「雨衣カノジョ」のSSです。
貴之と雨衣がプールで遊ぶお話です。
時系列はB面途中の想定です。

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プールに行こう

■8月某日 早朝

★場所:某県周防町 貴之家(元睦村家)

 

【貴之】

「…………」

 

【貴之】

「…………んっ。…………あれ、和事? もう起きて……?」

 

【和事】

「…………」

 

【貴之】

「……おーい。なにしてんだ?」

 

【和事】

「……あっ、貴之さん、おはようございます。起こしちゃいましたか」

 

【貴之】

「どうしたんだ、こんな朝早くにテレビなんてつけて」

 

【和事】

「えっと……貴之さんが録画してたビデオを観てまして」

 

【貴之】

「あー……もしかして、アレ観てたのか」

 

【和事】

「はい。今夏放送されてる、男の人たちがシンクロをする学園ドラマです」

 

【貴之】

「面白いよな。毎週欠かさず観てるけど……でも、なんで早朝から?」

 

【和事】

「この前1話だけちょっと観てみたんですけど、思いのほか夢中になってしまいまして……」

 

【貴之】

「……それで、続きが気になってこんな朝っぱらから観てたってことか」

 

【和事】

「あはは……お恥ずかしい」

 

【貴之】

「でも、男の上半身裸ばっかだけど、観てて大丈夫なのか?」

 

【和事】

「え、えぇ……。な、慣れる目的も兼ねまして。いつまでも男の人の裸を見るたびにムラムラするわけにもいきませんし……」

 

【貴之】

「まぁ、その都度雨降られるのも考えものだからなぁ……」

 

【和事】

「それより、すごいですよね! 主人公の俳優さんのお名前、貴之(たかゆき)さんと同じなんですよ! こんな偶然あるんですね……!」

 

【貴之】

「漢字違うけどね」

 

【和事】

「いやー、羨ましいですねぇ……。こうやって仲間同士で団結して一つの目標に向かうこの青春感……! たまりませんねぇ……!」

 

【貴之】

「でもシンクロって難しそうだよな。水泳ならともかく」

 

【和事】

「……あっ! せっかくですので、プールに行って泳ぎませんか? たしか町に市民プールありましたよね?」

 

【貴之】

「えっ、でも町に出たら吹上家の…………いや、大丈夫か。あそこの市民プールは人少ないから、見つかる心配もなさそうか」

 

【和事】

「それに、プールではわたしのことは『雨衣』と呼んでくだされば、より問題ないかと思います」

 

【貴之】

「……ていうか、和事ってそもそも泳げるの? 運動神経良いのは知ってるけど」

 

【和事】

「前にもお話しましたけど、元々カナヅチだった姉が1週間で泳げるようになりまして。それでわたしに泳ぎ方を教えてくれたんですよ。吹上家の専用プールで秘密特訓! ……って感じで!」

 

【貴之】

「やっぱ吹上家ぐらいになると家の専用プールとか当たり前にあるんだね」

 

【和事】

「ですので、水泳はバッチリです! むしろわたしが貴之さんに教えてあげたいくらいですよ!」

 

【貴之】

「こんなに頼もしそうな和事は初めてだ……」

 

【和事】

「ところで、貴之さんはどれくらい泳げるんですか?」

 

【貴之】

「俺は普通に…………あっ」

 

【和事】

「……? どうしました?」

 

【貴之】

「……俺、水着持ってきてないぞ」

 

【和事】

「…………」

 

【和事】

「…………あっ、わたしも……」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「…………」

 

【貴之】

「…………先にショッピングモールで水着買ってからだな。で、午後に市民プールって段取りで」

 

【和事】

「そうですね……。気が(はや)って、水着のことすっかり忘れてましたね……あはは」

 

【貴之】

「でもいいんじゃない? こうやってふたりで水着買いに行くのも、なんかカップルっぽくて」

 

【和事】

「な、なるほど……! で、では貴之さんの水着はわたしが選んで差し上げますね! ……うふふっ……!」

 

