生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

10 / 24
 お久しぶりです。えぇもう、本当に御久しぶりです。
 最近別の方の作品にかかりっきりで疎かでした。べ、別に忘れていたわけじゃないんだからね!
 全ライトノベル内で一番好きな作品なので書いていると凄く楽しいんですけどね。皆さんを笑わせようとするとどうしても時間がかかってしまうわけで。
 まぁ何はともあれ最新話。お楽しみください。


冒険する生徒会(下)

「やっぱり、ゾンビを放つのがいいと思うのよね」

『ゾンビ!?』

 

 姉さんが珍しく渾身の笑顔で放った提案に生徒会メンバーが驚愕する。普段からこういったトンデモ発言に慣れている俺は別に驚くほどでもないのだが、まだ発足二か月ほどの彼らには刺激が強すぎたらしい。全員が目を丸くして、かつ顔面蒼白な状態で全身を震わせていた。

 桜野は『ゾンビ』という単語に結構な恐怖を覚えているらしくガクガク震えたまま口を開こうとしない。他のみんなは何故かこういう時に限って俺にアイコンタクトを大量に送ってくるため、どうすりゃいいのかくらいは分かるのだが。蔑視じゃない視線とか嬉しくもなんともねぇ……。

 だがこのままでは会議が進まないのもまた事実。ここは仕方なくとも俺が姉さんの相手をするしかないだろう。

 俺は何度か咳払いをして会話できる程度に喉の調子を整えると、姉さんにだけ向ける人懐っこいと評判の笑みで会話のバトンを受け取った。

 

「ゾンビって……そんな某バイオでハザードなゲームみたいな絶体絶命的状況にわざわざしなくてもいいじゃないか姉さん」

「何言ってるのよ蓮。血沸き肉踊り、いつ自分もゾンビになってしまうのか分からない緊迫した恐怖感。並大抵の精神力ではすぐにでも崩壊してしまいそうな絶望的な状況下を生き抜いていくなんて、これ以上ない程の快感を得られるに違いないじゃない! あぁっ、想像しただけで胸の高鳴りがうふふふふふふ」

「ごめん姉さん。俺実はそこまでホラー映画好きじゃないんだ」

 

 両頬に手を当てて軽くトリップしかけている姉さんに聞こえているのかは知らないが、一応ツッコミを入れておく。マゾヒストとして激痛に苛まれながら日々を過ごしていくと言う状況には多分の興味を惹かれている俺ではあるが、さすがに相手がゾンビとなると若干の抵抗が残る。美人のお姉さんに調教されるならばドンと来いだが、血の通っていない死体に殴られても大して嬉しくないのだ。多少のエロスと背徳感が織りなすサドとマゾの世界。それが俺の掲げるマゾヒスト道なのである。無秩序な暴力なんて誰が望むか!

 次なる言葉への対策をあれこれ練っていた俺だったが、どうやら姉さんは満足してしまったらしくそれ以上深いボケをしてくることはなかった。何やら意味深な笑みを浮かべて静かに顔を綻ばせている。どうしたんだろうか、いつもの姉さんらしくない。

 まぁ本人が満足しているのに発言を強制するのもアレだから、とりあえず深夏あたりにでも話を振っておこう。どういう流れになるかは火を見るより明らかだが。

 机に足をかけて相変わらず行儀悪く椅子を揺らしているお転婆娘に声をかける。

 

「深夏はなんかしたいこととか――――」

「バトル! 決闘! 対決ぅううううううううう!!」

「騒がしい! 後全部結局バトルじゃねぇか!もうちょっと変化球投げろよ!」

「でも熱い戦いの末に得られる鈍痛の快感は蓮さんも理解できるだろ?」

「まぁそこらへんの痛み関係はおそらくこの世界の誰よりも熟知しているけどさ」

「いやいやいや、そこ素直に認めちゃったら駄目でしょ蓮さん! 不肖この杉崎鍵、遅ればせながらツッコミさせていただく所存ですけども!?」

竜破斬(ドラグ・ス〇イブ)超電磁砲(レー〇ガン)の衝突によって生じる衝撃波なんて最高じゃねぇか鍵!」

「規模がでかいわ! 一発で村一つ潰すくらいの破壊力なのにトンデモねぇ技を放つんじゃねぇ! しかもぶつけんな! 村どころか北海道が世界地図から消滅するわ!」

「そこら辺は大丈夫だ、杉崎。衝撃と破壊力は全部俺が受け止めるから」

「もし止められたらアンタもう人間じゃねぇよ! 核シェルターかなんかだよ!」

「拘束具着用の上で、だがな」

「どうでもいいですよ! なんで付け加えた今の心底どうでもいい情報!」

 

 杉崎が立ち上がってギャースカ騒いでいるが、俺としては結構好きな提案だったんだがなぁ。深夏のバトル展開も結局は痛みを誘発するわけだし。中身痛いけど外見いたって無傷です的な暴力を会得している戦闘民族深夏にかかれば俺の望み通りの快感を得ることが出来そうなのに。姉さんの鞭捌きも捨てがたいが、やはり拳の激痛も……うぅむ、迷いどころだな。

