( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」 作:スレ主
採集クエストに失敗し、
大量の薬草在庫を抱えて、
路頭に迷う寸前だった僕ら一行。
そんな僕らを見兼ねた騎士のエクレアさんは、
ギルドに来たときと同じように先陣を切って歩き出した。
そして案内された先は、
一軒の古ぼけたお店だった。
キッシュ君が問い掛ける。
( ´・ω・`)「ここは道具屋では?」
川゚ -゚)「その通りだが?」
いつもの調子で返すエクレアさん。
短い付き合いだけれど何となく僕は悟った。
この人は当たり前のことを当たり前のように返す人らしい。
誰でも知っているボスの弱点をどや顔で教える僕のようなものだ。
何だか親近感が湧いてくる。
( 'A`)oO(見てのとおりだよね)
(;´・ω・`)「……いや、しかし、まさか。騎士の当てではなかったのか」
キッシュ君は少し混乱していた様子だったものの。
川゚ -゚)「餅は餅屋。薬草なら道具屋だ」
(;´・ω・`)「そ、そうか……。俺は君のことを少し誤解していたようだ」
続く一声で誤解を解いた。
意見がすれ違うことがなくて僕は嬉しい。
――チリンチリン。
軽快な鈴の音が僕ら三人を出迎える。
从'ー'从「はいはい、何かご用ですか?」
続いて綺麗な女性の人がやって来た。
長い髪を降ろして雰囲気がおっとりしている。
エプロンの姿がよく似合う、
さっきの
川゚ -゚)「買取を頼みたい」
从 'д'リ「はー、つっかえ。
……いるんですよねー、ギルドで納品断られたからって直接持ち込みに来る人」
清楚で優しそうな人から、
なんだか変な言葉が飛び出て来た。
聞き間違いだろうか?
(゚- ゚川「この薬草なんだが」
気にした風もなくエクレアさんは続ける。
籠から薬草を取り出してテーブルに並べて行った。
从'ー'从「ただの雑草なんて持ち込まれてもねー、ここは道具屋だっての。そんなものお前が泊まってる馬小屋でお馬さんとレッツパーリーでもしてろって話ですよ」
( 'A`)oO(空耳かなぁ……)
もしかしたら空間魔法の調子が悪く、別のところから音声を拾ってしまっているのかも知れない。
酒場でモヒンガーさんが悪口でも言っているのだろうか。
(゚- ゚川「詳しくは数えてはいないが、重さを量れば察しは付くだろう」
そして次々と。
マイペースにどさどさ並べるエクレアさん。
何気に言っている台詞は先ほどキッシュ君が答えたものだ。
从'ー'从「……私こう見えてあなた達より長く生きていますけど、こんな人の話聞かないおバカさんを見たのは初めてですよ?」
川゚ -゚)「二十代か、若いな店主」
从*' -'从「まぁ、よく集められましたね、こんなにたくさん」
やはり優しそうなお姉さんで合っていた。
道具屋のお姉さんは大量の薬草を見せた僕らを叱ることもなく、むしろ褒めてくれた。
从'ー'从「仕方ないので見るだけ見てあげますよ」
そしてやれやれとエプロンのポケットからルーペを取り出して薬草のひとつを手に取った。
从◎ -'リ「ふーん、なるほどねー」
覗き込みながらお姉さんは続ける。
手が震えていて、何だか若干危うい。
从◎ -'リ「状態は新鮮、まるで昨夜生えてきたかのような
(゚- ゚川「だそうだぞ、キッシュ」
(;`・ω・)「い、いや、だがギルドにあった本では……」
自生する萎びた薬草にわざわざ水まであげていたキッシュ君が狼狽する。
从◎ -'リ「虫食いも傷も無し、はー溜息。虫も食べないとかどんだけですか。マイナスですよ、こ、れ、は」
(゚- ゚川「ほう、逆なのか。私は虫食いがない方が好ましいがな」
(;´・ω・)「……そ、そんな」
僕が虫を遠ざけたせいで酷い評価が付いた。
