キラキラの一等星   作:ミヤフジ1945

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第42話

 

ウマ娘にはスキルという概念がある。

 

それはその育成ウマ娘固有のスキルであったり、はたまた最初から所持しているスキルであったり、育成ストーリーで会得出来る物、サポートカード…………所謂サポカと呼ばれるカードから取得できるスキルであったりと様々な入手手段があるけれど、育成ウマ娘に合う合わない。強い強くないなどスキル自体の性能は置いておいて1つ覚えておくだけでグッと育成中のレースが楽になる物である。

 

とは言えそれはアプリの中だけでのこと。ゲームだからこそ視覚的に見えるというだけで、実際に生きる私からしてみれば自身がスキルを憶えているのかどうか覚えていたとして使えるのかどうか…………そんな事分かる訳無いんだ。

 

スキルと言うのは言ってしまえば技能、技術だ。勿論中には天性の才能が要るだろこれって内容のスキルもあるけれど、大半はそう言った長い練習とトレーニングで無意識にまで体に染みつかせた担当トレーナーとの努力の結晶。

 

でもそれはアプリ的に言えばサポカによるスキル会得であったり、ストーリーイベントでのスキル会得にあたるだろう。では育成ウマ娘が最初から持っているスキルとは一体何処から手に入れたのだろうか。

 

担当契約するまでに1人で会得した? それとも育成ウマ娘の才能でもって最初から知っていた?

 

ウマ娘は本能的に自身の適正が何となく分かる。とは言っても芝の方が何となく走りやすいとか、何となく差しが好きだとかあやふやな感覚なのだけども。

 

そんなあやふやな感覚を頼りに自身に最適な技術を身に付けれるなんて都合の良い事なんてあるのか? ゲームとは違って1つ覚えるのすら大変な技術を?

 

いやきっと居るんだろうね。本能的に自身の最適解を理解しているウマ娘は…………少なくとも今から戦うミホシンザンはきっとソッチ側のウマ娘なのだろう。

 

 

閉じられた瞳を開け放つ。狭いゲートの中なのに特に嫌な感情が湧かないのはやはり私が混じり物だからなのか、元馬のナイスネイチャがゲートを苦に思っていなかったからなのか…………

 

ミホシンザンはスキル…………いやもうスキルでいいか。とにかくスキルを何かしら覚えているだろう。小手先の物から切り札足りえる物まで…………何かしら使ってくるに違いない。

 

そんな相手に私が出来ることなど、たった1つしかないのだ。

 

 

スゥゥゥ…………ハァァァァ…………

 

 

たった一度の深呼吸。それだけでグルグルと巡っていた思考は見えもしない星々の彼方まで消えて行き、残った燃える熱い本能が存分に闘志を滾らせる。

そう、スキルが不安なら単純なことだ。前世の因子周回でもやっていた実に単純なこと。

 

 

基礎スペックでぶっ潰す!

 

 

ビクッ!

 

隣のウマ娘が怯えた表情を私に見せたがどうしたのだろうか? ()()()()()()()()()()()()()

 

まぁいいか。スキルに不安を抱いている私だけど、1つだけ私が同年代の誰よりも先んじている物が1つだけある。1年前…………初めての模擬レースで負けた後にテンポイントさんに見て貰ったあの日の出来事。

 

私はあの日初めて2400メートルというクラシックの距離を走った。模擬レースの後でヘロヘロの体で、競争相手も居ない、タイムも遅くて満足できるものでも無かったけれど、私は確かに2400メートルをレース形式で走り切ることが出来た。

 

あの日からちょくちょく、私とテンポイントさんは誰も居なくなった門限ギリギリにグラウンドで2400メートルを走った。勿論誰にも内緒で、バレた日にはルドルフ先輩やグリーングラス先輩含め色々怖いから。

 

まぁ何が言いたいかと言えば、私は同世代においてパワーとそれに付随するスタミナが頭1つ抜けている。そして外的要因を別にして本格化前に2400メートルを負担なく走り切れる脚の頑丈さも。

 

勢い良く目の前のゲートが開いた。同時に溜めていた脚を爆発させ、眼前に広がるターフへと私は全力で駆け出していく。目指すは1つ、先頭の景色のみ!

 

 

先頭民族がなんぼのもんじゃい!

