キラキラの一等星   作:ミヤフジ1945

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URAの前身って何だったんだろう?

ふと、そんな疑問が出て色々調べて妄想して書きました。

オークスって競馬だと優駿牝馬って名前ですけどウマ娘だとどうなってるんですかね?


第31話

 

 

 

甘い…………甘すぎる。

 

たった一口それを口に含んだだけで、圧倒的で無慈悲な甘味の暴力がまるで征服王アレキサンダー大王の様に正常だった私の口内を余すことなく侵略し続け、一度でもその甘味を嚥下すれば…………飲み物でありながら飲み物というジャンルに真向から喧嘩を売っているとしか思えない水あめを彷彿とさせるその粘度が、しつこく私の喉へとへばりついて中々離れてはくれないのだ。

 

 

「うへぇぇぇえ…………やっぱり濃いめ多めで頼むんじゃなかったわぁ…………」

 

 

「だから言ったじゃんネイチャ。何時も通りで注文しといた方が良いって。」

 

 

「たまにはネイチャさんも冒険したかったんですよ~…………うへ、ライアン後でそっち少し頂戴。」

 

 

「ハイハイ少しだけね。」

 

 

僅かばかりの冒険心で普段頼まない注文をした私に、ライアンは呆れたように笑ってそう言葉を返してくれた。

 

本日は久方ぶりの完全オフの日。とは言っても学生だから毎週休みはあるんだけど、やっぱり皆学生でありながらもアスリートの卵。

休みの日でも午前中か午後のどっちかにトレーニングをしたり、もしくは図書室や自室で自主的に勉強したり…………

 

文句も言わずむしろ自分達から進んで生き生きとトレーニングしている彼女達を見ていると、私も頑張るぞ!って感じで凄くやる気を貰えるのだ。

 

とまぁそんな感じで私としてもトレーニングと共にトレーナーの勉強を頑張っている訳だけど、流石にたまには休息で完全オフの日も欲しい。

そんな時にライアンに一緒に買い物に行かないかと誘われたので、私はこれ幸いとライアンと共に久方ぶりの完全オフを満喫する事にしたのである。

 

 

「それにしても珍しいね?ネイチャって何時もはちみーは薄め普通位でしょ?何でまた今日は濃いめ多めなんて注文したのさ。」

 

 

「いや、本当にたまにはネイチャさんも冒険したかったってだけ。新商品とか見るとついつい味が気になって買っちゃう系…………みたいな感じ?」

 

 

「あぁ…………何となく分かるかも。美味しくなってリニューアルとか書かれてるとちょっと気になるし。」

 

 

「そうそう、そんな感じでつい多め濃いめのが目に入っちゃってさ。どんな味なんだろうって気になって…………今回は選択ミスだったけど。」

 

 

あはは~と私は苦笑いを浮かべながら、ずっしりと存在感を放つはちみー…………はちみつドリンクの重量感に少しだけ辟易する。

ライアンも言った通り、私も上陸…………外出した際にはつい買ってしまうくらいにははちみーを飲んでいるのだけど、普段は薄め普通の軽い注文で満足していた私はついついテイオー…………原作ではライバルだったトウカイテイオーが好物だった濃いめ多めを興味半分で注文してしまったのだ。

 

結果はご覧の通り。私は多分、この濃いめ多めという注文を一生頼むことは無いだろうと確信する位には絶賛後悔中な訳である。

しかもこの注文、これ1つで平均的なウマ娘1回分の摂取カロリーと同程度という化け物ドリンクである。こんなのを常飲しているテイオーは大丈夫なのだろうか。未だ会った事も無い原作の主人公(ライバル)を軽く心配しながらも、私は私でこの味覚の暴力をどうしようか頭を悩ませてしまう。

 

 

「ネイチャ、この後どうする?私は新しく出来たウマ娘用スポーツ用品店に行ってみたいんだけどさ。」

 

 

「あぁ、確か大通りに新しく出来たお店?ライアン何か買うの?」

 

 

「最近新しいウマ娘用のプロテインが発売されたらしいんだよね。今までのはあんまり合わなかったし今回のはどうなのかなって思ってさ。」

 

 

「そういえば言ってたね。前に買ったのも美味しくなかったんだっけ?」

 

 

「うん。普段から飲む物だからやっぱり味も大事にしたいしさ。でも結構プロテインって荷物になるし、他にも買うかもしれないからネイチャの予定次第では後から行こうかなって思ったんだよね。」

 

 

そう言って朗らかに笑うライアンに私もさっきまでの後悔を忘れて笑顔を向けた。折角の休日なんだし、私も取りあえず一旦は甘味の暴力的を忘れて楽しむ事にしよう。

 

