( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」   作:スレ主

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第10話 冒険者の酒場

 冒険者の酒場にて。

 カウンターに雑草の山を積み上げる僕ら一行。

 推定一万ゴールドにも及ぶそれは圧巻で、

 否応なしに周囲の耳目を集めていた。

 

 

 しかし採集依頼の品を納めたはずの僕らは、

 何故か受付嬢に怒られてしまっている。

 

*(#‘ o‘)*「まったくこんなに採って来ちゃって。

限度というものを知らないんですか!?」

 

('、`*川「そんなこと私に言われても……

 

 矢面に立っていたエクレアさんは、

 露骨に顔を逸らしてたじろぐ姿を見せている。

 

 彼女は採取のときには居なかったからその反応は至極正しい。

 帰りがけに荷物持ちとして加わっただけなのに、どうしてこんな最前列でお説教を受けるはめになっているのか分からないけども。

 

( 'A`) oO(騎士だからタンクの適性があるのかな)

 

 僕がこっそりそんなことを思っていると、

 キッシュ君が横から割り込んだ。

 

(;`・ω・)「すまない、持ち込んだのは俺だ。

彼女は運ぶのを頼んだだけで関係ない」

 

( 'A`)oO(え、僕ら三人パーティ……)

 

川゚ _゚)「む、関係ないとはなんだ。激戦を共に乗り越えた仲ではないか」

 

 エクレアさんの言う通りだ。

 激戦どころか戦いにもなっていなかったけれど、言っていることは正しい。

 

 たとえ彼女が、服に付いた土埃を払い、剣を綺麗に拭いて鞘に収めただけで、何なら敵の方向すら見ていなかったとしても。

 それでも僕らは共にクエストを終えた仲間だ。

 途中参入でも非戦闘員であってもそれは変わらない。

 

 ……そろそろ僕から話し掛けてもいいかな。

 何だか感性が似ているし、フレンドになれるかも。

 

( ´・ω・`)「まあいいから。俺に任せてくれ」

 

川゚ -゚)「そうか、なら任せよう」

 

( 'A`)oO(まかせた)

 

 先ほどまでは尻込みして、まるで店員に話し掛けられない僕みたいになっていたキッシュ君が、ようやくいつもの輝きを取り戻してくれたようだ。

 

 そして受付嬢の方も、僕らのリーダーがキッシュ君だという情報を得て態度をコロリと一転させる。

 

*( ‘ ー‘)*「あらまー、持ち込んだのはキッシュ君だったの?

 

(;´・ω・)「その、何というか、見付けてしまったからな……

 

( ' A ` ) 僕が育てた。

 

 昨日までの五束しか持ち帰れなかった不甲斐ないキッシュ君とは違うんだ。

 今日の彼には準備を万全に終えた僕というベストパートナーが付いている。

 僕は大きな顔でどやった。

 

 相手がキッシュ君に立ち替わってから受付嬢はにこやかだ。

 表情を変え、馴染みのメンバーに見せる笑顔を取り戻した。

 ――かに思えたけれど。

 

 

*(#‘ o‘)*「あなたは何を考えているんですか!?

毎日ちまちま摘んでいたかと思えばいきなりこんな大量に持ち込んで!

 

 

(((;'A`)))「ひぇ……!」

 

 しかしそれは嵐の前に訪れる凪のようなもので、

 キッシュ君に交代しても怒りは解けていなかった。

 むしろ苛烈さを増したかも知れない。

 

*(#‘ o‘)*「群生地でも見付けたの!? そういうときはそっとしておいて少しずつ摘むんですよ!」

 

('A`;)oO(え……そうなの?)

 

 いや、言いたいことは分かる。

 確かに自然に生えているものなら、採り尽くさずに残すべきなのは自明の理だ。

 でもこれは僕の畑から収穫したものだし、明日と明後日の分はまた育てるだけなのに……何か問題あるのだろうか。

 

(;´・ω・)「少しずつ……俺もそう思っていた。

だが、その、竜巻がいきなり現れて――

 

*(#‘ o‘)*「竜巻がなんですか! そのくらい倒しなさい!

 

(((;'A`))) …………

 

*( ‘ .‘)*「まったくもう、あなたとはもっと早くに話をしておくべきだったかも知れませんね。ずっとひとりでいるから心配してたんですよ? お勉強して地道に頑張っているから、そのうち音を上げて仲間を頼り出すまで待とうってギルドマスターが言うから見守っていたのに」

 

*(‘. ‘#)*「知らないうちに

      こんな子に騙されて……!

