「ヘンタイ・プリズン」のSSです。
妙花とソフりんがスポーツテストで競うお話です。
時系列はグランドルート後を想定しています。

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妙花とソフりんの体力勝負

★場所:LALEオフィス

 

【柊一郎】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【ラーレ社員一同】

「――……美味い!!!!」

 

【ソフりん】

「そ、そうか」

 

【柊一郎】

「これは美味い。いくらでも腹に入る」

 

【妙花】

「ああ、こりゃ絶品だな」

 

【伊栖未】

「か、カニって、こぉ、こんなに美味いんだな。味噌も、大変美味」

 

【ソフりん】

「ふふっ、喜んでくれたようでなによりだ」

 

【ノア】

「お姉ちゃん、本当にありがとうございます。生活費だけでなく、こんな立派なお土産まで」

 

【ソフりん】

「そんなにたいしたカニじゃないけどな。お前たちで全部食べてくれてかまわないぞ」

 

【伊栖未】

「っしゃぁ!」

 

【柊一郎】

「カニかご漁、大変じゃありませんでしたか」

 

【ソフりん】

「まあ初めてだったからそれなりに苦労はあったが……刑務官時代に比べたらなんともないよ。夕顔と我妻に挟まれてた頃のほうが100倍しんどかったからな」

 

【柊一郎】

「アへガオコンビ>>>>>>>>漁ですか」

 

【ノア】

「どう読むんですかそれ」

 

【妙花】

「しっかしありがたいねぇ。こちとら万年貧乏で手元不如意だからな。素パスタばっか食べてる身としちゃあ、カニなんて贅沢の極みだよ」

 

【伊栖未】

「で、でも漁って、船すんごい揺れるし寒いってきぃ、聞いた。へ平気、でしたか」

 

【ソフりん】

「そのあたりは……慣れかな? とくに寒さのほうはプリズンで十分慣れてたから、そこまでつらい思いはしなかったぞ?」

 

【ソフりん】

「それに、劇団の公演費用に……お前たちの生活費のためだからな。弱音なんて吐いていられないさ」

 

【柊一郎】

「さすが”最高の女”」

 

【妙花】

「だが素人が簡単にこなせるモンでもねぇぞ? 技術はもちろん体力も要求される仕事だ。いくら高額バイトとは言え、よく応募したよなぁ……」

 

【ノア】

「お姉ちゃんは剣道でかなり鍛えてますからね。フィジカルの強さでお姉ちゃんの右に出る者なんてそうそういませんよ」

 

【柊一郎】

「前に夕顔さんたち三人が来たとき、太田部筆頭もソフりんの強さを絶賛してた」

 

【ソフりん】

「あ、あの時は状況が状況だったから……!」

 

【妙花】

「くっくっ、あのやっこさんがねぇ。……にしても、妹は頭脳派、姉は肉体派ってか? 姉妹でいい具合に棲み分けできてんじゃねぇか」

 

【伊栖未】

「姉妹合わせて文武両道。ま、マンガみたいだ」

 

【ノア】

「いやぁーー! そんなん言われたら照れちゃいますよ! そんなことないですって、ねぇ!?」

 

【柊一郎】

「ノアに向けて言ったわけじゃないと思う」

 

【妙花】

「恥ずかしくねぇのかこいつは」

 

【伊栖未】

「まさに愚妹」

 

【ソフりん】

「なんか私は頭はそこまでって言われてるみたいで複雑な気分……」

 

【妙花】

「あー……そういうつもりで言ったんじゃねぇよ。そう気を落とすな」

 

【柊一郎】

「面倒臭いところは姉妹共通」

 

【面倒臭い姉妹】

「「殴るぞお前」」

 

【伊栖未】

「息ぴったり」

 

【柊一郎】

「誠にごめんなさい」

 

【妙花】

「くっくっ、しかしよ、剣道で鍛えたと言ってたが、運動自体得意だったのか?」

 

【ソフりん】

「……ん? まあ、それなりに……?」

 

【妙花】

「アタシもそれなりに鍛えてるからな。ケンカだったらタッパの差でアタシが不利だろうが、単純な運動性能だったら勝てるかもと思ってな」

 

