キラキラの一等星   作:ミヤフジ1945

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お待たせしてすいません。

正直ルドルフの実家編を思いついたは良いんですけど屋敷描写とか家族についてとか難産過ぎて正直実家編を思いついた事を少し後悔しました。

あと、作者は本当に競馬を知らないです。競走馬を少し調べるくらいでまともな競馬知識は皆無なのでその所為で困惑させてしまっていたらすいません。


第23話

 

 

何かを得る為には何かを犠牲にしなければならない…………というのは前世を含めて小説や漫画ではよくある設定だと思う。例えば錬金術とか練丹術の等価交換みたいな設定とかそうだと私は思う。

 

どうして今そんな事を考えているのかと言えば、私は圧倒的な分泌量の胃液によって感じる強烈な胃痛と僅かな嘔吐感をダイレクトにライフで受け止めているという最悪な状況な訳でして。

この嫌悪感を感じる犠牲を払って、私は一体何を得ることが出来るのか生憎今の私では全く分からない。

 

ルドルフ先輩のリムジンに乗って1~2時間弱。移動中はルドルフ先輩との会話したりして楽しかったけど、漸くルドルフ先輩の実家に着いた時にはその楽しかった気分も一気に吹き飛んでしまった。

遠くに見えるめちゃくちゃデカい建物、しかも複数。まさか正門から建物までかなり離れてる事に庶民の私には既に思考回路がパンク寸前。

ルドルフ先輩の好意(余計なお世話)によって普段は降りないらしい正門でリムジンから降りて、建物とか施設とか色々と私に紹介しながら歩くルドルフ先輩にこの時点で少しづつ胃がキリキリし始めた私。でも流石にこれ以上インパクトがある事は無いと思っていたんで、ルドルフ先輩の紹介を聴きながらお屋敷の方へと歩いてたんだけど

 

 

 

………………うん。

 

 

 

「「「「「お帰りなさいませお嬢様」」」」」

 

 

 

お屋敷の玄関前にずらーと並ぶメイドさんの皆様、なんとその数30人以上である。メイドさんが玄関前の石畳の両端に一列に並んでお出迎えしている光景を見た瞬間に、私はつい胃の辺りを抑えてしまった。

キリキリと痛み出す胃を感じながら、私はつい足を止めてしまう。立ち止まった私にルドルフ先輩は怪訝な目で見て来たけど、まぁそれに答えれる心境では私は無い訳でして。

 

無言で微かに首を横へと振る私を見て、ちらっとメイドさん達を目で見て、何か得心が言ったかのように納得顔でうんうんと頷くルドルフ先輩は良い笑顔で再び私に向き直って口を開いた。

 

 

「あぁ、言っておくが彼女達は本職だからアニメや漫画みたいなコスプレ衣装を期待するなよ?」

 

 

違うそうじゃない!

 

 

寧ろこれでコスプレ衣装みたいなミニスカメイドだったら更に胃が痛くなるわボケェ!!と言いたい。言いたいけれども、そんなこと言える訳ないのが私の駄目なところな訳でして。

クラシックで露出も少ないザ・仕事着なヴィクトリアンスタイルのメイド服を着こなし、年齢もぱっと見20~50歳と幅広くいらっしゃるから本物を見た事が無い素人の私でもあの人達がコスプレでも何でもないガチの仕事人なのは見てわかるんですルドルフ先輩。

 

私が首を振っていたのは一般庶民ウマ娘ピーポーの私にはここの次元が違い過ぎて場違い感が半端ないって事なんです。ウッ……やばい、また胃が…………

 

 

 

とまぁ…………これが私が最初に吐露していた『何かを得る為には~』に繋がる訳でして。

 

流石に脂汗が浮かぶほどまでとはは行かないけれども、キリキリ痛む胃の痛みを手で押さえている為に若干猫背気味になってしまった私は、メイドさんの間を何食わぬ顔で歩いてお屋敷へと歩いていくルドルフ先輩の後を追うので精一杯である。

私の内心とは裏腹に凄く嬉しそうに歩いているルドルフ先輩。その後ろを私はついていっているのだけど、いつの間にか私がトレセン学園から持ってきて肩にかかっていたはずのボストンバッグはルドルフ先輩の荷物共々一緒についてきている老メイドさんが預かっていた事にビックリした。

