さて、意気揚々と探し始めたはいいのだけれど。
「そりゃ、今日が入学式だったら先輩方も始業式ですよねぇ。」
探し始めて約2時間ちょい、練習場を巡ってみたは良いものの誰も居ないのだ。
それこそ
もしかしてと思いジムもプールも行ってみたがやっぱり
試しに20~30分ほど待ってみたけれど、待っても待っても誰も来ない。挙句に管理人らしき人に怪訝な顔されたためそそくさと退散してまた三女神像の広場まで戻ってきた所で今に至る。
「うわ~そうじゃん、HRで今日午後から練習場一斉点検って言ってたじゃん。なんで忘れてたんだろ恥ずかしぃ…………」
赤くなった頬に手を当て悶える。うん、多分生前この
でも今は私がナイスネイチャ…………ガッデム!
「さて、どうしましょうかね……これから。」
正直このまま諦めて寮に向かってもいいのだけど、なんだかそれはそれで今後もやもやして生活しそうでなんか嫌。できれば今日の内にどの世界線かだけでも知ってスッキリしたい。
でも他に知りえそうな情報源なんて無い。スピカやリギル、カノープス等各チームの部室を見に行ってチームが存在するかだけでも確認してもいいかもしれないが、部室があるエリアは今いる場所とは真反対である。このクソ広いトレセン学園の真反対まで歩くのはめちゃくちゃ疲れる。後行ったら行ったでゴルシに拉致られそうでなんか嫌。
「でも他に確認する方法はなんか無いかなぁ」
こう、一目見てパッと分かる方法があればいいのだが。そういえば入学式に秋川理事長と
生憎シンデレラグレイは近くの書店には売り切れで読んだことが無いのでそれだけでは判断が付かない……
「あ、そうじゃん…………ルドルフ診断があるじゃん」
ルドルフ診断とは、アプリ版、アニメ版、コミック版の各媒体によってトレセン学園生徒会長であるシンボリルドルフの雰囲気が全く違う事に対する生前の俺が作った診断である。
良くジョークを言い、『エアグルーヴのやる気が下がった』がネットでお馴染みのアプリ版
陰ながらテイオーを見守り、カノープスの思惑を一瞬で見抜いてはそれを即座に擁護するなど優しさとカッコよさを醸し出すアニメ版
『中央を無礼るなよ』とガチで怖い雰囲気を持ったコミック版
まぁ、アニメ版とコミック版は仕事がら全部見たことは無いから精度はお察しだけど、シンボリルドルフなら生徒会室にいるだろうし今日簡単に見分けるだけでいいならこれでいいと思う。
チームの部室があるエリアよりも遥かに近いし、まぁ生シンボリルドルフが見たいって理由もあるけども。
ちょろ~と行って、適当な理由でも作って少し挨拶して雰囲気で見分けて帰ろう。『中央を無礼るなよ』雰囲気のルドルフだったら怖い。これ以上遅くなったら寮に帰った時の荷解きが大変そうだしさっと行ってさっと帰るこれでヨシ!
敷地同様、これまたバ鹿デカい校舎は慣れるまでパンフレット必須だと思う。ちょっとだけ迷いながらも幸いにもパンフレット片手に校舎内をウロウロする様は『ザ・新入生』って雰囲気なのか、すれ違う教員や先輩方から特に注意の声をかけられる事もなく、割とすんなり目的地の生徒会室の前まで来れたのは良いのだけど。
「いやぁ…………やっぱ入り辛いわこれ。」
目の前の一見何処にでもあるクラシック調の素朴な扉。
ただの扉のはずなのに言いようのない威圧感と言うか、プレッシャーをひしひしと感じる訳でして。扉の上に掲げられれる達筆な文字で書かれた『生徒会室』の看板が余計に威圧感を助長させてることもあってぶっちゃけ凄く入り辛い。
かれこれ10分ほど扉の前に立っては、頑張ってノックしようとしていややっぱり無理ぃと扉から離れるを繰り返している。しかもこの通路は人通りが少ないのか誰も会わない。廊下に一人ぽつんと私だけがウロウロしているだけ。
これがまた心細くなって不安を煽るのだ。
前世25歳、今世12歳(4月16日生まれなのでまだ12歳)計37歳と中身中年のはずなのにこの体たらくである。精神が体に引っ張られるって設定作った人すごいと思う。絶賛私がその状態なのだから。
「大丈夫大丈夫…………ネイチャはやれば出来る子キラキラ出来る子。ちょっと挨拶するだけ直ぐ帰るから大丈夫だから。」
ぶつぶつと独り言を呟いて自分を鼓舞しては踏ん切りがつかずやっぱり止めて、中々次の一歩が踏み出せない。それでも『ネイチャなら出来る出来る諦めんなやれば出来るってどうしてそこで諦めるんだそこで!』と脳内で一人修造をし、覚悟を決めて扉の前に立つ。カラカラに乾いた喉、ノックしようと腕を上げれば、掲げた腕は僅かに震えている。
これで相手が威圧感全開のシンボリルドルフだったらどうしようか…………
……スゥー……ハァー……ヨシ!
