( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」   作:スレ主

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第6話 初めての収入

 焼け焦げた黒い跡。

 地面に転がる三つの生首。

 力尽きた冒険者の青年。

 

 

 

 

('A`;)「救急車呼ばないと……!

 でんわどこ、でんわ……」

 

 何とか助けなければと、

 僕は部屋を引っくり返して携帯電話を探す。

 

 しかし見付からない。

 枕の下にも、布団の下にも、

 どこにも見付からないそれに業を煮やし、

 僕はもっと良い手段(魔法)があることを思い出した。

 

(;'A`)っ「――あ、そうだ《ヒール!》

 

 癒やしの光が闇夜を照らす。

 昔タンスの角に小指をぶつけたとき考えた魔法だ。

 あの骨折もかくやという絶望的な状況からこの僕が助かったんだ、彼だってきっと助かる……はず。

 

 それから間もなくして、

 冒険者は何事も無く立ち上がった。

 

(;´-ω-)「ぅぅ……痛みがない……?」

 

( 'A`)「……だいじょぶ?」

 

 僕は勇気を出して声を掛けた。

 見ず知らずの人だし。

 昼に生きていそうな陽の者(イケメン)だ。

 

 でも善良な人だったし。

 何より一緒に共闘した相手だ。

 

 空間魔法の窓越しであれば、

 ネトゲみたいなものだと思えば、

 僕は彼とフレンドにだってなれる。

 ――そう思う。

 

(つω・´)「姿が見えず声だけが……そしてあの魔法……やはり賢者様だったか」

 

('A` )「うぇ(賢者様……?)

 

 思わず変な声が出る。

 さっきも喫茶店のマスターに魔道士とかいう職業と勘違いされたばかりなのに、また何か誤解されてしまったらしい。

 僕は引きこもりのニートなんだけど。

 

(´・ω・`)「賢者様、助かった。あそこで倒しきれなければ村が滅ぶところだった。……俺に差し出せるものがあれば何でも言ってくれ」

 

( 'A`)「ぇ、あ……ぅん。

ならフレンドに……って違うこれはネトゲじゃない

 

 ぐいぐい来られて困惑したものの。

 僕は何とか返事を絞り出す。

 

('A`*)「お礼なんて別にいいよ。

……そういうつもりじゃないし

 

 道すがら見かけた、

 強モブと戦う冒険者。

 

 苦戦しているなら、

 その場に留まって応援して。

 

 勝利したなら拍手で讃え、

 倒れてしまったなら蘇生する。

 

 その一連の様式美――

 関わり合いを何と呼ぶべきか、

 僕には分からない。

 

 けれども謝礼なんて無粋なものが介在する余地はないことを、僕は経験から知っている。

 

(`・ω・´)「ははっ、無欲なお方だな。

あの状況なら魂取られたって文句は言わないのに」

 

(;'A`)「え、魂……何それこわい

 

 窮地に現れて代償に魂を強請るとか。

 そんなのネトゲでなくマンガの展開だ。

 僕はそんな働き者の死神みたいな奴だと思われていたのか。

 ……誤解が酷すぎる。

 

(`・ω・`)「ともあれ助かったのは事実だ。

こんなものしか無いが、とりあえず全財産を渡しておこう」

 

 そう言って彼は、

 懐から小袋を取り出した。

 

(`・ω・)っ($)

 

('A`;)「ぁ……

 

 いらないとか。

 もらえないとか。

 そんな台詞が心をよぎった。

 

(´・ω・´)「どうせ失っていた金だ。遠慮無く受け取ってくれ」

 

 だけど声にはならず。

 僕は小袋が丸ごと丁重に、

 地面に置かれるのを見送った。

 

(`・ω・´)ゞ「ちゃんとした礼はいずれまた。では」

 

 言葉に詰まる僕をよそに、

 冒険者は飄々と去って行った。

 

( 'A`)「……」

 

( 'A`)「…………」

 

('A` )「………………(チラッ)

 

 

( 'A`)「お金……《アポート》

 

 

 放心状態で魔法を唱え、

 小袋を自分の手元へ引き寄せる。

 

('A` )「……こんなところで全財産あげちゃって、あの人これからどうするんだろ」

 

 袋の中身は半分ほどを埋める銅貨だった。

 

( 'A`)「……そういうつもりじゃないのに

 

 本心だった。

 お礼なんていらなかったんだ。

 

 彼は戦って、僕は応援した。

 ただそれだけの話なんだ。

 

 フレンドにはなりたかったけれど。

 友達料とか、むしろ僕が払うべきものだ。

 

( 'A`)「もらっていいんだよね?

まあ僕もちょっとは手助けしたし……

 

 こんな深夜にひとりで命を懸けて、

 村を守って、それで死にかけて

 

 助かったからと、

 僕なんかに身銭を切って。

 

(つA`)「もらっていいんだよね……

 

 本当に報酬を受け取るべきなのはあの冒険者の方なのに。

 こんな安全な場所から魔法を使っていただけの、どこかにある村なんて気にも掛けていなかった僕がもらっていいものじゃないのに。

 

(うA;)「……」

 

 意図していた方法とはまったく違う。

 

 けれども僕は、

 こうして生まれて初めて、

 自分の力でお金を稼いだんだ。

 

 初めて得た収入は、

 ひとりの勇敢な冒険者の命に等しい。

 ――とても重いものだった。

 

 

 

 

『大家さんが家賃を払えって言いに来る』

 

 

 ――トントン

 

 無感情に叩かれるノックの音。

 

(∩'A`)「来た……」

 

 僕は身構えた。

 いつでも耳を塞げるように。

 死の呪文から身を守れるように。

 

 既に扉の向こうには、

 硬貨の詰まった小袋を置いてある。

 

(∩'A`)「あれどのくらいの価値なんだろ……

 

 買い物したことのない僕には分からない。

 でも全財産とか言っていたし。

 家賃程度はあるかも知れない。

 

(*゚ー゚)「シューくん、このお金……あ、百ゴールドもあるね(銅貨ばっかりだ)」

 

(∩'A`)「あ、あの、それで足りる……?

