遅くなってしまい申し訳ないという感情と
新しいアニメが始まった嬉しさと
ネイチャ誕生日おめでとうという気持ち
色々ごちゃまぜになって不思議な感情ですが取りあえず最新話です。
「いや~そんな事がありまして、中々大変な夏休みになりました。」
「…………ウチのシービーも問題児だがお前も大概問題児だな。」
「それは心外ですよ黒沼さん。私は巻き込まれた側です。」
「最終的にレースをしたのはお前の意思だろうが。」
「…………それについては何にも否定出来ませんね。」
数日前に長かった夏休みも終わり、未だ残暑の残る9月の頭。何時もより少し早く降り始めた夏特有の夕立をトレセン学園の喫煙所の窓から眺めつつ、私は隣で煙草を吸っている黒沼トレーナーとこの夏休み中であった事を話のタネに雑談に興じていた。
古ぼけた扇風機の少し異音を含んだ独特な機械音が喫煙所に響く中で、シンボリ家での出来事を話したのが先ほどの会話である。
「…………それにしても雨、止まないな。」
「…………雨、止みませんね。」
分厚い雲に覆われた曇天の空から降り注ぐ雨粒を眺めながら、私と黒沼さんはしみじみとそう呟いた。
本当であれば、今頃は黒沼さんのトレーナー室でトレーナーの指導を受けているはずなのだけど、私も黒沼さんも生憎今日に限って傘を忘れてしまった為に喫煙所で煙を吹かしながら仕方なく雨宿り中なのである。
「そういやお前さん、南坂のヤツからは何処まで教わってるんだ」
「えぇと…………今は感冒とか身近な症状を中心に南坂さんからは教わってます。」
「んじゃ、まだ本格的に重い症状は教わってないってことだな。」
「そうですね。」
短くなった煙草とアロマシガーを煙缶へとガシガシと擦り消しながら、溜息交じりに黒沼さんと私はそんな会話を口にした。小雨とも土砂降りとも言えない中途半端な雨を再び眺めながら1本吸い終わった満足感と口寂しい物足りなさを同時に感じながらこれからどうしようかと思いを馳せた。
「あれ?ミスタートレーナーにネイチャじゃん。こんな所で何してるの?」
そんな声が聞こえたのは吸い終わってからそこまで時間は経っていなかった頃だった。雨水が喫煙所内に入らない事を良い事に換気目的で開けていた窓の外、そこには黒い傘を差した制服姿の1人のウマ娘が不思議そうな顔で黒沼さんと私を見ていた。
長い黒鹿毛の髪を腰まで伸ばし、小さな白いシルクハットを右耳付近に被った、どことなく自由人の様な雰囲気を持ったウマ娘…………黒沼さんの担当である未来の三冠バ、ミスターシービーだった。
「この時間はトレーナー室でネイチャの指導じゃなかったっけ?」
「見ての通り雨宿り中だシービー…………それにしても。」
「そうですね黒沼さん…………まさか。」
「「シービー(さん)が雨の日に傘をさしてる…………」」
「ちょっと!?アタシが雨の日に傘さしてるのがそんなにおかしい!?」
「いやぁ…………その…………」
「お前の普段の行いを見直してみろ…………」
「ん~…………いつも通り?」
「「…………はあ。」」
黒沼さんと共に、私は思わずため息を吐いてしまった。
そう、シービーさん…………黒沼さんの仲介で初めて会った時にそう呼んでとシービーさん本人から言われたのだけど、シービーさんの性格はデビュー前ながらアプリ版の育成キャラクター、ミスターシービーとほぼ同じといっていい自由奔放な性格のウマ娘だった。雨の日に嬉々として傘を差さず散歩に行ったりするし、ルドルフ先輩やシービーさんと同級生のカツラギエースさんが振り回されているのをよく見たりする。
そんな自由人なシービーさんが雨の日に折り畳みとはいえ傘を差しているのは知り合ってから初めて見た。私も黒沼さんもこれには流石に驚いてしまうのも正直言って仕方ないと思う。
「あ、傘はエースが渡してきたんだ。本当は今日も傘無しで散歩する予定だったんだけどね。
まあでも、雨粒が傘に落ちる音を聴きながら散歩するのも存外に良い物だね。」