【貴之】

「プールでもそうだけど、店の中で発情して雨降らせないでね? プール入れなくなっちゃうかもしれないし」

 

【和事】

「……は、発情とか言っちゃっちゃ駄目ですよぉ! そ、そりゃスケベ女である自覚はありますけど、さすがに公共の場でそんな……!」

 

【貴之】

「……よくよく考えたら、プールとか男の裸だらけじゃん。本当に大丈夫?」

 

【和事】

「……で、でしたら今ここで性欲を発散してから外出、というのはどうでしょう!? いいですよね!?」

 

【貴之】

「本当にスケベ女だ……」

 

【和事】

「ううぅ~……!」

 

 

 

■同日 午後

★場所:市民プール

 

 

 

【和事】

「おぉー……! とっても広いです……!」

 

【貴之】

「普通の25mプールにウォータースライダー、流れるプールまである。こりゃ心ゆくまで満喫できそうだな」

 

【和事】

「うふふっ、今からとても楽しみですねぇ」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「……貴之さん? ……あっ! そ、そんなにじろじろ見ちゃいけませんよぉ! 恥ずかしいですからぁ……!」

 

【貴之】

「大丈夫だよ。胸しか見てないから」

 

【和事】

「え、えっと……なにが大丈夫なんでしょうか……?」

 

【貴之】

「……それより、思った通りあまり人いないから、俺たちでほぼ貸し切りみたいなもんだな。よかったな、わご……雨衣」

 

【和事】

「あはは、そうですね……。しかし、どうしてこんなに人が少ないのでしょう。とても立派なプールなのに……」

 

【貴之】

「隣にでっかい施設あるだろ? あそこ、日帰り温泉に温水プール、サウナがあるんだって。特にサウナが人気で、お年寄りはもちろん、小中学生もみんなそっちに行ってるんだとか」

 

【和事】

「さ、最近の子供は、健康志向が強いんだな……?」

 

【貴之】

「それと、格安ビュッフェに漫画読み放題の休憩コーナーもあるんだってさ」

 

【和事】

「びゅ、ビュッフェ……! 貴之さん! プールが終わったら、わたしたちも――」

 

【貴之】

「予算がないので駄目です」

 

【和事】

「ら、ラジャりましたー……」

 

【貴之】

「ほら、準備体操したらまずは25mプール行こう。雨衣がどれくらい泳げるのか最初に見てみたいし」

 

【和事】

「望むところです……! 中学の頃は『マーメイドの吹上』と呼ばれていたわたしの実力を見せてあげます!」

 

【貴之】

「なんでそんなに呼び名多いの?」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【和事】

「けっこう閑散としてますね」

 

【貴之】

「3コースくらい余ってるな。広々と使えていいじゃん」

 

【和事】

「わたしたちはあっちの端っこのコース使いましょう」

 

【貴之】

「そうだな。……で、雨衣さんの実力やいかに」

 

【和事】

「あまりわたしを舐めちゃっちゃいけませんよ? 4泳法すべて完璧に泳げますので!」

 

【貴之】

「えっそうなの?」

 

【和事】

「ちなみに貴之さんは?」

 

【貴之】

「クロールと平泳ぎはできるけど……背泳ぎは自信ないし、バタフライに至ってはそもそもやったことがない」

 

【和事】

「バタフライは難しいですからねぇ。姉もよく一週間でできるようになったなって思いますよ」

 

【貴之】

「残りの3泳法も含めて1週間でしょ? 才能の塊だよね、雨衣のお姉さん」

 

【和事】

「まぁ、姉はともかく。まず最初はクロールでわたしのマーメイドっぷりを見せてあげます!」

 

【貴之】

「マーメイドっぷりって何?」

 

【和事】

「じゃあ、行きますねー。せーのっ」

 

【貴之】

「えっ。いきなり飛び込み台はちょっ――」

 

●SE:ものすごい勢いの飛び込み音

 

【和事】

「…………はあっ!!」

 

