この素晴らしいたゆんたゆんにたゆんたゆんを!   作:膝に矢うけたった

13 / 16
禁断アクアかっこよすぎない? あんなのぼくらの知ってる駄女神じゃない! いいぞもっとやれ!
尚、私は引けてません




「あの鎧を抜くのに、あと何回くらい必要だ?」

 

「そうですね。四、五発といったところでしょうか。ですがこれ以上当てさせてもらえるかどうか……」

 

 二人は相談しながら、ベルディアが頭部を上空に投げる瞬間を待つ。全方位から迫る冒険者達の攻撃を完全に防いだカラクリはもうわかっている。あそこまであからさまでは、本人もばれていることは承知の上だろう。だからこそ、彼もすぐに投げることをしない。

 

「頭を投げる隙に一撃入れられるか?」

 

 頭を投げるという行動は僅かな隙を生む。相手がただの冒険者ならともかく、今のこの二人相手ではそこ突かれるのは間違いない。しかし……。

 

(アイツら、ブラフなんてできたのかよ)

 

 そう、ブラフである。サユキの片足はもう使えない。先ほどの一撃はもう繰り出せないのだ。頭を投げられてしまえばそれもばれてしまう。だから、ブラフを使って相手の行動を止める必要があった。

 ベルディアのカラクリはカズマも当然気付いている。頭部が上空にあるということは、視線がそこにあるということ、上空から広範囲を見下ろしている故に死角はほとんどない。

 

「なるほど。こちらの動きを待つか。いい判断だ。初心者の街などと、侮るつもりはなかったが、これほどの戦いに興じることができるとは思わなかったぞ。感謝しよう、そして、これで終わりだ」

 

 そう言って、ベルディアは頭部を上には投げなかった。

 

「なっ、地面にっ!?」

 

 ダクネスがその行動に反応して、動き出そうとするがすでに遅かった。地面に向けて自身の頭部を落とし、それを足で蹴り上げる。この行動にも隙は生まれる。しかし予想外の行動に対応が遅れてしまう。

 

(読み通りっ!)

 

 だが、ここに一人、それを読み切っていた男がいた。

 

「クリエイト・ウォーターっ!」

 

 その男、カズマの手から魔法が放たれ、上空より水がベルディアへと迫る。頭部を蹴り上げ、即座に迎撃の態勢に映っていた彼は、突然のことに大きく後ろに避けることしかできなかった。同時に、上空に頭部を停滞させるのを諦め即座に受け止める。

 

「カズマ、いきなりなんだ。こういうプレイも嫌いではないが……」

 

 一緒に濡れたダクネスは平常運転である。

 

「ちげーよっ! あぁ、もう、フリーズ!」

 

 カズマはすぐに、ベルディアに向かって、凍結の初級魔法を放つ。魔法は彼の足元の水を凍らせ、同時に彼の動きを阻害する。

 

「ふっ、こんなもの……」

 

「本命はこっちだ。スティ……」

 

 ベルディアが足に纏わりつく氷を砕こうと力を入れ、カズマがスティールを発動しようとする。

 

「ヒィ、ハッァア! チェェエエストォオッ!」

 

 だが、いきなり刀をぶん投げた薩摩がいたので遮られる形になる。ダクネスはまだかがんでいないし、カズマはもう一度蹴りを放てないのを知っている。そのため、その行動の意図が二人には全く読めなかった。

 が、次の瞬間両手を組んで片足で猛回転するサユキがダクネスの影から現れて、その手で刀の柄を殴りつけた。足がダメなら手を使えばいいという話なのだが、片足が折れている状況でできるのかと問われれば、薩摩だしとしか言いようがない。

 結果、刀は先ほど欠けた部分に寸分の狂いもなく突き刺さり、小さかった凹みを更に深く削ることになる。

 

「なぁっ、貴様なんだその脚は!? 何故それで、それだけの動きができる!?」

 

 さすがにベルディアもサユキの脚に気付く。それに付け加えるなら、今殴りつけた手の甲も見事に砕けている。

 

(って、完全にじり貧じゃないか。どうする、どうする。あいつに何か弱点とか……、あれ?)

