キラキラの一等星   作:ミヤフジ1945

43 / 47



できた。


第39話

 

 

肺一杯へと吸い込んでいた息をフゥ~とゆっくりと吐き出す。アロマシガーの白く甘い煙を含んだ私の吐息はゆっくりと狭く薄暗い喫煙所の天井へと立ち昇って行く。そんな白い昇り龍を眺めながら、私は入学以来今までに感じた事も無い程の高揚感が体の奥底から溢れんばかりに沸き上がって来るのを何とか抑えていた。

 

 

(あぁ…………ようやく、ようやく走れる! )

 

 

内心で吐露したその言葉と共に、1度でも気を抜いてしまえば思わずニヤけそうになる表情筋を私は必死に抑えるけれど、それでも抑えきれない嬉しさは咥えているピクピクと震える様に上下するアロマシガーに如実に表れてしまっていた。

 

いや、動いているのはアロマシガーだけではない。私の耳は白い煙を吹き飛ばす勢いでパタパタと忙しなく動いているし、抑えようとする私の意思とは無関係に私の尻尾はユラユラと不規則に右へ左へと揺れ動き続けて収まる気配が無い。

 

 

「落ち着け…………落ち着くんだ私…………」

 

 

そう心の中で自制を促しながら、私はもう一度ゆっくりと息を吐いた。チリチリと小さい音を立てて燃えるアロマシガーの音と共にふんわりと渦を巻いて吐かれる煙と、微かに鼻腔をくすぐる甘いアロマシガーの香りが少しばかり私の心を多少なりとも落ち着かせてくれるのだけど、それでも約1ヶ月も待たされた私の本能は走りたい、走りたいと疼き続けた。

 

落ち着け…………落ち着け…………と、誰に言うでもなくそう零れた私の言葉に答える返事は無い。いやまぁ、この喫煙所には私しか居ないから当たり前なんだけどね。

 

本格化…………と言うよりそれに付随して起きていた成長痛が無くなったのはつい数日前の話。元々徐々に痛みも少なくなって来ていて、お陰で成長痛によって副次的に悩まされた寝不足ともおさらばバイバイ。

 

本格化が始まって1ヶ月。たった1ヶ月で私の身長は一気に伸びてなんと160センチまで成長していた。確か…………前世の公式設定ではナイスネイチャの身長は157センチだったはずなので、今の私は本来のナイスネイチャよりもわずかばかり背が高くなったことになる。

 

勿論、私の本格化で変わったのは身長だけじゃない。本格化中は安全面から特にトレーニングをしていた訳では無いのに私の太腿はそれまでよりも一回りは太く筋肉が付いたし、体全体に筋肉が付いた影響か体重もキロ単位で増加していた。チチだって今までのぺったんに近い膨らみからまぁそこそこ揉める程度には大きくなってしまって…………

 

服や下着は兎も角、挙句には制服やジャージ、ローファーやトレーニングシューズに至るまで全部入らなくなってしまい泣く泣くルドルフ先輩に付き添ってもらって買い直したり、お母さんに頼んで仕立て直してもらったり…………中学生のお小遣いでは随分と痛い出費だった。

 

あ、勿論だけど念の為に痛みが無くなった後も数日様子を伺ってから最早顔馴染みになりつつある病院のお医者さんに検査して貰ったよ?

 

お医者さんからニッコリ笑顔で走っても問題無いでしょうと言われた時の私と来たら…………思わずそんなお医者さんの言葉に私はつい全力ガッツポーズをとってしまって、付添人として来て貰っていたおハナさんが苦笑いしていたほどだ。

 

 

「いやぁ~あれは無いよねぇ…………あぁ思い出したら少し恥ずかしくなってきた。」

 

 

ポトリと、私が喋った振動で咥えていたアロマシガーから灰が落ちる。慌てて煙缶へと残りの灰を落してから、近くに置いてあったチリトリで落ちた灰を掃除した。未だアロマシガーの残りは半分ほど残っている。再度残りのシガーを咥えてからちらりと窓越しに外を見れば、生憎と私の晴れやかな心とは裏腹に重い曇り空が広がっている。

