皆さんの一番好きな競馬場は何処ですか?
私は絶対に『荒尾けいば』です。
地方競馬でもう無くなってしまいましたが、有明海に面したあの美しい競馬場は潮風を感じ、有明海を背に走る競走馬を見ることが出来る私の中で世界で一番美しいと感じた競馬場でした。
無くなった時私はまだ小学生で家族も親族も競馬をしていなかった為一度も入ることはありませんでしたが、ウマ娘を知ってから改めて地元市民として懐かしさと無くなってしまった悔しさが募ります。
もし知らない方が居ましたらネットで写真を探して見てください。きっと気に入ると思います。
あぁ、荒尾ダービー見たかった…………
11年越しだけど、優勝おめでとうリリー。
『皇帝 シンボリルドルフ』
誰もが知る無敗の三冠馬にして史上初の七冠を達成した名馬中の名馬。
「レースに絶対はないが、“その馬”には絶対がある。」
このJRAのCMのセリフが、そんな彼女の全てを表しているだろう。
全てのウマ娘の幸福を願い、その為ならばどんな苦難にも立ち向かう覚悟を持つ人徳者であり、生徒会長としてウマ娘のレース競技全般を盛り上げることに力を入れている。
それが私の知っているシンボリルドルフであり。今現在、目の前で耳を絞り脚で床を搔いているどう見てもまだ本格化前で幼さの残るシンボリルドルフは別人である…………と思えたら良かったんだけど。
(うわぁ…………いかにも私不機嫌ですって感じですよこれは。)
モンテプリンスさんが帰った後、取りあえず立ち話もあれだからと部屋へと入れてもらったはいいものの、不機嫌オーラMAXのシンボリルドルフ相手にどう話しかけていいか分からず無言の状態が現状だった。
部屋へ入った後に一応私のベッドと届いた荷物の場所は教えてくれたのでその整理をして気を紛らわせているが物凄く気まずい。
なにせ荷解きしている私の後ろでずっと腕組みしながら立っているのだ。しかも最初に言った通り耳を絞って脚で床を蹴るという不機嫌だと目に見える形で。
(どう話しかけたら良い物か…………今後の事を考えると流石に不仲になるのはまずいしなぁ。)
今は生徒会長はテンポイントさんがやっているが、多分確実に次の生徒会長はシンボリルドルフである。ここで印象最悪のまま不仲だと確実に色々と問題が出てくると思うし、出来ればそれは避けたいしアプリでお世話になった身としても是非仲良くなりたいとも思う。
「君は…………」
現実逃避の荷解き中、後ろから私を呼ぶ声が聞こえて意識が現実へと戻る。恐る恐る振り返ればシンボリルドルフは先ほどと同じ立ち姿のまま。違うのは先ほどまで絞られていた耳と床を蹴っていた脚が元に戻り不機嫌モードが解除された事だろうか。
「あ~ナイスネイチャだったか?その…………何故遅れたのか、教えてくれないかい?」
やや口ごもりながらも改めてそう話しかけてきたシンボリルドルフに、そう言えばお互いモンテプリンスさんに教えられただけでちゃんと自己紹介していなかったなぁと思いだした。
私は前世からシンボリルドルフの事を知っていても、彼女からしてみれば寮長から名前を聞いただけで私の事など何も知らない。初対面の私にどうアプローチしてよいのか分からなかったのだろか?
取りあえず、既に荷解きは切りのいい所まで終わったし、改めてシンボリルドルフと自己紹介して念の為遅れた理由を話そう。そうすればシンボリルドルフの機嫌も多少良くなるはずだ。というか寧ろ良くなって貰わないと困る。主に同室の私が!
「改めまして、今日から入学してきましたナイスネイチャです。これからよろしくお願いします先輩。」
シンボリルドルフへと向き直った私は遅れた謝罪の意味も込めて、私は自己紹介した後深々と頭を下げた。
「シンボリルドルフだ。その…………頭を上げてくれ、話し辛い。」
まるで記者会見で有名人が謝罪するが如く深々と直角90°で頭を下げ続ける私に、シンボリルドルフはやや困惑したような声音で答えた。
てっきり不機嫌感満載で答えられると思っていた手前、予想外の反応に私も困惑する。あれ?ルドルフってこんな感じだったっけ?
頭を上げた私は改めてシンボリルドルフを見る。腕を組んでいるのはそのままだが雰囲気は先ほどよりも柔らかくなった感じがする。
「えっと、良ければ遅れた理由を話して貰えないだろうか?」
そう切り出したシンボリルドルフに私は昼から起きた出来事を話す事にした。
「えっと、少し生徒会に行ってました。」
「何?生徒会に?」
「はい、生徒会に。」
私が答えた瞬間、シンボリルドルフの耳がピョンと跳ねた。
「もしかして入学そうそう何か問題でも起こしたのか?
いかんぞ、中央トレセン学園に入学したからには品行方正、文武両道で行かなければ。
特に生徒会長のテンポイント会長は問題児には特に厳しく当たることで有名なのだが、テンポイント会長に目を付けられれば同室の私としても彼女には申し訳が立たないからな。」
「その、テンポイントさんとお話を。」
「もしかしてもうテンポイントさんに迷惑をかけてしまったのか?それはいけないぞ、同室のよしみで明日私も付き添ってやるから二人で謝りに行こう。誠心誠意、きちんと謝罪すればテンポイント会長も許してくれるはずだ。」
私の話を聞くといいながら明後日の方に話を飛躍させるシンボリルドルフを見て、私は先ほどとは別の困惑が頭を支配した。
(あれ、シンボリルドルフってこんなポンコツだったっけ?)
