ONE PIECE世界を旅する一般クソザコTSうっかり幼女商人   作:褐色幼女万歳

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お客様の声 不死鳥マルコ

 あの子供を見つけたのはただの偶然だった。長距離の航海の最中に一番の新入りが食料庫に穴をあけやがったせいで浸水し、全部水浸しにしたおかげで俺たち白ひげ海賊団は深刻な食糧危機に見舞われていた。モビー・ディック号は大所帯だ、当然食うやつも山ほどいる。魚を釣るだけではとても間に合わない。みんな、ピリピリしてた。オヤジですらそうだ。海の上で飯がねえってのはそれだけの危機だってこと、乾物もそろそろ底をつきかけてきた時、目の良さが売りの見張りがおかしなものを見つけてきた。

 

 空に少しだけ不自然な部分があると報告を受けた俺は見張りが指さした方向を見る、すると一部分だけ、ほんのすこし揺らめいているように見えた。念のため見聞色を使ってみると、誰かいる。思念駄々洩れで俺たちのことを見てやがった。空を飛べるやつっていや、十中八九能力者だ。しかも俺たちが航海している場所、新世界となると少々面倒なほどに警戒が必要になる。だが不自然が過ぎる、あまりに無防備だ。

 

 強行偵察に出るとオヤジに伝え、空へ飛び上がる。見ているヤツはそんな俺に気づきもしない、高度を上げて上から見ると、黄金と翡翠の豪奢な船が浮かんでいて、その上には小さな小さなガキが望遠鏡でモビー・ディック号を眺めてやがった。近づいても意に介されてない、覇気を纏っていない、新世界だぞ?冗談だろ。

 

 おい、と声を掛けると間の抜けた叫びをあげて椅子から飛び上がったガキは風にさらわれて船から落っこちそうになる。思わず慌てて不死鳥になった自分の足で掴んで椅子に戻してやった。褐色の肌で銀髪のガキ、それも女。年の頃は……どう見ても10に届いてねえ。食べないでと懇願するガキに食うわけねえだろと返して、さてどうするかと事情聴取を始めた。

 

 たまにいる自分のガキを鉄砲玉にするクソ野郎の手下かと思ったらそうでもないらしい。ウルと名乗ったそいつは、商人で四皇の船が珍しくって見てただけだと釈明した。飛べるから、航海中の船を見つけては食料を中心に売りつけてると、バカを言うなと怒鳴りつけてやりたくなったが、こんな船に乗ってるんだから何かあるのだろうと商品について問いかけてみた。

 

 ウルがここに、と言うと目の前の空間が黄金色に揺らいで中から樽が姿を現した。中身が入ってるそれの匂いを嗅ぐと、ラム酒だ。それも上等なやつ。樽も一級品だし管理も完璧……地獄に仏とはこのことか、と安堵のため息が出てしまった。食料はねえが金ならたんまりある。多少高くても取引する価値はあるだろう、と考えを纏めて商談を持ちかける。快諾したウルは、椅子からふわりと浮き上がった。いったいどんな能力だ?俺が人獣型になって飛び立つとラム酒も船も幻のように消えやがった。

 

 船に降り立つウルをみて、なんて危機感のないやつだと戦慄した。海賊船、しかも四皇の船に一人で乗り込む。体も鍛えてる気配はない、ちっさくて丸っこい、ただの子供だ。受け答えはしっかりしていれども幼い印象はぬぐえない。賞金首だって捕まえられる、というが強がってるだけじゃないかよい?お前にそんな力があるようには見えねえ。揶揄ってやると反応よく突っ込んでくる、やっぱりガキじゃねーか。

 

 サッチと合流しウルに事情を説明すると黄金の波紋に手を突っ込んだウルが羊皮紙を取り出して俺たちに渡してきた。その羊皮紙にはウルが持っているであろう食料と雑貨がリストになっており、残りいくつあるかまで一つの漏れもなく記してあった。サッチとアイコンタクトでやり取りする。陸より品揃えがいい、どうして東の海や西の海の商品がラインナップされてるんだ?金勘定は俺の仕事なので予算を計算していると2番隊のティーチが報告にやってきた、ついでにウルに興味を示したらしいがやり方が最悪に近い。

 

 3mの巨体と比較するとあまりにも小さいウルの襟首をつまみ上げてゼハハハハと笑うティーチ、着ているワンピースが脱げないようにと下着を隠すため必死にスカートを押さえるウルが哀れになってティーチから奪い取ってそのまま抱き上げた。軽い、が温かい。すっぽりと俺の腕の中に納まるウルの抱き心地は最高と言ってもいいほどだった。温かくて、軽い、小さな命。白ひげ海賊団の1番隊隊長の腕の中にいるとは思えないほど自然体なウル、ティーチに舌を出す余裕まであるときたもんだ。

