TSウマ娘の日記   作:空色

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第6話

『さあ間もなく始まります、今期クラッシック路線を走るウマ娘にとって初めてのG1となる皐月賞。勝利を掴むのは一体どのウマ娘なのか!』

 

『生憎の曇り空が広がる中山レース場。バ場状態は良の発表です』

 

『雨雲が心配ですが、バ場は各ウマ娘が存分に競い合える舞台へと整いましたね。今年の皐月賞も楽しみです』

 

ゲートの暗がりの中で、ぼんやりと実況を聞いていた。

 

それと同時に自分に向けられた視線を感じていた。敵対だとか警戒とか負の感情が乗った視線とは違う、興味と憧れを乗せた視線。その原因は、彼女が勝負服を着ているからである。

 

肩出しの薄手シャツからの大きめのジャケット。萌え袖から覗く小さな手と大胆に露出した脚。全体の色は彼女の髪色に合わせ、暖色になっている。わかるものにはわかる。自分がどうすればよく見えるか知っている組み合わせである。

 

陽光を反射する明るい茶髪をまとめて、マリーゴールドを模した花飾りで少し高めに固定している。その結果、後ろから見ると普段髪に隠された背中や肩が露出する。しかし、肌は見えておらず代わりに勝負服に刻まれたオレンジ色の宝石が見える。

 

ファンファーレが鳴り響き、全ウマ娘のゲートインが終わる。そして、紹介実況が始まった。

 

『三番人気を紹介しましょう。タヤスツヨシ。4枠5番での出走です』

 

『ライバルたちは強力ですが、好走を期待したいところですね』

 

『この評価は少し不満か? 二番人気は―――――』

 

雑音が耳障りだった。

 

皐月賞。最もはやいウマ娘が勝つと言われるG1。クラシック級のみが走るが故に、G1としての難易度は高くはない。

 

それでもユニークナイターにとっては別だった。天才ではない彼女にとっては。

 

『スタートしました。各ウマ娘たちがきれいなスタートを――――おっと!?ユニークナイター、出遅れてしまったか!?』

 

『逃げのウマ娘である彼女にとっては苦しい展開です』

 

ユニークナイターは遅れてスタートする。ポジションとしては後方の内側。スタミナや脚を温存して、他のウマ娘を壁にすることで風の影響も弾く。

 

ウマ娘の興味は前に向く。それはそうだ。逃げのウマ娘が出遅れただけでなく後方にいるのだ。警戒する必要がない。

 

ましてやユニークナイターは前回のレースで4着であり、今回のレースで巻き返したいという印象をインタビューなどで、周囲にアピールした。

 

掛かってしまったのだろうという認識を周囲に与えることに成功し、ユニークナイターはこの瞬間完全に伏兵と化した。

 

『先頭が最初のコーナーに差し掛かります。現在先頭から10番、14番、一バ身離れて1番、7番。二バ身離れて――――――』

 

まだ。まだ仕掛けない。

 

『1000m通過。先頭に続き中団がバックストレッチを駆け抜けていきます。5番タヤスツヨシここにいた。人気に応えることができるか?』

 

中山の直線は短いと言われる。通常であれば最終直線だけで最後尾から先頭に追い抜くことは困難である。

 

しかし、今回の条件は特殊だった。誰もが警戒していない状況、溜めきれた脚、綺麗な道筋。敵であるウマ娘の多くは未だ完成前の未熟者。スピードのみに重点を置き、この瞬間のみを想定したトレーニングを積んできた一人のウマ娘がいる。

 

ユニークナイターは、自分にそしてあの日のトレーナーに問いかける。

 

最終コーナーと直線だけでバ群を捌ききれるか?

 

できる。道筋は見えている。全体を把握しやすいのが、追い込みの強みだ。

 

この距離ですべてのウマを追い越せるか?

 

できる。そのためのトレーニングと末脚だ。

 

本当に勝てるのか?他のウマ娘を甘く見ているのではないのか?

 

―――――問題ない。なぜならここにマヤノトップガン(本物)はいないから。

 

「見せてやるよ。半端者の異物が普通で正しいお前たちを踏みにじる」

 

『おっと!?ここで仕掛けたッ!ユニークナイター!!!!!まさかここから間に合うのか!?』

 

『最終コーナーを超え、最後の直線に差し掛かります。中山の直線は短いぞ!番狂わせが起きるのか?』

 

動揺が広がる。予想外の刺客が、すべてのウマ娘の意識を死角から殴りつける。

 

『内を突いて上がってきたのは9番ユニークナイター。4番マジックリングに並び………抜いたァ。見事なごぼう抜きを見せるゥ!躱してどんどん上がっていくぞ』

 