もっとこう、シンボリルドルフは普段から冷静沈着意気自如なイメージがあるのだが、今のシンボリルドルフはアニメでトウカイテイオーがキタサンブラックとサトノダイヤモンドを案内している時のあの雰囲気を感じる。なんというか、お姉さんぶっているというか先輩ぶっている感じがする。
今も私を気にすることなく色々と喋っているシンボリルドルフの仕草も、矢張り何処となくアニメのトウカイテイオーに似ている。
(ウマ娘で血縁関係は無くなってもヤッパリ親子なんだなぁ)
こんな状況下で、ついそんなことを考えてしまった。意外な事実にほっこりするのは仕方ないと思いたい。
「だから、そのような事になる前に私も君に付いて行ってあげるから誠心誠意、テンポイント会長に謝って…………って聴いているかい?」
「あ、はい聞いてまs」
シンボリルドルフに視線を合わせようとして、落ち着いた事で今まで気づかなかった、というか意識できなかった事に私は気づくことが出来た。
まず部屋、子供がよくお祝いの時に作る折り紙の輪っかをチェーンの様に繋げた、あれの正式名称を何て言うのか知らないけどそれが部屋に飾られてたり。折り紙で作られた飾りが壁に貼ってあったり…………
そして慌てて隠したのか、クローゼットからはみ出したコピー用紙。一枚だけはみ出たそれには大きな文字で『入』の文字が見える。
シンボリルドルフを無視するのは気が引けるが、気になったのでそれを引っ張り出してみた。
「ッ!?それは出さないでくれ!」
慌てて遮ろうとするシンボリルドルフの静止を無視して、クローゼットから引っ張り出したコピー用紙。何枚ものコピー用紙の端と端を糊付けされ大きな一枚紙にされていた紙に書かれていたのは
『入学おめでとう』
と油性ペンで一生懸命明朝体で書かれた文字だった。
そして先ほどまでのシンボリルドルフの言葉を思い出す。
まだ顔を合わせて1時間も経っていない私の為に一緒に謝りに行こうとしてたり、シンボリルドルフらしくない先輩ぶった口調で話していたいり…………
「もしかして…………私を心配してくれてたんですか?」
私がそう問いかけると彼女はビクンと肩を震わせた。耳も尻尾も一気に毛が逆立ち、そして忙しなく揺れる。
「な!?何をいきなり言い出すんだ!わ、私は別に…………」
「シンボリルドルフ『先輩』?」
「!?」
私がシンボリルドルフを先輩と言った瞬間またしても彼女の肩がびくつく。
「…………た。」
「?」
「初めて、後輩が出来たんだ…………先輩として…………お祝いしたかったんだ…………」
(何この子可愛い!)
しおらしく、というか半ばイジケた様にぽつぽつ語りだすシンボリルドルフ。どうやら、彼女は小学校の頃は容姿端麗、成績優秀。そしてウマ娘としても同年代のウマ娘に敵うものは居らず、その所為か同じ小学校の子達からは妬みゆえに虐めを受け殆どを不登校で卒業したらしい。だからなのか彼女にとって私、ナイスネイチャが初めての後輩であり、そして同室という事もあって嬉しくて慣れないながらも歓迎しようとこういう事をしたらしい。
先ほどの早とちりも、私があまりにも遅かった為に何かに巻き込まれたんじゃないかとか、入学したばかりで知らず知らず問題行動を起こしてしまったのではないかと勘違いしたらしい。
しゅんとしながら話す姿は正直めちゃくちゃ可愛い。これが後の皇帝になるんだぜこれ。
私が後輩なのだけど、思わず
「シンボリルドルフ先輩、有り難うございます。私とても嬉しいです!
あと、心配させてごめんなさい。ちゃんと理由を話しますね。」
あたふたするシンボリルドルフにそう言葉を送れば、『そうか……良かった。』と安心したように言って抱きしめ返してくれた。これはマーベラス!
名残惜しいが、シンボリルドルフから離れてきちんと、昼からの事の始まりから私は話した。
生徒会室に挨拶しに行こうとした時は『何故そうなる?』と突っ込みを貰ったけれども、テンポイントさんとお茶しながらレースのお話を聞いた時の話をしたら『私も話を聞きたかった』と残念がり、夢の件ではテンポイントさんに啖呵切った私に大爆笑してくれた。アプリやアニメでは見られない珍しいシンボリルドルフの表情を見れて、私は大満足でした。
私は生前の知識で知っていたのでアレだが、シンボリルドルフからしてみれば私の夢は彼女の夢とも一部被る事もあり、同志を見つけたと思ったのだろう。満面の笑みで私はシンボリルドルフに握手されて、トレーナーになりたい私の夢を応援すると言ってくれた。
「シンボリルドルフでは長くて言い辛いだろう?今度からルドルフでいいよナイスネイチャ。」
「私も、ネイチャと呼んでくださいルドルフ先輩。」
そうして、最初のやや険悪な雰囲気は何処へ行ったのやら。遅れた分を取り返すかのように私とルドルフ先輩は遅くまで話に華を咲かせた。
…………それこそ消灯過ぎてまで話過ぎて寮長のモンテプリンスさんに二人とも拳骨を貰うくらいには。
「ネイチャ。」
「何ですかルドルフ先輩?」
「おやすみ。」
「…………先輩も、おやすみなさい。」
こうして、私の入学初日はドタバタしながらも幕を下ろした。明日からどんなことが待っているのだろうか。
そう楽しみに思いながら私は眠りについた。
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