 

 ベルディアは驚いているが、追い込まれているのは二人であり、ここまでボロボロだと攻撃手段もないと言っていい。カズマが必死に何かないかと、思考を巡らせる。その中で、先ほど水を避けた時のベルディアの動きに引っ掛かりを覚えた。

 

「クリエイト・ウォーター!」

 

 カズマは再び水を呼び出してベルディアへと発射する。彼は足の氷を砕いて脱出するが、その動きは少し大きすぎるように思えた。

 

「おい、貴様、何を無駄な……」

 

「みんなっ! こいつの弱点は水だぁ!」

 

 カズマが大声で周りにデュラハンの弱点を伝える。その言葉を聞いて魔法使いたちも、一斉にクリエイト・ウォーターを唱えた。この場で奮戦しているのが、カズマの仲間だからだろうか、誰もその言葉を疑うことをしなかった。もしかしたら、藁にも縋っているだけかもしれないが。

 

「なっ、貴様ら、いい加減に、おい、やめろ! そ、そうだ、俺とその二人の戦いに水を差すな!」

 

「あ、私達二人とあなたの戦いでしたら、私達の負けで結構ですよ。負けて生きながらえる恥は甘んじて受けましょう。でも、勝負に負けても、この『戦』には勝たせてもらいますね」

 

 いつの間にか狂化が切れて地面に座り込んだサユキがいつもの笑顔でそう告げる。

 

「仕方あるまい。私個人としては、この先に待つ魔王軍の辱めに興味があったが、クルセイダーとしてあまりわがままばかりも言えないしな」

 

 心の底から残念と思ってはいるが、状況を考えてダクネスもそれに同意する。その間もカズマと魔法使い達は水を呼び出して射出を続けている。水に色が付いていたら某イカちゃんに見えないこともない?

 

「ねぇねぇ、カズマは何を遊んでるの? バカなの?」

 

 空っぽになったお菓子の包みを持った駄女神が話かけてくる。この状況を何一つ理解していないらしい。その物言いにカズマは怒鳴り散らしたくなるが、ぐっと堪える。

 

「アイツの弱点が水なんだよ! なんちゃって女神でも水の一つくらい出せるだろ!?」

 

「あ、あんた、いい加減にしないと……、はぁ、まぁいいわ。サユキにもらったお菓子のお礼に、私が如何にすごい女神か見せてあげるわ。だから、私のことをもっと敬いなさい、そして、甘やかしなさい」

 

 よほど焼き菓子が口に合ったのだろうか、カズマの悪態に対して普段から想像もできないくらいあっさりと引き下がった。そして、詠唱を始める。その内容は水の女神に相応しい、荘厳なものだった。

 その詠唱、そして集まる水の魔力。その姿に、カズマとベルディアも驚愕する。ベルディアは危険を感じて逃げ出そうとするが、足にダクネスが纏わりついて逃がさない。

 

「セイクリッド・クリエイト・ウォーター!」

 

 そしてアクアの魔法が放たれた。空より落ちる水は大瀑布のごとく降り注ぎ、周囲一帯を巻き込んで荒れ狂う。もはや、大水害と言えるだろう。

 

「ちょっ、もういい、もうやめ……」

 

 カズマが止めようとするが、今の駄女神には声が届かず、大水害は勢いを増していくばかりであった。全てを飲み込み、門の一部を破壊し、天災のごとく全てを洗い流していく。水が収まった時、そこに立っている者は誰もいなかった。魔法を放った本人すら一緒に流されている始末である。

 膝をつくベルディア、目の前で起き上がるアクア。彼女に対して全力の罵倒を投げかけるが、彼女は不敵に笑っている。そして、今、この瞬間こそがチャンスであるとカズマに告げる。

 

「よっしゃ、任せろ。その武器、もらったぁっ! スティール!」

 

 カズマのスティールが発動する。本来ならレベル差で、現在の弱体化した状況でも効果が出ることはない。しかし、このカズマという男は、この幸運のステースが頭一つも二つも飛びぬけているのだ。つまり……

 

「あ、あのー、えーっと」

 

