( 'A`)「ただの引きこもりなのにまた勘違いされてる……」   作:スレ主

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第9話 初めてのクエスト報告

 森の静寂を脅かす喧騒。

 向かい合うは二体の小人と一人の少女。

 それはほんの僅かな間の出来事だった。

 

(゚々(゚々。)「ギャギャッ!」

 

川゚ -゚)「くっ、運命よ。

――これが私の定めなのか」

 

 ついさっきまで威勢良く吼えていた少女が、

 僕が駆け付けるまでの数秒……

 瞬きする程度の合間に屈していた。

 

 膝を土で汚して上目遣いで小人を睨み、

 両手に握り締めた小振りの剣は、

 支えとして地面に突き刺さっている。

 

( 'A`)「はえー……?」

 

 僕をして、

 何が起きたのか分からなかった。

 

 マップにはしっかりと、

 敵味方の光点がマークされている。

 体力を仮想化したステータスも、

 問題無くオールグリーンの表示だ。

 

 誰かに何かあれば即座に助けられるように、

 その意思と準備をこの一週間、

 僕は一度も絶やしたことはない。

 

('A` )「……あれー?」

 

 そんな僕が彼女の危機を前に、

 特に何かをするでもなくぼーっと見てしまうことしかできなかった。

 

 ……確かに僕はずっと見ていたんだ。

 キッシュ君と待ち合わせていたときも。

 道中話を弾ませていたときも。

 雑草を集めていたときも。

 もちろん帰還するときも。

 そしてキッシュ君が駆け出すときも。

 実は見ていた。

 

川; -;)「この卑怯者どもめ……だがこのままで終われるものか。来い――たとえ劣勢であろうとも、私の剣は確実にお前たちのどちらかを仕留めるぞ」

 

 そんな剣は今なお地面に埋まっている。

 相打ちに持ち込むには不利な体勢だ。

 

 もしかしたらこの状況は小人の能力なのか?

 そう思わずにはいられない。

 僕が疑念に苛まれているとようやくキッシュ君が到着した。

 

(`・ω・´)「大丈夫か! ――助太刀する!」

 

 この増援を得て彼女の口元が綻ぶ。

 

川゚ ^゚)「ありがたい!

――どうだ見たか子鬼共よ、我ら人間の結束を。

お前たちが二体掛かりならばこちらも二人、卑怯とは言わせんぞ」

 

( 'A`)「……三人だよ?

 

 その台詞が口火となって、

 僕の気持ちも切り替わる。

 ――戦闘開始(エンカウント)だ。

 

 まず立ち上がった少女が、

 前屈みになって膝に付いた土を払う。

 

 キッシュ君は腰元の剣に手を添え、

 僕は支援するタイミングを見計らった。

 

 そして少女が水筒で布を湿らせ、

 剣先に付いた土を拭い去る。

 

('A` )「ぇ……?」

 

 少し感じた違和感に僕は首を傾げる。

 

 敵だけに集中していたキッシュ君が、

 居合いの構えのまま前に飛び出し――

 

林I

(゚々(゚々。;)「ギャ、ギャ……!」

 

 ――小人達は背を向けて逃亡した。

 僕たちの勝利……なのか?

 

( 'A`)「え?

 

 やはり何かがおかしかった。

 そう思わずにはいられない。

 

 少女は綺麗になった刀身を満足げに鞘に戻すとキッシュ君に向き直った。

 

川゚ -゚)「礼を述べよう。私は騎士エクレア。君のお陰で難を逃れられた」

 

 視線を下げて、

 優雅に足を折り曲げる。

 

 その姿に僕はふと。

 まだ外に出て遊べていた幼少時代を思い出した。

 かつて見たことのある、お城に勤めているという貴族。

 

 彼女のこの仕草、この振る舞いは、

 あの時会った貴族を思わせる佇まいは、

 確かに一端の騎士を感じさせるものだ。

 

(`・ω・´)「騎士……。礼には及ばない、冒険者のキッシュだ」

 

(`・ω・`)「しかし災難だったな、見たところあいつらは装備も持たない雑兵だった。武装した人間に襲い掛かるなんて本来は考えられないんだが……やはり何かが起きているのか?

