元人理救った人類最後のマスターその2、現在クリプター 作:Mr.ドリアン
オリ主がいるFGO。第二部pv
星の形。
宙の形。
神の形。
我の形。
天体は空洞なり。
空洞は虚空なり。
虚空には神ありき。
あー、テステス。
聞こえてるか?うん。問題なさそうだ。
初めまして、人類最後のマスター諸君。
まずは、人理修復お疲れ様。とでも言っておく。
終わってないマスター諸君は、これからの頑張りに期待してる。
見てみろ。これが世界の末路だ。
まったく、酷い話だな。
世界の為に旅をした者たちに世界が与えたのが、ただの足切りとは。
まぁ、しょうがないと言ったらそこまでなんだけどな。
世界そのものの防衛本能。
なぜ?どうして?お前たちが悩む必要なんてない。これは、ただのこの世の摂理なのだから。
弱いやつは、切り捨てて当然。その役割がただ、お前たちに回ってきただけ。
ん?僕が何者かだって?
それをお前たちが気にする必要はない。
僕は人理修復の先にあるお前たちの次の旅の最果てを見届ける者。
ただの、語り部だ。
Lostbelt No.1
叛逆の白い弾丸
永久凍土帝国 アナスタシア
空想の根が落ち、誰もお前たちの呼びかけには答えない。地表は漂白され、この星は独りぼっちになってしまった。
LostbeltNo.2
再誕する初まりの⬛⬛
無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング
濾過異聞史現象。白に埋め尽くされた汎人類史はまったく別の新しい汎人類史へと上書きされる。
Lostbelt No.3
紅の月下美人
人智統合真国 ⬛⬛⬛
この星はお前たちのものではなくなったんだ。お前たちは奪われた。なら、奪い返さないといけない。
Lostbelt No.4
踊り舞う破壊の少女
創生滅亡輪廻 ⬛⬛・⬛⬛⬛⬛⬛⬛
だが、忘れるな。お前たちが侵略者なのだということを。今まで通り、味方がいるなんてことは、考えないことだ。
Lostbelt No.5
神を撃ち落とす日
星間都市山脈 ⬛⬛⬛⬛⬛⬛
帰る場所をなくしてしまった。戦う大義など既に存在しない。だけど、託されたものがまだ残ってるだろう?
Lostbelt No.6
星の生誕、厄災の帰路
⬛⬛円卓領域 ⬛⬛⬛⬛⬛・⬛・⬛⬛
それが大切だというのなら進むといい。それを無くせば、お前たちの道しるべは何もかも失われてしまう。
Lostbelt No.7
⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛
⬛⬛樹海⬛⬛ ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛
この旅路は困難を極めるだろう。きっと、心が折れてしまうようなことだって、ありえるかもしれない。
Lostbelt No.8
⬛⬛⬛⬛⬛
⬛⬛⬛⬛⬛⬛ 日本
しかし、それでも諦めないのがお前たちだ。いつだって、いままでだってそうだっただろ?
