カコンッと外で鹿威しが時折音が聞こえ、それに風情を感じながら目の前でお茶を点てる利休さんを見つめる。何度か教わっているけど、やっぱり利休さんのその所作は無駄がなくそれだけでも見ていて飽きない。暫く見ているとお茶が出来上がり、スッと差し出された。初めは作法とか気にしてきたけど、美味しく飲んで頂ければ構いますまいと言われたので雑にならない様にだけしながら受け取り飲む。
……うん、やっぱり利休さんが淹れてくれるお茶はとても美味しい。
「あなた様はいつも美味しそうに飲んで下さいますね。この利休、茶人冥利に尽きるというもの」
どうやらお茶を飲んで緩む頬をじーっと見られていた様で利休さんが口元を緩めていた。なんだか少し恥ずかしいな……
「いえいえ、美味しいものを美味しいとはっきり表しこれを楽しむ。それを隠す必要が何処に有りましょうや。あなた様はあなた様らしくただ、在ればそれで良いのです」
そうだね、うん。利休さんの淹れてくれるお茶好きだよ。いつ飲んでも、気遣いが感じられるし。利休さんの言葉が最もだと思ったから素直に告げるとポカンとした表情で見た後にくすくすと笑い出した。え?何か変なこと言った?
「これはこれは……あまりに素直。こんなにもすぐ言われるとは思わず利休、驚愕。にございます」
えー、そっちが言ったことを実行しただけなのに……まぁ、なんだか利休さん楽しそうだしいっか。なんだか揶揄われている様な気持ちになりながらも、美味しいお茶を飲んでいるとすぐに飲み終えてしまうのは当然で、器は空になってしまった。空になった器をじっと見つめていると、利休さんが何か思い至ったのか手をパンっと叩くと、自分の近くにも茶器が現れる。
「何やら物足りないご様子でしたのであなた様が点てたお茶と、私が点てたお茶を交換してお互いに飲む。その様な面白きことを思い付いた次第です。さぁ、マスター様、この利休を唸らせるお茶を点てられますかな?」
なにそれ難易度高い!?
でも、面白いものを見つけた時の利休さんは止められないというか既に何処となくキラキラとした視線を向けられてるしやるしかないだろう。よーし、これでも利休さんに何回か教わってるんだ、頑張るぞ!そう意気込むとポンっと利休さんの手が肩に乗った。
「肩の力が入りすぎで御座います。もっとあるがまま、普段のあなた様のままで点てられる方がよろしいかと」
これはもう負けでは?そんな事を思いながら、利休さんに言われた通り力を抜きお茶を点てる。やっぱり、数回教わった程度では利休さんほど上手くはやれず、目に焼き付いた動きとは全然違う所作でお茶を点てた。利休さんはそんな此方のペースに合わせてくれていたのか同時に点ておわり、交換する。
利休さんが口に付けるのを見ながら自分もお茶を飲み、変わらない美味しさに安心すると共に利休さんの反応が気になる……
「今、この一刻をあなた様と共に楽しむ。これに勝る喜びはございますまい」
安心しきった顔で利休さんは点てたお茶を飲んでいた。……今が楽しい?
「はい。ただそれだけで良かったのです、ただそれだけの事に漸く、辿り着くことが出来ました。はぁ……とても茶が美味しゅうございます──」
そっか……それなら慣れないお茶を点てた甲斐があったよ。それに自分もこうして利休さんと一緒にお茶が飲めて嬉しいと告げると、利休さんはとても満ち足りた優しい良い笑顔を浮かべた。
「ではそろそろ、交代と参りましょう」
あの後、会話をする事もなくお茶を飲んで飲みきり、鹿威しの音を二人で聴いていたらスッと利休さんが立ち上がり言った。そのまま利休さんを見ていると瞬く間に霊基が切り替わり、駒姫ちゃんとなる。
「ふぅ……それでは次は駒と遊びましょう。えーと、なにをしましょうか?」
そうだなぁ……駒姫ちゃんは激しく動くのとかは難しそうだし……あ、そうだ!
「わわっ……マスター様!?」
駒姫ちゃんの手を取りシュミレーター室に置いてある一台のゲーム機の前に連れて行く。なんでコレが置いてあるのかは分からないけど、多分エミヤとかダヴィンチちゃんに頼んでゲーム好きの英霊達が置いたのだろう太鼓の○人だ。
「これは……確か巴様や刑部様が言っていた音ゲーですよね」
そうだよ。自分達ぐらいの年齢の人で学校帰りとかでゲーセンに寄ってこれをした事はないって人は居ないんじゃないかな?
「学校帰り……!それは心躍る言葉ですね、是非やりましょうマスター様!」
良かった、食いついてくれて。
やり方を説明して先ずは、見本として見せる。別にやり込んでいた訳じゃないから難易度は普通だけどそれでも駒姫ちゃんは楽しそうに見てくれた。
「赤がドン!で、青がカンッ!ですね」
二曲目は駒姫ちゃんに変わり張り切る彼女を見守る。元々、琵琶を奏でていた為に音感はある様で初めてとは思えない成績を出した。
凄い!凄い!これならもっと上の難易度でもフルコン狙えちゃうんじゃない?
「そうですね……それにも挑戦したいですけど今は──」
そう言って駒姫ちゃんは備え付けの太鼓バチのセットをもう一つ手に取り差し出してくる。
「──あなた様と一緒にやりとうございます」
そうだね、折角一緒にいるんだから二人でやろうか。そう返せば嬉しそうに頷き、そこからは駒姫ちゃんと一緒に疲れるまで太鼓の○人を楽しんだ。そして、どちらともなく腕が疲れて揃って横になる。遊んで疲れたら横になる、ゲーセンじゃ出来ない贅沢な楽しみ方だ。
「こうして、マスター様と何気ない日々を過ごす。駒は果報者にございます……!斯様に楽しく、幸せな日々を過ごせるとは思っておりませんでした」
楽しんで貰えたようで嬉しいよ。また、いつでも遊ぼうね。
「……ええ。ずぅーっと、ずぅーっと駒を、御傍に置いておいてくださいませ──あなた様」
……うん。約束するよ、駒姫。あれ、でもそうなると利休さんもずっと一緒ってなるのかな?
「利休と駒姫は渾然一体となって此処にあるゆえ、そうなりますなぁ」
「利休様とあなた様と一緒にいられる……それはとても嬉しいです」
続きとかはないよ