第01話
『ウマ娘』
彼女達は走るために生まれてきた。
時に数奇で、時に輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る。
それが、彼女達の運命。
この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果は、まだ誰にも分からない。
瞳の先にある、ゴールだけを目指して…………
『アニメ ウマ娘プリティーダービーSeason2第一話より』
少なくとも、これが
現実で活躍した競走馬達の
仕事で失敗して落ち込んだ時も
職場でパワハラを受けた時も
医者からADHDと診断された時も
そして、療養の為に実家に帰る途中で飲酒運転のトラックに轢かれてしまった時でさえも。
うん…………まぁ、不幸中の幸いなのは痛みを一切感じなかった事だろうか。倒れた俺は徐々に手足の感覚も無くなり、ゆっくりと暗転していく。
暗くなる視界と意識の中で、
そんな口に出すにはいい大人には恥ずかしい思いを抱きながら
はず…………だったのだが
「まさか転生、というか憑依しちゃうってどんだけって話ですかねぇ~」
「まさかまさか、ネイチャさんに憑依?するとは思わないですよ。いやネイチャさん的には一番の推しキャラだったから嬉しいんですけどね。」
まさか、
いざ転生させていただいちゃうと一番の推しキャラのナイスネイチャさんだったので大分頭がパンク寸前な感じなんですよ。
『ナイスネイチャ』
下町生まれの高望みしないウマ娘。自分は脇役と考えているため、過度な期待からはやや逃げがち。そのため、いつも好走止まりである。
下町育ちゆえに生活力は高く、料理や洗濯などは手が空いた時に片付ける。
地元のおばちゃんやご老人に愛される名物少女である。
『公式プロフィールより抜粋』
原作のスマホゲームやアニメでも自分を脇役と感じていたり、同期のトウカイテイオーをキラキラした主人公と言っていたりと、やや後ろ向きなセリフを発言しているナイスネイチャ。
しかしその実誰よりもキラキラが好きで、後ろ向きな発言をしつつも決して勝つ為の努力を諦めない彼女は誰よりもキラキラしていたと思ったトレーナーも多いだろう。かく言う
原作の原作、つまり競走馬としてのナイスネイチャの戦績は41戦7勝、うち重賞4勝という戦績で、総賞金額は6億2,689万円。実はG1馬でアニメでもライバルだったトウカイテイオーよりも賞金額は多い。
ナイスネイチャと言えば、1991年からの三年連続有馬記念三着が有名だ。競馬ファンからも『ブロンズコレクター』『善戦マン』等、三着にゆかりのあるあだ名を聞いた人も多いと思う。
競走馬引退後でも、ネットのファンから『馬主孝行しすぎる馬』等G1未勝利馬でありながらその戦いぶりからG1馬に引けを取らない人気を誇っている。
2022年の引退馬協会によるナイスネイチャのバースデードネーションでは、ウマ娘の影響もあってか寄付金が5410万とG2京都新聞杯の賞金を上回り、JRA重賞勝ち馬存命最高齢の34歳にして実質G2を勝ったと言ってもいいある意味ヤベー馬である。
もう一度言うがヤベー馬である。
決して名脇役で済ませていい馬ではない。
正しく引退馬協会の『顔』である。
頭がこんがらがって大分おかしい事を考えてた気がするが、うん…………大丈夫。
気持ちを落ち着かせる為に一息入れ周りを見れば、上級生らしきウマ娘さん達から遠巻きに温かい視線を感じる。客観的に見れば新入生としてトレセン学園に入学した私は三女神像の前で盛大にずっこけた訳でして。どうやら先輩方からすれば入学して浮かれすぎてこけちゃった新入生に見える様で…………というか実際そのまんまだったんですけどね?
途端にやってくる恥ずかしさ。頬が赤くなっているのを感じながらペコリと先輩方に頭を下げる。あ、手を振り返してくれるんですね。優しい先輩方でよかったです。
「…………さて、これからどうしましょうか」
幸いというべきか、感覚としては忘れていた事を思い出した様なスッキリとした状態であり今までの記憶を忘れてしまった、もしくはナイスネイチャの魂を上書きして消してしまったという状態ではない事。多分ナイスネイチャの魂?ウマソウル?と融合して生まれたのが
もしナイスネイチャの魂を消してしまっていたら多分罪悪感から首吊ってたと思う…………良かった。
そして新たに頭に浮かんだ疑問が
『この世界はどの世界線なのだろうか?』
という事。
チームシリウスがあるのならまずアプリ版の世界線で間違いないという事になるし、沖野さん率いるチームスピカやおハナさん率いるチームリギル、南坂さん率いるチームカノープスのどれか一つでも見つけられればここがアニメ版という事になる。
そして六平トレーナーがいればコミック版つまりシンデレラグレイの世界線という事になる。
「ぶっちゃけ、アプリ版だとキツイ処の話じゃないんですけどー…………」
だってアプリ版はなぜかナイスネイチャのクラシックにカイチョーことシンボリルドルフが出て来たり、スぺちゃん達黄金世代が出て来たりするなどありとあらゆる世代のウマ娘が出てくる群雄割拠、ネームド達の無法地帯なのだ。
ゲームだからまだ納得出来たけど、もしこの世界が
いや情けない限りですけどね?
「さて、うだうだ悩んでないで散策がてら探してみますかぁ」
今日は入学式でHRも簡単に終わり未だ昼すぎである。記憶通りなら各自寮に戻って荷ほどきするようにと教師に言われているが、まぁ確認するだけなら直ぐ終わるだろう。
ベンチ代わりに座ってた女神像の台座から腰を上げ、取りあえず深々と頭を下げる。よくよく考えればかなり不敬だったはずである。
(三女神様が私に何をしたのか、何をさせたいのかは分かりませんが、新しい生を下さりありがとうございます。あと座ってしまいすみませんでした!)
たっぷり10秒ほど頭を下げて、私は取りあえず練習場に向かうことにした。そこに行けば誰かしら先輩方が練習してるだろうし、運が良ければトレーナーを見てどの世界線かが分かるだろう。
トレセン学園校内の地図はHRで貰ったパンフレットに載っているし、ここからでもほぼ一本道だから迷うことも無い…………と思う(ゴルシさえいなければ)
「それじゃ、散策いってみよ~」
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