 

「そんな変態的な選択肢で迷わないでくださいです……」

「うん、そういう台詞は予想済みなんだけど、その手に持った二冊の本はいったい何なのかな真冬ちゃん?」

「え? 『世界〇初恋』と『国崎出雲〇事情』ですけど」

「なんで両方ダブルでコンビでボーイズラブなんだよ! 説得力ねぇよ! 俺の変態行動を諫める資格、今の真冬ちゃんには渡されてねぇよ!」

「ま、真冬の趣味を紅葉弟先輩の被虐癖と一緒にしないでください! これは日本全国津々浦々、どんな場所でもヒハハーアーンなジャンルなのですよ!」

「最新のブラ〇ヨ名言を混ぜれば誤魔化せるとでも思ったか! いいからその物騒なものを早く仕舞いなさい!」

「まぁ蓮さんにも真冬ちゃんを注意する資格はまったくないんですけどね」

「杉崎、冷静なツッコミは地味に傷つくから勘弁してくれ」

 

 望んでもいない野郎からの精神攻撃に涙しながらも真冬ちゃんから漫画を没収。生徒会室の隅にあるパソコンデスクの上に積み上げておいた。これで会議が終わるまでは手が出せないだろう。同性愛は俺の守備範囲外だ。

 愛読書を没収されて若干涙目の真冬ちゃんが上目遣いでさっきから俺を睨みつけているが、可愛いだけなので別段怖がることもない。ニッコリスマイルを送ってから、杉崎へと向き直る。

 ……さて、

 

「ハーレム発言なしで他メンバーに負けない独特の濃い提案をしてもらおうか」

「なんというプレッシャー! なんですかその無茶すぎるハードルの上げ方は! イシンバ〇ワでも飛べないくらいの高さですよそれ!」

「いや、だってお前主人公だし? 自称ハーレム王だし? 俺みたいな何の外見的特徴もないただのマゾヒスト野郎じゃ及びもしないようなさぞかしユニークでウィットに富んだボケを披露してくれるんだろ? ほら、カモンカモン」

「やりづらい! 生徒会史上あり得ないレベルでやりづらい! それにアンタはまったく無個性じゃないでしょうよ! サディストな姉がいて無敵の風紀委員が幼馴染にいるマゾヒスト野郎って時点で個性の塊じゃないっすか! 箱〇学園でもやっていけるレベルですよそれ!」

「でも俺の異常性(アブノーマル)って【痛みを快感に(イェスユアハイネス)】くらいしかないからなぁ」

「あるんかい! しかも滅茶苦茶使い勝手よさそうな異常性だ! 痛みをなかったことにするレベルじゃ済まされませんよねぇ!?」

「ちなみに姉さんは二つ持ってるな、特殊能力」

「化物か! どこの生徒会長ですか知弦さんは!」

「【完成(ジ・エンド)】と【愚行権(デビルスタイル)】だったかな」

「相殺してんじゃないっすか! 最強と最弱併せ持つなよ役に立たないでしょうよそれ!」

「だって姉さんだし。どうにかするだろ」

「それはそうですけども!」

 

 相変わらずの鋭いツッコミが冴えわたる杉崎。やはりコイツはボケよりもツッコミの方が生きると俺は思う。根が真面目だしな。変なキャラ付けでハーレム変態キャラを押し通すよりは自然体でいられるのだろう。生徒会唯一の常識キャラと言っても過言ではない。普段の発言が非常にアレなチャラ男だからあんまり認めたくはないが。

 結局変態的提案をすることはなく杉崎は腰を下ろした。叫びすぎて体力を消費しすぎたのだろう、なんかめっちゃ疲れ切った顔で背もたれに身体を預けている。ありゃりゃ、ちょっとボケすぎたかねぇ。

 次は誰に話を振ろうか、と生徒会室を見渡すが、真冬ちゃんは何やら見覚えのある二人の男性(俺と杉崎と思われる)がくんずほぐれつする漫画を描いている最中だし、姉さんはホクホク笑顔で傍観している。深夏は深夏で新しい技を考察中でトリップしているし、桜野に至っては珍しくうんうん首を捻っているところだ。もはや誰もボケを捻りだせる状況ではない。俺がボケりゃあいい話なのだろうが、姉さんのやる気がない以上俺がボケても空回りするだけだ。空気を白けさせるのだけは非常に避けたいところである。

 打開策が思いつかずに黙り込んでしまう。

 ――――と、ここでようやく、頭を抱えていた桜野が口を開いた。

 

「いろいろ意見出過ぎてこんがらがってきたから、やっぱり新しい事考えるのやめ!」

『……えー』

 