 ベルディアが困惑の声を上げるが、その声が聞こえてきたのはカズマの懐からだった。ベルディアの剣は未だ鎧が握っている。つまり、カズマが盗んだのは彼の頭だったのだ。

 

「おーい、お前らーサッカーしようぜー!」

 

 カズマがすごく悪い顔をして、みんなに呼び掛けた。サッカーを知らないこの世界の人々に、それがどんなものかを教え、ベルディアの頭部を足で蹴って別の冒険者に渡す。冒険者達は新しい遊びを教えてもらって楽しそうである。サッカーしようぜー、お前ボールなー、である。

 

「はぁ、セイクリッド・ハイネス・ヒールっと、サユキ、あんた毎回そんな戦いばっかりしてたらいつかとんでもないことになるわよ。あんたにはあのお菓子を私に献上するっていう大事な役目があるんだから無茶するんじゃないわよ」

 

「ありがとうございます。アクア様。じゃぁ、また作ってきますね」

 

 アクアは大事なパティシエを魔法で回復させていた。さすが女神と言うべきか、彼女の骨折含む自爆ダメージも完全に治っている。サユキもお菓子の評価が嬉しかったのか、たゆんたゆんを揺らして座ったまま小さく跳ねた。

傍らにいるベルディアの胴体はもはや動かず肩を落とした状態で静止している。それを見てダクネスが一思いに終わらせるべきだと進言して、カズマ僅かに考え込む。そして、サユキに向けて口を開いた。

 

「今のベルディアなら斬る方法はあるか?」

 

 その質問にサユキは笑顔で首を縦に振って答えた。それを確認したカズマは今も遊ばれているベルディアの頭部に向かって声をかける。

 

「おーい、今からお前を倒すけど、アクアの魔法とサユキの剣どっちがいい?」

 

「元き、き、騎士として、剣で死なせても、も、もらえるならほんも……」

 

「あいよー。んじゃ、サユキ頼むわ」

 

 その言葉を聞いて、サユキは立ち上がり、軽くストレッチをした後構える。その構えはあまりに異質なものだった。両手で刀を握り、限界まで後ろに下げ、頭を地面につけて、腕の代わりに頭で行うクラウチングスタートのような姿勢である。

 

(うわっ、なにあれ、きもくね?)

 

「ふむ、あれを使うのか。正直、隙が多すぎて実戦では使えないと思っていたんだが、まさかこの大一番で見ることになるとは」

 

 彼女はそのまま必要な部位に力を込めて、いつでも走り出せる状態になっていた。ダクネスはその姿勢に見覚えがあるらしいのだが、実戦では使い物になる技ではないとのことだ。

 

(格好は酷いけど、必殺技みたいなもんか。そう考えるとちょっとかっこいいかも……)

 

 などと、考えながら、カズマはベルディアの頭部を自分にパスするように指示する。

 

「言っておくが、もし、また向かってきたり、サユキの攻撃で死ななかったら、アクアに浄化させるからな」

 

 そう言って、その頭部を鎧の方へと蹴り上げた。近くには、いつでも魔法を放てるよう、杖を構えたアクア、カバーに入れるようにとダクネスが控えている。カズマも蹴った直後から、再びスティールが放てるように構えている。

 そして、サユキが走り出す。ベルディアの目の前に到達する前に身体を起こし、限界まで身体を後ろに反らせた。狂戦士のスキル故に痛覚はないが、やりすぎれば骨が折れて力が伝わらなくなる。絶妙な力加減で限界まで振り絞った全身を使っての振り下ろしである。

 力が余すところなく、刀に伝わり、弱ったベルディアの頭部と身体を縦一文字に両断した。

 

「まさか、アンデットに堕ちたこの俺が、剣で死ぬことができるとはな。感謝するぞ」

 

 そう言って、ベルディアは消滅していった。勢いが付きすぎた刀は地面に突き刺さり、大きな亀裂を生んでいる。こうして、魔王軍幹部との戦いは終わりを告げるのであった。

 

 緊急クエスト 魔王軍幹部の討伐 魔王軍幹部ベルディアの討伐に成功

 




というわけで、次回で第二章が完結となります。
最後の必殺技はテキトーなので、実際に使って威力が上がるのかとかは知りません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。