みんなも運転免許をとろう!*竜車の運転には運転免許は必要ありません――ルグニカ王国自動車教習所
「自動車の免許って私でも取れるのかな…?」
「できる、できる! エミリアたんも免許の取れる年齢*1だし、大丈夫!」
エミリアの唐突な質問にスバルが答える。
なお、エミリアが動かすのはAT車である。
なぜか、ロズワール邸の私有地には教習用の道路をあったので、助手席のスバルの助言のもと、エミリアは特訓に励むことになった。
「発進する時は、ブレーキを踏みながら、方向指示器で合図を出し、チェンジレバーをP(パーキング)からD(ドライブ)に入れる。次に、ハンドブレーキを上に引きながら、ボタンを押し、いっぱいまで下げる。この時、フットブレーキの踏み込みが甘いとクリープ現象*2でゆっくりと動きだすからしっかりと踏むように。停止はこの逆だぜ。」
どうして車の免許を持ってないスバルが助言をできるのかは謎である。
「もう一回、やり直して… あれっ、チェンジレバーをP(パーキング)に戻せない!?」
「車種にもよるけど、チェンジレバーのボタンを押し込みながらじゃないと、一部操作ができないから注意だぜ。」
「もう、始めから言ってくれれば良かったのに…!」
「ごめんごめん、忘れてた。」
エミリアの行動をスバルが予想できなかったのもある。
「左右後方を確認してゆっくりブレーキを緩めると発進だ。」
クリープ現象によって車がゆっくりと動き出す。
そのまま車が直進し続けると、信号により交通整理された交差点に差し掛かった。
「エミリアたん、次の交差点を左折ね。 左折する時は、30m手前で方向指示器で合図を出し、ルームミラー、サイドミラー、目視の順に安全確認を行い、道路の左端に寄って徐行して、巻き込まないかを確認して曲がる。右折の時は道路の真ん中に寄って交差点の中心のすぐ内側を曲がるんだぜ。」
「ええっと…ルームミラー、サイドミラー、目視の順ね…!」
多少ぎこちない動作ながらも、エミリアは人生初の左折に成功した。
「初めてにしては上出来だぜ、エミリアたん!」
突き当りのT字路*3には赤い逆三角形の止まれの標識が立っている。
「一時停止は停止線の直前で止まるのよね…?」
「おうよ! 夜中まで勉強するエミリアたんはめっちゃ可愛かったぜ!」
エミリアの顔が赤く染まり、少しハンドル操作がもたつく。
「すぐ、スバルはそんなこと言っちゃうんだから。」
「当然だろ! 頑張るエミリアたんは可愛い、これは常識だかんな。」
スバルの追撃によって、エミリアの顔は茹で蛸のように真っ赤だ!
T字路を左折しそのまま進むと、障害物として配置された車が見えてきた。
「障害物を避けるにはどうすればいいの?」
「いい質問だ、エミリアたん! 進路変更する3秒前には、方向指示器で合図を出し、ここでもルームミラー、サイドミラー、目視の順に安全確認を行って避けるんだぜ。運転に慣れると合図を忘れがちだから気をつけろよ。」
「ええ…わかったわ…」
エミリアは止まってる車のすぐ横をゆっくりと通り過ぎる。
「満点といきたいところだが… 車だったら、突然ドアを開ける可能性があるからもう少し大きめに避けるとよかったんでないかな。 あと、対向車の邪魔にならないようにな。」
「避けるだけでも、すごーく考えないといけないのよね…」
「そうそう、車を動かせる人って、とってもスゴイだろっ?」
スバルは脳裏に父親を思い浮かべながら話す。
「ええ、とってもすごいと思う。」
「ここで右に曲がると、S字カーブだ。内輪差で乗り上げるから、あまり内側を走らないようにな。」
そろりそろりと慎重にエミリアはS字カーブを曲がる。
「一発でS字カーブを成功させるなんて、エミリアたん・マジ・天使!」
エミリアは仮免許を取得できたので、今日から路上教習をすることになった。相変わらず助手席にはスバルが座っており、車の前後に仮免許練習中の標示を貼り付けたのを確認して出発する。
道路を走ってしばらくすると、エミリアは路上運転の所感を述べ始めた。
「路上ってちょっと恐いな。 自転車や人が急に飛び出して来るもん。」
「最初のうちはみんなそうだぜ。 でも、エミリアたんは真面目だから事故を起こすことはないと思う。 」
「私って真面目かな?」
「エミリアたんは一般常識からすれば十分真面目だぜ。 エミリアたんの努力を一番見てるのは、俺だかんな。
おっと、そこの高速道路に入ってくれエミリアたん。」
「一番右の車線から高速道路に入れるのよね…」
高速道路に入ろうとした時、スバルの視界はぼんやりとし始め…
異世界情緒あふれる部屋で目覚めたスバルは勢いよく体を起こしながら突っ込む。
「おいおいおいおい、おかしいだろ! 俺は免許持ってないから、仮免のエミリアたんの隣に乗って路上に出れないだろっ*4!」
これは学科試験にも出てくるので、運転免許を取得するには覚えなければならない知識である。
もちろん、中世風異世界ファンタジーが罷り通るルグニカ王国には自動車などないので、突っ込みどころはそこではないのだが。
AT編終結――MT編へ続かない。