TSウマ娘の日記   作:空色

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書き直すかも


第4話

7月×日

12月のレースを見据えて、中山で練習してこうということになった。そういうわけで、9月にある中山のレースに出ることにした。俺はスピードとパワーは優れているが、スタミナはダメダメだそうだ。そういった意味でも中距離は理にかなっているそうだ

 

7月×日

トレーナーに過剰に負荷をかけすぎだと怒られた。ひっくり返るまでトレーニングをしていたのだから当然と言えば当然だが。別にトレーニングが好きなわけでも過剰に勝ちたいわけでもない。ただ、肉体を追い詰めている時このまま死んでしまうのではないかと感じることがある。普通のウマ娘はその時点でトレーニングの行い過ぎで、膝をついてしまうのだが俺は何というか実感がなくて続けてしまうんだよな。この身体を自分のものだと理性では理解していも心のどこかで納得できていない。未だにこれは夢なんじゃないかと、錯覚して死ねば元に戻るんじゃないかと思うことがある。誰かと一緒いても誰かに話しかけられても、それは俺じゃない。ユニークナイターというこの身体なんだろう。

 

ただ、マヤノだけは俺を見つけた。だから俺は—————

 

 

8月×日

前に出会った空き教室で泣いていた子。デビューには成功したようだ。よかったなとは思う。しかし、勝ち続けられるかはわからない。俺の見立てだと入賞できるのはGⅢまでだろう。俺と距離適性が別でよかったなと思う。GⅢまでなら俺は勝てるだろうから。

 

9月×日

1600万ゲットだ。中山の直線が思ったより長いなと思った。

 

9月×日

唐突だがマーベラスとは何だろうか?最近、マヤノとマーベラスサンデーと一緒に出掛けることが多いのだが、長時間話すと正気度が減っていく気がしている。マヤノ通訳があるのとないので疲労が全然違う。

 

10月×日

京都ジュニアステークスに出ることになった。やはりG1に勝つ前にGⅢを経験しておいた方が良いだろう。

 

11月×日

ハナ差だったが2000万を手に入れることができた。ここまでは順調だ。

 

12月×日

マヤノは逃げも差しも先行もすべてにおいて適性があった。何が言いたいかと言えば、毎回異なる走り方で相手を蹂躙していくレース運びは同世代の中では受けが悪く、また孤立気味になり始めていた。ただウマ娘は性格が温厚であるため、昔のようなことは起こらない。はずだ。

 

12月×日

レース前日にトレーナーから追い込みで走るなと言われた。今のお前では1着は取れないから。手札を隠して今回は負けろと。………合理的な判断だと思う。

 

 

 

 

 

空色銀河は同僚のトレーナーととある飲み屋に来ていた。

 

大衆居酒屋ではなく機密性の高い個室付きのバーだった。薄暗い店内をジャズの音楽が漂う。

 

「正直意外だった。君はトレーナーを辞めると思っていた」

 

開口一番そう切り出したのは銀河と長い付き合いのある先輩トレーナーだった。あのシンボリルドルフやシンザンを育成していたベテランである。

 

「君は、彼女が引退した件でだいぶ気に病んでいたからな」

 

思い出されるのは数年前の事件。銀河にとっての不幸は最初の三年間でミスターシービーという特別なウマ娘を担当したことではなく、優しさ故にウマ娘を尊重しすぎたことだろう。

 

「オレもやめようかと思っていましたよ…」

 

先輩トレーナーは銀河を見て安堵したように笑みを浮かべる。

 

「………新しい担当はどうだ?」

 

「クソガキですね」

 

「即答か」

 

「あいつやシービーに比べれば酷いもんですよ。いつも作り笑いだし、この世のすべてを知っているような顔しているし、オレをおっさん呼ばわりしやがります」

 

「ハハハハハ、もう30前だもんなぁ。14とか15の学生から見ればおっさんだろう」

 

愉快そうにケラケラと笑う先輩トレーナーを無視して、思考に耽った。

 

「ただ、ウマ娘としての素質はシービーに近しいものを持っています。バ群を捌くセンスとか、走ることだけに集中する性格とか、スピード重視なところとか。ミスターシービーと近しいと言えますね」

 

少し間をおいて銀河は続けた。

 

「性格面で見れば自由を愛する彼女や天真爛漫だった《あいつ》とは真逆ですが………《あいつ》と同じく危ういんですよ」

 

銀河は昨日の晩にユニークナイターにレースで負けろと告げた。それは勝利への布石であると同時に、彼女の心を保護するためでもあった。

 

ユニークナイターは勝てる側のウマ娘である。同時に天才ではない。上澄みであっても天才には勝てない。記録には残っても記憶には残らない。

 

残酷なのはユニークナイターはこの事実を知っているということだ。嫌というほどこの事実を見せつけられてきたのだろう。

 

ユニークナイターはミスターシービーと同じ適性を持っている。資質も同じだ。だが、決定的に才能が足りていない。顔の整い方と見せ方以外は、すべてのパラメーターがシービーの劣化品でしかない。確かにシービーは逃げに適性はないし、頭の良さは彼女が勝るが、それだけだ。総合してシービーには及ばない。

 

だから見定める。最良のタイミングで、最良の手札を切るため。

 

これを伝えた時、銀河は殴られても仕方がないと思った。ウマ娘の力で殴られれば死ぬ可能性すらある。しかし、それを受け入れるのがトレーナーだと彼は思っている。

 

「だがそうはならなかった。あのクソガキは、まるで他人事みたいにそれを聞き流して笑顔で了承した。オレは許せなかったですよ。あんな顔をするガキがいることも。あんな顔をさせたオレが言えたことじゃねえんだけど」

 

銀河はグラスに入っているカクテルを飲み干し、溜息を吐いた。

 

「先輩なら、どうしますか?何がしてやれると思いますか」

 

「………それはお前が一番よく分かってるだろ」

 

先輩トレーナーのその言葉を聞き、銀河は肩を震わせた。

 

「とりあえずはシービーに会わせてみたらどうだ。焦ってどうにかなる話ではないはずだろう?」

 

先輩は会計のため席を立ち、銀河は座り込んだままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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