 

 

こちとら先頭民族(サイレンススズカ)と何回もトレーニングで並走しとんじゃい! 2400メートル走り切れるスタミナと脚があるなら適正無しでも2000メートルくらい逃げ切ったるわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートが開いた瞬間、レースを観戦するために集まっていた多くのギャラリーにどよめきが走った。

 

ざわざわと困惑と驚きの波はぐるりとグラウンドを囲っていたギャラリーを飲み込み、リギルの選抜レースであるがゆえに実況と解説の無いこの静かなレースを喧騒へと染め上げた。

 

何せ大外枠を除いた外枠の3人のウマ娘が出遅れたのである。今までのリギルの選抜レースでも出遅れ自体はあったが、まさか1レースで3人も出遅れが出てくるなどありえない事だった。

 

リギルの選抜レースを受けたいウマ娘は多い。選抜レースを行う前段階でチーム一丸となって書類審査による一次選考が行われるくらいには希望者が多いのだ。今日この場で走っているウマ娘達はその書類審査を通り抜けて来た、言ってしまえば各世代でも十分に活躍できるとリギルが…………おハナさんが判断したウマ娘達と言えるだろう。

 

そんなウマ娘達の内3人が出遅れた。いや、出遅れは勿論なのだが…………それと合わせてたった1人、この場に集まっているギャラリーから注目を集めているウマ娘が居るのだ。

 

 

「ねぇ、貴方…………もしかしてあの娘に変な事教えて無いでしょうね?」

 

 

沖野の隣でレースを見ていたおハナさんも困惑の色を隠せずにそう沖野さんへと言葉を告げる。いや、おハナさんだけではない。その場にいるシンボリルドルフも、マルゼンスキーやカツラギエースさえも…………

 

そして当の沖野ですら、おハナさん達と同じ様にその顔に困惑の色を浮かべている。

 

 

「い、いや…………俺は何も言っちゃいねぇ。」

 

 

大きく出遅れた3人を後目に悠々と良いスタートを切った大外枠のウマ娘を見つめながら、そうおハナさんの言葉に返した沖野。彼の瞳に映る大きくストライドを取って加速を続けるウマ娘、ナイスネイチャの行動は沖野からして一体何を企んでいるのか分からなかった。

 

大外の不利なぞ知った事かとハナを取り、2番手を走るウマ娘相手に2バ身、3バ身…………ついには5バ身以上離してもなお加速を止めないナイスネイチャ。端から見ているギャラリーの中からは小さくもハッキリと「掛かっている」とか「あんなペースで最後まで持つわけない」など、彼女の行動に困惑と驚愕も合わせた様な声が沖野の耳にも聞こえてくる。

 

しかし、しかしだ。この1年間でナイスネイチャの事を良く知った沖野から言わせれば、今この時も誰も寄せ付けず先頭を走っている彼女の表情を見るだけでナイスネイチャ自身が決して掛かっている訳では無い事が一目で察する事が出来た。

 

真剣に、焦りも無く、視界に映る全てを一刀の元に切り捨てんばかりに鋭く前だけを見つめるナイスネイチャの両眼に、唯一彼女が掛かっているのではないと理解している沖野…………そして沖野に続きこの中で最も長くナイスネイチャと付き合いのあるシンボリルドルフだけが、レースだけじゃないギャラリーを含めたこのグラウンドに居る全ての人間が彼女…………ナイスネイチャの作戦に嵌っているのだと理解した。

 

 

「自分が逃げを使うとしたら?」

 

 

沖野の脳内で思い出されるつい1ヶ月前の記憶。未だ本格化が続いており、満足にトレーニングが出来ず時間を持て余していたナイスネイチャがある日スピカの部室でそう沖野に聞いてきた事があった。

 

 

「うん、レースでさ? 前走、前々走と先行とか差しとかで走ってたウマ娘が行き成り逃げで走るって事例があるじゃん? もしくはその逆で今まで逃げで走って来たウマ娘がG1では行き成り差しで走って来たりだとかさ。」

 

 

そう言って自身が入れたインスタントコーヒーに口を付けつつ真剣な表情で沖野を見るナイスネイチャ。沖野自身も同じ様にコーヒーを傾けつつナイスネイチャの問いかけにどう答えるべきか頭を回していた。

 

 

「私自身、自分に一番合ってるのは差しってのは何となく分かるんだけどね。合ってるとか適正が無いとかそう言うのとは別にして、そう言う差しウマ娘でも逃げを使うって場合はあるのかなって話。」

 

 

「なるほどなぁ。」

 