 

そんな空模様を眺めながらゆっくりとアロマシガーを吸った。チリチリとシガーが燃える小さな音が私の耳をくすぐり、甘いアロマが再度喫煙所を包み込んでいく。

 

 

「あぁ!? ネイチャこんな所に居た! 探したんだよ! 」

 

 

窓越しにそんな声が私を呼ぶ。窓の外で私を呼ぶ声の主を見れば、ジャージ姿で此方へと走り寄って来るライアンの姿が。

 

 

「折角皆でトレーニングしようって言ったのに全然来ないんだもん! 探したよぉ。」

 

 

「え…………マジ? 」

 

 

「マジもマジだよ。集合時間とっくに過ぎてるって。」

 

 

「うわぁ…………ごめんねライアン。」

 

 

ライアンの言葉に私は慌てて腕時計を確認した。ウマ娘用に造られたやや無骨な腕時計に刻まれた時刻は正確に集合時間を10分ほど過ぎた時間を指している。

 

思わず私は深い溜息を溢した。先ほどまでのウキウキとした気分とはうって変わって一気に落ち込んでしまう。もしこれがアプリだったらコンディションが1つか2つは落ちてしまうイベントだろう。

 

未だ3分の1ほど残っていたアロマシガーを煙缶に擦り消して急いで喫煙所の扉を開けて外で待っているライアンの元へと向かった。

 

 

「ごめんねライアン…………全然時計見てなかった。」

 

 

「まぁ全然良いんだけど…………珍しいよね。ネイチャが時間を忘れるなんて? 」

 

 

そんなライアンの言葉に私は苦笑いで返すことしか出来なかった。

 

普段は時間通り、いや可能なら5分前行動を心がけているつもりだったけど、こういったふとした瞬間にミスを犯してしまうのは我ながら直さなければいけないと思い知らされる。

 

集合時間を忘れていた理由が理由だけに申し訳なく謝ることしか出来ない私に、ライアンは深く理由などを聞くことはしなかった。

 

 

「取りあえず皆待ってるし早く行こうか。」

 

 

「そうだね…………そうしようか。」

 

 

そう言って踵を返すライアンの跡に続いて行く形で、私は喫煙所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまたせ~」

 

 

「いやぁ~皆本当に待たせてごめんね! 」

 

 

待ち合わせ場所だったグラウンドへと着いたライアンと私は、自身の顔の前で両手を合わせながら開口一番そう謝罪の言葉を口にした。

 

グラウンドの芝の上で待っていたエアグルーヴ、スズカ、フラッシュの3人。それぞれがトレセン学園のジャージにその身を包んで小走りで来た私達の事を待っていた。

 

 

「いやそれについては別に良いのだが…………珍しいな。お前が約束に遅れて来るなんて。」

 

 

最初に口を開いたのはエアグルーヴだった。ライアンと同様に普段遅刻しない私が珍しく約束の時間に遅れてやって来たので少しだけ以外そうな顔を浮かべていた。いや、口に出したのはエアグルーヴだったけど他の2人、スズカとフラッシュも苦笑いを浮かべながら「そうね」とか「ネイチャさんにしては珍しいですねぇ」と頷いていた。

 

そんなエアグルーヴをはじめとした3人に対して「ちょっち色々とありまして」…………と、私は頭を搔きながらエアグルーヴにそう答える。

 

 

()()()()()()()()()()()()もすみません…………折角の時間をお借りしているのに遅れてしまって。」

 

 

エアグルーヴ達に頭を下げた私はそのまま外ラチのベンチに座っていたライアンのトレーナーさんにもそう声を掛けた。

 

 

「良いよ良いよ、気にしないで。ライアンの並走トレーニングに丁度いいからこっちがお願いしてるんだし、ミスなんて人間生きていれば誰だって犯してしまう物だよ。」

 

 