 

一体いつの間に……

 

気づかないうちに荷物を預かっているメイドさんに少し…………ちょっとだけ戦々恐々とした私だけれど、特に何も言わず普通に私を案内していくルドルフ先輩を見て私がおかしいのだろうかと頭が困惑してきた。

 

お屋敷の造りはまるで高級ホテルって言われても信じてしまいそうなほどの高級感があり、エントランスや廊下も広くて、要所要所に置いてある高そうな花瓶や絵画がますます非現実感に拍車をかけてきている。

正直ここがホテルでは無くルドルフ先輩のただの自宅だという事に未だ違和感がある。本当はここはホテルじゃないのだろうか?

 

 

「ばぁや…………お父様とお母様は?」

 

 

「旦那様と奥様共に明日休暇にする為にとおっしゃられて本日はお帰りにならないそうです。」

 

 

「む?そうなのか?」

 

 

「はい。お嬢様がお友達を連れて来たのがとても嬉しいのだと思います。」

 

 

ルドルフ先輩から『ばぁや』と呼ばれた老メイドさんは薄く微笑みながら、私の前を歩くルドルフ先輩の言葉にそう返した。

ルドルフ先輩も老メイドさんと楽しそうに会話しているので多分ルドルフ先輩が小さい頃からルドルフ先輩のお屋敷でお勤めされている方なんだろうなぁ~と内心思っていたのだけど、ふいに視線を感じて後ろを振り返ってみれば何故かこそこそ隠れてついてくるセバスさんが居た。

 

 

…………いや、何してるんですか?

 

 

普通にこちらに来ればいいのにこそこそ隠れるセバスさんに私は?マークを浮かべるしかない。

そんな私の内心を知ってか知らずか、セバスさんはカンペ…………うん、テレビとかで良く見るあれを取り出して私に見せて来た。

 

 

〖お嬢様のご両親はネイチャ様にお会いになりたくて明日休みを取るそうです。〗

 

 

…………マジですか。

 

 

〖旦那様と奥様はお優しい方ですのでご安心下さい。〗

 

 

いやそれは良いんですけど何でセバスさんは隠れてるんですかね?

 

セバスさんのカンペを読みながら私はついそう思ってしまった。そうしているとセバスさんはサササっと新しくカンペに文字を書いて私に見せて来た。

 

 

〖がーるずとーくに男が入るのは野暮というものでございます。〗

 

 

あぁ、なるほど…………ってなるかい!

 

思わず手でツッコミをする動きをしてしまうほど強くそう思ってしまった。というか…………もしかしてセバスさんは私の心を読んでいるのだろうか?

私の動きにイイ顔でサムズアップするセバスさんは再びカンペにスラスラと文字を書いて私へと見せてくる。

 

 

〖ナイスネイチャ様がご緊張されていらっしゃるようでしたので。〗

 

 

〖少しは心は落ち着かれましたか?〗

 

 

セバスさんが見せて来たカンペを読んで、私はいつの間にか自分の胃痛が引いている事にやっと気づいた。心なしかお屋敷に入った時より気分も落ち着いている気もする。

思わずセバスさんを見れば、先ほどのイイ顔はどこへやら。おじいちゃんが孫を見るような優しそうな顔に変わって私に微笑んでいた。

 

 

(もしかして…………セバスさんに気づかれてた?)

 

 

だとすればセバスさんは滅茶苦茶お人よしだと思う。いくらルドルフ先輩の友人?後輩?として招待されたとはいえ、普通ここまですることが出来るだろうか…………

 

 

〖緊張されるのも仕方無いと思いますが、どうか楽しんでいって下さい。〗

 

 

そうカンペを見せてから、セバスさんはカンペをしまって私へとお辞儀をした。もしかしてこのやり取りもルドルフ先輩に私の緊張とかを知られぬ様にというセバスさんの配慮なのだろうか?だとすればセバスさんに気を使わせてしまって申し訳なく感じてしまう。

 

慌てて私もルドルフ先輩達に気づかれぬ様小さくセバスさんに頭を下げた。おかげで気分が大分マシになったのだからとても有難い。

去っていくセバスさんを見送ってから、私は未だご両親の事で老メイドさんと楽しそうに会話していたルドルフ先輩のもとへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、此処が私の部屋だ。」