 

 あまりのフィット感に抱き上げてるのを忘れそうになりそうだったが、子供の足では広すぎるモビーの下層にある食糧庫に行くにはちょうどいい、と抱き上げたまま移動する。やはり、あまりにも無防備だ。やろうと思えばいつでもお前のことを殺せるというのに、見ず知らずの海賊を信頼しすぎている、ものを知らなすぎる。

 

 モビーの下層につくとさっそくウルは俺らが注文した商品を次々と黄金の波紋から出現させていく。肉、野菜に酒、スパイスに穀物まで注文したものに紛れて時折宝石やら貴金属やらが転げ落ちてくるがすぐに黄金の粒子になって消えてしまう。何かを生み出す能力か?心当たりがねえな。

 

 商品を全て出し終えたウルを抱いたままもう一度甲板に戻ると伝令を聞いたクルーがベリーが詰まった袋を持ってきたのでそのままウルに渡すと確認もせずにしまい込んだ、やはり人を信頼しすぎている。そのまま帰ると言いだしたウルであったがオヤジが船長室から出てきたことによりフリーズした。まあ、オヤジはでかいからよい、ウルからしたら巨人族だろう。オヤジはウルのことを耳に挟んでいたようで、食料を売ったこいつに礼を言った。

 

 少しするとエースのやつがやってきて、俺が抱き上げたままのウルと俺を交互に何度も見た後にウルと俺を親子扱いしてきやがった!その言葉に面白そうにオヤジがノってきてしまいにはウルも俺のことをお父さんなどという始末だ。ウルを下ろして冗談言うなと軽くチョップをくれてやる。涙目になった子供の目を見ると、痛みよりも寂しさを訴えるような目をしてやがった。海賊やってりゃよく見る、親を知らない孤児の目だ。

 

 そのあと海王類が現れたりしたが、ウルはそれに大慌てになった。ここは新世界だぞ?()()()()()()に慌てる理由なんぞない。にもかかわらずウルは過剰ともいえる鎖を出して海王類をぐるぐる巻きにしちまった。危機感がちんぷんかんぷんなやつだ。海王類よりもよっぽど危険な俺らにはビビらねえくせに、海王類にはおびえる。俺の蒼炎に手を突っ込んで遊んだりするし、なんだかおかしいやつだ。

 

 そのあと、ゆっくりおろせばいいものをそのまま海王類を海に捨てたためにでかい波が発生してしまい、自分が発生させたくせに避けられず、ずぶ濡れとなった。俺はそれがおかしくって大笑いしてしまい、周りの船員にも笑われたウルは褐色の頬を紅潮させて両手をあげて抗議していた。その抗議は誰にも通じず笑われるばかり、俺は小さくて可愛らしいくしゃみをする子供をエースと一緒に風呂に送ってやるのだった。

 

 そして、風呂で寝コケたエースに慌てておぼれたウル、たまたま通りがかったジョズが助けたらしいが何でもウルは下っ腹あたりにイバラの入れ墨をしているらしい、それを聞いたイゾウやハルタ、俺の顔が歪んだ。子供に入れ墨、しかも女の腹に。そしてイバラというチョイスが最悪の一言だ。イバラの花言葉は「後悔」……両親が入れたというがそれじゃまるでウルを産んだことを後悔しているように思えて、気分が悪い。憶測だがウルは親を知らない子供だ。けど、腹の入れ墨はウルが物心ついた時からあって、両親が入れたのだと思ってる……やりきれねえよい。

 

 陽気なクルーたちにポーカーに誘われたウルがイカサマに翻弄されるのを見つつ宴の準備が着々と進んでいった。そして補充した食料を盛大に消費した宴でもウルはおかしかった。商人の癖に大量の商品を奢りだといって提供するわ、豪胆にもオヤジの膝の上でオヤジに酌してるわ、サッチがウル用に作った飯に礼だと言って明らかに年代物の腕輪をプレゼントしたりと目的が分からなかった。しかもこいつ、武器までもってやがる。それも業物だとかそのレベルの物を大量に。ティーチのことは嫌いになったらしく短剣をとろうとしたやつに噛みついてたけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白ひげ海賊団の空気はいま現在最悪の一言だ。船長室で俺とオヤジ、それからサッチが難しい顔で向き合っている。というのもいまウチは3つの問題に直面しているからだ。まず一つはティーチの野郎が裏切ったことだ。サッチがここにいるのも関係がある。

