作者のやる気は絶好調だけど文章力は絶不調です。
どなたかやる気アップスイーツならぬ文章力アップスイーツを下さい。
今日も今日とて空は曇天梅雨真っただ中。土砂降りの雨粒が校舎を叩き、多くのウマ娘達が晴れた青空の下で走れない事に憂鬱となっている毎日。
私は相も変わらず平常運転でトレーナーの勉強に励み息抜きにアロマシガーを吸っては軽いトレーニングの日々である。まぁ、最近は主にジムで筋力トレーニングかプールでのスタミナトレーニングばかりなのでやや物足りない事は確かである。
だって私もウマ娘だ。走りたいのは本能の欲求なので仕方ないと諦めるしかない。スズカなんかはそれが顕著で、ここ最近は走れなくて物凄く気分が沈んでいる。私やエアグルーヴが何とかメンタルケアをしているけど、そろそろお天道様が晴れてくれないと文字通りスズカが暴走するかもしれない。
逆にライアンなんかは走れなくてもケロっとしていて、筋トレしてればそれでいいタイプなのか普段と全く変わらない平常運転である。何時も『来てます来てます!筋肉にビビッと来てますよネイチャさん!』なんて言うから梅雨の湿度もあって暑苦しい。
あと、流石に今のスズカをジムに誘わないであげて欲しい。ライアンとしてはジムのランニングマシーンでスズカのストレスを多少は発散出来るんじゃないかとスズカを思っての発言なのは分かるけど、今のスズカはアプリで言うなら絶不調よりの不調なのだ。けど流石にお出かけしても気分が晴れる訳では無い。だってスズカが走るのは先頭の景色が見たいって理由だから…………流石先頭民族だわホント。そりゃエアグルーヴも匙を投げるわ。
「ネイチャは大分紅茶の淹れ方が上手くなったな。もう私より美味いんじゃないか?」
「そんなこと無いですよテンポイントさん。私はまたテンポイントさんが淹れてくれた紅茶が飲みたいですよ。」
「そうか、嬉しい事を言ってくれる。では、次は私が淹れるとしようか。」
そして今日はライアンもエアグルーヴもスズカもトレーニングを休みにしているし、沖野さんはトレーナーとしての仕事があるらしいので今日のお勉強会は無し。
私は久々にゆっくりとした時間が出来たので、生徒会室に来てテンポイントさんと紅茶を飲みながら会話に華を咲かせていた。
ここ最近は話す事はあってもお茶をするほど時間が空いていた訳では無かったので私は楽しみにしていた。テンポイントさんも同じだった様で、いつもより少しお高い茶葉を用意してくれた。
「最近はどうだ?トレーニングの調子は?」
「順調…………とは言えませんね。こう雨が続くと流石に走る事が出来ないので体が鈍りそうで。」
ここ最近は特に土砂降りが続いており、練習場は重馬場を通り越して最早沼である。走れるってレベルじゃねぇ!って感じなので最初は梅雨入りしたばかりの頃は重馬場の練習として雨の中走っていたウマ娘達も諦める状態なので、私もトレーニングの大幅変更を余儀なくされている。
ライアンとの筋力トレーニングばかりではバランスが偏るしプールでのスタミナトレーニングも回数を増やしてみているが、結局バランスの良いトレーニングの根本的解決にはならずモチベーションの維持が難しい。アプリでいう『やる気が下がった』状態になってしまう。
なので、最近は慢性的な不調気味。私自身が考えてたトレーニング計画を遂行出来ず、その所為で頭では理解していても心が不満気味でトレーニングにあまり身が入らない状態なのだ。
「仕方あるまい。気象庁の発表ではもうすぐ梅雨明け間近らしいからそれまでの我慢だろうさ。」
「そうですね。まぁ逆に考えれば、こうして雨音を聞きながらテンポイントさんとお茶するのも良いですね。」
「トレーニングの邪魔をする雨も、見かたを変えれば悪い物じゃないってことかな?ネイチャらしい考え方だね。」
私とテンポイントさんはのんびりと紅茶を口に運ぶ。琥珀色の液体を口に含むと温かみのある味が口を潤し、香りがスゥーっと鼻から抜けていく感覚が心地よい。
ゆっくりと紅茶を嚥下して、私は一息ついた。
「トレーナーの勉強はどうだ?」
「そっちは順調です。最近は脚部発症の病気からウマ娘の骨密度とヒトの骨密度の違いや筋肉量の違い。それらの結果から骨折やヒビ等の故障した際の治療法の違いについて勉強しています。纏めたの見ますか?」
私はそう言って脚元のバッグから最近また新しくなったトレーニングノートとは別の勉強用ノートを取り出してテンポイントさんに渡した。既に5冊目に突入したノートの中身は参考書や論文に載っていたウマ娘とヒトの脚のレントゲン写真の模写とそれぞれを比較した際の違い、そして治療別の経過観察の纏め。
コピー機が使えたらわざわざ模写なんてしなくても良かったんだけど、生憎寮にはコピー機なんて無い。仕方ないので頑張って模写しました。都合ウマ娘とヒトの脚両方合わせて3時間、私としては結構頑張った方だと思う。
「凄いな、ネイチャは絵も上手いのか?」
「嫌ですよテンポイントさん、私なんて模写くらいしか出来ませんし。」
「それでも十分上手いさ。それに見易く丁寧に纏められているしネイチャが真面目に勉強しているのが良く分かる。」
「あはは…………有り難うございます。それにおハナさん、えっとリギルのトレーナーや沖野さんも協力してくれてますから、今までより効率良く勉強出来ている感覚はあります。」
「リギルのトレーナーというと…………東条トレーナーか。確かに、彼女も協力してくれているなら安心だ。」
ノートを私に返しながら、テンポイントさんはそう私に微笑んで来た。そしてテンポイントさんはおハナさんの事も知っているらしい。まぁおハナさんレベルの力量を持つトレーナーなんてそれこそ沖野さんやアニメの南坂さん、黒沼トレーナーくらいしか居ないし当然っちゃ当然なのかな?
