( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」 作:スレ主
夜も深まり、囀る虫が夢を奏でる時刻。
僕は森の中で作業に取り掛かった。
石を砕き木々を切り倒し、
大地を耕して腐葉土を敷いたなら、
最後に目当ての植物を植える。
特に何てことのないスローライフ。
実を言えば僕はそれほど、
農作業というものに詳しくはない。
精々がゲームでやったことがあるくらいで、
それもお米作りに特化したものだった。
今求められているのは米ではなく雑草。
明らかに種類の違うそれは、
当然求められる要訣も異なるだろう。
ただそれでも植物である限り、
共通点は存在すると僕は思う。
つまるところ光と水。
必要不可欠にして肝心なもの。
今の僕に考えられる精一杯。
僕は方々から集めた雑草を畑に埋めた。
気休め程度に酸素濃度を上げて、
月明かりを集めて一帯を照らす。
その際に虫を寄せ付けないのも忘れない。
そして水を腐るほど与え、
本当に根腐りしそうなところを回復させる。
過剰に吸い上げた水が毒とならず、
そのまま細胞を浸潤し急速な促成をもたらす。
成長し、種を残した草は枯れ落ちて、
土壌と成り果て新たな芽吹きを支える。
早送りで繰り返される生と死の循環。
まるで姿を隠したシシ神がそこに佇んでいるかのような光景を、僕はずっと眺めていた。
そうして僕はやり遂げた。
品質はたぶん悪くはない。
十分に大きく育っているし、
虫食いはなく萎びても腐ってもいない。
本数を数えるのは億劫だけれど。
僕の魔法は確かにマップに記している。
売れば一万ゴールドは
昇る朝日に明日への期待を膨らませながら、
僕は小鳥の囀りを子守歌に布団に入った。
〆
翌日。
森に入ろうとするキッシュ君を発見した。
('A`*)「こん」
(`・ω・´)「賢者シュー。すまない待たせてしまったか」
今度は剣を抜かれることは無かった。
ただ向こうから僕は見えないはずなのに、
相変わらず正面から見つめられる感じがする。
(*'A`)「いや僕も今来たところだから……。さっきまで他の冒険者を見てたし、全然待ってなんかないよ」
(`・ω・`)「そう言ってくれるとありがたい」
挨拶の余韻もそこそこに、
僕は早速とばかりに切り出した。
(*'A`)「あの、僕……群生地、見付けたんだ」
(´・ω・´)「ほう……!?」
徹夜で手掛けた渾身の畑。
僕が頑張って作ったことはちょっと言い出しづらいけども。
早くキッシュ君に見せてあげたい。
概算して一万ゴールドの宝の山を。
山分けしても五千ゴールドに及ぶ大金だ。
早く採って早く持ち帰って、
酒場でキッシュ君と乾杯するんだ……
そして僕は魔法の手を使って先導した。
道中。
茂みから飛び出してきた敵を僕が処理する。
( 'A`)「――あ!《ファイアー!》」
この一週間で分かったことだけれど。
こいつらは意外とどこにでも現れる。
というより、どこにでも潜んでいる。
あまり攻撃的でないのか冒険者を襲っている姿はそんなに見ないものの、適当な木を蹴ったら落ちてくる程度にはあちこちにいる。
僕の広範囲識別魔法は、冒険者や採集ポイントだけでなく敵も見付けられる優れものだ。
(*'A`)「ふへへ、やったね!」
パーティを組んで初めての戦闘。
その感動を僕が噛み締めていると、
キッシュ君は訝しんだ顔で呟いた。
(;`・ω・)「またオニオンが。最近多いな」
( 'A`)「ふぇ、多いの……?」
多いのは知っている。
マップを見ればそれは分かる。
何だったらそこの茂みにも居るし。
無茶苦茶怯えて縮こまっているからあえて攻撃したりはしないけど。
(;`・ω・)「ここは森の外に近い。殺されるのが分かってるのに人前に姿を現すオニオンは滅多にいない。……はずだ」
( 'A`)「へえー」
震えながら隠れている実例がすぐそこに見えているからとても勉強になった。
滅多にいないはずの姿を見せる個体が先ほどの敵だったのだろうか。
(;`=ω=)「装備は……燃え尽きて判別が付かないな。しかし余程愚かなオニオンとも思えない。何かあったと見るべきだが……」
僕は頷きながら行動を見守る。
何となく思っていたけどキッシュ君は博識だ。
前衛の剣士なのに。
遂には腕を組んで考え込んでしまった彼を僕は暫くぼんやりと眺めていたものの。
このままでは日が暮れてしまうと声を掛けた。
(`・ω・´)「おっと、すまない。行こうか」
そして道案内を再開した。
……。
…………。
………………。
( 'A`)「うへへ、ここだよ」
(;`・ω・´)「こ、これは……どういう場所だ……?」
――僕の見たかった顔だ。
昨夜からずっと待ち望んでいた反応。
その驚きをキッシュ君が見せている。
('A`*)「ぜんぶあの草だよ、凄いでしょ」
採り放題だ。
これだけあれば装備を整えて馬車を買って仲間を雇ってどこかの山にいるドラゴンだって退治に行ける。
