キラキラの一等星   作:ミヤフジ1945

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何時もはネイチャの本能スピードを聴きながら執筆してるんですが、久々にユメヲカケル(ネイチャver)を聴きながら書いてたらいつの間にか泣いてました。私です。





第19話

 

 

 

ルドルフ先輩とのレースが終わり、私は疲れ果てたまま未だターフの上で倒れこんだまま動けなかった。

荒れた呼吸が肺へと何とか酸素を送ろうとしている。立とうとしても、脚も腰も腕も何もかも動かせない。正しく全身全霊の勝負で負けた。

 

 

(悔しい…………あの時よりもずっと!)

 

 

初めてのレースである模擬レースで負けた時よりもずっとずっと悔しい。あの時よりも成長出来ていたはずだ。トレーニングだって一生懸命頑張って来た。幾ら相手が未来の皇帝シンボリルドルフだろうが、私に対してのマークが初めてだろうが関係ない、もっと私が出来る手があったはずだ。

 

言い訳なんてしたくない。けど、この心の奥底から溢れ出る感情は制止が効かず私は思わず振り上げた右拳でターフを叩こうとしてしまい、そして地面に打ち付ける前に誰かに優しく私の拳は包まれた。

 

 

「そんなことすれば綺麗な手が傷つくぞ。」

 

 

「ハァ…ハァ…………ルドルフ先輩。」

 

 

私の手を止めたのは先ほどまで走り合っていたルドルフ先輩。彼女も汗だくになりながら、しかしクールダウンもせずに私の方へ来てくれていたらしい。

 

 

「ほら、何時までも倒れてないで起き上がれ。」

 

 

そう言って私の手を引いて起き上がらせてくれたけど、ルドルフ先輩も踏ん張りがきかないのか引っ張った私の方に倒れこんで来てしまい、私とルドルフ先輩、2人抱き合う形で再びターフへと沈んでしまった。

良く見ればルドルフ先輩も脚が震えている。もしかしてルドルフ先輩も全力だったのだろうか?だったら少しだけ嬉しい。

 

再び倒れこんだまま、無言で私はルドルフ先輩を見る。それに合わせた様にルドルフ先輩も無言で私を見た。

暫くの間、私達はこのまま見つめ合っていた。初夏のぬるい風が優しく体を包み流れていき、火照った体から余分な熱を洗い流していく。

 

 

「「…………フフッ」」

 

 

と同時に2人で笑い合った。先ほどまで悔しかったはずなのに、こんな些細な事で笑ってしまうほど今は楽しい気持ちだった。

張り付いた髪の感触を、ちくちくと頬を刺す芝の感触も、汗で張り付いた運動服の感触も。全部全部気持ち悪いはずなのに可笑しい位嬉しくて、そして楽しい。

 

 

「…………すまなかったネイチャ。あの時お前に一言もかけてあげられなかった。」

 

 

2人でひとしきり笑い合った後、ルドルフ先輩は抱き合ったまま私にそう言って来た。多分、何となくだけど展示レースの事を言っているんだと私は感じた。

 

 

「ネイチャの走りは凄かった。それこそ言葉を失うほどに…………だけど、その所為でネイチャを傷つけた。」

 

 

「そんなこと…………」

 

 

「正直、あのままだったらネイチャは昔の私の様になってしまっただろう。だから私はネイチャにレースでキラキラして欲しかった。

勝って喜んで、負けて悔しがって。そして次の勝利の為にまた努力して…………だから沖野トレーナーとおハナさんに協力して貰って今日のレースを企画したんだ。」

 

 

お前が首謀者か!とは言わない。確かにここ最近の私は走りたい感情はあっても、あまりレースについて考えない様にしていた気がする。今日だって沖野さんに呼び出されても私が走るって全く思わなかった訳だし。

 

 

「今日の為にずっとトレーニングして来た。」

 

 

「…………それって?」

 

 

「最近は避けてしまうような態度ですまなかった。少しでもネイチャに勝つ可能性が欲しかったんだ。」

 

 

