以外の神々に謝罪していないことを思い出し、俺は少し下がって神々に向かって土下座をした。
「この度は大変申し訳ございませんでした!」
誠心誠意を込めた土下座。
ゼウスのように怒りを買ってしまう可能性があるが、人間である俺ができるのはこのくらいでしかない。
「なるほど…ゼウスが言っていた通り潔さはあるな」
俺の謝罪を聞き、ゼウスの隣に座っている美男が腕を組みながら呟いた。
「えっと……」
「俺はゼウスの兄である海神のポセイドン…貴様に水の力を分け与えている者だ」
美男がポセイドンだと分かった俺は、冷や汗が止まらなくなった。
ということは、残りの
「あの~…それじゃあ残りのお二人の名は…」
茶を啜っている残りの二人に、恐る恐る名前を聞いてみる。
「私は天照大御神の弟であり、夜を統べる神、月読命だ」
「*****……あっ、言語調整するの忘れていた。改めて…俺は風を司る邪神ハスターだ」
月読命は凛とした、ハスターは少し陽気な態度で自己紹介をしてくれた。
月読命は月読命でヤバいのだが、ハスターという神を見る度、不気味な曲が流れているような気がする。
ハスターのことは知らなかったので、後で調べてみようと思いつつ、恐る恐る3人に質問をした。
「あの、俺が勝手に皆さんを身体に宿したこと…今も怒っています…?」
神々の怒りを再燃焼させる覚悟で、今も怒っているかと聞く。
俺の質問に最初に答えたのは、ポセイドン。
「最初は貴様に怒っていたりたが、俺と同様に怒っていたゼウスが許したのだ…俺も許さないと兄としての顔が立たん」
「姉上が貴殿のことを気に入った以上、下手に手出しはできん。許したわけではないが、私からは何もしないと約束しよう」
「俺は、俺が宿っているのに身体を変形しないお前を気に入った。だから、機嫌を伺うようなことをする必要はないぞ」
ポセイドンに続くよう、月読命、ハスターが自身の考えを発言する。
月読命は許してないようだが、ポセイドンは何とか許してくれたし、ハスターに至っては発言が少し気になるものの俺に対して怒りを感じていない様子だった。
「良かったわね」
いつの間にか追加のタルトケーキを食べている天照が、笑みを浮かべて声をかけてきた。
「でも、これだけは覚えとくのよ?」
「?」
「今回は紫ちゃんの思惑もあったから許すけど、もしこれ以上私達の力を悪用しようものなら、私達は貴方を殺してでも止めるということを…ね」
穏やからな天照の声が、氷のような冷たい声になり、俺は背筋が凍るような感覚を覚える。
それと同時に、これ以上神々の力を悪用しないと心に決めた。