 

 眉尻を下げながら掛けた声に、

 彼女は平然とした調子で答える。

 

川゚ -゚)「ふむ、そうなのか? 隠れているところを偶々見付けて、倒そうと挑んだら、いきなり群れで襲い掛かってきたが……お陰で驚いて転んでしまった

 

('A` )「え?

 

 僕は誰にも届かない声を漏らす。

 

川゚ -゚)「危ういところだった……君が来なければ私は怪我をしてしまっていただろう」

 

 ちなみに彼女は無傷だ。

 膝当てが少し擦れているだけで、

 魔法が示す体力ゲージは満タンを示している。

 

(,´・ω・`)「無事で何よりだが、ひとつ訊きたい。

何故あえて刺激するような真似をしたんだ?」

 

 そうだ、完全なやぶへびなんだ。

 掛かって来いなんて言わなければきっと小人たちは震えたまま木の上にいただろう。

 今も付近にそんなのがたくさん隠れているけど、僕だってそいつらに無闇に魔法を撃ったりはしない。

 

('、`*川「ちょっと、成果がほしくて……手ぶらで帰るのはいやだったし……」

 

(;´・ω・`)「そうか……次からは控えてくれよ、あまりにも危ない行為だ」

 

 確かに。

 ちょっと引いた感じのキッシュ君の言う通りだ。

 何だかんだで百に届く小人がこの辺りにはいるから、あんな調子で挑発して次々出て来られたら危険極まりない。……僕が助けるから命だけは安全とはいえ。

 

 しかし彼女は特に気にした様子はなく、

 表情から緩みを取り去る。

 

川゚ -゚)「何か礼をしたいが、これから依頼か?

手伝えることがあれば何でもやるぞ」

 

( `・ω・`)「……いや帰りだ。そうだな。

それなら荷物を運ぶのを手伝ってくれないか」

 

 その後も二人の会話は続いて行った。

 僕抜きで。

 

('、`*川「なんだ帰りか。

……仕方ない、承知した」

 

( 'A`)「あ、あの……

 

川゚ -゚)「では町へ帰るとしよう。凱旋だ

 

( `・ω・`)「あ、ああ……そうだな

 

( 'A`)「あ、あの、僕……シューって

 

 地面に置き去りにしていた籠を軽く担いで先陣を切る彼女を、僕とキッシュ君は無言で追った。

 僕は自己紹介するタイミングを完全に逃してしまっていた。

 

 

 

 

『辺境の町ピッツァ――冒険者の酒場』

 

 

 初めて訪れたギルドで、

 僕らは驚きと共に迎えられた。

 

( 'A`)「……」

 

 まあ僕はその場では空気だから、

 正確にはエクレアさんとその後ろのキッシュ君がだけれど。

 二人は注目を一身に浴びていた。

 

川*゚ -゚)「ふふ」

 

(,´・ω・)「はぁ、着いてしまったか……

 

 ざわめきが、

 空気を掻き分けて押し寄せる。

 

('・c_・` )「お、おい、見ろよカナッペ……

 

(´`c_'`)「ああフラッペ、見えてるだ……

 

 テーブルで酒を煽る冒険帰りのモブ達が、

 僕らの成果を遠巻きに眺めて色めき立つ。

 ――前世で何度も夢想した光景だ。

 

 慌てた様子で声を出し、

 否が応にも周囲の目を集める受付嬢。

 

*(;‘ o‘)*「わわわ、何ですかその量は!