ニコニコと笑いながら私の謝罪にそう返してくれた私物のジャージに身を包んでいる歳若い男性トレーナー。短めの髪に特徴的な顔のシワと鼻声が印象的なライアンのトレーナーさんに私は再度頭を下げた。

 

そう、実は私達(と言っても私は選抜レースに出ていないけど)の中で1番最初にトレーナー契約をしたのは意外な事にライアンだった。

 

私としては選抜レースで良い走りをしていたエアグルーヴ辺りが最初に契約するんじゃないかなぁと思っていたので少しびっくりしたのだけど、エアグルーヴを含めた3人はどうやらリギルの選抜レースを受けてからトレーナー契約は考えていてスカウトは断ったらしい。その話を選抜レースの次の日に聞いて私は思わず「なるほどねぇ」と、エアグルーヴ達の考えに納得してしまった。

 

エアグルーヴもスズカもアニメだとリギル所属だったし、フラッシュは…………アニメじゃどうだったか忘れたけど彼女の実力を考えたなら十分リギルに所属していても何も不思議なことは無い。

 

そんな彼女達とは反対に、ライアンは特にリギルに入りたいとかは無かった様で…………選抜レースのその日に熱いスカウトをあの若いトレーナーさんから受けてそのまま担当契約を交したらしい。

 

てっきりメジロ家繋がりのトレーナーと契約するのだとばかり思っていた私だけど、余りに早いライアンの担当契約、しかも聞けば今年サブトレーナーからトレーナーになったばかりの新人トレーナーという事に更にびっくり。

 

いやまぁ…………沖野さんから予約という名のスカウトを受けている私が言うのもあれなんだけど、思わずライアンに何故そんな彼と何故契約をしたのかと聞けば…………単純に直感だとライアンは苦笑しながら私に教えてくれた。

 

彼からスカウトを受けた時にビビッと来たらしい。なんともまぁ抽象的な理由だと思わず聞いたその時はびっくりしたものだけど、後日ライアンからトレーナーさんを紹介されて納得しちゃったよね。

 

そりゃあ、あの人だったら確かにビビッと来る訳だよ…………ってね。

 

まぁ、より深く聞けば彼の御父上もトレーナーで、しかもメジロ家のウマ娘と契約していたらしいからあながち私の予想が間違っていた訳では無かったけどもさぁ…………

 

そんなこんなで(正式に)一番最初に契約したライアンからトレーナーを紹介された私やエアグルーヴ達は、ライアンの並走トレーニング相手として今日みたいにライアン経由でライアンのトレーナーさんにお声を掛けられる事があるのだ。

 

もっとも…………今までの私は見学ばかりで走る側としては今日が初めての参加だけどね。

 

 

「そんじゃ、さっさとアップを済ませて並走トレーニングをしましょうか。」

 

 

「そうだね。時間も押しちゃってるし。」

 

 

「それじゃあ()()()()()()()、ライアン共々今日はよろしくお願いしま~す。」

 

 

「うん。怪我をしない様に入念にアップしてね。」

 

 

「りょ~かいです。んじゃまぁ、行こうかライアン? 」

 

 

「そうだね。それじゃ行ってきますトレーナー! 」

 

 

笑顔でトレーナーに手を振ったライアンとエアグルーヴ達でトレーニングの為のアップに入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海上自衛隊第一体操、膝を曲げ伸ばせ~なんちって。」

 

 

ライアンの担当トレーナーである樅山トレーナーと別れた私はライアン、エアグルーヴ、スズカ、フラッシュの4人とも別れて1人でアップ…………と言うか準備運動をやろうとしていた。

 

うん、皆と一緒にアップをする流れだったんだけどね?