【柊一郎】

「そういえばどっちが運動できるんだろ」

 

【伊栖未】

「きぃ、気になるっちゃ気になる。勝負、してみたらどう、だ?」

 

【ソフりん】

「いやいや、さすがに波多江には勝てないよ。私もいい歳だし、そこまで体を動かせるわけでは――」

 

【柊一郎】

「逃げんだ?」

 

【ソフりん】

「……あ゛?」

 

【柊一郎】

「年齢を言い訳に逃げるとは、なんて情けない」

 

【ノア】

「仕方ありませんよ。見た目は若く美しくても、中身はア(・)ラ(・)サ(・)ー(・)の(・)お(・)ば(・)さ(・)ん(・)ですから。それに比べ、私たちはまだまだ若いですし、勝負が成り立た――」

 

【ソフりん】

「ああ上等だよ!! いいよやってやろうじゃないか!! 波多江!! やるぞ!!」

 

【妙花】

「えぇ……」

 

【伊栖未】

「相変わらず挑発に弱い」

 

【妙花】

「なんで手前らはそう煽るんだ」

 

【ノア】

「せっかくお姉ちゃん遊びに来てくれてるわけですから、このほうが面白いかなと思いまして」

 

【柊一郎】

「ね」

 

【妙花】

「いつものソフりん愛はどこいった」

 

【ソフりん】

「私が勝ったらお前ら全員スクワット500回だからな!! いいな!!」

 

【ノア】

「いいでしょう、わかりました」

 

【伊栖未】

「え、わ、わたし関係な――」

 

【柊一郎】

「オレたちは運命共同体。連帯責任ってことで」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【妙花】

「こいつクズだな」

 

【ソフりん】

「で、勝負方法はどうするんだ?」

 

【妙花】

「おい、アタシはまだやるとは言って――」

 

【ソフりん】

「できるだけ公平なやつで頼むぞ。特定のスポーツだったら経験の有無がそのまま反映されてしまうからな」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「そうですね……では、『スポーツテスト』はどうでしょう。あの、学校とかでやるやつです」

 

【柊一郎】

「懐かしい。嫌いだったけど」

 

【伊栖未】

「……?」

 

【妙花】

「まあ、それだったらアタシはかまわねぇぞ。……やれやれ、スポーツテストなんざいつ以来だろうねぇ……」

 

【ソフりん】

「だったらお前たちもいっしょにやろうじゃないか。本来それぐらいの歳なんだから――」

 

【柊一郎・伊栖未・ノア】

「「「いいえ結構です」」」

 

【妙花】

「全力で否定するじゃねぇか」

 

【ソフりん】

「……え、なんで?」

 

【柊一郎】

「あいにく仕事のしすぎで手が腱鞘炎気味で」

 

【伊栖未】

「そぉそもそも、負け戦になること、請け合い。惨め」

 

【ノア】

「私たちは場所のセッティングや競技の計測係に徹します。これは決定事項です」

 

【妙花】

「素直にやりたくねぇって言え」

 

【ソフりん】

「分かりやすいなお前ら……」

 

 

 

★場所:島内 陸上競技場

 

 

 

【妙花】

「――……へぇ、青藍島にもこんな立派な競技場があったんだな」

 

【ノア】

「でしょう。貸し切り状態なので、私たちだけで存分に使えますよ」

 

【ソフりん】

「よく貸し切れたな。普通は前もって予約するものだろ? 料金もそれなりにかかるだろうし」

 

【ノア】

「私のツテで依頼したら即日OKをいただけました。しかもタダでいいそうです」

 

【ソフりん】

「そんなことある?」

 

【柊一郎】

「――……必要な機材とか、全部用意できた」

 

【伊栖未】

「つ、疲れた……」

 

【ノア】

「さてと、一通り準備できたので、さっそく始めましょう」

 

【妙花】

「で、なんの競技をやんだ? というより、どうやって勝ち負けを決めんだ? まだその辺り定めてなかっただろ」

 

【ノア】

「対決競技は『握力』『上体起こし』『反復横跳び』『50m走』『立ち幅跳び』『ハンドボール投げ』『持久走1000m』の7種をおこないます」

 

