この素晴らしいたゆんたゆんにたゆんたゆんを!   作:膝に矢うけたった

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現実は非情である。そんなお話




異世界転生、そして冒険とはなんなのか。カズマがそんな哲学に想いを馳せる朝、視線の先にはおおよそ女神とは呼べない姿で眠るアクアの姿があった。佐藤カズマ、異世界転生するも、ハーレムどころかヒロインの影すら見えぬ日々に肩を落とすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

「なんでもいいからクエスト受けましょう! もう、商店街のバイトはいやなのよっ!」

 

 ギルドで集まった時にアクアが発した言葉である。まともな依頼が受けられず、彼女はずっとアルバイトで生計を立てていた。しかも、どこかで借金もまたしているらしく、その訴えは切実であった。

 全力でカズマに縋りつきながら、必死に頑張ると訴えかけてくる。あまりにも惨めな姿に、呆れか同情か、はたまた両方が入り混じった感情か、アクアに適当なクエストを探してくるように伝えることしか彼にはできない。

 

「何か、とんでもないクエストを持ってきそうな気がしますね」

 

 そのめぐみんの一言を聞いて、ドMと薩摩は嬉しそうにしていたが、カズマはあり得ると思って、アクアを追いかけることにする。案の定、アクアが手に取っていたクエストは『マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしているので討伐してほしい』という内容のものだった。

両方とも空を飛べるので、薩摩でも不得意な相手である。ダクネスでも立体的な動きをする相手だと庇うのも難しい。つまり、戦うとほぼ間違いなく誰かが死ぬと考えていいだろう。

そんなわけで当然却下となるわけで、カズマはその依頼書を取り上げてアクアを叱りつけている。

 

「あー、これなんていいんじゃない。内容も私にぴったりじゃないっ!」

 

 続いてアクアがスキップでもしそうな勢いで持ってきたのは、街の近くにある湖の水質を浄化してほしいといった内容のクエストだった。ブルータルアリゲーターという魔物が住み着いてはいるが、水の浄化さえできてしまえば魔物たちはそこを去っていくため討伐の必要もない。

 

「確かに討伐の必要はないかもしんないけど、お前、水の浄化なんてできるのか?」

 

 自信に満ちた表情のアクアに、カズマが心配になって質問を投げかける。そこは名前的にも、色的にも、司っているのが『水』ということもあって心配はないとのことだ。湖丸ごととなれば半日とかかる時間は少し長いが可能である。

 ただ、浄化中に魔物に襲われる可能性があるのが怖いらしく、一人では行きたくないらしい。縋りつくアクアに話を聞いてみれば、触れているだけで浄化はできると言っていた。そこで、カズマの悪知恵回路がフル回転で最適解を導き出す。

 安全に浄化できる方法があると、そう告げたカズマの言葉に、彼女は首を傾げて疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 湖までの道を一台の大きい荷台が進んでいく。その上には少しだけ大きめの檻が一つ、その中には珍獣が一匹……、ではなくアクアが座っていた。売られていく珍獣の気分を味わいながら、一行は湖に向けて進んでいく。

 

「まぁ、あれよね、いざとなったらサユキにモンスターを斬ってもらえばいいだけよね」

 

 そんなアクアの言葉を聞いて、カズマは以前のカエルの件を思い出して少し顔色が悪くなる。ただ、時間が経ったこともあってか、思い出して吐くような事態になっていないのは幸いだった。

 ただ、ここでふと、カズマは何かがおかしい、否物足りないと言うべきかもしれない、そんな感覚を覚える。普段ならあって当然の何か、それがないような気がするのだ。

 会話を楽しんだり、考え事をしたりしながら、湖に到着した面々は檻に鎖をつないで、反対側を大きな岩に括りつけた。そして、アクアの入った檻を湖の中へ入れる。中に入っている女神が程よく水に浸かっているのを確認して、彼女一人を残して少し遠くへと避難していった。

 これこそがカズマの考えた作戦、檻で外敵から身を守りながら安全に水の浄化を行うといったものだった。

 

 

 

 

 

 数時間後、そこには水に浸かりながら虚ろな目で、延々と鉄格子を数え続けるアクアの姿があった。確かにこの作戦は安全かもしれないが、精神に多大な負担をかけることになっていた。

 そんな状態でも檻の引き上げを要求しないのは、意地なのか、それとも報酬への執着心なのか、少なくとも女神としての使命感でないことは確かだろう。

 遠くでその様子を見ながら、雑談に勤しんでいるカズマは、ふと来る途中で感じた違和感の正体に気付いて口を開いた。

 

「お前、今日はやけに静かじゃないか? 行きの会話でも爆裂魔法推しをしなかったし」

 

 その視線の先にいるのは、当然めぐみんである。ダクネスとサユキも納得したように頷いて、カズマの言葉に肯定の意を表している。

 ただ、言われた本人としては、不服だったのか、自分のイメージというものに関して強く抗議していた。ワニ相手に撃つほど、爆裂魔法は安くないと言ってはいるが、カエルならいいのだろうか。そもそも、頬を流れ落ちる一筋の汗はなんなのだろうか。