 

 逃げ出したい気持ちを抑え、

 僕は恐る恐る訊ねてみた。

 

 はいかいいえか。

 イエスかノーか。

 天国か地獄か。

 生か死か。

 大家さんのみが知る僕の人生の成否。

 

(*゚ー゚)「……うん、十分だよ。がんばったんだね」

 

 ほっと、僕は安堵の息を吐いた。

 先ほど勝利と同時に力尽きた冒険者の気持ちが今なら分かる。

 緊張の糸は人を容易く倒せるんだ。

 

(づA`)「よかった……」

 

 眠気がどっと押し寄せてきた。

 思えばここ暫くはろくに寝ていない。

 叶うならこのまま布団に入りたい。

 ――そんな僕に。

 

(*゚ー゚)「でもこんなにどうやって稼いだの?」

 

 

(づA°)「え……!

 

 

 不意に電撃が走った。

 そういえば考えてもみなかった。

 

 僕は元から収入源がなく、

 働くどころか部屋から出てすらいない。

 その状態で大金を渡すなんて、

 普通は犯罪を疑われる状況だと思う。

 

('A`;)「ね、ネットとか……いや魔法とか使って……がんばったんだ」

 

 発言した自分ですら、

 苦しく聞こえる言い訳だった。

 まるでITで稼いだ並みに意味不明な内容。

 

(*゚ー゚)「そっか、魔法かー!」

 

 でも大家さんは、

 嬉しげな声で騙されてくれた。

 

(*゚ー゚)「シューくん昔から魔法得意だったもんね!」

 

(;'A`)「……うん

 

(*゚ー゚)「じゃあまた来月もお願いね!」

 

 それ以上、問い質されることはなかった。

 どんな魔法を使ったのか。

 具体的に何をして稼いだのか。

 

 僕の思考が刹那の間に用意した、

 幾通りにも渡る支離滅裂な物語を、

 彼女は一切耳にすることなく納得してくれた。

 

(;'A`)「…………」

 

('A`;)「……あの、マーちゃん」

 

 僕はふと。

 いなくなって久しい母を思い出した。

 

(*゚ー゚)「なーに、シューくん?」

 

 これを慕情というのだろうか。

 郷愁にも似た気持ちが僕を包む。

 

('A`;)「……いつも、ごはんありがと

 

(*゚ー゚)「うん、どういたしまして!」

 

 母には終ぞ言えなかった感謝の言葉。

 それを何故今になって、大家さんに告げたのか。

 僕はよく分からなかった。

 

 大家さんが去ってから、

 僕は布団に潜り込んだ。

 そして枕を濡らしながら眠りに就く。

 

 

 次、目を覚ましたら、

 忙しい日々が待っている。

 

 僕のしたいお仕事が決まった。

 冒険者を助けてお金を稼ぐんだ。

 いっぱい助けて、いっぱい稼ごう。

 

 いなくなった母を探す為に。

 そして、

 大家さんに家賃を払う為に。

 

 そしていつの日か、

 もう十分だと思ったとき、

お礼はいいから友達になろう

 と、冒険者に言ってやるんだ――

 

 

 ――序章完――

 

 

 

 

『今日のマカロンちゃん』

 

(`ζ´ )「あいよ、全部で二百ゴールドだよ。まったく毎日良いもの食べて羨ましいもんだねぇ」

 

( ゚ー゚)「また、値上がりしたんですか?」

 

(`ζ´ )「国がこんなだからね……仕方ないよ」

 

( ゚ー゚)「……ですよね」

 

(`ζ´ )「あんたもとっとと逃げちまっていいんだよ」

 

( ゚ー゚)「……」

 

(`ζ´ )「こんな国、あたしもそのうち出て行くつもりさ」

 

( ゚ー゚)「……」

 

 

 

 

『母ちゃんの手紙』

 

J( 'ー`)し シューくんへ

お元気ですか?

ご飯は温かいうちに食べてますか?

マカロンちゃんと仲良くしてますか?

 

お母さんは今、

転移魔法?を乗り継いで別の大陸に来ています。

どうやら時間がそちらと反対らしいですね。

持ってくる時計を間違えました。

 

落ち着いたらまた手紙を書きます。

お母さんがんばるので、

シューくんも魔法のお勉強がんばってください。

 

かしこ

 

追伸。

お家賃のことすっかり忘れてました!

同封したのでマカロンちゃんに渡してください。

 




($) ←銅貨の詰まった小袋
馬小屋に寝泊まりしてコツコツ貯めた汗の結晶。
王国の辺境でなら装備を新調するまであと一歩という金額。
帝国の城下街だと「支払いは銀貨からだよ」と言われる。


(`ζ´ ) ←ラザニア婆さん *1
口は悪いがこの城下街に骨を埋める派。
苦労はあたしが引き受けるから、
若い子はよそに行って幸せにおなりと思ってる。
そのうち四十秒で支度しなとか言い出すヒロイン枠。


( ゚ー゚) ←マカロンちゃん(素)
ネタバレになってしまうがあえて書こう。
ラスボス。


J( 'ー`)し ←母ちゃん
大家ちゃんに主人公のご飯を頼んで旅立った。
なお出された手紙は届くまで数年掛かる模様。


小話
*1 珈琲はこの鼻をもぎ取って作られる(嘘)
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