現状、僕がお前たちに聞かせられるのはこれくらいだ。
ほら、何を突っ立ってる。さっさと歩け。その先になにがあるのか、それは自分の目で確かめろ。
言えることがあるとすれば、後ろを見たとしても、その歩みは止めないことをオススメする。
せめてもの、君の先輩からのアドバイスだと思ってくれ。
Fate/Grand Order
Cosmos_in_the_Lostbelt
オリ主「さぁ、お前の輝きを見せてみろ!」
第二幕の序章Ⅰ
「…………………」
煉瓦作りの壁でできた部屋の中、大きなベットと机と一組の椅子、そしてパチパチとオレンジ色の火音を立てている暖炉のみが置いてある質素な部屋。
そこで、椅子に座りながら灰色の髪の青年は分厚い本のページを開いていく。すると、急に文字がなにも書いていない白紙のページが開かれる。青年がそのページを開いて待っていると、文字が浮かび上がってきた。
『この本を読んでいるということは、無事に蘇ったということだろう。そして、カルデアを無事に制圧できた、ってことだ。じゃなきゃこれを読んでるわけねぇよな!これで読まれてたら、俺っち恥ずかし過ぎてあの世から蘇っちゃう♡まぁ?君でもできるだろうっていう仕事だからな。できなきゃおかしいよね。なに?出来てない?お前、魔術師むいてないよ(真顔)』
「……………」
浮かび上がった文字を見て、青年の額に僅かに青筋を浮かぶ。青年が静かに椅子から立ち上がると、本から手を離す。本がそのまま地面へと向かうさなか、青年は腰から特殊な加工がされているであろう白い拳銃を取り出し、本に向けて、6発、銃弾を発射する。
本は銃弾が当たった衝撃で部屋の壁まで吹き飛ぶ。しかし、それだけである。銃弾が当たった本の表紙には黒い焦げた跡なども伺えず、青年はそれを見て、舌打ちを打つと本を拾いなおし、先程のページを開きなおす。すると、先程の文字が消えて、新しい文字が浮かび上がってくる。
『今撃った?撃ったよね?m9(^Д^)プギャー。この本を破壊しようとしたって、無駄無駄無駄なんだよ。銃で撃とうが、隕石ぶつけようが、炎で焼こうが、水で濡らそうが、損傷のその字もしないレベルで完全無欠な本なので、チミごときではなにもできませーんwwwww』
「……………『
青年が更に青筋を浮かべ、なにかを呟く。すると、青年の腕と銃に青い血管のようなものが浮かび上がる。そして、再度青年は本に向かい銃を発砲する。銃弾には紫電が走り、本に着弾した瞬間、バリバリィッ!という電気の走る音が部屋中に鳴り響く。更に青年が銃に装填の様子を見せない中、銃は鳴り止まぬことを知らぬように本へと銃弾を放ち続けていた。
しばらくして、銃声が止み、電撃で生み出された煙が晴れる。そこには、傷の一つもついていない本が青年を嘲笑っているように落ちていた。本は先程の開かれたページのまま、青年の向いており、そこには、新しい文字が―――
『だーかーらー。いくらやったって無駄なんだよ無駄無駄wwww。でも、やっちゃう。やめられないんだよね(慈愛の目)。しょうがないね。そこに痺れる憧れちゃう年頃なんだよね。いい加減、卒業しなきゃ。しつこい男は嫌われるちゃうぜ?これだから時計塔にいるときも彼女の一人もできなかったんだよ。』
「余計なお世話だ!」
本の著者の言葉は青年の気にしている部分にクリーンヒットし、青年の堪忍袋の緒が切れた。青年は本を蹴り上げる。本の著者のイカれた情緒に当たるように。腰にあるもう一丁の赤い銃にも手をかけるが、寸での所で抑える。
青年は肩で息をしながら、本を睨みつける。息が整った所で、青年は本を拾い上げて、再び本を見る。いい加減、真面目に話を始めろとこの場にいない本の著者に悪態をつきながら。
『さて、そろそろ真面目な話をしないと怒られそうなんで真面目な話をしよう。まず、この本にはなにが書かれているか、だな。本らしく目次から入ったはずだから、気になって一通りここのメッセージ以外は読んだと思ってる。簡単に言えば、それは"七つの物語"だ。』
青年の思いが届いたのか、文字には先程のような青年をからかうような表現がなくなっていた。文字は、そのまま霞のように消え、新しい文字が浮かび上がる。