 

「だったら私もそこのお店に行こうかな。最近のスポーツ用品店って筋トレの本とかも置いてるらしいし、トレーニングの参考になるかも。」

 

 

「じゃ、のんびり行こっか!」

 

 

「あら意外…………ライアンなら走って行くって言いそうなのに。」

 

 

「もうネイチャ!流石にお休みの日まで走らないって!今日は筋肉を休める日なの。」

 

 

「あはは~知ってる知ってる…………スズカなら走るか…………」

 

 

「ああ…………たしかにスズカなら走って行きそう。」

 

 

苦笑しながら走って行きそうと言ったけど、ライアンは知らない。実は先週同じ様に私がエアグルーヴと共にスズカと外出した際に本当にスズカが走り出した事を…………

 

お陰で今日、スズカはエアグルーヴの監視の下で外出中。いつの間にか走る事が目的にすり替わってそうなスズカを御せるのはエアグルーヴしか居ないのだ。

 

 

「それじゃ行きますか~」

 

 

「おー!」

 

 

「…………っと、その前に一服一服っと。」

 

 

「って、ちょっとぉ…………」

 

 

そういった私にまるでコントの様に滑る真似をしつつ答えてくれるライアン。実は今日まだ1本も吸ってなかったから落ち着かないんだよね。

 

前までは寝起きにベランダで1本っていうのがルーティーンだったんだけど、寮長のモンテプリンスさんに怒られちゃってさ。アロマシガーは医薬品だし副流煙とか体に害があるシロモノでもないけど、やっぱり世間体というか周りへの配慮から寮では吸うなと言われた。

 

確かに、私の友人や知り合いは私が煙草では無くアロマシガーという医薬品を吸っている事は知っているけども、他の私と面識の無いウマ娘達やトレーナー、教師や教官方から見れば私は煙草を吸っている不良問題児という風にも見られかねない。

 

仕方が無いので、最近は朝と夜の寝る前に校内の喫煙所まで散歩がてら歩いてアロマシガーを吸いに行くというルーティーンに変えたのだけど、今日はライアンと外出するという事もあって残念ながら準備で吸えてなかったのだ。

 

 

「じゃあ、あそこのコンビニで1本吸ってから行こうか。」

 

 

「ごめんね。直ぐすむからさ。」

 

 

ライアンが示す先にあるのは何処にでもあるコンビニ。そこの喫煙所でアロマシガーを吸ってから私たちは買い物に行く事にした。

 

 

「そういえばさ。」

 

 

「何、ライアン?」

 

 

「ネイチャはトレーナー志望なんでしょ?」

 

 

「そうだけど?」

 

 

改めて私の夢について尋ねて来たライアンに少し疑問に思いながらも、私はライアンの問いかけに肯定した。

 

 

「いや、昨日歴史の授業受けてて思ったんだけど…………歴史の授業ってURAより前のレースの歴史って全然出て来ないなって思ってさ。トレーナー志望のネイチャなら少しくらい知ってるかなって。」

 

 

「ほうほう…………ライアンさんはレースの歴史に興味がおありのようですなぁ。」

 

 

「もぅ、何その言い方…………まあでもそんな感じかも。おばあ様の現役時代のお話は聞いた事あるけど小さい頃だったからあんまり覚えて無いし。」

 

 

顎に手を当てて思い出そうとしているライアンの言葉に、私は少しだけなるほどなぁと納得する事が出来た。

ライアンがURAよりも前の歴史について知りたいと思った切っ掛けには、ライアンの言うおばあ様のお話があるのだろう。

 

 

「いいよ。ではこのナイスネイチャ先生がライアンに教えて進ぜよう。」

 

 

「ナイスネイチャ先生よろしくお願いしまーす。」

 

 

私のおふざけにライアンも乗っかってきて、2人で笑いながらコンビニまで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、何処から聞きたい?最初っから?それともURAになる少し前から?」

 

 

「ん~…………じゃあ最初っからお願い。」

 

 

「分かった。ちょっと待ってね。」

 

 

コンビニの喫煙所に着いた私はライアンにそう聞くとライアンは少し悩んでから最初から…………つまりウマ娘のレースの始まりからお願いして来たので、私はちょっと待ってねと言っていそいそと懐からアロマシガーを取り出した。

仄かにバニラの香りが漂う箱の中から1本を私はつまみ出すとそのままフィルター部分を口に咥えて沖野さんのジッポライターを取り出すと、親指でカバーをピンっと弾き開いた。すり減ったフリントの所為で中々火が付かず何度か試して、漸く火をアロマシガーへと付ける事が出来た。