【ノア】

「で、記録の良かったほうを勝利とし、先に4本取ったほうをこの勝負の勝者としましょう」

 

【ソフりん】

「なるほど、わかった」

 

【妙花】

「……ちょっと待て、ノア」

 

【ノア】

「なにか?」

 

【妙花】

「たしかよ……『長座体前屈』ってのがあっただろ? それはやらねぇのか?」

 

【ノア】

「長座体前屈はやらないことにしました。お姉ちゃんの提案で」

 

【妙花】

「なに? どういうことだ?」

 

【ソフりん】

「長座体前屈は背丈、とくに胴や腕の長さなどに左右されやすい。私と波多江ではその辺り差がありすぎるから不公平だろ」

 

【ソフりん】

「それに、どちらかというと体の柔軟性のみで競うものだから、元々意図していた体力勝負とは程遠いと思ってな」

 

【ノア】

「そういった複合的な理由で却下としました」

 

【妙花】

「……そういうことかい。わかったよ」

 

【柊一郎】

「じゃあまずは握力からいこっか」

 

【ソフりん】

「……ひとつ、つまらないことを聞いてもいいか?」

 

【ノア】

「はい、なんでしょう」

 

【ソフりん】

「たしかスポーツテストって得点で評価するものだったろ? どうして合計点数での勝負にしなかったんだ?」

 

【妙花】

「言われてみりゃそうだな。たしかに、普通はそっちじゃねぇのか?」

 

【ノア】

「ええ。本来は競技項目別で、各1~10点で評価し、合計で評価します」

 

【柊一郎】

「もちろんそれで勝敗を決める方法も検討した」

 

【伊栖未】

「でもそれだと勝負にならない、と判断しぃ、しました」

 

【ソフりん】

「なんでだ」

 

【柊一郎・伊栖未・ノア】

「「「どうせふたりとも全競技10点取るだろうから意味ないと思って」」」

 

【妙花】

「あぁー……」

 

【ソフりん】

「まぁ、否定はしない」

 

【伊栖未】

「しないんだ……」

 

【柊一郎】

「すごい自信」

 

【ノア】

「じゃあ、まずは握力から始めましょう」

 

■競技1:握力

 

【柊一郎】

「はい、これ測定器」

 

【妙花】

「あったねぇ、こんなの。たしかこうやって……腕を下にすんだよな」

 

【ソフりん】

「さすがに今の時代は全部デジタルか」

 

【柊一郎】

「そういやアナログの測定器見たことない」

 

【ノア】

「さすがにいまはもうほとんどないんじゃないですか?」

 

【ソフりん】

「私の世代でギリギリだろうな。私も使ったことはないが」

 

【伊栖未】

「んじゃ、まず妙花からどうぞ」

 

【妙花】

「あいよ。…………ふんっ!! ……くっ……!!」

 

【柊一郎】

「……右が67キロ、左が71キロ。平均69キロ」

 

【ノア】

「……は?」

 

【伊栖未】

「や、やばっ……」

 

【妙花】

「ふぅ……ま、ざっとこんなもんだろ」

 

【ソフりん】

「やるな、波多江」

 

【妙花】

「組にいた頃はもっとあったはずなんだがな。これでも衰えたほうだよ」

 

【柊一郎】

「女子だったら36キロ以上で10点なんだけど……倍近くある」

 

【伊栖未】

「なんだったら男でもそうそうない、はず」

 

【ノア】

「これは想像以上でしたね」

 

【妙花】

「次はソフりんの番だぞ」

 

【ソフりん】

「あぁ。…………っ!! ……うおおおっ……!!!!」

 

【ノア】

「……えっ」

 

【柊一郎】

「……右が86キロ、左が84キロ。平均85キロ」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ソフりん】

「……はぁ、久々に全力出したぞ。どうだ?」

 

【柊一郎】

「世界一美しいゴリラ」

 

【ソフりん】

「なんか言ったか」

 

【柊一郎】

「世界一美しいと言いました」

 

【伊栖未】

「誤魔化し方が雑」

 