 

('、`;川「わ、私はさっき出会ったばかりだから関係ないぞ?

 

 エクレアさんがパーティから脱退した。

 何だかとんだとばっちりだ。

 僕も膝を抱えて縮こまる。

 

(;'A`)oO(僕ここにいなくてよかったかも……)

 

 ここまで空気でいて助かった。

 挨拶する機会を逃して僕が空気に徹する切っ掛けとなったエクレアさんには感謝が止まらない。

 

 キッシュ君はしどろもどろになりながらも、

 改めてここに来た当初の目的を口に出した。

 

(;`・ω・)「その、なんだ。

全て引き取ってギルドで流通させてほしい

 

*(#‘ .‘)*「もう! キッシュ君――そんなこと出来るわけが――」

 

 受付嬢は納品を即断で突っぱねるけれど、キッシュ君は頑なだ。

 瀕死にあっても剣を降ろさなかった彼の勇気はこの程度では挫けない。

 

(;`・ω・)「頼む!

 

*(;‘ .‘)*「………………」

 

 そして二人は硬直に陥った。

 

 やはり僕も一緒に頼むべきなのだろうか。

 でもいきなり声を掛けるのは躊躇われる。

 知らない人だし……この人怖いし……

 

(((;'A`))) 三、二、一……のタイミングで行こう。

 

( 'A`)oO(三……)

 

(;'A`)oO(三……)

 

('A`;)oO(三……)

 

 僕が停止した時間の中で勇気を出すタイミングを図り始めたところ。

 不意にエクレアさんが横から口を挟んだ。

 

川゚ .゚)「まあなんだ、私からも頼む

 

 ……。

 

*(‘. ‘;)*「……。……いや貴女に頼まれても

 

 ファインプレーだ。

 硬直が解け、時は再び動き出した。

 

 呼応するかのように、

 キッシュ君も再び呟く。

 

(`・ω・´)「……頼む」

 

 まるで「いいえ」を無視して「はい」を強制するかのような圧力だった。

 何度拒否しようと、

 有無を言わせず繰り返されそうなそれに、

 

*( ‘ .‘)*「……はぁ、もう仕方ないですね!

少々お待ちください。ギルドマスターを呼んできます」

 

 遂に受付嬢は屈した。

 僕たち三人の勝利である。

 

 

 

 

 建物の奥へと向かう受付嬢を見送った僕らに、

 今までテーブル席で固唾を呑んでいた冒険者が話し掛けてきた。

 

(=゚ω゚)ノ「いよぅ、キッシュ。

おっかねぇな、あのおばさ――

 

¦¦ o‘)*「モヒンガーさん……!

 

(((゚ω゚=)))「……っ!」

 

 目をキョロキョロさせた猫背の小男。

 モヒンガーさんと呼ばれた、職業にして盗賊(シーフ)が似合いそうなその男は、一瞬の怯えを見せたあと、胡乱げに指を伸ばした。

 

 その指は雑草の山を示している。

 

(=゚ω゚)r「ふぅ、おっかねぇぜ。

――で、キッシュ。何なんだよ、こりゃ?

 

 

川゚ .゚)「薬草だが?」

 

 

('・c_・` ) (´`c_'`)

「薬草だな、カナッペ」

「ああフラッペ。おらの目によるとあれは最上級の薬草だべよ」

 

 エクレアさんが即座に答え、

 遠巻きの冒険者も同調する。

 

('A` )oO(あの人薬草も知らないんだ)

 

 これまでずっと心の中で雑草呼びしていた僕は、その記憶を封印した。

 

 

(=゚ω゚)「いや薬草なのは見りゃ分かるよ?

……でも違ぇ、俺が訊きたいのはこの数だ

 

 

川*゚ ~゚)「ふふん、凄いだろう?

 

 口の端を吊り上げて、

 また間髪入れずに答えたエクレアさん。

 

(;=゚ω゚)「ああ、そうだな、数ももちろん圧倒的だが、何よりカナッペをして最上級と言わせたのはマジすげぇ。一体どうやったんだ? コツがあるなら今度……ってだから違えよ!?

 

川゚ -゚)「コツか……私が答えて良いものか分からんが、そうだな」

 

(=゚ω゚)ノシ「ちょっとあんたは黙っていてくれ

 

 エクレアさんを手で制し、

 モヒンガーさんは改めてキッシュ君に向き直る。

 

(=゚ω゚)「で、キッシュさんよぉ?

一束ポーション一個として、こいつは何千個のポーションになるんだ?