『『永久凍土帝国』『永遠氷焔世紀』『人智統合真国』『創生滅亡輪廻』『星間都市山脈』『妖精円卓領域』『黄金樹海紀行』。この七つの物語。俺達と同じ、『明日』を奪われた世界の物語ってところだ。あと、回収してあるだろうけど、本の近くにあった七つの箱あっただろ?あれは、所謂、着火剤だ。』
青年は机の上に置かれた七つの小さな箱を見る。その上にはそれぞれ違うマークが刻印されている。本に顔を戻せば、新しい文字と絵が浮かび上がっており、それぞれの世界に対応しているマークを名前と共に示していた。ページの隅っこに『著作権違反に当たるので写真は撮らないで、ちゃんとノートをとるようにしてください。』と書いてあるのが見えた。青年は顔を顰めながらも、世界のマークに合った箱をその世界で使え、という事だと青年は理解し、スマホを取り出して本の絵の写真を撮る。
すると、文字が変化し、『あ!撮った!今撮ったね!プンプンだぞ!』と文字が浮かび上がり、青年が再び銃を抜いて文字に突きつけると、文字は逃げるように絵と共に消えていく。そして、別の文字が浮かび上がってくる。
『なんだったら、今ここで見てもいいんだぜ?』
「…………なら、言葉に甘えるか」
青年は、『永久凍土帝国』の箱を手にすると、蓋を外して、中を見てみる。中に入っていたのは、幾つかの素材のようなものと、一つの本だった。青年は本を手にとって表紙を見る。そこには、『これでも貴方も一流マスター☆誰でも英霊召喚セット』と巫山戯たフォントで巫山戯た内容が書かれていた。軽く中を見た青年は、自分が所属していた組織の所長にでも渡してやれば良かったのでは?と考えるが、箱の中身は、想定内だったのか、あまり大きな反応はなかった。
『因みにお前のいる異聞帯の箱は言ってしまえば、一番扱いやすいやつだ。『チュートリアル』に扱いづらいものを持ってこられるのは困るだろ?』
青年には、この場にいない本の著者のケケケと笑っている顔が浮かんでくる。
『それと、俺からお前へのプレゼント。受け取ってくれたか?それを使って英霊召喚すれば、移動が便利になると思ってな』
青年は再び、机の方へと視線を向ける。青年の視線の先にあるのは、箱の横に置いてある長めの首紐で括られている、なにかの破片のようなものだった。
『いいか、親友。『物語』ってのは、盛り上がりがなけりゃ、『読者』が『飽き』ちまう。そして、そんな俺達の『読者』が求めているものは、『英雄』だ』
青年は静かに本を見る。
『『英雄』ってのは、『成長する』奴のことを言うんだ』
『そんでもって、『成長』ってのは、『生きる』ってことだ。』
『『今日』を乗り越え、まだ見えぬ『明日』を目指す。』
『そのために『昨日』から『学ぶ』。』
『それが『生きる』ことだ』
『親友。お前はきっと、なにを当たり前のことを、と思うだろうな。』
『けどな、『明日』を持ってくるのは、いつだって『英雄』なんだ。』
『当たり前のことができるからこそ『英雄』なんだ。』
『今、俺の吐いているこれは、陳腐であり、使い古された言い回しだ。』
『思春期の男子ならば思いつくであろう、そんな言葉だ。俺だって、昔にちょっと考えた。』
『だが、それが『普通』なんだよ。『昨日』の『学び』を『模倣』して終わるんだ。あ?なんでか?』
『『凡人』だからだよ』
『『英雄』ってのは、そんな『凡人』の言う『当たり前』ができる者のことを言うんだ。』
『『凡人』は、『昨日』に縋って排他的に、事務的に、『今日』を繰り返す。本当にそれは『生きて』いるのか?』
『『飽きられた』『物語』の末路は惨憺だ』
『紡いだ本人ですら、『忘れる』んだからな』
『だから、『飽きられ』ちゃダメなんだ』
『『読者』は常に求めてるんだよ』
『手に汗握る闘争を』
『なぜか?戦いにしかない『快楽』を求めて』
『ドキドキするような苦難を』
『なぜか?『愛でたい』からさ。苦しみ、嘆く『英雄』を』
『涙なしには語れない別れを』
『なぜか?『憐れみ』たいのさ。大事な人を失くした『英雄』の気分になって』
『心温まる愛の話を』
『なぜか?『帰り』たいのさ。かつての温もりのあった場所へと。少しでも』
