( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」   作:スレ主

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第4話 魔法塔とかいう施設を建てればいいらしい

 絶望の底にあった僕に接触してきた老年の男。

 喫茶店のマスターを名乗る彼に、僕は話した。

 

 嘘偽りなく。

 何を試し、何を失敗したか。

 自作の魔法の仕組みから何から余すことなく。

 このコーヒーもしかして自白剤でも入ってるんじゃないかと思うくらいに。

 

( ,_ノ` )「フム……理論的には絶望的な状況だな」

 

( 'A`)「……だよね、僕泣いていいよね」

 

 この世界で一番不幸なのは、

 もしかしたら僕なのかも知れない。

 どこかで不幸自慢の大会が開かれていれば優勝する自信がこのときの僕にはあった。

 

( ,_ノ` )「しかし理屈の上では、まだ十分に望みはある」

 

( 'A`)「え……?」

 

 ――あり得ない。

 と反論が喉から出掛かる。

 

( ,_ノ` )「世界の半分を捜しても見付からない……

なるほど、だがまだ半分しか捜してはいないのだろう?」

 

 それは僕も一度は考えた望みだった。

 しかしあり得ない。だけどあり得ない。

 

('A`;)「(……たった数ヶ月で世界の裏側に行ってるって、僕の母ちゃんどんだけアクティブなんだよ)

 

 この世界の交通機関は馬車か船だ。

 どちらを使ったとしても、

 数ヶ月で進める距離はたかが知れている。

 その距離を超えて捜索してなお見付からない。

 諦めてしまって当たり前の状況だ。

 

( ,_ノ` )「希望を見失うのは、残る半分を捜してからでも遅くはあるまい?」

 

 しかしマスターは、

 さも当たり前のように告げた。

 すぐ諦めてしまった僕を諫めるかのように。

 失望に溺れていた僕を引き上げるかのように。

 

('A`;)「で、でも無理だよぉ。

最大出力で世界の半分までしか届かないんだから……僕外に出たくないし

 

 僕の答えはこれが唯一で、全てだった。

 外に出たくないから母を捜すのに。

 母を捜しに外へ出るのでは本末転倒だ。

 外へ出て、世界の裏側まで行って、そこでもう一度魔法を使うだけのバイタリティは残念ながら僕にはない。

 絶望の根源は僕の内に巣くっているんだ。

 

 

( ,_ノ` )「フッ、何を言うかと思えば――

君は若くも道を究めた魔道士だろう?

 

 

('A` )「……!?」

 

 ……僕ただの引きこもりなんだけど?

 

 前から見ても後ろから見ても引きこもりのニート野郎、それが僕だ。

 

( ,_ノ` )「――古くから、魔道を究めし者はその影響力を高めるべく塔を建てて来た

 

 

('A` )「……え、塔? 塔って何?

(いきなりゲームの話?)

 

( ,_ノ` )「魔道の力を形而下の概念より解き放つ魔法塔さ――

 

('A` )「(……何それパワーアップ施設?)

 

( ,_ノ` )「君にもようやくそいつを建てる時期が来たということだろう

 

 話は見えないが、イメージは何となく分かる。

 きっと魔力を増幅する電波塔のようなものだ。

 魔法がもっと遠くまで届いたらなと思っている僕にとっては願ったり叶ったりな代物だ。

 

('A` )「魔法、塔……? よく分からないけど、それって僕が作っちゃってもいいの?」

 

 しかし電波もとい魔力をまき散らすものなんて勝手に建ててしまって良いとは思えない。

 前世基準でいえばこういう高出力の装置は届け出が必要になる。違反すれば厳罰だ。

 

( ,_ノ` )「フッ、未熟であれば師が止めるだろうが。君ほど魔道の真髄を究めているなら大丈夫さ」

 

('A` )「……僕、師匠なんていないんだけど?」

 

 ――不意に理解した。

 

( ,_ノ` )「フッ、ならば尚更問題ない。面倒な問答がなくて何よりだ」

 

 ――おそらく、この人は勘違いをしている。

 

('A`;)「……ほ、本当に建てちゃっていいの?