 

確かに、ナイスネイチャの言う様にそう言った作戦を取るウマ娘は居る。だがそれはG1を何度も走る様な()()()()()()()()がレースの戦況を読んで咄嗟に作戦を変更した場合だったり、どうしても勝ちたいレースの為のトレーナーと賭けに賭けた一世一代の大博打であったりと決して常用出来る様な物ではない。

 

そもそもとしてトレーナーから見て逃げウマ娘と言うのはあまり評判の良い物ではない。

 

多くの逃げウマ娘の場合、大半のウマ娘はどうやってもバ群が苦手で先行や差しが出来ないウマ娘。それは性格的なものから体格差的なものまで色々あるが極論として逃げしか出来ないウマ娘達だ。未来においてツインターボの様なウマ娘がこれにあたる。

 

他の場合、先行や差しも出来るが最初から最後まで1番じゃないと気が済まない様なウマ娘も居る。こういうウマ娘は未来において先頭民族とか…………頭スッカスカーレットとか言われる物だ。未来のサイレンススズカやダイワスカーレットがこれにあたるだろう。

 

ミホノブルボンやセイウンスカイ。このウマ娘達は正確なラップタイムでレース全体の主導権を握る、賢さで逃げを取るパターン。マルゼンスキー? あんなのは例外中の例外だ。

 

沖野から見たナイスネイチャは生粋の差しウマ娘だ。先行も行ける、専用のトレーニングを積めば多分追い込みも行ける。だが逃げだけは何というか現状センスが無い。

 

と言うのもナイスネイチャはそもそもレース経験と言うのが少ない。同年代のウマ娘が何回も模擬レースに出る中で彼女が出走したのはたったの1回だけ。

 

次に出たのはリギルの展示レース。トレセン学園に入学してからの1年間で大人数でレースしたのはたったの2回だけなのだ。尤も、これについては彼女と仲の良いテンポイントのアドバイスで出走回数を絞って基礎能力をトレーニングしていたのもあるから一概に駄目だったわけじゃない。レース勘なんてデビューすれば幾らでも養える物だ。

 

逆に、1対1のレースや並走トレーニングは同年代でも屈指の経験をナイスネイチャは持っている。

 

並走トレーニングでは良くメジロライアンやエアグルーヴ、サイレンススズカ。たまにシンボリルドルフやシリウスシンボリ、ミスターシービーなんかとも並走している。そして何よりも1対1でシンボリルドルフやシリウスシンボリと競い合った経験がある。

 

どのウマ娘も、トレーナーとして指導してみたいと思える程素晴らしい能力を秘めているウマ娘達だ。そんなウマ娘達とトレーニングを励んでいるナイスネイチャのスペック、取り分けパワーやスタミナ、トレーナーという夢の為に培っている賢さと言った能力は同世代と比べて頭1つ抜けていると沖野は確信を持って言える。

 

 

「お前さんが何を例えにそんな事を言いだしたのか分かんねぇが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の喧騒がよりいっそう大きくなったことで、沖野は自分の意識を現実へと引き戻した。

 

視線を戻せば、バ群の中団に居たはずのミホシンザンがゆっくりとその位置を前へ前へと上げている。周囲の声が大きくなったのはそれが原因なのだろう。

 

未だ沖野の愛バであるナイスネイチャは先頭を譲らず、2番手との差を10バ身以上開いている。ただの逃げじゃない、レース展開をコントロールする様な賢い逃げでも、バ群が苦手故の諦めの逃げでもない。

 

例えるならそう…………今この場で固唾を吞んでレースを見守っているマルゼンスキーの様な…………

 

 

(まて…………俺はあの後なんてアイツに答えていた? )

 

 

先ほどまで思い出していた過去の記憶。暇なひとときの単なる雑談ゆえに何ともバカげた答えを言ってしまったはずだと、沖野は何とか思い出す。あの時は確か…………

 

 

「お前さんが何を例えにそんな事を言いだしたのか分かんねぇが…………差しウマ娘が適正外の逃げなんて一朝一夕で出来る訳ねぇ。だがもしそれで勝とうとするんなら…………レースそのものをぶち壊しちまう様な、圧倒的身体スペックでの蹂躙だろうさ。

 

 

あの時はそう、確かに沖野はそう口にした。不意に脳内に湧いて出た()()()()()…………そんな単語と共に思わずそう答えたのだ。

 