【ノア】

「でも間違ったことは言ってませんね」

 

【妙花】

「まさか負けるとは思ってなかったよ……これでもそれなりに鍛えてたつもりだったんだが……」

 

【ソフりん】

「ともかく、これで1対0だな。次の競技といこうか」

 

【柊一郎】

「もう二度とソフりんに逆らうのはやめよう」

 

【伊栖未】

「さわさり」

 

■競技2:上体起こし

 

【伊栖未】

「時間はわ、わたしが計るから、柊一郎はソフりん、ノアは妙花の脚を支えて、数かぞえて」

 

【柊一郎】

「了解」

 

【ノア】

「お姉ちゃんの脚支えたかった……」

 

【伊栖未】

「そういうと思って柊一郎にした」

 

【ソフりん】

「黒鐘、ナイス采配だ」

 

【柊一郎】

「これがお姉ちゃんの脚……」

 

【ソフりん】

「そうはならないだろ」

 

【妙花】

「――ノア、気をつけろよ」

 

【ノア】

「……はい?」

 

【伊栖未】

「そ、それじゃ、よーい……ピッ!」

 

【ソフりん】

「ふっ! ふっ! ふっ……!」

 

【柊一郎】

「いいペース。これなら妙花より――」

 

【妙花】

「うおおおおおおおおおぉぉ!!」

 

【ノア】

「ちょっ、は、速っ……!!」

 

【伊栖未】

「――――ピッ! おぉ、おわり!」

 

【ソフりん】

「……はぁ……はぁ……」

 

【妙花】

「…………ちっ、この程度でへばるとはな……」

 

【伊栖未】

「ほいで、けぇ結果は……?」

 

【柊一郎】

「ソフりん、45回」

 

【ノア】

「妙花、59回です」

 

【ソフりん】

「……ご、59……だと……?」

 

【妙花】

「……くっくっ、これでも腹筋は強いほうでな。肺活量も人一倍の自信がある」

 

【柊一郎】

「あんな特訓してたらそうなるか」

 

【ノア】

「どんな特訓してもこうはならないでしょう」

 

【ソフりん】

「……くそっ、負けたか」

 

【柊一郎】

「45回も十分すごいと思うけど」

 

【妙花】

「これで1対1だな。思ったよりいい勝負になりそうだな?」

 

【ソフりん】

「……そうだな」

 

【ノア】

「ここまでハイレベルな勝負になるとも思ってませんでしたけど」

 

【伊栖未】

「な」

 

■競技3:反復横跳び

 

【ソフりん】

「なあ、これどうやるんだっけ? 10年以上ぶりだからさすがに覚えてないぞ」

 

【ノア】

「まずはこの中央のラインをまたいで立ってください。で、合図が鳴ったらサイドステップで右のラインを超すか踏むかします」

 

【ノア】

「次に中央ラインに戻って、今度は左のラインへ……といった感じで、ひたすら繰り返すだけですね」

 

【ソフりん】

「あぁ、そっか。……なんか思い出してきたな、たしかにそういう感じだったような……」

 

【柊一郎】

「これって脚の長いソフりんが有利じゃないの」

 

【妙花】

「んなことはねぇ。そういう一面もなくはねぇが、最も試されるのは敏捷性と持久力だからな。ぜんぜん勝ち目はあるよ」

 

【柊一郎】

「なるほど」

 

【ノア】

「時間は私が計測しますので、柊一郎が妙花、鐘さんはお姉ちゃんのまたいだ回数をかぞえてください」

 

【柊一郎】

「わかった」

 

【伊栖未】

「うい」

 

【ノア】

「では…………ピッ!」

 

【ソフりん】

「……っ! ……っ! ……くっ……!」

 

【妙花】

「……ほっ……いよっ……っ……!」

 

【ノア】

「…………ピッ! 終了です!」

 

【ソフりん】

「……ぜぇっ……ぜぇっ……」

 

【妙花】

「……さすがにちぃとばかし疲れたな」

 

【柊一郎】

「ふたりともお疲れ」

 

【伊栖未】

「ほい、これ。スポーツドリンク」

 