「しかし沖野トレーナーか…………ネイチャは大丈夫か?脚とかまた触られてないか?」
どうやら沖野さんに対して、テンポイントさんはまだ不信感が抜けていないらしい。私に沖野さんに脚を触られていないか不安げに尋ねて来た。
「だ、大丈夫ですよ?最近は初見のウマ娘の適正………距離や先行や差しなんかの作戦を見極めるコツとか、個人の長所を伸ばすトレーニング方法なんかを教えて頂いてます。」
私がそう言っても、テンポイントさんはまだ納得していない様だった。実際問題初日の1回以降、無断で沖野さんが私の脚を触った事は無い。うん。サワッテナイヨ?
本当の話。私のトレーニングは私が計画を立ててオーバーワークにならない様にしているが、私はまだトレーナーになった訳では無い。なのでトレーナーの勉強としてちゃんと計画通りの負担量で収まっているか沖野さんにこちらからお願いして触診して貰っている。
勿論、違ったからと言って沖野さんが私に修正したトレーニング計画を渡してくれる訳では無い。負担量が違えばそれを指摘するだけで、何処が違うのか何が間違っているのかは私自身が見つけて修正しているようにしている。
そうしないと、沖野さんは1年でトレーナーが付いている事になってしまって処罰を受けてしまうからね。私もトレーナーの勉強にもなるし問題は無いよ。
だから無断では触っていない。ちゃんと私からお願いして触診して貰っているのだから多分テンポイントさんの言っている事とは違う…………はず?
「それならいいが…………また触られたらちゃんと言うんだぞ?また私が沖野トレーナーとお話してネイチャを助けてやるからな。」
テンポイントさんはそう言って安心したように再度紅茶を口に含んだ。うん、多分テンポイントのお話はOHANASHIだと思うんですよ?
…………絶対今の沖野さんとのやり取りは黙っておこう。
私はそう決意してテンポイントさんと同じ様に紅茶を飲んだ。少しぬるくなってしまったが、それでも美味しいのは使ったのが良い茶葉だからだろう。
相も変わらず雨は止まず、弱まる兆しも無い。生徒会室の窓に打ち付ける雨音をBGMに、そこからは特に変わった話をするでもなく他愛の無い世間話をテンポイントさんと喋り合う。
(あぁ…………幸せだ。)
トレーニングでもトレーナーの勉強の話でも無い。何処の喫茶店の紅茶が美味しかったとか、友達が出来た話とかそんなごく普通の会話…………友達が出来た時は何故かテンポイントさんは凄く嬉しそうだったけど。
まるで今まで私に友達が出来なかったみたいじゃないか…………いや確かに出来なかったんですけどね?
今度ライアン達も連れて遊びに行く約束をした。エアグルーヴは将来生徒会に入るから丁度いいんじゃないかな。今から3人の驚く顔が楽しみだ。
遠くで午後5時を知らせるアラームが鳴っているのが聞こえる。『ウゥゥゥゥゥゥ』って鳴るあの空襲警報みたいなやつである。あの音が鳴ったという事は、名残り惜しいけどテンポイントさんとの楽しい時間も今日はここまで。寮に帰ってトレーナーの勉強をしなければならない。
「ではテンポイントさん、私はこれで帰りますね。」
「もうそんな時間か…………楽しい時間は直ぐに過ぎていくな。まだまだネイチャと話したくて物足りないけども時間なら仕方ないか。」
「トレーニングは休みですけど、トレーナーになる為の勉強は休めませんから。」
残念そうな雰囲気のテンポイントさんに私は苦笑しながら、脚元の鞄を左手で手に取って立ち上がった。ティーカップは何時もテンポイントさんが洗ってくれている。一度私が洗おうとしたのだがテンポイントさんに固辞されてしまった。
何でも書類仕事の息抜きに丁度いいんだとか…………今度また甘い物でも作って来ようかな。
念の為に私は自分とテンポイントさんのティーカップをシンクへと持っていく。流石にこれ位はしないと申し訳無いからね。
「それでは、テンポイントさんお仕事頑張って下さい。」
「ネイチャも脚元に気を付けるんだぞ?濡れていて滑りやすいからな?」
流石にそれは過保護ですよテンポイントさん。私は心配そうにそう告げるテンポイントさんに思わず笑ってしまい、そんな私に釣られてテンポイントさん自身も笑った。
「テンポイントさん、また明日です。」
「あぁ、ネイチャ。また明日な。」
そう言って私は生徒会室の扉をくぐる。最初は怖かったこの扉も今では慣れたもので、尊敬する先輩の居る部屋だと思えば寧ろ視界に入ると嬉しさすらあるほどだ。
私は最後に振り返ってテンポイントさんに手を振って、生徒会室の扉を閉めた。明日はどんな話をテンポイントさんと話すか今から楽しみだ。
因みに。
言霊とは案外バ鹿にならないものの様で、私は傘を差して歩いていた帰り道に盛大につっこけてしまい寮長のモンテプリンスさんに大変呆れられてしまった。
…………解せぬ!
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