『誰も紡がないんだったら、俺達が紡ごうじゃねぇか』
『そしてなにより。俺も見たいからな!『英雄』の輝く様を。というか、俺の『推し』を英雄にしたい。いわば、『推し活』ってやつだ。』
『おっと、つい本音が』
『さて、なんかカッコイイ始め方ないかねぇ。うん、これでいいか――――』
『―――これより始めるは、『明日』を取り戻す物語の第二幕!『焼かれた昨日』を取り戻した者たちの、『漂白された今日』を取り戻す物語!』
『さぁ、親友。『人類』を『成長』させるためにも、お互い頑張ろうじゃねぇか!』
青年は薄っすらと顔を覚えている人類最後のマスターを憐れむ。こんな人でなしに目をつけられたのだから。
『藤丸くん。あの彼が命を賭ける。それ程までに魔術王ソロモンは、ゲーティアという敵は強大だったんだ。だから、君がそのことを気に病む必要はない』
―――私は、必要だったのかな。
『藤丸くん。その、ちゃんと寝てるかい?だめだよ?ちゃんと休まないと。え?僕?も、もちろん寝てるとも!』
―――貴方がいなくなってから、いつも考える。
『そんなところでなにをしている。………落ち着かないのはわかる。好きにすればいい。ん?それはなんだ、だと?察しがいいと助かるが?』
―――私は、守られているだけだった。
『まったく、随分暗い顔ね。いいこと?貴方は世界を救った一人なの。功労者が暗い顔してたらなにもできないじゃない。…………悪いと思ってるなら、しっかり前を向きなさい』
―――私は、なにもしてない。
『せ、先輩!えっと、こ、困ったことがあったら、たくさん私を頼ってください!私も弱いままではありませんから!』
―――私は、あなたに後を託されるような人じゃない。
『忘れるな。あの男を殺したのは、この世界でも、私でもない』
―――貴様だ。藤丸立香
「…………はっ!」
目が覚めれば、そこは少女、藤丸立香がいつも使っている自室の風景が目の前に広がる。心臓がうるさい。彼女がこの夢から覚めたときに最初に感じるのは、これだった。
人理焼却
人が焼かれ、国が焼かれ、世界が焼かれ、歴史が焼かれ、唐突に人の歴史に終わりは訪れた。最早、そこに人類の生存する場所はない。しかし、立ち上がる者達がいた。人理継続保障機関フィニス・カルデア。彼らの働きにより、人類は『昨日』を取り戻した。。たった一人の男の死を代償に。
「随分うなされていたな」
「…………え?」
自室に、正確には自身が寝ているベットの横から見知らぬ男の声が聞こえ、悪夢にうなされ、徐々に回復してきた立香の思考が一気に固まる。ゆっくりと横を見れば、そこには、椅子に座って厚い本を読んでいる青年がいた。
「えっ、と………」
「初めましてだな、藤丸立香。世界を救った者。僕は、まぁ、君のファン、ってことでいいか?」
「い、いいかって……」
青年と面識などある筈もなく、初対面なはずなのに何処かフレンドリーな自分のファンを名乗る謎の青年に立香は、困惑で言葉が詰まる。そもそもここは、女子の自室だぞこのやろー。立香が口にこそ出さなかったが、最初に出てきた言葉だ。
ふと、立香は青年の持っている本を見る。
「『異聞帯』?」
「ん?あぁ、この本のことか。『異聞帯』。世界に見放された世界。地球により剪定された、発展の見込みなしの烙印を押されたifの世界。人類が歩むかもしれなかった世界の可能性。これには、それが書かれてる。まぁ、一部だけどな」
立香が最初に思ったのは、なぜそんなものが書かれている書物があるのか、だった。だが、それを考えてもこんな、謎が謎を呼ぶような意味の分からない状況でその答えがすぐに出るわけもない。
「例えば、これなんかとうだ?タイトルは『永久凍土帝国』って言うんだが」
そんな中、青年は状況を理解できていない立香をからかうように本の中にある一つの物語を語りだす。
「『むかしむかしのそのむかし。そこは、やまない冬の国』」
日本の昔話のような始まり方だった。日本だったらよく聞く、桃太郎や浦島太郎といった童話の始まり方。立香自身も聞き馴染みのある物語の始まり方。
「『冬はぜんぶをしろくしちゃった。冬は太陽をかくしちゃった。家にいてもさむいのに。外になんて出られない。ここは、さむいさむい冬の国。』」