あとでキッシュ君には謝らないといけない。
从◎ -'リ「生育良好、葉先はカッチカチ。私こんなサイズ生まれて初めてですけど、見事に育ちきってますねー。こういう採取のマナーを厳守してくる冒険者ってほんと何考えて生きてんでしょうね、マイナスマイナス」
('、`*川「おいキッシュ、お前こんなもの私に持たせていたのか……」
(;´・ω・)「俺に言われても……いや何でもない」
先ほどまで誇らしげにしていたのに、
あまりの低評価に恥ずかしそうに顔を赤らめて後ずさるエクレアさん。
从◎ -'リ「で、効能は
ここまで全てマイナス評価。
僕が必死に育てたものだけれど、
所詮は引きこもりの元ニートということか。
一晩頑張った程度ではそんなものらしい。
( 'A`)oO(…………だよねー)
(゚- ゚川「ふむ、それで店主。幾らになる?」
しかし流石は騎士エクレアさん。
この程度は痛みにもならないようだ。
タンクの面目躍如とばかりに、
意に介さず交渉を続けた。
道具屋のお姉さんは溜息を
从'ー'从「はー、ここまで言われてそう訊いちゃいますかー。私こう見えて貴方たちの母親より長く生きてますけど、ここまで話の通じない人は初めてですよ?」
(゚- ゚川「五十代か、意外と年寄りだったんだな」
なるほど。
ジェネレーションギャップというやつだ。
从#' д'リ「買い取り拒否ですっ!」
('A`;)oO(ひぇぇ……)
道具屋のおばさんは断り文句を口にした。
まさかここでも断られてしまうだなんて。
この薬草の山どうしよう……
僕はまた失敗かと嘆息し、
膝を抱えて成り行きを見守る。
(゚- ゚川「まあ、そう言わずに頼む。品質が最悪なのは重々承知したが、それを補うだけの数は用意してあるつもりだ。その努力も汲んでやってくれ。ちなみに持ち込んだのはこいつで私は関係ない」
从#' ー'リ「ははーん、さてはあなたアホの子ですね?」
('、`*川「ほらキッシュ、謝ってしまえ。お前がこんなもの持ち込むから怒ってしまったんだぞ?」
从#' д'リ
「私がムカついてるのはそこじゃない!」
エクレアさんが騎士を名乗るに相応しい強靱さで対応するも、道具屋のおばさんの怒りは増すばかりだ。いくらタンクとは言ってもヘイトを取り過ぎだと思う。
そこにようやくキッシュ君が前に出た。
(;`・ω・´)「すまない店主。持ち込んだのは俺で、その……俺は若く見えるし美人だと思う」
从#' д'リ「お前かっ! そんな取って付けた台詞に誰が騙されるか! もっとちゃんと褒めろ!」
(;´・ω・`)「……本心だったのだが」
从' ー'リ「もう、まったく何てもの持ち込んでくれるんですかねー。月の光だけを百年浴びせたような効能で虫食いどころか傷ひとつ無いなんて、まるで伝説に謳われる賢者様が懇切丁寧に育てた薬草畑にでもありがちな品質ですけど、まさにそのまんまじゃないですか」
(;`・ω・´)「ふむ、さすがの慧眼。恐れ入った」
从#' д'リ「お為ごかしやめろっ! もしかして宝箱でも見付けたと思いましたか? バーカバーカ、それは特大のミミックだ! ――私を巻き込むんじゃないっ!」
(;´・ω・´)「……本音なんだが」
从'ー'从「……まあ、ここで突き返したところで、もうどうにもならないでしょうからねー。いいですか、優しいお姉さんが最初で最期の助言をあげます。――見付けた場所に戻してごめんなさいして来なさい。それで私だけは無事で済みます。私は見ませんでした。触りもしませんでした」
(゚- ゚川「ふむ、アドバイス感謝する。たしか店主はマリネと言う名前だったか。表の看板に書いてあった。……ではその名でしかと伝えよう。店主は見なかった、触らなかった、と」
从#' д'リ「おいやめろっ!