深呼吸して扉をノックしようと手に力を入れたその瞬間。
「はぁ……一体いつまで待たせるんだ。用事があるならさっさと入ってこい。」
「ピェ‼」
ノックしようとした扉が開いて溜息ともにそう声をかけられた。急な事にビックリして
恐る恐る視線を上げれば、綺麗な鹿毛を後頭部で結っているウマ娘が。ん?結ってる?
「え…………誰?」
「はぁ、その反応からして今日入学してきた生徒か?何の用?」
目の前のウマ娘は生徒会長シンボリルドルフでも副会長の女帝エアグルーヴでもシャドーロールの怪物ナリタブライアンでもないのだ。正しく星の流星の様な細く長い流星が前髪に垂れ、見た目はウマ娘のアイネスフウジンに近いのだが長身切れ目も相まって可愛いというより美人や麗人といった容姿。美人ではあるのだが正直かなり怖い雰囲気を纏ってる。もしかしてここって生徒会室の看板があるだけで違う部屋だったのだろうか?
まぁ取りあえず入れと彼女に生徒会室(仮称)へと促され、おずおずと入ってみればそこはアニメで見た生徒会室とほぼ同じ。所々私物が違う位で此処が本当に生徒会室だという実感と共にさらに頭がこんがらがって来る。
「取りあえずそこのソファーにでも座れ。茶ぐらいなら出してやる。」
「ハヒッ⁉……すみません」
「お前が私を知らないのは何となく想像がつく。今回は事務仕事が多くて入学式はショウやグラスに任せて私は出ていないからな。」
手際よく紅茶を淹れて私の分をテーブルへと渡しながら彼女は私にそう言った。対面のソファに彼女は座り、ゆっくりと紅茶を口へと運んでいく。
私は何を言えば良いのか分からず、紅茶を貰った際に小さく有り難うございますと返すのが精一杯だった。
チクタク……チクタクと時計の音だけが部屋を支配し、1秒が1分にも2分にも長く感じられ言いようのない緊張感が、テーブルに置かれたティーカップの中、琥珀色の紅茶の液面のごとくゆらゆらと体に纏わりついているように感じられた。
「さて、お互い名前を知らなければ用件も話辛いだろう。軽く自己紹介でもしよう。お前の名前は?」
先に口を開いたのは彼女だった。
「えっと……ナイスネイチャです。今日トレセン学園に入学してきました。」
「ナイスネイチャ…………
彼女はそっとティーカップをテーブルに置きながら優しく笑った。その笑顔を見て、ここで漸く私の緊張もほぐれ始めた。
「飲まないのか?もしかしてコーヒーの方が良かったか?」
「あ、いただきます。」
零さない様にゆっくりと彼女が淹れた紅茶を飲む、今までの緊張でカラカラだった喉を潤していく優しい味だ。思わずほっと息を息を吐いた私を見てまた彼女は微笑んだ。
「うまいか?」
「とてもおいしいです。」
「私の父方の親族にアメリカとアイルランドで仕事をしている人がいてな、良い茶葉やコーヒーを頼んでもないのに送ってきてくれるんだ。」
そう言って再度紅茶を飲む彼女を見ているとなんというか、こう……第一印象が最初の怖い雰囲気だったので笑いかける今の彼女からは威圧感よりも安心感を凄く感じる。
「まったく…………ナイスネイチャ、お前が中々入ってこないから少しイラついて当たってしまった。それについてはすまなかったと思っている。」
「えっと、先輩は気づいてたのですか?」
「当たり前だ、ウマ娘の聴力ならすぐわかる。書類と格闘してる時にあぁもパタパタと足音を出されてはイライラしても仕方あるまい?」
確かに、ウマ娘は聴力が良いのはその通りであり失念だった。先ほどの私はそれすらも頭から抜けるほど緊張していた様だ。
「す、すみませんでした。」
「いや、丁度集中力も切れてきた所だったから丁度いい息抜きになる。気にすることは無いさ。」
次来るときはさっと来てくれればいいさ。と、苦笑しながら二杯目を注ぐ為ソファーから立ち上がった彼女に私は最初から頭を占めている疑問を投げかけた。
「その、失礼ですみませんが先輩のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、言ってなかったな、すまない。」
私の空になったティーカップに新しく紅茶を注ぎながら、彼女はシマッタとばかりに顔をしかめた。
「では私の自己紹介をしよう。私の名前は『テンポイント』だ。一応、今代トレセン学園生徒会長を務めている。これからよろしくナイスネイチャ。」
what?
シガーネイチャのジュニア期以降の進路
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ルドルフ先輩に続け無敗三冠
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いやいや、トリプルティアラこそ至高
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もっと上を目指そう海外クラシック挑戦
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良いパワーしてるね?国内外ダート挑戦
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その他