 ここにきてまさかの中止発言だった。誰のせいでみんながボケまくっていたのか分かっているのだろうかこのお子様会長は。みんな疲れていたとはいえ、多少はノリノリだったせいか落胆を隠せない様子だ。もう少し自分の欲望を曝け出したかったのかもしれない。なんて迷惑な生徒会だと思うかもしれないが、かくいう俺もまだ調教学をカリキュラムに組み込むことに成功していないのでプレゼンし足りない状況だ。もうちょっと時間と機会をくれれば理事長にアピールするところまではいけるというのに。

 メンバー達のあからさまな拒絶感丸出しの表情に桜野は一瞬「う……」と呻くものの、そこは生徒会長としての威厳を立てて会議の中止を宣言した。一度決めたことは曲げたくないらしい。これ以上の意見が飛び交うのが面倒くさかったという気持ちが大いにあるようだが。

 桜野が頭の上で大きくバツを作る中、不意に姉さんが「ふふっ」と笑みを零した。思わずメンバーの視線が姉さんへと集中する。

 

「アカちゃんの言うとおり、やっぱり今のままの生徒会でいいんじゃないかしら」

「どうしたんですか知弦さん。いつもなら率先してボケに走る側でしょうに」

「その認識は甚だ遺憾だけれどもね。みんなが元気に騒ぎまくる生徒会も好きだけど、私はやっぱり今のままのみんなが大好きなのよ。新しいことを始めるよりもありのままの私達でいた方がいいと思うの。せっかく個性的なメンバーが集まっているのだしね」

「ま、真冬は一番無個性ですよ! ですよね皆さん!」

『いやそれはない』

「なんでハモって即答なのですかぁーっ!」

 

 顔を真っ赤にして自身の無個性をアピールし続ける真冬ちゃんだが、普段の言動が言動なので信憑性に欠けてしまう。というか今更無個性とか無理にも程がある。もう君は色んな道を踏み外しているよ。

 必死に訂正を要求する真冬ちゃんを見て再び姉さんが微笑む。まるで我が子を見守る母親のように穏やかな様子で、彼女は口元を綻ばせていた。

 こういう生徒会を、姉さんは愛しているのだろう。

 桜野が毎度のように子供じみた議題を発表して、杉崎が仕切って、深夏が叫んで、真冬ちゃんが弄られて、俺が悶えて。そして姉さんが妖艶ながらも無邪気に微笑む。なんでもない日常。ありふれた展開。日本中どこにでも転がっているような日常風景ではあるが、姉さんはそういった当たり前の日常が大好きなのだろう。普段の猟奇発言やドS言動から想像もつかないかもしれないが、本当の彼女は可愛い物好きの純粋な乙女だ。暴力や非日常なんて本当は望んでいない。仲のいい友人達と平和に暮らせて、いつまでも楽しく喋っていられたらそれだけで満足するような人間なのだ。

 

「アカちゃん、ちょっとキー君と抱き合ってみない?」

「イヤだよ! 変態が感染っちゃうもん!」

「どういうことですか感染しませんよ別に! というか俺を普段からどういう目で見てんですか会長は!」

「いやー、でも鍵のエロさは伝染しそうだもんなぁ。病原菌みたいだし」

「それこそTウイルスじゃねぇかよ! 本当に噛んでやろうか!?」

「先輩、それやっちゃうとリアルに警察呼ばれるやつですよ」

「マッポはご勘弁ー!」

「……ははっ」

 

 好き勝手に騒いで笑顔をばら撒くメンバー達を見ていると、俺も不思議と笑い声を漏らしていた。

 なるほど。姉さんが大好きなのは、こういう生徒会なのか。みんながずっと笑顔でいられるような、こんな明るくアットホームな生徒会だったのか。

 新しいことをする必要はない、と姉さんは言った。確かに新たな方針を打ち立てるのは現状打破には欠かせない事だ。今までとは違ったことがしたいと思い立つことは悪いことではない。だが、時には後ろを振り返ってみるのも悪くはないだろう。先輩達が培ってきたことを続けていくのもまた一興なのかもしれない。

 みんなと一緒になって笑っていた姉さんが、俺の方を見て一際明るい笑顔を浮かべる。家でもあまり見せることのない純粋無垢な笑顔に、俺はちょっとだけ胸が高鳴るのを感じた。

 ――――やっぱり、姉さんには敵わないや。

 相変わらずどこまでも完璧な双子の姉に心の中で白旗を上げつつも、俺は溜息を一つつくといつも通りのマゾヒスト発言でみんなをドン引きさせていく。深夏に殴られ快感に身を震わせながら、紅葉蓮として生徒会を盛り上げていくのだ。

 

 そんなわけで、我らが生徒会は今日もまったり平常運転だ。

 

 

 




 次回もお楽しみに!

※大学受験に伴って
受験が終わるまで更新を停止します。
読者の皆様にはご迷惑と心配をおかけすることになりますが、終了次第最新話をお届けしたいと思っておりますのでご容赦下さい。
それでは、良いお年を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。