お前さては分かって言ってるだろ!」
僕は外に視点を移して看板を見てきた。
たしかにマリネのアトリエと書いてある。
道具屋の店主マリネさん、よし覚えた。
(;`・ω・´)「仕方ない、詳しく話そう。
実はこの薬草は賢者様から譲られたものだ」
意を決したようにキッシュ君が呟いた。
从' ー'リ「はー、特大溜息。私こう見えて貴方たちの曾々々々祖母よりずっと長く生きてますけど……はあ? そんなのはとっくに承知してるんですけど? この私でも賢者様には
(゚- ゚川「……む、分からんな。当家を興した初代がたしか1200歳くらいだがそれ以上か?」
从;' д'从「ひぇぇっ……!」
(゚- ゚川「すまん店主、私はそういうのが苦手でな。
――それで結局、幾らになる?」
何故か怯んだ店主マリネさんに、
ここぞとばかりにエクレアさんが話を戻した。
先ほどお断りされたというのに、
微塵も堪えた様子がない不動の精神力。
この鉄壁の前衛に、店主さんも遂には折れることとなった。
从'ー'从「……はぁ、分かりましたよ。
('、`*川「やったな、キッシュ。私のお陰だぞ」
从'ー'从「ただ私の機嫌は大変悪く、お財布も心許ないので全部で千ゴールドですね」
( 'A`)oO(……一万ゴールドじゃないの?)
やっと売れた、と喜ぶものの。
買い叩かれてしまった。
……いや、やはり数が多すぎたのかも知れない。
川゚ -゚)「ふむ、若く美しい店主、恩に着る。私は帝都ノワールの騎士エクレア。――もし数が手に余るようならその分は騎士団で引き取ろう」
从*'ー'从「はあ? 物知らずも大概にしてくださいよ。――余るわけがないでしょう。運命とはそういうものです」
( ´・ω・`)「王都の騎士ではなかったのか……。しかし帝都、隣国の騎士がなぜこんなところに」
色々あったけれど何とかなった。
こうして僕たちは初めてのクエストを終えた。
報酬は想定から大幅に減額して千ゴールド。
最も活躍したエクレアさんは、ただの荷物持ちだからと分配を固辞したのでキッシュ君と二等分だ。
この間ぼったくってしまったお金の五倍ともなる金額がキッシュ君の懐に。
同じだけの額が僕の手元にも舞い込んだ。
これで今月の家賃はどうにかなるかな……
そして僕らはパーティを解散し、
各々の帰路へと着いたのだった。
( 'A`)「あ、酒場で乾杯……まあいっか」
結局エクレアさんとは話せていないし、
それはまた次の機会にしておこう。
〆
『???――どこかの喫茶店』
( 'A`)「こん」
( ,_ノ` )「……何か相談かね?」
来店と同時に差し出されるミルク珈琲。
そして全てを見透かしたような一言。
やはりここは落ち着く。
前世なら間違いなく隠れた名スポットになっている場所だ。
僕は引きこもりだったからたぶん行かないと思うけど。
('A` )「うん、森にオニオンっていうのがいるんだけど、何が問題なのかよく分からなくて」
僕は今日、耳にしたことを相談した。
森の至るところにいる小人の姿をした敵性モブ。
前からずっと見かける奴らだし、ここ一週間で特に何か変化があったわけでもないのに、キッシュ君が神妙にしていたのが僕は気に掛かったのだ。
( ,_ノ` )「ふむ。本来は洞窟で暮らし、森で獣を狩るのがオニオンの生態だ」
このマスターは知識が豊富だ。
キッシュ君も博識だけれど、それとは比較にならないほど何でも知っている。