 

やっぱり本格化明けの私としては念のために普段よりも入念にアップをしたかったというのが理由もあるし、実はどうしても試したい事があって少しだけ1人にさせて貰ったんだよね。

 

だからこうやってライアン達と別れて私1人離れた所に居る訳だけれども、どうしても試してみたかった事、それが先ほどボソっと口に出した海上自衛隊第一体操って訳でして。

 

この海上自衛隊第一体操だけど生前の話ではあるけれど、実はかなり効率の良い運動なんだよね。陸上とは違って狭い艦内での生活でも短時間で尚且つ省スペースで運動出来る事を念頭に作られたこの第一体操は、真剣にやればフルで行なっても僅か5分ほどで汗を掻く位に体が暖まる。

 

 

(第一体操…………ミス…………連帯責任…………ウニャァァァァァアアア! )

 

 

思わず思い出してしまった黒歴史に、体操を始めた私は思わずそう脳内で悲鳴を上げてしまった。全乗組員の前で失敗してしまった時の何とも言えないあの空気と、一気に体から噴き出す冷たい汗の感覚。

…………その後に待っている先輩海曹士達からのありがたい御指導は正直もう思い出したくもない。肉体的にではなくて主に精神的に辛かった…………

 

 

ひとまず話を戻そう(閑話休題)

 

 

そんなイロイロと思い出深い海上自衛隊第一体操だけれども、効率云々のお話は残念ながらそれは生前のヒト息子の体での話であって、残念ながら今のウマ娘の身体で…………更に言えばアスリートとして運動をおこなっても十分な効率が得られるのかまではまだ確認していない。何せ本格化の最中に暇すぎて思い出したので未だ試してすらいなかったから。

 

幸いな事に、この世界の海上自衛隊でも第一体操は存在しているのかウマチューブの自衛隊広報アカウントにて紹介してくれていたので、私自身の前世の記憶とウマチューブの動画ですり合わせしながら再度覚え直す事が出来たのは上々だった。

 

入念に、1つ1つの動作を意識しながら私は身体を動かす。腕や足、それら動かす筋肉や関節、その全てを意識しながら運動するだけでも効率は段違いというモノだ。

 

 

「いっちに~さんし~ご~ろくしちはち…………にいにいさんし~ご~ろくしちはち…………次は…………体捻転斜前屈振(たいねんてんしゃぜんくっしん)~始め! 」

 

 

1つ進めて行くごとに心地よい熱が私の体の内から徐々に徐々に全身へと伝播し全身を暖かく包み込んで行く。そして、それと共に徐々に大きくなっていく私の呼吸。声を出しながら運動するのでついでとばかりに肺活量も鍛えられる…………気がするのも個人的にグットなポイントだ。

 

自衛隊に居た頃なら詰まる事無く各動作を流れる水の様にスムーズに繋げなければいけないのだけど、今回は海上自衛隊の第一体操がウマ娘にも有効なのかの検証なのであって1個1個の運動を区切りながら丁寧に。計18個の運動(最後の深呼吸も含む)を全力で…………

 

 

「呼吸の調整~始め! 」

 

 

最後の運動…………とは言っても大きく腕を回しながら深呼吸をするだけだけども、これも流れでやらずにキッチリと。

 

 

「ふぅ…………体操終わり! 」

 

 

最後の運動も終わり、一息ついた私は小さく体へと力を込めてみた。

 

心地よく暖まった私の体は程よく汗を掻いてそこそこ解れている。うんうん…………期待半分ではあったけど、それなりにウマ娘にも効果はあるのではないだろうか?

 

 

(上半身は十分だけど、少し下半身の関節とか腱に足りない部分を考えながらどんなモノと組み合わせればより良くなるのか…………)

 

ひとまずは体が冷めないうちに足りない部分を補強しようかな。関節、特に股関節や下半身のアキレス腱とか色々な部分がもう少し足りない気がする。

 

補強のストレッチとして、ただ脚を前後に開いてアキレス腱や股関節を伸ばすのも良いんだけど、もう少し伸ばしたい場合は陸上競技でハードル等に片脚を乗せるとより可動域が広がって柔軟に伸ばせる。残念ながら今日のトレーニングではハードルなんて用意していないので、しゃんなしとハードルの代わりに内ラチを使うことにしよう。

 

 