【ソフりん】

「あぁ……ありがとう」

 

【ノア】

「で、結果のほうはどうでしたか?」

 

【伊栖未】

「ソフりん、69回」

 

【柊一郎】

「妙花、72回」

 

【妙花】

「……しゃあっ!」

 

【ソフりん】

「……くっ……僅差か……!」

 

【柊一郎】

「ほんとにレベル高いなこの勝負」

 

【ノア】

「ちなみに10点で何回以上でしたっけ」

 

【伊栖未】

「女子で53回、男子で63回。らしい」

 

【ノア】

「学校だったら普通にヒーローですね」

 

【妙花】

「これで1対2か……次はなんだ?」

 

【柊一郎】

「50m走」

 

【ソフりん】

「なあ、少し休憩させてくれないか。次が50m走なら尚更だ」

 

【ノア】

「それもそうですね。じゃあふたりはここで待っててください。タオル持ってくるので」

 

【伊栖未】

「わ、わたしもドリンクの補充してくる」

 

【ソフりん】

「すまないな、助かる」

 

【妙花】

「くっくっ、どうしたソフりん。さすがにへばったか?」

 

【ソフりん】

「そりゃへばるだろ……その点波多江はさすがだな」

 

【妙花】

「これでも毎日走ったりトレーニングしてるからな。このくらいどうってことねぇよ」

 

【柊一郎】

「寄る年波には勝てないってことですよ」

 

【ソフりん】

「お前も仕事しろ」

 

■競技4:50m走

 

【伊栖未】

「そ、そいじゃあ……位置について――――」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【妙花】

「……ちなみになんだが、最速で何秒だ?」

 

【ソフりん】

「学生時代に計った時で6秒台だったのは覚えてる」

 

【妙花】

「そうか……――アタシもだ」

 

【柊一郎】

「カッコいいやりとり」

 

【伊栖未】

「よーい…………ピッ!」

 

【ソフりん・妙花】

「――――――っ!!!!」

 

【伊栖未】

「く、クラウチングスタート……?」

 

【柊一郎】

「完全にアスリートのそれじゃん」

 

【妙花】

「――――――!!」

 

【ソフりん】

「――――――っ!!」

 

【ノア】

「…………ほぼ同着、ですけど」

 

【妙花】

「……はぁ……はぁ……ど、どうだった?」

 

【ノア】

「――……妙花、6.1秒。お姉ちゃん、6.2秒です」

 

【ソフりん】

「……また……負けた…………」

 

【妙花】

「……こ……これで……1対3……! ……ソフりん……後が、ねぇな……?」

 

【ソフりん】

「…………っ!」

 

●SE:駆け寄ってくる足音

 

【伊栖未】

「ぜぇっ……ぜぇっ……」

 

【柊一郎】

「…………ノア、どうだった?」

 

【ノア】

「上記のとおりです」

 

【柊一郎】

「適当」

 

【ノア】

「一応言うと、女子の50m走日本記録で6.47秒、世界記録で5.96秒だそうです」

 

【柊一郎・伊栖未】

「「…………」」

 

【ノア】

「…………」

 

【柊一郎】

「このふたりオリンピックに出たほうがいいと思う」

 

【伊栖未】

「な」

 

【ノア】

「メダルはほぼ確実でしょうね」

 

【ソフりん】

「……で、次はなにやるんだ?」

 

【ノア】

「えっと、次は――」

 

【妙花】

「待て。……次の競技はよ、残りの競技ん中からソフりんに好きなモン選ばせるってのはどうだ?」

 

【ソフりん】

「…………ほぉ。ずいぶん余裕じゃないか、波多江」

 

【妙花】

「たしか先に4本取ったほうが勝ちってルールだったろ? てことは、もし次アタシが勝ったらそこで勝負は終了ってことだ」

 

【妙花】

「早く終わっちまったらよ、興醒めだろ? 勝負を盛り上げてやろうっていうアタシなりの心遣いさ。受け取ってくれるかい?」

 

【ソフりん】

「……後悔しても知らんぞ」

 

【妙花】

「なぁに、かまわねぇさ。あと1本取ればアタシの勝ちなんだからな」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【柊一郎】