私達の内心を知らないシービーさんは笑いながらそう言った。なんともまあシービーさんらしいっちゃらしい考えではあるが、幾らヒトより体温が高いウマ娘とはいえ雨でずぶ濡れになれば風邪…………ウマ娘風に言えば感冒という病気になるのだからシービーさんにはもう少し自重して欲しい所なのは私と黒沼さん含め、多くの知り合いが共通認識として頭を抱えている問題だったりする。
「話を戻すけど、ミスタートレーナーとネイチャはどうして此処にいるの?」
「雨宿りですよ。今日に限って私も黒沼さんも傘を忘れてしまいまして。」
「そうなんだ。しっかり者のネイチャにしては珍しいね?」
「そういう時もありますよ。」
「ふ~ん……そういうものかな?」
「えぇ……そういうものですよ。」
そんな感じの掛け合いをしながら私とシービーさんは、お互いに少し笑った。自由人気質のシービーさんだけどこんな感じでちょっとした事で笑い合ったり盛り上がったりするし、シービーさん自身も結構お人好しだったりするので実は、というか必然的にだけどトレセン学園ではかなり人気があったりする。
「じゃ、この傘貸すね。私的にやっぱり雨の中散歩したいしさ。」
ほらやっぱり。ミスターシービーというウマ娘はそう言う人なのだ。
「いや申し訳ないですよ。それにその傘はカツラギエースさんがシービーさんに貸した傘じゃないですか。」
「良いから良いから。どうせトレーナー室でやるんでしょ?そのまま部屋に置いといてくれたらアタシが明日回収しとくからさ。」
私がそう言っても、シービーさんは良いから良いからと雨の中折り畳み傘を閉じると窓からひょいっと私に押し付ける様に手渡してきた。雨を浴びて多くの水滴が付いた傘が私の手をじっとりと湿らせていく感覚に僅かな不快感を憶えながらも、渡してきた本人は「それじゃ、また明日。」とこちらの返事を聞かぬまま雨降る学園の中を楽しそうに歩いて去って行った。
後に残されたのは無言のままシービーさんの去って行った方を見つめる私と黒沼さん。そして私の手から零れ落ちる雫が作る小さな水溜まりだけ。
「取りあえず…………俺のトレーナー室に行くか?」
「そうですね、時間も勿体無いです行きましょうか。…………シービーさんには今度またお礼しなきゃですね。」
2人共立ったままなのだけど、心境的には重い腰を持ち上げる様な、そんな気分で外に出て受け取った折り畳み傘を丁寧に開いた。
雨粒で濡れた手で丸っこい持ち手を持って、私は黒沼さんが傘の中へと入れるように少し高めの位置へと持ち上げる。私と黒沼さんでは頭1つ分くらい身長が違うから仕方ない。
「ほら…………貸せ。」
唐突にそう言って、黒沼さんは私の手から少し強引に傘を奪い取った。
「濡れますよ?」
「何だ…………少しは担当の気分が分かるだろうさ。」
何も言わず私の方に余分に傘を出している黒沼さん。その所為で黒沼さんのパーカーは肩付近からびっしょりと雨で濡れてしまっていた。
アニメでは余り描写されていなかったけれども、こういう行為をさりげなくやれる黒沼さんもコワモテな雰囲気に似合わずやっぱりウマ娘の事を第一に考える立派なトレーナーなんだなという事を改めて再確認させられる。
「有り難うございます…………お邪魔したら温かい紅茶を淹れますね。」
「出来ればコーヒーで頼む。」
「インスタントしか出来ませんよ?」
「それくらいが俺には十分だ。」
パシャパシャと水溜まりを踏む2人分の足音と軽快に傘を叩く雨音を聴きながら、黒沼さんと私はほんの少しだけ速足で目的の場所まで歩いて行く。こういう時、変に申し訳なさそうにしても逆に気まずいだけ。だから私は素直に黒沼さんに感謝を伝えておく。
仕方ない、コーヒーを入れるのはまだまだ苦手だけどトレーナー室に着いたら温かいコーヒーを黒沼さんに入れてあげよう。
まったく、沖野さんもどっちかと言えば紅茶よりコーヒー派だったし少しは私もコーヒーを入れる練習でもしてみようかな。
なんて、少しだけ苦笑を漏らしながらそんな事を考えていた私は黒沼さんと一緒にトレーナー室までの道のりを歩いて行くのだった。
最近、この小説のタイトルに違和感を感じて来た…………なんでだろう?
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