(もう少しストレッチとか色々調べて見た方が良いかも。どうしても分からなかったら南坂さんか黒沼さん…………沖野さんは何時でも聞けるからまぁ今度でいいかな。)

 

 

片脚を内ラチに乗せてゆっくりと脚の関節を伸ばしながら、私は内心でそう結論づける。

 

伸ばしては今度は反対側を、反対側が終われば今度は別の部位を意識して。

 

さて、一通りこのストレッチが終わればアップも十分だろうし一度皆の所に戻ろう。チラリと横目で見れば既に皆アップを終えたのか樅山トレーナーの所に集まり始めているみたいだしね。

 

最後に大きく背をのばして、私は元の場所へと脚を向ける。この後は最後のアップとして皆で軽くグラウンドのコースを走る予定だったはずだ。

 

沖野さん経由で樅山トレーナーにも私の事は伝えているらしいし、もし私自身に自覚が無くても外から見て私に異常があればきっと彼が止めてくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッチ! イッチ! イッチニ! 」

 

 

「「「「 ソーレ! 」」」」

 

 

「イッチ! イッチ! イッチニ! 」

 

 

「「「「 ソーレ! 」」」」

 

 

「イッチニーサンシ! 」

 

 

「「「「 ゴーロクシチハチ! 」」」」

 

 

「トレセェェェン! ファイッ! 」

 

 

「「「「 オー! 」」」」

 

 

「ファイッ! 」

 

 

「「「「 オー! 」」」」

 

 

グラウンドのコースに木霊する彼女達の声。ナイスネイチャ達が一列になって軽く走っている姿を眺めている樅山トレーナーに1人のトレーナーが声を掛けた。

 

 

「よっす樅山。ネイチャ達はどうだ? 」

 

 

「あぁ沖野さんどうもです。今ちょうど最後のアップを始めた所ですよ。」

 

 

何時もの様に黄色いシャツに黒いベストを羽織っている沖野トレーナーにそう返した樅山トレーナーの隣に座りながら、沖野トレーナーは樅山トレーナーと共に走っているナイスネイチャ達を眺めた。

 

樅山トレーナーからしたら沖野トレーナーは先輩も大先輩だ。そんな沖野トレーナーから先日いきなりBarへと呼び出され、奢られながら自身の担当であるメジロライアンの友達………ナイスネイチャの様子を気にしておいてくれなんて頼まれた樅山トレーナーは大きく首を傾げざるをえなかった。

 

無論の事、新人である樅山トレーナーとて先輩である沖野トレーナーとナイスネイチャの関係は耳に入っている。とはいえ、沖野トレーナーとナイスネイチャの関係自体は特に違法性のある物でも無いし、中央のトレーナーにおいては半ば公然の事実として扱われている事から中央に居るトレーナーならば知らぬものは恐らく居ないだろう。

 

樅山トレーナーが首を傾げたのは何故それを自分に頼んで来たのかと言う事だった。ナイスネイチャというウマ娘についてはメジロライアンからも良く聞いていたし、樅山トレーナー自身も実際にナイスネイチャに会ったのは今日が初めてではない。

 

最初に樅山トレーナーがナイスネイチャと言うウマ娘をメジロライアンから紹介された時、樅山トレーナーのナイスネイチャに対しての第一印象は随分と大人びた印象のウマ娘だった。

 

礼儀正しく、さりとて畏まり過ぎたりはせずに程よい距離感を保つのが上手い。まるで同世代と話している様な感覚を抱かせるナイスネイチャだが、樅山トレーナー自身はナイスネイチャが走っている所を見た事は無い。初めて会った際にナイスネイチャ本人から今本格化の最中だと聞いていたし、何よりも自身の担当であるメジロライアンとのトレーニングが最優先だった。

 

 

「アップ中とか何か違和感とか無かったか? 」

 

 

「いえ、特にナイスネイチャさんの体に違和感は感じませんでしたね。まぁ気になった点としては随分と独特なストレッチをしていた事くらいですが…………」

 

 