【貴之】

「…………すごいな」

 

【和事】

「…………ぷはっ……! …………ぷはっ……!」

 

【和事】

「…………ふっ!」

 

【貴之】

「まさかのクイックターン!?」

 

【和事】

「…………はあっ! …………はあっ!」

 

【貴之】

「あっ。クロールって言ったのにバタフライで戻ってきてる……」

 

【和事】

「…………っ!」

 

【和事】

「…………ふぅっ」

 

【和事】

「……どうでしたか?」

 

【貴之】

「360度どこからどう見ても『マーメイドの吹上』さんだったと思います」

 

【和事】

「でしょう? 二つ名に偽りなしです!」

 

【貴之】

「……飛び込みは百歩譲って分かるよ? でも、あのクイックターンは何? 完全にオリンピックとかで見るやつだったよ」

 

【和事】

「ふふふ……すごいでしょう……? 実は一番練習したんですよ、あれ。『ほら、半回転になってないぞ!』って姉によく厳しく言われたものです……!」

 

【貴之】

「意識高すぎない?」

 

【和事】

「吹上家の人間たるもの、何事においても高いレベルを要求されるのです」

 

【貴之】

「まぁ、あんな綺麗なバタフライを見せられちゃあ納得するしかないけど」

 

【和事】

「あれは……た、貴之さんの前だったので、ついカッコつけたくなっちゃって……」

 

【貴之】

「文句なしでカッコよかったよ。正直、最初は雨衣の実力疑ってた。ごめん」

 

【和事】

「いいんですよぉ、気にしないでください! ……それより次、貴之さんの番ですよ?」

 

【貴之】

「えっ、今の後に俺やるの? 公開処刑じゃない?」

 

【和事】

「そんなことありませんよ。わたしにとって、貴之さんの一生懸命なところならなんでも大好きですから」

 

【貴之】

「……よしっ! 俺の実力、とくと見せてやる! 伊達に『矢矧桜の北島〇介』と呼ばれてたわけじゃないからな!」

 

【和事】

「な、なんか対抗してきたな……?」

 

●3分後

 

【和事】

「…………」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「……あ、あの、貴之さん……さすがにちょっと遅――」

 

【貴之】

「完全に見栄張りました。調子乗ってごめんなさい」

 

【和事】

「そ、それはいいんですけど……。ただ、小学生の平均でもたしか――」

 

【貴之】

「雨衣さん!? その辺で許してくれませんかね!?」

 

【和事】

「うふふ……ごめんなさい、ちょっとからかってみただけです。いつもはわたしがいいようにされてるので、このくらいは、ね?」

 

【貴之】

「……にしても、こんなに泳げなくなってるとはなぁ」

 

【和事】

「フォーム自体は良かったと思いますよ? 腕の振りやバタ足が弱かっただけじゃないですか?」

 

【貴之】

「北島〇介さん……勝手に名前使ってごめんなさい……」

 

【和事】

「た、貴之さん? そんな卑屈キャラでしたっけ……?」

 

【和事】

「…………あ、そうだ! 貴之さん、わたしと勝負しましょう!」

 

【貴之】

「……勝負? ハンデでもくれるの?」

 

【和事】

「はい! わたしは50m平泳ぎ、貴之さんは25mクロールでかまいません! それで一度やってみませんか?」

 

【和事】

「……ほら、わたしは特別姉に扱かれてますけど……でも、泳ぐ距離が倍で泳法も貴之さんのほうが有利なわけですから、これならいい勝負になるのではないでしょうか」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「や、やっぱり駄目で――」

 

【貴之】

「乗った! もはやプライドもへったくれもない気がするけどそれでやろう!」

 

【和事】

「うふふ……貴之さんが元気になってくれてよかったです」

 

●2分後

 

【貴之】

「――俺、もう帰っていいかな」

 

【和事】

「あ、あれぇ? こんなつもりじゃなかったんだけどな……?」

 