 

 

セバスさんと別れてから数分、老メイドさんと会話が終わって再びお屋敷を案内をして貰った私は最後にルドルフ先輩の自室へと案内された。

 

 

「実は誰かとお泊り会をするのは初めてで少し楽しみだったんだ。」

 

 

「えっと、つまり私はルドルフ先輩と一緒の部屋でお泊りって事ですか?」

 

 

嬉しそうに話すルドルフ先輩に私はそう答えた。どうやら私はルドルフ先輩の部屋でお泊りすることになるらしい。

まぁ、ぶっちゃけ寮で一緒に生活してるから別段普段と何かが変わるって事も無いけれど、嬉しそうに話すルドルフ先輩を見ているとそんな事なんてどうでも良くなってくる。

 

部屋の中は何というかルドルフ先輩らしいというか、女の子の趣味らしい趣味の物なんてあんまり無い勉強机といろんなトレーニング本が詰まった本棚、そして大き目のベッドという一見大学生の部屋と言われても通じそうな部屋。

ただ誰か分からないけど、ぱかプチが飾ってあったり本棚に少女漫画が少しあったりして、普段一緒に生活している私からすると本当に『ルドルフ先輩らしい』感じがする部屋だった。

 

 

「もしかして…………嫌だったか?」

 

 

つい好奇心で部屋の中を見ていた私の耳に小さくそんな声が聞こえた。私が振り返って見れば、耳を垂らしたルドルフ先輩が不安げに私を見つめていた。

 

 

「…………やはり違う部屋の方が良かっただろうか?」

 

 

「いえ!全然嫌じゃないですよルドルフ先輩!ただ初めてが私で良かったのかなぁって思っただけですよ!」

 

 

「ッ!?…………そうか!それは良かった。」

 

 

そう言って安堵の溜息を吐くルドルフ先輩に私は少しだけ違和感を感じた。

何となくだけど自分の実家に帰ってきたからか、ルドルフ先輩は少しだけ『ルナちゃん』化してないだろうか。尻尾を軽く揺らしながら、機嫌が治ったらしく嬉しそうにそう言ったルドルフ先輩を見てて私は何となくそんな事を考えずにはいられなかった。

 

普段のトレセン学園での生活では見せることの無い年相応の表情というか、今も普段の『フフッ』って感じの笑い方じゃなくて『ニシシ!』って感じの…………何というかテイオーっぽい感じの笑い方だし。

 

最初はあまりのスケールの違いに胃痛やら何やらであまり意識出来ていなかったけど、そう言えばついた時から嬉しそうに案内していたし存外、アプリとかアニメのシンボリルドルフも皇帝、そしてライオンになる前ってこんな感じだったのかもしれない。

まぁ、私の想像だけどね。

 

 

「それではお嬢様、お食事の時間になりましたらまた御呼びいたします。」

 

 

「あぁ、ばぁやも有り難う。」

 

 

私達の荷物を部屋に運び込んでから、老メイドさんはルドルフ先輩にそう言って部屋から出て行った。

窓の外は真夏という事もありまだ明るいが、腕時計を見れば時刻は午後6時過ぎ。もう数十分もすれば夜の帳が訪れてくる。老メイドさんが言うには夕食にはまた呼びに来るらしいので、それまでルドルフ先輩とのんびり雑談でもしておこうかな。

 

私は邪魔にならない様に荷物を部屋の隅へと運び直して、ご機嫌な様子でベッドに座っているルドルフ先輩へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というか、雑談の中でルドルフ先輩曰く敷地内に小規模ながらもターフや坂路等が整備してあるとの事。

 

 

(…………やっぱお金持ちは次元が違うわぁ。)

 

 

 

 

 






今回色々試験的に試してみました。

場面転換部分を分かりやすく、アプリの場面転換みたいに⏱マークでくぎってみました。
不評でしたら修正しますね。

あとセバスについては不登校時代のルドルフを見てきたら多少の羞恥心とか捨ててでもこんなユーモアとかやるだろうなって妄想で書きました。
何故ネイチャにしたのかはセバス自身の知るところです(笑)


スランプ真っ最中という事もあり、もし読みにくかったら申し訳ありません。
一応毎回全話読み返しながら書いているんですが…………


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