ナイスネイチャが本格化を終えてから今日初めて走る。先輩の沖野トレーナーから頼まれていた事もありメジロライアンを見る合間にナイスネイチャ(勿論他の3人も念の為に見ていたが)を見ていた。樅山トレーナーが言った独特なストレッチとは無論の事ナイスネイチャがお試しで行なった海上自衛隊の第一体操だったのだが、そんな体操など知らない樅山トレーナーからすればナイスネイチャのアップ風景は見た事無いけど随分と入念にストレッチをするなぁといったものだった。

 

そんな樅山トレーナーの言葉に短く「そうか」と答えた沖野トレーナーは小さく息を吐いて再び丁度向こう正面を走っているナイスネイチャ達の姿へと視線を移した。

 

沖野トレーナーから見ても、今の所ナイスネイチャの姿に違和感を感じることは無い。尤も…………それは体の負担や異常と言う点においてと注釈が付くが。

 

 

「これなら問題なさそうだな…………」

 

 

「何かナイスネイチャさんに用事でもあるんですか? 」

 

 

ボソッと、ナイスネイチャ達を見ながらそう呟いた沖野トレーナーに、樅山トレーナーは思わず聞き返した。まさか独り言に聞き返されると思っていなかった沖野トレーナーは少し恥ずかしそうに頭を搔いてベストの胸ポケットから折り畳まれた1枚の紙を広げた。

 

 

「なに…………ネイチャに選抜レースでもってな。」

 

 

(はて? 次の選抜レースは半月後のはずだけどなぁ…………もしかして次の選抜レースに出れることをナイスネイチャに伝えに来たのだろうか。)

 

 

 

そう疑問に思いつつも沖野トレーナーが広げた紙へと視線を移した樅山トレーナー。だが、そこに書かれていた文字を読んだ瞬間にはその目を大きく開き唖然とした表情を浮かべて沖野トレーナーと紙に書かれた文字を行ったり来たりと繰り返してしまった。

 

 

「これ…………良いんですか? 」

 

 

新人とは言え樅山トレーナーも一端の中央のトレーナーである。沖野トレーナーが見せた紙の内容が異常であるという事は直ぐに樅山トレーナーにも理解出来た。

 

 

「大丈夫だ…………既に理事長の許可は取ってある。それに呆れられたが事前におハナさんにも打ち合わせ済みだ。」

 

 

樅山トレーナーが思わすそう疑問を口にすれば、沖野トレーナーは笑って既に許可も取っていると樅山トレーナーの疑問に答えた。そんな沖野トレーナーが持っている紙。なんの変哲もない折り目の付いたコピー用紙に書かれている文字。

 

 

チーム『リギル』選抜レース出走申し込み表

 

 

「俺もネイチャ(アイツ)も散々この時を待ってたんだ。スタート位は派手に行こうと思ってな。」

 

 

片手でヒラヒラと申し込み表を摘まま樅山トレーナーへと見せている沖野トレーナーの顔は、まるでイタズラを成功させた悪ガキの様なイイ笑顔だった。

 

 

 





元々ライアンのトレーナーは名無しのモブトレーナーで進めていたんです…………

カレー食べながら、そう言えばダービー誰が勝ったんだろうって動画見てたら横山騎手が勝ってて…………

そう言えば横山騎手ってライアンの主戦だったなぁ~って…………

そして書いていた小説を見るじゃないですか?

なんとか書いていたモブトレーナーとしての数千文字の原稿があるじゃないですか?

そうなっちゃうとね…………

グッパイ何とか書いていた原稿。ようこそ新たな白紙の原稿。


正直、ライアンやエアグルーヴ達を抜いて素直にオリ史実ウマ娘達で全部書き直した方が矛盾も少ないし、こうやって頭を悩ませて投稿遅れるなんて事なんてなさそう。

シガーネイチャのジュニア期以降の進路

  • ルドルフ先輩に続け無敗三冠
  • いやいや、トリプルティアラこそ至高
  • もっと上を目指そう海外クラシック挑戦
  • 良いパワーしてるね?国内外ダート挑戦
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。