【貴之】

「なんであの条件で雨衣に倍以上のタイム差つけられるんですかね」

 

【和事】

「え、えっと…………あっ! ほ、ほら貴之さんは、その……昨日の畑仕事で疲労が溜まって――」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「…………貴之さん?」

 

【貴之】

「あーそういえばそうだったなーそのせいで今日ちょっと怠かったんだ道理で本調子で泳げないわけだよ雨衣、俺が調()()()()()()にまた今度勝負しような?」

 

【和事】

「…………」

 

【和事】

「……こ、これが……”男のプライド”ってやつなんですね……! たしか、女は安易に男の"それ"を傷つけてはいけないとテレビで……! なるほど! また一つ勉強になりました!」

 

【貴之】

「そんな大層な話じゃないですごめんなさい」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【和事】

「――気を取り直して、次はウォータースライダーに乗りましょう!」

 

【貴之】

「思ったより高いんだな。こっから一気に滑り降りるのか……」

 

【和事】

「いやーワクワクが止まりませんねぇ! ほら貴之さん! 次わたしたちですよ! 行きましょう!」

 

【係員の人】

「おふたり様ですか? では、こちらの二人用の浮き輪にお乗りください」

 

【和事】

「はーい。わたしが前に座りますね」

 

【貴之】

「じゃあ、俺が後ろに……って、あれ? 取っ手がないぞ?」

 

【和事】

「えっ? 前のほうはありますけど、それじゃどうすれば……」

 

【貴之】

「……仕方ない。こうしよう」

 

【和事】

「……ひゃっ! た、貴之さん!? い、いきなり抱きしめないでくださいよ!」

 

【貴之】

「こうするしか他ないんだよ。悪いけど、我慢して」

 

【和事】

「わ、悪いなんてことはないんですけど……くすぐっ、うひゃあっ!」

 

【貴之】

「雨衣、変な声出すなって」

 

【和事】

「だ、だって貴之さん……胸をそんな触られたら……!」

 

【貴之】

「…………なんのこと?」

 

【和事】

「あっ! さっきの根に持ってますね! だからってあひぃやぁっ!!」

 

【貴之】

「普通に抱き着いてるだけだぞ? なにをそんなにいい声出してるの」

 

【和事】

「……で、でも……こういうのも、カップルっぽくて……ちょっと良いかも……!」

 

【貴之】

「でしょ? じゃあほら、もっと強くぎゅって」

 

【和事】

「んひゃあっ! そ、そんな……! 胸を鷲掴みは……ムラムラしちゃい――」

 

【係員の人】

「あの、早く行ってもらえますか? 後ろにお客様が控えてますので」

 

【バカップル】

「「ごめんなさい……」」

 

【貴之】

「……よし、行こう」

 

【和事】

「は、はい…………おおぉぉーーーー!! うひゃーーーー!!」

 

【貴之】

「おおおお!!!! こ、これはすごいスピード――――!!!!」

 

【和事】

「きゃあーーーー!!!!」

 

●SE:ものすごい勢いの飛び込み音

 

【和事】

「…………ぷはぁっ!!」

 

【貴之】

「…………げほっ、げほっ!!」

 

【和事】

「いやぁーとっても楽しいですねこれ!!」

 

【貴之】

「あ、あぁ……こんなにスリリングだとは思わなかった」

 

【和事】

「貴之さん! 今度は前と後ろ入れ替わってやりませんか? 前のほうに座るとより勢いがすごいですよ!」

 

【貴之】

「いいね、じゃあ交代してもう一回やろっか」

 

【和事】

「わたし、これ大好きかもしれません……!」

 

●5分後

 

【貴之】

「……よし、こっちはスタンバイ完了」

 

【和事】

「じゃ、じゃあ今度はわたしが抱きしめますね……! えいっ!」

 

【貴之】

「うおっ! む、胸が……!」

 

【和事】

「……貴之さん? こんなところでエッチな気分になっちゃっちゃいけませんよ?」

 

【貴之】

「ん、んなこと言われても……! 胸の圧が……す、すごい……!」

 