ナイスネイチャがあの時何故あんな言葉を口に出したのか、何故不慣れな逃げをもって今走っているのか、残念ながら沖野には分からない。

 

ナイスネイチャは差しウマ娘だ。今彼女の走りを見てもハッキリと逃げの才能は無いと沖野は言い切れる。今にも倒れそうな程苦しい表情を浮かべながらも、しかし眼だけは絶対に前を見据える彼女は確かに差しウマ娘だ。

 

スタートから最後の直線の如くスパートを決め、限界までリードを取れば後はもはや根性勝負と言わんばかりに粘るだけ。賢いナイスネイチャらしくもない身体能力頼りのゴリ押しの様なこの逃げは、沖野があの日思い浮かんだ()()()()()とは真反対。

 

()()()()()()と言わんばかりのその暴力的な走りをするナイスネイチャは、他の17人を寄せ付けることなくたった1人だけで向こう正面から最後のコーナーへと突入していく。

 

大き目だったストライドを狭め、ピッチを上げて内ラチ沿いを最短距離で駆け抜けるナイスネイチャだが、その顔には決して余裕の欠片なんて存在しない。

 

周りのギャラリーはやれ『差せ!』だの、『逃げ切れ!』などと選抜レースなのにまるでG1レースの様に声援を送るなかで、いつの間にか握りこんでいた拳を外ラチの柵に押し付けながら沖野は固唾を吞んでその時が来るのを待った。

 

一体何時の間に上がっていたのだろう。2番手のウマ娘を躱し、ついにナイスネイチャを射程圏内へと捉えたミホシンザンが一気にスパートを掛け始める。向こう正面で最大10バ身以上開いていたナイスネイチャとの距離は、ミホシンザンのスパートによって最早見る影もない。

 

7バ身から6バ身。6バ身から5バ身と、どんどん差を詰めるミホシンザン。

 

 

「…………いけッ。」

 

 

小さく、呟く様に聞こえたのは果たして誰の声だったのか。

 

 

「勝てネイチャ!」

 

 

もはや距離のアドバンテージなど無くなった。4コーナーを回り、残すは最後の直線のみ。このままナイスネイチャが粘り逃げ切るのか…………はたまたミホシンザンがナイスネイチャを差し切って1着を獲るのか…………

 

固唾を吞んで見守る沖野は無意識にそう言葉を掲げる。距離が距離だ、沖野が声を上げたとしてナイスネイチャに聞こえるかどうか。更に言えば例え聞こえたとして、沖野の言葉にどれほどの力があるというのか。

 

ミホシンザンとナイスネイチャとの差は最早1バ身も無い。このままではミホシンザンが早々に抜き去ってしまうだろう。

 

 

「勝つんだネイチャ! 」

 

 

沖野は声を出す。届く届かないなど関係ないと、これが俺の仕事だと言わんばかりに声を出す。そんな沖野に釣られる様にシンボリルドルフが、続いてマルゼンスキーが声を上げる。

 

おハナさんですら小さく『勝ちなさい』っと、誰に向けてなのかそう口に出した。これはリギルの選抜レースなのにそれでいいのか…………

 

そう、これは選抜レースだ。G1どころか重賞でもオープン戦でもない。リギル開催とは言えトレセン学園における小さな小さなレースである。実況も解説も無いレースで、それなのに集まったギャラリーはまるでG1レースの如く声を張り上げる。

 

どうしようもないのだ。此処にいる誰もがどうしようもなくレースが好きで、どうしようもなくウマ娘が好きで、どうしようもなくウマ娘に人生を狂わされたトレーナー(変人)なのだから。

 

 

「…………あッ。」

 

 

最初に気づいたのはシンボリルドルフだった。続いてトレーナーである沖野とおハナさんが気づく。

 

ナイスネイチャとミホシンザンとの距離は残り半バ身。先ほどよりも更に縮まったその距離は、しかしてそれ以上に縮まる事が無い。

 

先ほどまで余裕そうだったミホシンザンの表情が焦りに変わっている。どんなにスパートを掛けても、どんなに脚の回転を上げても縮まることの無いあと半バ身に。

 

 

「走りが…………変わった? 」

 

 

沖野の周りで実際にナイスネイチャと本気のレースをしたことがあるシンボリルドルフが最初に気づいた違和感。

 

今までのナイスネイチャの走りは脚のストライド幅やピッチを自在に変化させてその場その場で最適なコースを走るスタンスだった。それだけでも十分に素晴らしい才能なのだが、しかし走り全体のフォームとしては極端に変化させることは無かった。