一緒に酒場の語り草になろう。
(;`・ω・´)「賢者シュー。案内してもらってすまない。ここは無理だ、あまりにも畏れ多すぎる」
その想定しない発言に僕は素に戻った。
('A` )「へ……?」
まさか畑を作るのは駄目だったのだろうか。
あんまり気にしなかったけど、
土地の持ち主の許可がいるとか。
それとも栽培に特別な資格が必要だったとか。
(;´・ω・`)「素人目からも分かる神々しさ……おそらくここは森の神が用意した聖域だろう。荒らしてしまっては命がいくらあっても足りない」
いや。
何かとてつもない勘違いだった。
(;'A`)「ぇ……?」
確かに木々が壁となったようにぽっかり空いた土地に、青空の天涯から眩しい陽射しが降り注いで、整えられた雑草が長い芝生のごとく生い茂っているのは、ともすればユニコーンとか住んでいそうな雰囲気がある。
でも昨夜までは普通の場所だった。
まず聖域とかではないと思うし、
一晩中いた僕は森の神なんて見てもいない。
('A`;)「ぇ、あれ……?」
どんどん困惑を深める僕。
(`・ω・´;)「もちろん、あなたが仰るなら俺は喜んで森の神に命を捧げるが……それでも盗めるのは一握り、いや俺の実力ではそれも難しいかも知れない」
どんどん覚悟を完了するキッシュ君。
剣帯を地面に置き、
胴鎧の留め具を外して、
服に手を掛けたところで、
(;'A`)「あの、ごめん、これ僕が育てた……」
僕は素直に白状した。
昨日別れた後で張り切って用意したのを知られるのは恥ずかしいし格好悪い。
でもこのまま流してしまうと、僕らは知らない誰かの雑草を盗む泥棒ということになってしまう。
盗んだものを持ち帰ってお金にするなんて、僕はともかくキッシュ君がそういう負い目を感じるのはちょっと嫌だ。
(`・ω・´)「ふむ? ……いやなるほど。
前もって育てていたのか。
だから採集をしていた俺に声を掛けたと?」
(;'A`)「ぇ、う、うん、そうなんだ!」
キッシュ君の理解力に僕は舌を巻く。
まさしくそんな感じだった。
全て彼の言う通りだ。
僕はたまたま雑草を育てたくなって、
切り拓いた森の中に畑を作って、
偶然キッシュ君が採集依頼を受けていたから、
「丁度良いね、持ってく?」と声を掛けた。
――それで行こう。
(,´=ω=`)「しかしこれだけあると値崩れが心配だが――」
('A`;)「何かダメだった……?」
まだ何かあるのだろうか。
育てた僕が良いと言ってるんだから問題無いと思うんだけど。
心臓に悪い。
キッシュ君は暫く熟考し、
やがて意を決して答えを出した。
(`・ω・´)「……うむ。そうだな。
あなたが構わないなら摘んで行くとしよう」
その一言で全ては解決だ。
(*'A`*)「やった。じゃあすぐに出荷するね!」
僕は喜色を露わに魔法を唱える。
それは夜を徹して考え、
今の今まで温存しておいた風の魔法。
(*'A`)و 「《トルネード》」
気圧の渦が森を揺らし、
地を這いずる真空の刃が、
刈り取った草を巻き上げる。
途端にうずたかく積まれる雑草の山。
それを前に僕は、
畳み掛けるように提案する。
('A`*)「あの、帰りなんだけど……僕も一緒に付いて行っていい? その、持ちきれないと思うし」
(`・ω・`)「ああ、そうしてもらえると助かる。
……さすがにこれを一人で運ぶのは難しいと思っていたところだ」
刈り取るのはほとんど一瞬だったのに、
まとめるのに結構時間が掛かった。
キッシュ君の持っていた背嚢に詰め、
紐で大きく束ねて担げるようにして、
それでも余った分は僕が昨日のうちに拵えておいた籠に入れて魔法の手で運ぶ。
少し想定外なところもあったけれど、
こうして今日のクエストは完了した。
あとはもう帰還してこの成功を報告するのみ。
僕らは期待に胸を躍らせながら帰路に付いた。
(*'A`)「いくらになるんだろうね、楽しみだね」
(;´・ω・)「……さて、俺には判断しかねるが」
(;`・ω・)「――む、賢者シュー。少し時間を借りたい!」
いきなりキッシュ君が、
荷物を投げ降ろして走り出した。
僕もその横に籠を置いて先行する。
川゚ -゚)「さあ、どこからでも掛かって来い! ……私は逃げも隠れもしないぞ」
林I
――向かう先では、
女の子が一人で啖呵を切っていた。
そこに背後から例の小人が現れる。
本当にこいつらどこにでもいるなぁ。
(゚々。) ←仇討つオニオンの偵察兵
先日の死闘を涙を忍んで
この一週間、復讐心を抑えながら隙を窺い、ようやく警戒を解いて暢気に一人で森を歩いているところを襲撃したら謎の炎にやられた。
('A`*) ←主人公
あれが足りないんだよなあって誰かがぼやいたら、徹夜で狩りに行って「僕それ余ってたからあげる」って言い出す系の子。昔はよくいた。
瀕死になってもビビらなかった男を自然体でビビらせるやつ。