 

今度新しいフリントを付け直さなきゃなぁと内心思いながら、軽く一息吸いつつジッポライターを懐へと戻す。マナーとして隣に居るライアンとは反対方向へと白煙を吐き出しながら、私は今か今かと待ちわびているライアンへと口を開いた。

 

 

「とはいってもね。ウマ娘のレース…………今私やライアンが目標にしているトゥインクルシリーズや地方のローカルシリーズみたいな洋式レース、近代レースって実は海外ほど歴史が深い訳でも無いんだよね。」

 

 

「そうなの?でもウマ娘だし昔から走ってたんじゃないの?」

 

 

「祭典競バって言って、1~2人で直線数百mを走ったり、走りながら的に向かって弓を射ったりする一種の奉納祭みたいなものだった訳。多分アイビスサマーダッシュとかを想像すると分かりやすいかもね。だから本格的なレース場は外国から本格的な洋式レースが持ち込まれてからになるね。」

 

 

チリチリと少しずつ燃えるアロマシガーを眺めながら、私はライアンに対して私達が走るトゥインクルシリーズを含めた日本の洋式レースの成り立ちを話す。

 

 

「日本で洋式レースが始まったのは江戸時代末期の1860年。所謂幕末と呼ばれた時代に横浜市で開催されたのが現存資料で確認可能な最古の洋式レースかな。」

 

 

「あれ?思ったより古いんだね…………で、なんで横浜なの?」

 

 

「その時日本は鎖国を止めて、1858年の日米修好通商条約をはじめとして英国、フランス、ロシア、オランダと修好条約を締結したでしょ?横浜は外国人居留地があったからそこで外国人ウマ娘向けにレースが出来るようにしたんだよ。」

 

 

「へぇ~そうなんだ。」

 

 

「他にも函館、長崎、新潟、兵庫なんかも外国人居留地になっているけどそこでもレースがされていたのかは資料が無いからわかんないだって。」

 

 

「でも、聞いた感じそれって日本だけど外国人向けのレースって事だよね?」

 

 

「そう。1865年には日本のウマ娘を招待した招待競バも開催されたけど、やっぱりこれも運営主体は外国人。そもそも日本に洋式レースの運営知識なんてないから仕方ないんだけどね。」

 

 

史実ではこの招待競馬に参加したのは武士だったけど、この世界ではどうやら一般ウマ娘から公募して募ったらしい。全く知らないレース形式で、しかも外国のウマ娘相手のレースなのに全国からかなりの応募者があったらしいからやはりウマ娘というのはいつの時代も変わらないんだなぁと、この事を調べた時に私はそう思ってしまった。

 

 

「そんで1870年に東京・九段の東京招魂社…………今の靖国神社で1周500間、1間約1.81mだから大体約900mの楕円形の競バ場が作られてこれが日本人の運営による国内初の洋式競バが開催されたの。」

 

 

「招待とはいえ5年で自国で出来るようになったなんてすごいね。」

 

 

「日本が明治政府になって急速に近代化に乗り出していた時期だからね。少しでも海外に追いつきたかったんだと思うよ。」

 

 

「というか、ねえネイチャ。さっきから競バって言ってるけど何それ?」

 

 

「昔はレースじゃなくて競バ、レースで走るウマ娘の事を競争バって呼んでたの。因みにこの呼び方自体は第二次世界大戦後まであって、レースとかトレーナーって英語で呼び始めたのはURAが出来て本格的に海外のレースを目指すようになってからだね。」

 

 

「そうなんだ…………全然授業じゃ習わないから知らなかった。」

 

 

確かに、実際レースの授業なんて開催されているレースの種類とかレース規約とか…………テスト対策や競技者として知っておかなければならない事、その辺が大半でレースの歴史なんて殆ど授業では習わないからライアンや他のウマ娘達が知らないのも仕方ないのかもしれない。

 

一息ついて、私は話す事に意識を割き過ぎて殆ど吸えず根元まで燃え尽きてしまったアロマシガーを煙缶の中へと捨てて、ゆっくりと新しく1本に火を付けた。殆ど吸えなかったんだからもう1本くらい許してよライアン。

 

 

「関係ない所は飛ばして、本格的に今のURAの源流になったのは1954年にそれまでは国営としてやっていた競バを民営化した日本中央競バ会っていう組織だね。此処からいわゆる中央競バ…………多分ライアンのおばあ様が走っていた八大競争とかになるんだけど…………大丈夫?」

 

 

「大丈夫、全然ついていけてるから続けてよ。」

 