 

 「サッチ、てめえ今『ティーチに殺された』っつったな?」

 

 「ああ、マルコもよく聞いてくれ。俺はティーチに背中から突かれた。心臓を一刺しだ、絶対死んだと思った」

 

 「だが、死んでねえ。むしろ無傷だった。代わりに、ウルからもらった腕輪が砕けてた、と」

 

 「そうだ。ティーチも驚いてた。やつは咄嗟に俺の悪魔の実を掴んで救命ボートで逃げてった」

 

 「グラララララ……だろうなと思ったが、あのハナッタレがおれらによこしたもんは、相当な貴重品だ。おれの状態をふくめてな」

 

 俺らの目の前にある机の上、いくつか破られてはいるが真っ白の紙がそこにあった。こいつはビブルカード、通称命の紙。今から10日前、ウルが宴の翌日に仕入れのために進路を変えますと言って出ていった時にオヤジが何時でも来いと破いて握らせた時に見たそれはぎゅっと縮んでおり、オヤジの健康状態が良くないことをまざまざと俺らに教えていた。

 

 だが、今は違う。縮んでいたビブルカードは元の大きさをとり戻している。これが意味することはオヤジの身体がよくなったということだ。これが2つめの問題。ウルはオヤジに酌をしたときになにかを混ぜていたらしい。見聞色でそれを見抜いたオヤジだが、悪いものではないことは分かっていたので気にせず呑んだと。酒好きも大概にしてほしかった。おそらくウルが混ぜた何かが、オヤジの身体を治しちまったんだろう。

 

 「ソーマ、だったな。あのハナッタレの中をのぞいたらそう言ってやがった。仮に言葉そのまま受けるとしたら神酒、神の酒だ。あの宴の日から良すぎるくらい調子がいい、腹は減るしよく眠れると来た」

 

 そう言ってオヤジは拳をグッと握る。すると拳は黒鉄色に変わる。武装色の硬化……ウルが来る前のオヤジだったら気合を入れないともうできなかった、そのくらいオヤジの病状は悪化してた。今は無造作に、息をする様に行うことが出来ている。船医たちもオヤジを蝕んでいた病巣がきれいさっぱりなくなったと騒いでた。

 

 「……そりゃ、よかったよい。けど、何かあったら俺はあのガキを許せねえ」

 

 息子の俺らに断りもなくよくわからんもんを俺らのオヤジに飲ました。結果的にいい方向に行ってるからいいが、仮に死んでたらどこにいても俺らは追い詰めただろう。サッチが呆れた目をして俺の頭をはたいてきた。何するんだと怒鳴ると

 

 「オヤジの件に関しちゃ俺も同意だが、ウルちゃんが悪い子じゃないってのはお前だって分かってるだろ。あの子がいなけりゃ俺らは餓死してたかもしれんし、俺は確実に死んでた。俺の目の前であの子を悪く言うんじゃねえ」

 

 「……悪い、ティーチのやつのせいで過敏になってた」

 

 ウルが悪い子供じゃないってのは考えなくても分かることのはずだった。人を疑うことをしない純粋な子供、善意で何かをしようとすれど悪意を持って人を害すようなことが出来ないタイプなのは1日だけの短い付き合いでよくわかった。それに、何かしようとすればそれ以上に何かポカをやらかすのが目に見える。屈託のない笑顔が頭に浮かんだ。

 

 「グラララララ……結果的にだが、あのハナッタレはこの白ひげ海賊団の恩人になった。次に()()がおれたちに助けを求めてくれば、全力で助けてやれ。船長命令だ、いいな?」

 

 「わかったよい。そんで、エースは今どうしてる?」

 

 「ダメだ、解放したらすぐにティーチを追うだろうな。今は懲罰房で海楼石の腕輪つけて大人しくさせてるよ」

 

 「それでいい。ティーチの野郎がやったことは掟に違反するが、やつが得体の知れない野郎なのは間違いねえ。今回は……「オヤジィ!エース隊長が腕輪外して出て行っちまった!」」

 

 「バカ野郎!報告の前に捕まえろ!」

 

 「それが、もうストライカーに乗って……!」

 

 「あのアホンダラァ……!」

 

 3つ目の問題である頭痛の種の出奔を聞いて、オヤジは静かにキレ、俺とサッチのこめかみに青筋が浮かんだ。




 別視点のマルコさん。ついでに原作介入の結果。主人公がうっかりいろいろ嘘ついてるせいで面倒な勘違いをしてマルコさんかわいそう

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