 結局それ以上、特にめぐみんを詰問することもなく、時間は進んでいく。

 アクアにトイレは大丈夫かと聞けば、アークプリーストはトイレに行かないだの言い始め、めぐみんが対抗して紅魔族もトイレに行かないと言う。ダクネスも流れに乗る為か、性癖故か、顔を真っ赤にして、身体をくねらせながら続こうとする。

 

「ダクネスさん。そういうプレイはお一人の時にしてくださいね」

 

 と、珍しくばっさりとサユキが切り捨てていた。友人だけあって、その性癖を知ってはいるのだろう。ただ、その言葉でも頬を赤らめて僅かに喜んでいるのは予想外だったようだ。

 

 

 

 

 

 更に数時間後、アクアは浄化魔法まで併用して必死に水の浄化を進めていた。檻全体が大きく揺れているため、時折舌を噛みそうになってはいるが。

 それは何故か、絶賛ワ〇ワニパ〇ック捕食編の真っ最中だからである。四方からワニの顎が迫り、檻は何度も嫌な音を立てている。今、彼女は報酬三十万エリスのために、必死になって恐怖に抗っている。そんな様子を遠くで見つめるダクネスは何故か羨ましそうである。

 

「もう、いやっ、でも、報酬がなくなるのはもっと、いやっ! だから、サユキぃっ、助けてー!」

 

 そして、ついに禁断の扉を開いてしまう。カズマとダクネスはそっと、目を背ける。めぐみんはそんな二人の様子が理解できず首を傾げる。

 

 薩摩は笑っていた。そう、笑っていたのだ。お呼びがかかるまで心配そうにしていたのにも関わらず、満面の笑みを浮かべ、目を見開いている。彼女は刀に手を乗せて、ゆっくりと動き出す。そして、一瞬でトップスピードまで加速して、ワニの群れへと駆け出していた。

 この日、アクアとめぐみんは知ることになる。日本史上でも類を見ない、伝説の戦闘民族の一つ、薩摩隼人がいかなるものであるのか、その恐怖とともにしかとその胸に刻み込むことになる。

 

 

 

 

 

 青く晴れ渡る空の下、美しく、澄んだ湖、そして、檻に入れられた女性。水色の綺麗な髪は真っ赤に塗れ、整った顔にはナニカの欠片が付着している。その目は暗く、何よりも深く、世界を映してはいなかった。

 檻の周りに散乱する首やら手足を切断されたらしいワニの死体、更には臓物など、その中心に立つ女性は湖の水で『汚れ』を落としている最中だった。

 

「ふぅ、楽しかったですね。アクア様!」

 

 そう言って、女性は満面の笑みを檻の中のアクアに向ける。その女性、サユキは所々、赤い液体が混ざる湖の水を足で弾いて楽しそうにはしゃいでいた。当然、お胸の巨大水風船が揺れるのだが、この赤色の混じる光景にエロスもへったくれもない。その赤色もアクアの浄化の力のおかげか、徐々に薄れていってはいるが。

 

「なんというか、サユキは相変わらずだな」

 

 檻のある場所へと歩きながらダクネスが引きつった表情でそう告げる。さすがに虐殺はドMとしても解釈違いだ。ちなみに、めぐみんは現在茂みでリバース中である。

 三人が湖に到着したころには、水はすっかり赤さが抜け、ワニの死体は全て陸に運ばれていた。檻の中で深淵を見つめるアクアに、カズマが声をかけるが反応が返ってこない。

 

(まぁ、初めて見たらこうなるよな)

 

 と、自分の時を思い出して、彼女へ同情の念を抱く。だが、アクアは急に膝を抱えて泣き出してしまう。ワ〇ワニパ〇ックと薩摩隼人の相乗効果か、何故か呻きが少し引きつった声になっている。

 カズマとダクネスは互いに顔を見合わせて、ワニに襲われ始めた頃に決めた取り決めをアクアに告げた。

 

「みんなで話したんだが、今回の報酬、ワニの素材も含めて俺らはいらないからさ」

 

「そうだぞ、素材含め報酬三十万エリスオーバー、全部アクア一人の取り分だ」

 

 それでも反応は返ってこない。檻から出るように伝えるが……。

 

「コワイ……、コワイ……、オリノソトキケン、イッパイ。ワニ、サツマ、キケン、キケン、コワイ……」

 

 完全に精神が病んでいた。結局、リバースを終えためぐみんを回収したあと、カズマ達は檻ごとアクアを連れて帰還することになった。約一名、すごくいい笑顔をしていたが見なかったものとする。

 




アクア様、原作以上に壊れました。次回、ついにあの男が登場

あと、サユキのイメージ絵書き直しました。また書き直すかは未定
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