ルドルフ先輩の私を抱きしめる腕に力が入る。同時に良かったと思ってしまった。私はルドルフ先輩に嫌われている訳では無かったのだ。

 

 

「あはは~それじゃ私は競争相手に塩を送っていた訳ですねぇ」

 

 

「そう言わないでくれ。ネイチャのおにぎりと味噌汁があったから私は頑張れた。あれが無かったら途中で倒れていただろうな。」

 

 

茶化す様な私の言葉に、そう微笑みかけるルドルフ先輩。全く、そんなこと言ったって普通許してあげませんよ。

そんな思ってもいないどうでもいい事をルドルフ先輩に言って、私も強く抱きしめた。驚いた様に目を少し開いたルドルフ先輩。けれども一拍置いて同じ様に抱きしめ返してくれた。

 

 

「じゃあ、今度ルドルフ先輩が埋め合わせでもして下さい。」

 

 

「勿論だとも!夏休みを楽しみにしていろネイチャ。」

 

 

そう言って、私達はまた笑った。クスクスと、皆に聞こえる訳でも無い小さな声で笑い合った。

 

 

「ほら、2人で仲良く笑い合うのも良いがさっさとクールダウンしてこい。」

 

 

気づいたら私の近くに沖野さんが立っていて、笑いながら「ほら」と両手を差し出していた。

私とルドルフ先輩はそれぞれ沖野さんの手を取って、沖野さんは勢いよく私達を引っ張った。ルドルフ先輩と話していた間に多少回復した体は何とか立つことは出来て。沖野さんは立てた事を確認すると

 

 

「念の為に脚を診るぞ?」

 

 

と言って私の脚を触診し始めた。ルドルフ先輩には沖野さんの後から来たのだろうおハナさんが触診している。

暫く触診する沖野さん。少しくすぐったいが、それよりもムスッとしながらおハナさんに触診されているルドルフ先輩が可愛かった。まさかお喋りの邪魔されたのが嫌だったのかな?

 

 

「よし、異常は無いが念の為だ。今日はこれ以上走るなよ?」

 

 

「分かってますよ~寧ろヘトヘトで走る気力もありませんってば。」

 

 

異常が無い事を確認して伝えてくれた沖野さん。脚はガクガクと震えて走れる状態じゃない。笑いながら私は沖野さんにそう返したのだが、唐突に沖野さんは私の頭に手を置いて優しく撫でた。

 

 

「ネイチャ。俺はまだお前のトレーナーじゃないが人生の先輩として今一つだけ指導してやる。夢の為に頑張るのは悪い事じゃねぇ、寧ろ素晴らしい事だ。だがな、少しくらい寄り道したって問題無いんだ。」

 

 

そう話し始める沖野さんに私の頭は疑問符だらけ。何を言いたいのだろうか?

 

 

「ネイチャはトレーナーになってウマ娘をキラキラさせたい。そうだな?」

 

 

「えっと…………はい。」

 

 

「じゃあ、自分がキラキラするのは嫌か?」

 

 

沖野さんの問いかけに私はどう答えたら良いのか分からない。

 

 

「ネイチャは無意識で自分も褒められたいって、キラキラしたいって思って無いか?

別に怒ってるわけじゃ無いぞ?トレーナーって夢もお前の本心だろう。だが、ウマ娘としてのナイスネイチャは自分もキラキラしたいって思って無いか?」

 

 

そう言う沖野さんの言葉に、私は無いとは言い切れなかった。

確かに、私は初めての模擬レースの後でナイスネイチャの走りを皆に魅せたいとも思っていた。展示レースの時初めて勝って凄く嬉しいとも思った。これが私のキラキラなのだろうか?そう内心疑問符を浮かべるが、自然と嫌じゃ無かった。

 

寧ろもっと勝ちたい、負けたくない。皆にナイスネイチャが居ると魅せたいと思っている私がいる。

 

 

「多分、私もキラキラしたい…………と思う。」

 

 

やや自信無さげに言う私に、沖野さんは手を私の頭から離しながら「よし!」と言って笑った。

 

 