( ,_ノ` )「森の深くで遭遇するだけならままあることだ。しかし彼らの生存本能として、人の切り拓いた道は避けるのが常だろう」
( 'A`)「へー、つまり……どういうこと?」
怯えて隠れているのが正しくて、果敢に飛び出して来るのが異常ということだろうか。
でもそれならキッシュ君も同じようなことを言っていた。
( ,_ノ` )「フッ、予想は容易に立てられる。しかしそれは定められた運命とは程遠い」
唐突にポエムを語り出すマスター。
この人は度々こういうところがあるが、
僕は理解者だからあえて突っ込んだりはしない。
( 'A`)「……分からないってこと?」
( ,_ノ` )「マスターたる私に分からぬことなど無い。近々大きな騒動が起きるだろう」
( 'A`)「ふーん」
マスターは煙に巻く態度に入った。
自分が知らないことを訊かれて、
どうとでも取れる適当な返事で濁すいつものだ。
以前僕が母の居場所を訊いたときも、
丁度こんな感じで返されたから僕には分かる。
( ,_ノ` )「フッ、ただ覚悟しておくことだな。選択の時は近い」
('A` )「へーい」
そんなことは分かりきっている。
人生いつだって選択の連続だ。
僕は手元に残った五〇〇ゴールドの一財産で家賃を払うか、これをキッシュ君に投資してもっと大きな依頼を狙うか。それをこれから選ばなくてはいけないし。
( '◎E ゴクゴク
('A` )っ① 旦 チャリン
「じゃあマスター。ごちそうさまー」
僕は早速、今日の報酬で、
いつもは奢って貰っている珈琲代をテーブルに置いた。
残り四九九ゴールド。
これをどう扱うか考えないと。
〆
( ,_ノ` )「フッ、一ゴールドか。
――なかなかの大金だな」
( ,_ノ` )「かつて――ひとつの運命があった。
壮絶な相打ちの果てに村を守り抜いた青年がいた。
その死を以て警鐘を打ち鳴らし、
騎士への助言とした若き勇者がいた」
( ,_ノ` )「なれど、運命は動かされた」
( ,_ノ` )「青年は生き存えた――
青年は勇者とならず警鐘は響かない。
その捻じ曲げられし運命は、
やはりひとりの騎士の運命をも歪めてしまう」
( ,_ノ` )「かつて――ひとつの運命があった。
隣国より遣わされた若き騎士がいた。
皆に悼まれる勇者の警鐘を受け取り、
滅び行く町に嘆きながらも、
やがて国を救うに到る強き騎士がいた」
( ,_ノ` )「運命は揺り戻す。
騎士は敵を知ることなく退き、
敵は疲弊することなく時を得た」
( ,_ノ` )「――彼女は今。
その脅威を知らぬままに、
再び運命の森へと足を踏み入れる」
( ,_ノ` )「フッ、運命は導かれた。
本来救われるはずであったこの国は、
滅びによって終わりを迎えるであろう」
( ,_ノ` )「――もはや運命は動かない。
勇者に等しい魂を捧げようとも、な」
( ,_ノ` )「さて、お前さんは、
果たして誰を生贄にして立ち向かう?」
从'ー'从 ←道具屋マリネ
歳を隠す気のない耳隠れ系長寿種族ご当地モブ。
年齢でマウント取るタイプ。年上にはひぇってなる。
そのくせ二十代には見られたい複雑なお年頃。
伝説級のポーションを作れる錬金術師。
(゚- ゚*川 ←帝国騎士エクレアちゃん
交渉上手。これは高得点ですね。
( ゚ー゚) ←大家のマカロンちゃん
ラスボス。
( ,_ノ` ) ←大賢者《マスター》ゴルゴンゾーラ
後方腕組み師匠系愉悦部。
ピタゴラスイッチ楽しいな。
ここから怒濤の流れになるので次の更新はちょっと遅れる。