頭の悪いオレにちょいと教えてくれよ」

 

('・c_・` ) (´`c_'`)

「何個だ、カナッペ?」

「そうだなフラッペ。おらの目によると一万束はありそうだべ」

 

 当たり。約一万個だ。

 数えた僕は正解を知っている。

 

('、`*川「なあ、キッシュ。何個なんだ? こっそり教えてくれ。私が答えたい

 

(´・ω・`)「ふむ、詳しくは数えてはいないが重さを量れば大体察しは付く。ギルドに秤があるはずだ、あとで借りてみよう。

――すまないモヒンガー、少し待っていてくれ」

 

 

(;=゚ω゚)「いや皮肉だよ!?

お前薄々思っていたがさては頭悪いな?」

 

 何が気に障ったのか、

 吼えるモヒンガーさんに、

 壁際にいた魔法使いらしき男が近寄った。

 

( ´ー`)「マイフレンド。秤ならば私が自前の物を持っている、良ければ貸すが?

 

 肩を抱いて囁きかけるその男に、

 けれどモヒンガーさんは手を(はた)いて返した。

 

(;=゚ω゚)ノシ「いらねえよっ!?

今のやり取りの何を聞いてたんだよ!?

というかお前の持ってるその小さな秤でオレは何百回量ったら良いんだよ!

 

(`・ω・´)「ふむ

 

 

(;=゚ω゚)「ふむじゃねえ計算すんな!

 

 

( 'A`)oO(え、待って、電卓、電卓)

 

('、`*川「何回だ、キッシュ? 実は私こういうのは苦手でな……

 

(;=゚ω゚)「なあ、お前が苦手なの会話だろ?

目の前でこそこそ耳打ちすんな、聞こえてんだよ!

 

 慌ただしく捲し立てるモヒンガーさん。

 何だか楽しげでうらやましい。

 

 そこにまた新たな男が近寄って来た。

 

(メ ̄ー ̄)「おいキッシュ。何でこんなもの摘んで来た? 物の価値が分からないほどガキじゃねえだろ」

 

 大柄で、顔に傷の入った強面。

 とても威圧感に溢れたその人は、人気者のモヒンガーさんではなくキッシュ君に用がある様子だった。

 

(゚ω゚;=゚ω゚)「だからそういう事じゃ……いや合ってるわ。ってギルドマスター! いつの間に!

 

(メ ̄ー ̄)「お前はいつも騒がしいな、モヒンガー。

……ちょっと黙ってろ」

 

(;=゚ω゚)「おう! ……オレか? 今のオレが悪いのか?

 

(`・ω・`)「……」

 

 受付嬢に呼ばれて、

 納品物の確認に来たギルドマスター。

 その上から数えられるほどの偉い人を前に、

 さすがのキッシュ君も緊張した面持ちを見せる。

 

(`・ω・´)「……森の入口近くでオニオンを見た」

 

 ただそれでも逃げずに向き合うのがキッシュ君という男だ。

 掴みの世間話から入るあたり、さすがは陽に生きる者ということなのだろう。

 僕にはこういう日常会話は無理だから、キッシュ君は本当に頼りになる。

 

(メ ̄ー ̄)「またか」

 

(`・ω・´)「ああまただ。今日は一体だけ。チラリとしか見えなかったが武装していたように思う」

 

 魔法で検知して一瞬で燃やしたから僕はそこまで見ていない。

 しかしキッシュ君が言うならそうなのだろう。

 

(メ ̄ー ̄)「一体……ただのはぐれか、迷うな。

一応オレの方でもちらほら確認はしている。いずれも数体ずつで、倒せた上で犠牲者は出ていねぇ」

 

(メ ̄ー ̄)「その上で訊こう。

――お前は何を考えている?」

 

(;`・ω・´)「もし大規模な争いになるなら、ポーションはいくらあっても足りない。……俺はそう判断した」

 

 

 キッシュ君は交渉にも強いらしい。

 世間話からこう繋げるのかと僕はお茶を飲みながら納得した。

 

 確かにあの森は敵性モブが豊富にいるから、

 この程度の回復薬はあっても良い。

 

 もしかして薬草の数が多かったのかもと密かに心配していた僕だけれど、この一週間支援をしながら観察をして、敵の数と冒険者の負傷率を調べた結果として、このくらいは必要かなと思った数だ。むしろ足りないとすら僕は考えている。

 

(メ ̄ー ̄)「判断としちゃ悪くねえ。

あいつらは数が増えるほど厄介になる。百もいれば町が滅ぶ数だ。それに近い数がどこかで力を蓄えてるならこのくらいの薬草はいるだろう」

 

(;`・ω・´)「だったら……!