立香が想像したのは、吹雪の吹き荒れる外を家の中から肩を抱えて、震えて、外を眺める主人公だった。
「『ある日、王様は、わたしたちに毛皮をくれました。とてもとてもあたたかい動物の毛皮。これがあれば、あそびにいける。さむさなんて、こわくない』」
どうやら、主人公は毛皮を手に入れたようで、それを羽織って外に出て、笑いながら遊んでいる絵が立香の中に浮かぶ。始まり方が絵本のような感じなためか、頭に浮かぶイメージも可愛らしいタッチになっている。
「『でも毛皮があると、おなかがへっちゃう。あそびすぎちゃったみたい。いっぱいごはんを食べて、またあそぼう』」
立香は青年の語る物語に思ったよりも聞き入っていた。それは、久々にされる読み聞かせによる懐かしさが蘇ったという部分もあるが、なにより青年の語りが上手い。
「『でも、おひめさまには毛皮はいらないみたい。雪みたいに真っ白なおはだに雪の中でもキラキラひかるかみ。わたしはちょっと、羨ましい』」
毛皮を被って外にいる主人公が、毛皮を被らないで外に出てる綺麗なお姫様を見ている絵が立香の頭に浮かび上がる。
そこまで読むと、青年は急にパタンと本を閉じる。
「さて、話はここまでだ」
「え?」
唐突に終わった語りに立香は思わず、声が出る。
「話の続きは、きっとこれから知れるだろうからな」
「それは、どういう」
青年は語らない。なにが起こっているのかわかっていない立香を見るのが、楽しくて仕方がないように。それとも、なにも理解していない藤丸立香を嘲笑うかのように青年はただただ優しい笑みを浮かべる。
「なぁ、藤丸立香。お前は今、どう思ってるんだ?」
「え、ど、どうって………」
「そのままだよ。アイツのおこぼれで英雄扱いされて楽しいかい?」
立香は理解する。この青年は、彼の関係者だと。どうやって来たのか、どうやって彼の訃報を知ったのか、知りたいことはいくつかあるが、青年がここに来たのは、きっと自分に恨み言でも言いに来るためなのだろう。
「アイツは、優秀だった。ほぼ一人で人理修復を成し遂げたんだからな。調子者だが、やるときはやるやつだ」
青年の顔は、何処か懐かしむような顔であり、どこか寂しそうな顔だった。
「それに対して、お前はどうだ?」
途端、青年の視線は、立香へ移る。青年の目は彼女を真っ直ぐ見据える。その瞳の中にあるのは、怒り。
「ただレイシフトの適正があってスカウトされただけの日本の高校生だった元一般人。学校での成績はよくて上の下。魔術師としても元一般人な為、勉強中の三流以下。教えてくれよ。なんで、アイツは死んで、お前は生きているんだ?」
立香は、顔を俯かせる。青年が告げているのは単なる事実でしかない。立香は、返す言葉などない。それもそうだ。人理修復において、なにもしていない自分とお荷物を抱えて完遂まで持っていた彼。器の価値というものが違う。比べるのすら烏滸がましく感じてしまう。
それを見て、青年は肩を落とす。
「………なにか言い返してみろよ。せめて」
「……………だって、事実だから」
その言葉に青年は少し目を見開く。立香がそう言ってくるのは、予想していなかったようだ。
「…………見に来といて正解だったな」
「え?」
そして、青年は、近くにいる立香にすら聞こえないような小さな声でボソッと呟く。そして、青年は大きくため息をつく。
「一応、ここに来た時、特異点攻略時のことを知っておきたくてね。勝手に読ませてもらった」
そして、彼は懐から紙の束を出した。どうやら、特異点における攻略後に書かされたレポートのコピーのようだ。立香としては、そのレポートは、手伝ってもらってやっと書き終えた記憶があるので、苦手意識が強い。
「竜の魔女、神祖、ギリシャ神話最強の英雄、毒の街、ケルトの大英雄、円卓の騎士団、原初の母。そして、魔術王。一般人どころか、魔術師だろうが体験するようなものじゃない」
面白そうに紙をペラペラを捲って、青年はレポートの中身を読んでいく。そして、立香にとあるページを開いて渡す。それは、立香がオケアノスの特異点の際に書いたレポートだった。