 

「分かった。八大競争は桜花賞、皐月賞、オークス、東京優駿、菊花賞の五大競争にシニア期…………この頃は古バって呼ばれてたけど、天皇賞春と秋、それに有マ記念の3つを含めた8つの重賞の事を言うんだけど、当時の雑誌とかでは宝塚記念とかジャパンカップ、エリザベス女王杯とかも含めて十一大競争と書いてる雑誌もあるみたい。」

 

 

「八大競争は確かにおばあ様から聞いた事あるかも…………あれ?でもティアラ路線の秋華賞は無いんだね?」

 

 

「うん、秋華賞が出来たのは1996年だからこの頃はまだ無いんだよね。」

 

 

「そうなんだ…………意外だなあ。」

 

 

「そして、1984年に日本国内の開催レースの国際化を目指して日本中央競バ会は国営から続く旧体制を一新、各種用語を海外でも通じる様に幾つかの用語を横文字化したり、更には開催レースに国際グレード制を導入したりしたの。それがUma-musume Racing Association…………今私達が走ろうと目指しているURAになるって訳。」

 

 

「そうだったんだ…………でもさネイチャ、グレード制ってあのGⅠとかGⅡの事だよね?そんな簡単に海外で認められるの?」

 

 

「ライアンさんや、そんな簡単に出来たら苦労しないでしょうが。

まあ、此処からは多分今後の授業でも出てくると思うんだけど、URAも最初は独自グレードのJpnⅠとかJpnⅡっていうグレードから導入して、少しずつ段階的に国際グレードのGⅠ、GⅡとかにレースを昇格させていったんだよ。」

 

 

「そっか…………そうなんだね。」

 

 

私が掻い摘んで話し終えた時、感慨深そうにライアンはそう言葉を漏らした。もしかして、ライアンが話していたおばあ様の頃を想像でもしているのだろうか。

 

 

(まあ、私の雑な説明でもライアン的には十分だったのならそれでいいかな。私としてもこれ以上上手く説明出来る自信なんて無かったし、これでライアンが満足してくれて良かった。)

 

 

私はそんな事を思いながら咥えていたアロマシガーを煙缶へと近づけて、溜まった灰をトントンと中へと落とした。

そうしている間に、長く話してしまって乾いてしまった口を潤す為にと持ったままだったはちみーを仕方なく飲むけど、案の定粘度の高い液体は余計に喉を乾かすだけで思わず顔を顰めてしまった。

 

 

「さてさてライアンさんや、私の話に満足してくれたのならそろそろ目的地に行きましょうかね?」

 

 

「そうだね…………っていうかネイチャしれっと2本目吸ってたでしょ!1本だけって言ってたのに!」

 

 

ゆらゆらと白煙を口元から吐き出しながらそう言った私の言葉に、ライアンはちょっとだけむっとしながら私に言い返した。

 

ごめんごめんと笑いながら私はライアンに謝って、ライアンも仕方ないなあと笑い返して。

そんな何とも締まらない感じだけど、そろそろ行くかなあと私は残り少なくなったアロマシガーを煙缶へと擦り消した。

 

 

「それじゃ、時間は有限お目当ての商品も有限…………行こうかライアン。」

 

 

「ハイハイ…………ネイチャの喫煙癖には困ったものだよホントにさ。」

 

 

「なんなら今度ライアンもアロマシガー吸ってみる?」

 

 

「遠慮しとくよ。警察に勘違いされたくないもん。」

 

 

「……それは言わないでよライアン。私も補導されないか心配なんだからさあ。」

 

 

そんな掛け合いをライアンとしながら、私は重たいお荷物(はちみー)を持ってお目当てのお店へと歩いて行くのだった。

もっとも、まさかライアンがひたすらプロテインで悩んでいる間に吸い溜めしようと私が一服している所で本当に警察に補導されるとはこの時の私は全く想像していなかった訳だけど…………

 

念の為に、きちんと警察さんの誤解は解けたとだけは言っておく。

…………相手がウマ娘の婦警さんで良かった。

 

 

 





色々書いていて、いやトレセンの敷地外でアロマシガー吸ってたらそりゃ未成年喫煙と勘違いされて補導受けるよなぁって思って急きょ付け足したので纏まり悪いかも?

どうだろ?いいのかなぁこれ…………

シガーネイチャのジュニア期以降の進路

  • ルドルフ先輩に続け無敗三冠
  • いやいや、トリプルティアラこそ至高
  • もっと上を目指そう海外クラシック挑戦
  • 良いパワーしてるね?国内外ダート挑戦
  • その他
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