 

(メ ̄ー ̄)「だがな、勇み足だ。まだ犠牲者がどこにも出てねえんだ。もしあいつらの動きが活発になっているなら、あそこの草刈り兄弟なんかはとっくにくたばってる」

 

('・c_・`;) (´`c_'`;)

「噂されてるな、カナッペ」

「んだフラッペ。でもおら達だって最近は……」

「しっ、そいつは秘密だカナッペ」

 

(メ ̄ー ̄)「分水嶺ってもんがあるんだ、キッシュ。

このギルドでは、あそこのモヒンガーがそれだ。あの騒がしい馬鹿がいなくなればすぐに分かる。あいつは馬鹿でも腕は二流だ。あいつがどこかでくたばって、そこで初めてあいつが死ぬほどの事態が起きていると、オレ達は警戒を引き上げるんだ。……なのにここしばらくは怪我人すら出てねえと来たもんだ」

 

 唐突に炭鉱のカナリア呼ばわりされたモヒンガーさんが、遠くの席で目を剥いていた。

 隣りで慰めている魔法使いの人は名前をなんて言うんだろうか。

 今この場にいる冒険者たちは、全て僕のフレンド欄(支援対象)に入っているし、体力が減ればすぐさま助けに行けるようになっているけれど、名前が略称だと寂しいから出来れば本名を知りたいところだ。

 

(;`・ω・´)「…………実は俺は、賢者様に導かれている

 

(メ ̄ー ̄)「証拠がねえ。

元よりお前さんには信用もねえんだ。

いつもひとりで森に入ってるガキが、いきなり何を言ってやがる」

 

(;´・ω・`)「……!」

 

(メ ̄ー ̄)「――もちろんオレは信じてやる。そこに現物の山(伝説級の薬草)があって信じなかったらオレはモヒンガー以下の馬鹿だろ?

 

(;`・ω・´)「――!」

 

(メ ̄ー ̄)「いいか、オニオンが大きな群れを作っている証拠はねえんだ。憶測で物を言うんじゃねえ。そんな噂を立ててうちのバカ共が逃げ出したらどうしてくれる?」

 

(;`・ω・´)「そうか、配慮が足りなかった……!」

 

(メ ̄_ ̄)「……その上で結論を言うが、ここでは無理だ。引き取れねえ。

お前がうちをどう思っているか知らんが、ギルドにそんな大金はねえんだ。

それに……こんなものを扱える伝手はねえんだよ。

お前が運命に導かれているというなら、目的地は間違いなくここじゃねえ。余所を当たるべきだな

 

(;´・ω・`)「ここではないのか……? しかし他のあてなんて

 

(メ ̄_ ̄)「おそらくは国を……いや、そいつはお前自身が選ぶことだな

 

(;´・ω・`)「……」

 

 ……。

 

 

 ようやく話が終わった雰囲気になった。

 途中から小声で聞き取れなかったけれど、

 つまりどういうことになったのだろう?

 

川゚ -゚)「ふむ、つまりここでは引き取れないのか。

――なら次だな。行くぞキッシュ

 

 なるほど納品は無理だったらしい。

 僕も途中から察していた。

 

 エクレアさんが薬草を籠に詰め直し、

 再び担ぎ上げて出口へ向かう。

 

(;´・ω・`)「……あてがあるのか?

 

川゚ ー゚)「ああ、私は騎士だからな。任せておけ」

 

 ここに来たときと同じように、

 先陣を切って歩き出したエクレアさんを、

 僕とキッシュ君は無言で追った。

 

('A` )「え、クエスト失敗した……?」

 




*( ‘ .‘)* ←受付嬢コロネ
可愛く見えてもモブ。
冒険者の精神的カーチャン。
そこまでの鑑定眼はないので普通の薬草を大量に持ち込んだと思ってる。それでもこの数は無理って思った。


(=゚ω゚)ノ ←|冒険者モヒンガー
酒場のムードメーカー。
見ての通り後輩思いの良いやつ。


('・c_・` ) (´`c_'`) ←フラッペ&カナッペ
田舎育ちの冒険者兄弟。そっくりだろ?


(メ ̄ー ̄) ←ギルド幹部(マスター)ガトー
博識(インテリ)なのでキッシュ君と認識を共有できる。
その上で一束で金貨の袋が飛ぶ伝説級の薬草なんて買い取れないし、そもそも扱える錬金術師がこんな辺境にはいない。結果として買取不可。食べるものじゃないし。
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