「競技ってあと何あったっけ」

 

【ノア】

「『立ち幅跳び』『ハンドボール投げ』『持久走1000m』の三つですね」

 

【伊栖未】

「で、でも体力的に、持久走は最後のほうがいい。実施要項にも、そう書いてある。だから残りふたつ」

 

【ソフりん】

「立ち幅跳びでいい」

 

【ノア】

「……いいんですか?」

 

【ソフりん】

「かまわない。いいから準備してくれ」

 

【伊栖未】

「りょ、了解」

 

【柊一郎】

「たしかメジャーは向こうにあったっけ」

 

【妙花】

「……なにか勝算でもあるのかい?」

 

【ソフりん】

「いや、そういうわけでもない。普通に勝てると思っただけさ」

 

【妙花】

「……?」

 

■競技5:立ち幅跳び

 

【伊栖未】

「ほいじゃ、まず妙花から」

 

【妙花】

「あいよ」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【妙花】

「…………っせー……のっ!!」

 

【柊一郎】

「…………えっと……298cm」

 

【妙花】

「ちっ……3mいかなかったか」

 

【柊一郎】

「惜しかった」

 

【ノア】

「妙花の背丈考えたら十分すぎると思いますけど」

 

【伊栖未】

「つ、次。ソフりん」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【ソフりん】

「…………――――っ! ……はぁっ――!! ……くっ――――!!」

 

【妙花】

「!! 前に倒れ込んで……!」

 

【ノア】

「き、記録は……!?」

 

【柊一郎】

「……319cm」

 

【ソフりん】

「――……よしっ!!」

 

【伊栖未】

「す、すご……」

 

【妙花】

「……遠心力の差か?」

 

【柊一郎】

「どういうこと」

 

【ノア】

「立ち幅跳びで大事なのは腕の振りです。振りが強ければそれだけ前に飛びやすくなります」

 

【妙花】

「ソフりんはアタシよりタッパがある。とうぜん腕もアタシより長ぇ。短い腕より長い腕で振ったほうが遠心力で前に飛びやすいってことだ」

 

【妙花】

「もちろん筋力だったりテクだったり、他の要因もあるだろうが……ソフりんはそれを分かってたってことだろうよ」

 

【ソフりん】

「……なんにせよ、これで2対3だ。勝負はこれからだぞ」

 

【妙花】

「ああ、そのようだな」

 

【柊一郎】

「ちなみに立ち幅跳びの世界記録って」

 

【ノア】

「373cmらしいです。男性ですけど」

 

【柊一郎】

「今更だけどなんで刑務官になったんだろ。体育大って道もあったのに」

 

【伊栖未】

「さ、さぁ……」

 

■競技6:ハンドボール投げ

 

【柊一郎】

「はい、これボール。円から出ないように気をつけて」

 

【妙花】

「あいよ。……くっくっ、球技は得意だからな。こりゃいい記録出そうだ」

 

【柊一郎】

「…………球技は嫌いだ」

 

【ソフりん】

「そういえばそうだったな」

 

【妙花】

「ちなみに手前は学生時代どうだったよ。ハンドボール投げ」

 

【柊一郎】

「……5m」

 

【妙花】

「……マジか」

 

【ソフりん】

「逆にすごくないか?」

 

【ノア】

「――……おーい! いつでもいいですよー!」

 

【柊一郎】

「妙花」

 

【妙花】

「おう……――うおおおおおおおおりゃあーー!!!」

 

【伊栖未】

「わわわわ」

 

【ノア】

「…………いよっ、と。……えっと……落下地点は……」

 

【柊一郎】

「けっこう飛んだ」

 

【妙花】

「……いや、駄目だ」

 

【柊一郎】

「?」

 

【ノア】

「……記録! 45mです!」

 

【妙花】

「ちっ、やっちまった!」

 

【柊一郎】

「なにがあったの?」

 

【妙花】

「投げるとき手首ひねっちまったんだよ……くそっ、60はいきたかったんだが……」

 

【柊一郎】

「手首ひねって……オレの9倍」

 

【ノア】

「次―! いつでもどうぞー!」

 