「お前のレポートは、基本に忠実だ。だが、その頃から言葉の節々に自分を卑下している節が見られる。それにお前は、さっきの言葉を言われ慣れてる節がある。ここの奴等は、ドがつくほどのお人好しだ。特にロマニやマシュは絶対にそういうことを言う事はない。そういう奴らだ。なら、誰がお前にそんな言葉を投げるのか」
立香は息がつまる感覚がした。それは、立香自身が目を逸らしてきた部分。見たくなくて、理解したくなくて、避けてきた部分。
「お前自身が自分に―――」
立香はベッドから飛び出し、青年に掴みかかっていた。顔は青白くなり、体からは油汗が吹き出ていて、息も荒い。これ以上、なにも喋るな。立香の釣り上がった目がそれを語っている。
立香自身が自覚できていない部分にあるそれ。自覚していない無意識の領域にある自身への呵責。それは、積もり積もって感じていた自分の無力さの現れ。ずっと、後ろで守られているだけだった自身への無力感。彼女は、正直に言ってしまえば、彼に化けて出てきて、恨み言を、呪詛を吐いてほしい。なんでお前が生きてるんだ、と。俺が死んでお前が生きているのはおかしいだろ、と。絶対にしないとわかるが、彼女は死んだ彼にそれを求めてしまう。
「迷子の子犬みたいだな。どうした?飼い主はどこだ?」
「……………うるさい」
青年は困ったように顔を歪める。それはまるで、思ったよりも面倒な仕事を押し付けてきた上司に悪態をつくような雰囲気があった。
「安心しろ。お前は知らないだろうが、アイツは意外と残酷なんだ。自分が平然とできることを他人に普通に求めてくる。アイツの感情の基本的な部分にあるのは自分か、会ったこともない何処かの英雄だからな。まぁ、魔術師の中ではまともなアイツの魔術師らしい一面でこそあるが」
気付いたら、立香はベッドの上に戻っていた。それを理解すると、彼女は驚いて周りをキョロキョロする。目の前の青年は、動揺する立香を尻目に話を続ける。
「これから始まる旅もこの世界を救う為の旅だ。だが、お前はアイツを知らなすぎる。それはこの旅でお前を――ん?ちっ、うるさいぞキャスター。今、大事なところ………わかった。わかったからそれはやめろ」
突然、青年が誰かと話したと思うと、青年は大きくため息を吐いくと、本を持って、椅子から立ち上がる。
「さて、藤丸立香。明日には、フィニス・カルデアの新所長がやってくるだろう」
「新、所長………?」
「アニムスフィア家にとって、死んだことになっているオルガマリーの組織なんて、いつまでも守ってやる義理などない。維持費だってある。アニムスフィア家は金を積まれて、ここの利権をあっさり渡したよ。まぁ、外の奴らにとって怖かったのは、なにより先の戦いで死んだアイツだ。アイツが生きてたら、誰も手を出そうなんて思わないだろうが」
青年は淡々と事実を告げる。
「新しい旅がもうすぐ始まる」
青年は立香を見据える。
「次に始まる旅で、お前達は悪だ」
立香を祝うように―――
「託されたものを胸に勝ち残ってみせろ」
立香を慈しむように―――
「正義だなんだじゃなく、自分の『信念』に従え」
立香を嘲笑うように―――
「他者を蹴落とし、『今日』を掴み取ってみせろ」
立香を試すように―――
「その先で、アイツは待っている」
しかし、青年は立香に期待するのだ。
「失礼するよ。主人公」
火神水琴という男が全てを託した一人の人間を。
「失礼します。先輩」
自室の扉が開く。立香は、はっと我に返る。気付いたら、青年はもう何処にもいなかった。そして、開いた扉の先には、立香の頼れる後輩、マシュ・キリエライトが立っていた。
「先輩、どうかしましたか?」
「…………ううん。なんでもない」
立香はベッドから立ち上がり、後輩の元へと向かう。きっと、狐にでも化かされたのだろう。立香はそう言い訳をして。これ以上、迷惑をかけないためにも。
オリ主の名前、判明!(やっとそれっぽいのが思いついた)
一回投稿すると、そこから2、3回は少し筆が乗ります。
第一部→オリ主"のせい"で難易度を調整
第二部→オリ主"が"難易度を調整
オリ主くんは2023年になって、蔑称にタヌキくん大好きな蛙さんの名前で呼ばれ出します。
もうこの際だから溢れた出たアイデアは全部突っ込もうと思いました。はい。