 

 ――僕はただのニートだというのに。

 

( ,_ノ` )「ああ。何なら私が認めよう」

 

 ――魔道士なんて凄そうな職業に就いていると勘違いしている。

 

('A`;)「……そ、それで母ちゃん捜せる?」

 

 しかし僕は訊ねた。

 縋り付いた。

 

('A`;)「……魔法の塔を建てたら母ちゃん見付けられる?

 

 醜くもこの勘違いを利用した。

 

( ,_ノ` )「フッ、当然だ。仮にどこかで亡くなっていたとしても余裕で蘇らせられるさ」

 

 僕には縋り付くしかなかったんだ。

 この甘美な勘違いに。

 母にまた会えるかも知れない可能性に。

 

('A`;)「そ、それで、どうやって建てるの?

 

 そして何より、

 再会した母に『魔道士になったよ』と誇れる可能性に。

 

 

 

( ,_ノ` )「フッ、そんなこと――

必要な素材を買い、下々の者に任せれば良かろう?

 

 

 しかし現実はそう甘いものではなかった。

 

 

('A`;)「(……魔法でどうにかするんじゃないの? っていうか下々の者って)」

 

 てっきり素人の魔法でもパパッと作り出せると思っていた僕に。

 そのあまりにも即物的な現実が、無情に重く伸し掛かって来た。

 

 翌々見てみればこのマスターは金持ちくさい。

 着ている服、身に付けている装飾品。

 というより佇まいからしてどう考えても金持ちだ。

 生まれながらの貧乏人の僕とは対極の位置にある。

 

( ,_ノ` )「ただ小遣いの範囲で済ませようとするのはお勧めしない。それでは質の低い塔しか建てられず、目的を達せられまい」

 

('A`;)「(え、え……? 物理的に塔が建つお小遣いってなに……?)」

 

 土地代、材料費、建築費。

 様々な見積もりが脳内を侵食する。

 果たして金持ちの小遣いとはいくらだろうか。

 それでは足りず、さらに巨額の資金が必要とはどんな公共事業なんだろうか。

 

 そもそもの話。

 家賃の支払いにすら困窮しているのに。

 そんな家を買うよりもお金が掛かりそうなものが僕に作れるのだろうか。

 

( ,_ノ` )「おっと、もうこんな時間か。そろそろ寝なければな」

 

 金持ちのマスターは、

 やはり金持ちの発言をして《窓》を閉じようとした。

 

('A`;)「え、待って! お金……お金ってどうしたらいいの!?」

 

( ,_ノ` )「フッ、今私と繋がっている魔法があるだろう? 私も昔はそいつで荒稼ぎしたもんさ」

 

 金持ちのマスターは口元の皺を深めると、

 それだけを告げて《窓》を閉じた。

 もう眠るのだろう。

 まだ夜明けにはほど遠い時刻だというのに。

 

(;'A`)「お金……どっかで拾えば良いの……?」

 

 ひとり残された僕は、

 とりあえず適当に空間魔法を繋いでみた。

 いつものような空ではなく地面に近い位置に。

 

 もう僕に残された時間は少ない。

 日が昇れば大家さんがやって来る。

 

 大家さんがドアを叩いて、

『家賃は?』と訊いてくる。

 

 それで払えないと言えば追い出される。

 ……僕は今日、死ぬのだろうか。

 

 マスターは去り際に、

 空間魔法の《窓》で大金を稼げると言った。

 僕はそれを信じてみようと思う。

 信じるしかない。

 

(;'A`)「お金……お金……

 

 だけど、

 街中を覗いても、

 街道を覗いても、

 どこにもお金が落ちている気配はない。

 

(;'A`)「お金……お金……ん?」

 

 森の中で茂みを覗いていると、

 誰かが争っている音がした。

 

('A` )「こんな夜更けになにやってるんだろ……」

 

 耳に届いたのは剣戟の響き。

 

('A` )「え、あの人なんで剣なんか振ってるの……?」

 

 空間魔法の《窓》をそっと近付けて映ったのは、

 一人の青年が血まみれになりながらも、

 複数の小人を相手取る姿だった。

 

 




塔 ←
ジッグラトとかピラミッドとかバベルとかいうの。
国が滅びまた興るまでの期間を経て完成する象徴。
故に建築に着手したというだけでも偉業となる。
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