【和事】

「わたしはただ抱きしめてるだけですよ? ほら、早く行かないとまた怒られちゃいますし、行きましょう」

 

【貴之】

「よ、よしっ! ………うおおおおぉぉぉ――――!!!!」

 

【和事】

「ひゃああああぁぁぁーーーー!!!!」

 

【貴之】

「……う、雨衣の胸に飲み込まれ……!!! ……くっ!!!」

 

【和事】

「……えっ? ちょ、ちょっ!!! 貴之さん!!?? わたしの水着掴ま――!!!!」

 

●SE:ものすごい勢いの飛び込み音

 

【貴之】

「…………ぶはぁっ!!! ……た、たしかに前に座ると水飛沫すごいな……」

 

【和事】

「…………はあっ、はあっ……!! ……あ、あれ!?」

 

【貴之】

「……雨衣? どうしぶほっ!!!! み、()()()()ぞ!!」

 

【和事】

「うううぅ~……!! み、水着が……どこかに行っちゃいましたぁー……!!」

 

【貴之】

「まずいまずい!! このままじゃ雨衣のあられもない姿が衆目に晒されてしまう!! 早く探さないと!!」

 

【和事】

「……あれ? でもさっき、たしか貴之さんがわたしの水着を掴んで…………あの、貴之さん?」

 

【貴之】

「どうした!? 見つかったか!?」

 

【和事】

「――その、左手に持ってるのは……?」

 

【貴之】

「…………」

 

【貴之】

「…………あっ」

 

【和事】

「…………か、返して……もらえますか?」

 

【貴之】

「ご、ごめん!!」

 

【和事】

「…………」

 

【和事】

「(※↑上手く隠れて水着を付け直している)」

 

【貴之】

「あ、あのー……雨衣、ごめんな? そんなつもりじゃなかったんだけど……」

 

【和事】

「…………も」

 

【貴之】

「も?」

 

【和事】

「もうっ……貴之さんったら!! エッチな気分になっちゃうのは仕方ないかもしれませんけど……そういうのは、また夜にお願いしますよぉ! こんなところでおっぱじめるわけには――」

 

【貴之】

「俺が悪かったから!! 市民プールで『おっぱじめる』とか言わないで!!」

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

【和事】

「――……なんか、周りの視線がちょっとあイタタタ……ですねぇ」

 

【貴之】

「あの係員の人、上の方から俺たちのこと睨みつけてた気がするんだけど……気のせいかな……」

 

【和事】

「ちょっと行きづらくなっちゃいましたね……あはは」

 

【貴之】

「まぁ完全に俺のせいだからな。さっきは本当にごめんな、雨衣」

 

【和事】

「い、いえ! 気にしないでください! わ、わたしの胸が大きいのも原因なので……!」

 

【貴之】

「胸の大きさで悩んでる人には絶対聞かせられない言葉だな」

 

【和事】

「そ、それより! 最後に流れるプールに行きましょう! ほら、今ならガラ空きですよ!」

 

【貴之】

「お、ちょうどいいね。……なんやかんや流れるプールは初めてだな」

 

【和事】

「よしっ、せーのっ! …………おおおぉぉ!! すごいです!! すいすい流されていきますよ!!」

 

【貴之】

「ちょっおい! ひとりで勝手に行くな! 待てって!!」

 

【和事】

「あははっ。こっちですよー」

 

【貴之】

「おいこら待てー!」

 

【和事】

「……うひゃっ! ……捕まっちゃいましたねぇ」

 

【貴之】

「……あのときの『ドロケイ』を思い出すな」

 

【和事】

「『ケイドロ』じゃありませんでした?」

 

【貴之】

「……ま、どっちでもいいか! ……よし、今度は雨衣が俺を捕まえてみろ! じゃあなーー!」

 

【和事】

「えっ! そ、そんないきなり! 待ってくださーい……!!」

 