見えている。行くべきルートが。わかっている。最適な抜き方を。完成品であるミスターシービーで、知っているから。

 

動揺が焦りに代わり、歓声が悲鳴とさらに大きな熱に化ける。

 

「前回は世話になったな。タヤスツヨシ」

 

前回のレースで自身を抜き去ったタヤスツヨシにそう言い放つ。

 

『可能なのか!?あの位置からの逆転が!これではまるで――――』

 

ユニークナイターは、ロールプレイ中は浮かべないはずの獰猛な笑みを引っ提げ、最速で駆ける。

 

『並ぶ、並ぶ、並ぶ、並ぶ!!!!!タヤスツヨシ、ユニークナイター、横一線だ!』

 

「負けるかああああああああああ!」

 

タヤスツヨシが叫ぶ。その横で少女はあくまで冷静に告げた。

 

「いい加減、墜ちろ」

 

残り50m。

 

残り40m。

 

残り30m。

 

そして、前に出たのはユニークナイターだった。

 

『抜いたァ!!!!!そのままゴールイン!!!!!一着でゴールしたのはユニークナイター。これはとんでもない伏兵だったァ』

 

『今年の皐月賞ウマ娘が決まりました。ホープフルステークスの雪辱を見事果たして見せましたね』

 

会場が湧く。誰もが予想しなった結末に、その熱は最高潮に達する。

 

実況を聞きながら勝利を噛み締める少女が最初に見たのは、タイムでもトレーナーでもなく、先ほどから声援を送っていた一人の少女である。

 

少女は何も言わずただ、少女に向かって人差し指を突き付け笑った。

 

 

 

 

 

 

 

そのウマ娘は、タブーを犯した。最後尾から先頭に出る。過去に衝撃を与えたミスターシービーの再現を。

 

1:名無しのウマ娘ファン

ユニークナイター可愛いィィィィィィィィィィィィ!

 

2:名無しのウマ娘ファン

あの綺麗な笑顔から一転冷めた目になる瞬間が俺を狂わせて放さない

 

3:名無しのウマ娘ファン

マジで顔がいい

 

4:名無しのウマ娘ファン

顔が良すぎて一番人気やろ

 

5:名無しのウマ娘ファン

最高やな

 

6:名無しのウマ娘ファン

顔が良すぎるんや

 

7:名無しのウマ娘ファン

あの笑顔がたまらんのや

 

8:名無しのウマ娘ファン

ファンサすごいよな

 

9:名無しのウマ娘ファン

涼しげな顔しているのに、レースになるとにこやかに手を振ってくれるんだ

 

10:名無しのウマ娘ファン

あの紅蓮の瞳が俺を狂わせる

 

11:名無しのウマ娘ファン

ブルマじゃなくて短パン、それがいい

 

12:名無しのウマ娘ファン

あれ?スレ間違えた?

 

13:名無しのウマ娘ファン

何でこのスレタイでこんな会話

 

14:名無しのウマ娘ファン

 

15:名無しのウマ娘ファン

マジで変態しかいないのか

 

16:名無しのウマ娘ファン

変態すぎる。短パンじゃなくて制服が一番そそる

 

17:名無しのウマ娘ファン

もしもし、ポリスメン

 

18:名無しのウマ娘ファン

話を戻すと、マジで興奮した

 

19:名無しのウマ娘ファン

ユニークナイターの身体に?

 

20:名無しのウマ娘ファン

レースにだ

 

21:名無しのウマ娘ファン

ほんと草

 

22:名無しのウマ娘ファン

実際、凄まじい追い上げだった

 

23:名無しのウマ娘ファン

ミスターシービーと重ねたファン多いだろ

 

24:名無しのウマ娘ファン

今まで逃げだったのに、急に追い込みに切り替えたの作戦だったらしいな

 

25:名無しのウマ娘ファン

マジで出遅れだと思ってぞ

 

26:名無しのウマ娘ファン

やっぱり、追い込みと差しはいいよな。迫力がある

 

27:名無しのウマ娘ファン

フロックじゃないのかっていう声もあるけど、あれはなるべくしてそうなった。周囲の油断も動き方も予定調和だった。随分前からこのレースのための準備していたんだろう。

 

28:名無しのウマ娘ファン

日本ダービー出走予定だし、期待できるな

 

29:名無しのウマ娘ファン

彼女のポテンシャルじゃ、3冠は厳しいだろうけどね

 

30:名無しのウマ娘ファン

相手次第かな

 

31:名無しのウマ娘ファン

でもトレーナーは空色らしいから、行けるんじゃないか?なおその後のウマ娘の人生は関係ないものとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勝負服に付属している髪飾りは、マリーゴールドか薊で悩みました。
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