 

 あとで襲ってきそうな、

 座ったまま解説するベテラン。

 

(=゚ω゚)ノ「なんだ、あいつら……あれ全部薬草か?」

 

 壁際で意味深に呟く変な魔法使い。

 

( ´ー`)「……ナンセンス」

 

 全てが順調だった。

 昨夜から見ていた夢が今ここに結実した。

 

 僕らはまさしく、

 羨望の的となっている。

 

('A` )「……やったね、キッシュ君

 

 僕は空気だけど。

 それでも構わない。

 

 およそ目に見える全ての人のどよめきを回収し、僕らはようやくカウンターに辿り着いた。

 目前には困惑している受付嬢。

 

(,´・ω・`)「さて、どう言ったものか

 

 ここに来てキッシュ君がたじろいだ。

 いつもの覇気を失って心なしかしょんぼりして見える。

 

( 'A`)「(なんだキッシュ君、怖いの?

だったら僕が代わりに行ってあげるよ)

 

 ――と。

 その一言が出せるなら、

 僕は引きこもってなんていない。

 

 彼の為なら大抵のことはしてあげられると頭では思っていても、これは無理な類いのことだった。

 

('A` )「…………」

 

 少し心が重い。

 

川゚ -゚)「なんだ依頼の報告は初めてか?

――なら私が手本を見せてやろう

 

 そこへ先ほど臨時加入したエクレアさんが助け船を出した。

 僕はほっと溜息を吐くと共に、

 若干の虚しさに胸を痛める。

 

川゚ -゚)「納品を頼む」

 

 テーブルにすっと、

 肘を乗せてからのシンプルな一言。

 これ以上の言葉は不要とばかりの貫禄だった。

 

 そして手慣れた様子で、

 雑草を山積みにした籠をカウンターに置く。

 

 受付嬢はあわあわと答えた。

 

*(;‘ o‘)*「無理ですよ! こんなにたくさん!」

 

 ん?

 僕は訝しむ。

 

('、`;川「……無理か?」

 

 エクレアさんは問い返す。

 その頬が若干赤く染まっていた。

 

 

*(;‘ o‘)*「当たり前です!

常識で考えてください!

 

 

(´・ω・`)「……だよな

 

 

( 'A`)「……え?」

 

 僕の思い描いていた初めてのクエスト。

 

 様々なトラブルを仲間と乗り越え、

 何とか報告まで辿り着いたそれは、

 ――どこか失敗した空気を漂わせていた。

 




(゚(゚(゚々。) ←隠れ潜むオニオンの軍勢
()()()数百くらいが出勤。
ゲームでは数歩毎にエンカウントするのは当たり前だから、現実になるとこんな風なのかぁって主人公は納得していた。


(゚々(゚々。) ←オニオンの一般兵
木の上に潜んでいたところを看破されて覚悟を決めた。(……あいつら先走りやがって)
背後に飛び降りたら一人で勝手に転び、首を傾げながら基本戦術のアレを始めたら膝を付いたまま泣き言を漏らしたので呆然とした。
「見つめている者の意識をだんだん失わせる我らが元祖の必殺《悪のマンダラ》を発動するには二名では到底数が足りぬはず、ハッもしや我らは強者……!」と勘違いしそうになったところで、さっき偵察兵を燃やしてたやべえ奴が現れて一目散に逃げた。


川゚ -゚) ←騎士エクレア
自信満々に先輩風を吹かしていたのに、受付嬢に「無理ですよ!」と言われてちょっと赤くなってしまうような新人騎士。
依頼の達成報告はこれが初めて。だって本職は騎士だし。

ちなみに強いぞ! ちょっとドジでマイペースでなかなか本領発揮できない系の天然クールなだけ。
「悪の曼荼羅? ふん、所詮は目を閉ざせば効かぬ技……む、見えない! 真っ暗だ!」とクールに振る舞いながらも勝利できる。百体までなら。
それ以上はちょっと怪我しちゃうかも。
言うまでもないがヒロイン枠。
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