【ソフりん】

「……私か」

 

【柊一郎】

「45mって十分好記録ですけど、大丈夫ですか」

 

【ソフりん】

「さあな。とにかくやってみるだけだよ」

 

【柊一郎】

「かっこいい……!」

 

【妙花】

「言うほどそうか?」

 

【ソフりん】

「……――はあああああああぁぁぁっ!!!!」

 

【ノア】

「えっ、ちょっ」

 

【伊栖未】

「ぼ、ボール……! ……待ってぇ!」

 

【妙花】

「…………」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【妙花】

「……嘘だろ?」

 

【ノア】

「――……えー……! ……記録! 72mです!」

 

【妙花】

「…………」

 

【柊一郎】

「化け物」

 

【ソフりん】

「いや、自分でもここまでいくとは思わなかったよ……」

 

【伊栖未】

「――……ぜぇっ……ぜぇっ……そ、ソフりん……飛ばし、すぎ……」

 

【妙花】

「伊栖未、大丈夫か? アタシらより汗かいてるじゃねぇか」

 

【伊栖未】

「み、水……」

 

【妙花】

「はいはい、ほらよ」

 

【ソフりん】

「立場が逆転してる……」

 

【柊一郎】

「……ソフりんって」

 

【ソフりん】

「……あ?」

 

【柊一郎】

「ちょっとパワー要る系の競技になると強いですね」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【ソフりん】

「…………どういう意味だ」

 

【柊一郎】

「深い意味は――」

 

【ソフりん】

「どういう意味だと聞いている!!」

 

【柊一郎】

「話聞いて」

 

【ソフりん】

「……あぁ、どうせ私は力しか能のないゴリラ女だよ。そりゃこの歳になっても彼氏のひとりもできないわけだ……ははは」

 

【柊一郎】

「世界は広いですから。ゴリラが好きな男もきっといますよ」

 

【ソフりん】

「いるかな……」

 

【伊栖未】

「もっとましな慰め方あると思う」

 

【妙花】

「な」

 

【ノア】

「――……ふぅ、お疲れ様でした。お姉ちゃんすごいですね! きっとオリンピックにだって出れますよ!」

 

【ソフりん】

「そうか! オリンピックに出ればきっと彼氏が――」

 

【ノア】

「……あの、どうしたんですか?」

 

【柊一郎】

「ゴリラみたいな彼氏がほしいんだって」

 

【ノア】

「……は?」

 

【妙花】

「いろいろとごちゃ混ぜになってんぞ」

 

■競技7(最後):持久走1000m

 

【ノア】

「さて、ようやくこれで勝敗が決まります。先にゴールしたほうが勝者です」

 

【ソフりん】

「ここまで結構長かったな」

 

【妙花】

「まあ、七つもやってたらなぁ……」

 

【ノア】

「あ、もう面倒なのでタイムは計りません。どっちが先にゴールするかってだけなので。頑張ってください」

 

【ソフりん】

「なんでちょっと投げやり気味なんだ」

 

【柊一郎】

「それじゃ両者、位置について――」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「よーい……ピッ!」

 

【ソフりん・妙花】

「「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」

 

【柊一郎】

「え、全力疾走?」

 

【伊栖未】

「走り出しが短距離走のそれ」

 

【ノア】

「どこまで体力お化けなんでしょうね、あのふたり」

 

【妙花】

「…………やるじゃねぇか!! だれがいい歳だって!?」

 

【ソフりん】

「…………波多江こそ!! まったく体力の底が見えないな!!」

 

【妙花】

「…………そいつは……お互い様、だろうが!!!」

 

【柊一郎】

「このトラックって1周何mだっけ」

 

【ノア】

「たしか400mです。つまり2周半走ることになるので反対側がゴールに……あっ」

 

【伊栖未】

「も、もうゴール、しそう! わぁ、わたしたちも早く反対、行かないと……!」

 

【柊一郎】

「え、速すぎない?」

 

【ノア】

「いいから! 急ぎましょう!」

 

【ソフりん】

「…………!!」

 

【妙花】

「…………!!」

 

【ソフりん・妙花】

「「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」

 