 

精々がスパート時にやや前傾姿勢になるくらいだ。だが今のナイスネイチャは今までよりも遥かに前傾姿勢になっている。地面と平行…………とまでは行かないが、かなり深くまで前傾になっているその姿はまるで地を這うかの様で。

 

脚だってそうだ。今までは有り余るパワーを叩きつけターフを抉る様な走りだったはずなのに、今この瞬間の彼女の走りはまるで跳ねる様な大きいステップで地を跳ねている。

 

 

「すげぇ…………」

 

 

地を這い、地を跳ねる。相反する様な2つを、1つ間違えばバランスを崩してターフに倒れてしまう様な姿勢を絶妙なバランス感覚で前への推進力へと向けるナイスネイチャの新しいスタイルに、沖野は思わずそう声を出す。

 

シンボリルドルフは理解する。毎日毎日、1日も欠かさず柔軟をしていたナイスネイチャの努力によって得られた体の柔らかさ。それこそが今の彼女の走りの根幹でありそのフォームを支えている事を。

 

縮まらない半バ身。ナイスネイチャの切り札的なその走りによって残されたその半バ身はついぞ縮まる事無くゴールを迎える。

 

風を纏い、沖野達の眼前を通り過ぎて行った2人。3着以下はもはや大きく差を開き10バ身以上を広げている。

 

 

「勝った…………? 」

 

 

「えぇ…………ネイチャの勝ちです。」

 

 

3着以下が次々にゴールする中でポツリと呟かれた沖野の言葉にシンボリルドルフはしかりとそう言葉を返した。

 

ゆっくりと速度を落とし、流れ出る汗を右手で拭っているナイスネイチャを横目に、沖野は大きく息を吐いた。

 

 

 

「ハラハラさせやがって…………今までで一番心臓に悪いスタートだぜ。」

 

 

派手にやれとは言ったが、此処まで派手にやれとは言ってない。そして何よりも最後にナイスネイチャが見せたあの走り。

 

 

(予定してたトレーニング…………色々と考えなおさなきゃならねぇな。)

 

 

心の中でそう呟きながら、沖野は労いとお小言の為にナイスネイチャを迎えに行く。ひとまず怪我がないか確認は絶対だろう。あの走りの負担も見て脚も触る事になるだろうが、そこに関してはおハナさんにどやされようがそれだけは譲れない。

 

歩いて行く沖野に気づいたナイスネイチャが小さくこちらへ向けて拳を前に出した。その動作に沖野は苦笑して、同じ様にポケットに入れていた自分の手を握り締めて前へと出す。

 

距離もありお互いに届く訳でも無い。だがしかし、沖野は確かに突き出した拳に温かいナニカが当たった気がした。

 

 

 

(まぁ…………それもトレーナーの仕事よな。)

 

 

これからやる事は目白押しだが、沖野どうしようもなくトレーナーなのだ。

 

苦笑だった顔が笑顔になるのにそう時間は掛からない。

 

キラキラと、こちらに笑顔を向ける愛バに約束通り『おめでとう』を言う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「因みに…………何で逃げたんだ? 」

 

 

「いや、普段から先頭民族(サイレンススズカ)と並走してるから行けるかなと。」

 

 

「バ鹿かお前!? 」

 

 

後日、そんなやりとりがスピカの部室であったとか無かったとか…………

 

 

 





要約

過去

ネ「差しウマが逃げるにはどうしたらいい? (トレーナーになる為の純粋な疑問)」

沖「マルゼンスキーじゃね?(普通は勝てんよ)」


レース

ネ「スキルは無いけどスズカと並走してるし、2400走れるパワーとスタミナあるから2000くらい逃げれるでしょ! 」

沖「頭マルゼンスキィィィィ! 」


実はお前ら絶妙に噛み合って無いな?

正直なんでこんなお話しになったのか私にも分からない。
書いては消して書いては消してを繰り返してたらいつの間にかネイチャが逃げていた……

私には見える…………批判の嵐が見える。(けどこれ以上遅くなったらきついのです)

シガーネイチャのジュニア期以降の進路

  • ルドルフ先輩に続け無敗三冠
  • いやいや、トリプルティアラこそ至高
  • もっと上を目指そう海外クラシック挑戦
  • 良いパワーしてるね?国内外ダート挑戦
  • その他
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