【貴之】

「どうした! マーメイドのなんとかさん! さっきの泳ぎはまぐれか? そんなんじゃ捕まらんぞ!」

 

【和事】

「ううぅぅ~……! 貴之さん、わたしを本気にさせちゃいましたね……! ……うぅぅぅおりゃああああ!!!!」

 

【貴之】

「!!?? えっ、早っ!!」

 

【和事】

「…………ぶはぁああああ!!!」

 

【貴之】

「……まっずい! 追いつかれる!!」

 

【和事】

「…………とったああああ!!!!」

 

【貴之】

「なにを!? ……って、ちょっ、雨衣!? 俺の水着――わぶぁっ!!!」

 

【和事】

「…………ぷはっ!! す、すみません貴之さん。ちょっとスピード出しすぎ…………え?」

 

【貴之】

「…………」

 

【和事】

「……たっ……!! 貴之さんの……()()()()が……!!」

 

【貴之】

「その()()()()がこんにちはしてるので水着返してください」

 

【和事】

「えっ? …………あっ。わたしが持ってたんですね……。うふふっ……」

 

【貴之】

「…………雨衣さん? 俺の水着握りしめたままなにしてんの?」

 

【和事】

「あっいやっ、その決して臭いを嗅ごうとかそういうつもりは決してなくてですね、つまり、その――!!」

 

【貴之】

「いいから早く返して!!! このままじゃ俺たち両方とも不審者になっちゃう!!!」

 

 

 

■同日 夜

★場所:貴之家(元睦村家)

 

 

 

【貴之】

「――というわけで、そんな珍事件があったんだ。電話で話すことでもない気するけど」

 

【佳風流】

『あははははははははっ!!!! いやぁ、バカみてぇな話だなおい!!! 一回のプールでどっちも水着取れるとかそんなことあるかぁ!? あーお腹痛いっ!! あははははは!!!!』

 

【貴之】

「笑いすぎだこのおぽんち」

 

【佳風流】

『それはぼくのセリフだぁ!! いろんな意味で!!』

 

【貴之】

「……さすがに俺の水着が取れたときは肝が冷えたぞ。周りにほとんど人いなくて助かった」

 

【佳風流】

『他人事みたいに言ってるけど雨衣ちゃんも同じ気持ちだったと思うぞ? このご時世、プールでおっぱい丸出しは大問題だからな?』

 

【貴之】

「いつの時世も大問題だと思うが」

 

【佳風流】

『そうなったのは誰のせいだぁ? ん? 焦って彼女の水着掴むとか、そんなことあるかねぇ……。本当はわざとなんじゃねぇの?』

 

【貴之】

「んなわけあるか。本当に事故だ。……俺とお前の仲だろ? 俺を信じろ」

 

【佳風流】

『どの口が言ってんだぁこのナメクジは。男ってのはねぇ、女を見るとき決まって外見から入るもんなんだよ。雨衣ちゃんのおっぱいに惚れて付き合いだした奴のことなんか到底信じられないねっ』

 

【貴之】

「馬鹿言うな。ちゃんと中身を見て好きになったに決まってんだろ。おっぱいも好きだけど」

 

【佳風流】

『ほれ見ろ、やっぱりおっぱいじゃないか。いくら取り繕っても無駄なんだよ。……まったく、雨衣ちゃんからしたらせっかくの水着お披露目なのに、こうも下心ありありの彼氏じゃあねぇ。可哀想に』

 

【貴之】

「和事の水着……本当に”良”かったなぁ。お前にも見せてやりたいくらいだったぞ。あっ、写真撮ればよかった。失敗したな……」

 

【佳風流】

『さりげなく惚気に入るな? そんなに言うなら今度こっちに戻ってきたとき、ぼくのラブリー&セクシーな水着姿で悩殺してやるぞ? んでそのまま雨衣ちゃんのことなんか忘れちまえ』

 

【貴之】

「ラブリー&セクシーは和事で満ち満ちてるので結構です」

 

【佳風流】

『バカぁーー!!』

 

 

 

 


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