【伊栖未】

「りょ、両者ゴール。ほぼ、同着」

 

【ノア】

「…………」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【ソフりん】

「……はぁ……はぁ……もう、動けん……」

 

【妙花】

「……で……どうなんだよ、結果は……」

 

【柊一郎】

「僅差だけど、勝負はあった」

 

【ノア】

「ええ……本当にごくわずかな差ですけど……」

 

【伊栖未】

「ソフりん、の勝ち」

 

【ソフりん】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「あれ、お姉ちゃん? 嬉しくないんですか?」

 

【ソフりん】

「……いや、疲れて喜ぶ気力がな……」

 

【柊一郎】

「あんな全力で走ってればそりゃそうなる」

 

【妙花】

「……くっくっ、そんな単純なモンじゃねぇよ」

 

【柊一郎】

「……と言うと?」

 

【妙花】

「なんというか……まあ、好敵手に対する最大の礼儀、ってやつさ。手抜いて走るなんざしゃらくせぇ、気づいたら全力で、ってな」

 

【柊一郎】

「なるほど。少年マンガの展開みたいなあれか」

 

【ノア】

「言い方」

 

【ソフりん】

「ところで、ずいぶんと余裕そうだなお前たち。これで私の勝ちだが、最初に言ったこと覚えているか?」

 

【伊栖未】

「…………げっ」

 

【柊一郎】

「あっ」

 

【ソフりん】

「全員スクワット500回だ。まさかやらないとは言わないよな」

 

【妙花】

「……なあ、それアタシは含んでねぇよな」

 

【ソフりん】

「たしか『オレたちは運命共同体。連帯責任ってことで』って湊が言ってたな。となると……とうぜん波多江も含む、そうだろ?」

 

【妙花】

「…………っ!!」

 

【柊一郎】

「これオレが悪いの?」

 

【妙花】

「たりめぇだろうがこの三下がァ!! こちとら満身創痍なんだぞ!!」

 

【ノア】

「めちゃ可哀想」

 

【伊栖未】

「な」

 

【???】

「……あの、こんなところでなにを?」

 

【ノア】

「……ん? あ、あなたは……!」

 

【妙花】

「……へぇ、久しぶりじゃねぇか」

 

【柊一郎】

「太田部筆頭」

 

【夏海】

「うん。湊くんたち、久しぶり。シコレンコ看守長も、ご無沙汰しています」

 

【ソフりん】

「あ、あぁ。それにしても、いったいどうしたんだ? わざわざこんなところに来るなんて」

 

【夏海】

「現在休暇中でして。ふらっと寄ってみたら知った顔がいたので」

 

【ソフりん】

「そうか……あ(・)の(・)時(・)以来だな」

 

【夏海】

「そうですね。……で、ここでなにを? なんかのイベント?」

 

【柊一郎】

「かくかくしこしこで」

 

【夏海】

「へぇ、スポーツテストで勝負。シコレンコ看守長はかなり強いから、かなりいい記録出たんじゃ」

 

【伊栖未】

「じぃ、実際とんでもなかった」

 

【妙花】

「もしかしたらアンタら特殊警備隊より優秀かもしれねぇな」

 

【夏海】

「それはすごい」

 

【ソフりん】

「さすがに太田部筆頭には敵わないさ。そっちのほうが本職なんだから」

 

【夏海】

「戦闘の訓練は受けてますけど、そういうのとはまた別じゃないかと」

 

【柊一郎】

「試しにやってみたらどうですか。はい、どうぞ」

 

【夏海】

「……これ、握力計るやつ? 懐かしい……」

 

【妙花】

「まあ、やっこさんの握力も相当なモンだろうが、ソフりんを越えるってのはそうそうねぇだろ」

 

【ソフりん】

「そうか? まぁ自信はあるが――」

 

●SE:破壊音

 

【夏海】

「あっ」

 

【ラーレの面々+ソフりん】

「…………」

 

【夏海】

「もしかしてこれ100キロ以上対応してないの?」

 

【ソフりん】

「やっぱ上には上がいるんだな」

 

【妙花】

「な」

 

 

 

 


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