「ネイチャは展示レースの後からレースの事を考えない様にしてた節があった。あれが骨となって心に刺さったままだったらきっとお前はレースを楽しめない!どうだった?今日は楽しかっただろ?」

 

 

「楽しかった…………けどやっぱり負けて悔しい。」

 

 

「上々!まだデビューまで2年あるんだ。時間はたっぷりある、何時かルドルフに勝てるように頑張って行け!ほら、ルドルフも触診が終わったみたいだから今日はさっさとクールダウンして帰って風呂入って寝ろ!」

 

 

「沖野さん……それセクハラだから。」

 

 

そう言いながらも私は笑っていたと思う。多分沖野さんなりの励まし?なのかな。

私はルドルフ先輩の手を取ってクールダウンするべく沖野さん達から離れた。ムスッとしていたルドルフ先輩も少しは機嫌が治ったらしい。

…………良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃバケモンだな。」

 

 

「俺の未来の愛バに向かってバケモンとは言ってくれるね黒沼。」

 

 

沖野トレーナーとおハナさんがネイチャ達から離れて戻って来た時、開口一番に口を開いたのは黒沼トレーナーだった。愛用のサングラスをパーカーで雑に拭いながら、黒沼トレーナーはそう返した沖野トレーナーに視線を合わせる。

 

 

「ネイチャだけじゃねぇ、ルドルフもだ。」

 

 

「だとしたら私も心外だわ。」

 

 

4人のトレーナー達はクールダウンしに行った2人のウマ娘を眺めながら、口を開いている。

 

 

「それを言ったら黒沼さんだってミスターシービーをスカウトしたじゃないですか?あの娘も十分あの2人と競い合えますよ?」

 

 

「だからバケモンなんだ。下手すりゃ三年連続三冠バなんて事になりかねんぞ?」

 

 

「あら…………だとしたら存外夢のある話じゃない?」

 

 

「夢は夢でも、他のウマ娘からしたら悪夢だよ。全く…………」

 

 

 

南坂トレーナーを始め、沖野トレーナーも黒沼トレーナーもおハナさんでさえもあり得る未来に思いを馳せる。

未来の彼女達はトゥインクルシリーズでどの様に輝いているのか。

まだまだ分からない事ではあるのだが、凄く楽しみなのはトレーナー達の口元を見れば丸わかりだ。

 

 

「さて、俺は先に戻るぜ?シービーを待たせちまってるからな。」

 

 

「そうですね。私もネイチャさんに渡す資料を作りたいですし先に失礼します。」

 

 

黒沼トレーナーと南坂トレーナーはそう言うと、沖野トレーナーとおハナさんに別れを告げて練習場から離れていった。いつの間にかテンポイント達生徒会のメンバーも居なくなっている。

練習場に残っているのは沖野トレーナーとおハナさん、マルゼンスキーとカツラギエースの4人だけ。

 

 

「でも、ルドルフちゃんがちゃんとネイチャちゃんに謝れて良かったわぁ。」

 

 

場を読んで黙っていたマルゼンスキーがそう口にする。合わせる様に残りの3人が頷く事から全員同じ事を思っていたらしい。

 

 

「少なくともネイチャとルドルフは大丈夫だろう。なんたって同じ夢を追ってるんだ。」

 

 

「目指す場所は違うけどね?」

 

 

沖野トレーナーの言葉にそう返すおハナさん。2人の会話にニコニコと笑うマルゼンスキーとカツラギエース。

 

ターフに吹く暑く湿った初夏の風が4人を包むが、不思議と4人には気持ち悪くは無かった…………

 

 

 






感想にて等速ストライドって書いてあって、何ぞやって調べたら競走馬の技だったんですね。




調べた時の私「セクレタリアトってチートやんこっわぁ」

シガーネイチャのジュニア期以降の進路

  • ルドルフ先輩に続け無敗三冠
  • いやいや、トリプルティアラこそ至高
  • もっと上を目指そう海外クラシック挑戦
  • 良いパワーしてるね?国内外ダート挑戦
  • その他
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