生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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 ……更新でーす。


仕事する生徒会(下)

「こうなったら、あまりにも酷い部活動は生徒会権限で一斉に廃部にするわっ!」

 

 怒り心頭なご様子で声を荒げる桜野に、俺と姉さん、そして杉崎がやれやれと揃って大きく溜息をつく。真面目な桜野の事だからもしかしてとは思っていたが、まさか本当にその結論に至ってしまうとは。正直ここからの流れは面倒くさいことこの上ないのでできれば遠慮したいところではある。

 しかしまぁこのまま放っておくわけにもいくまい。三人で目配せをした結果、知弦姉さんが溜息と共に口火を切った。

 

「アカちゃん……アカちゃんの気持ちも分からないではないけれど、そんな無理矢理な手段を取るのはもう少し対策を練ってからでも遅くはないんじゃないかしら。生徒達から余計な反感を買うのも嫌でしょう?」

「う……それは、確かに……」

「まぁそもそも仕事しない俺達が強制手段を言い渡したところで素直に聞いてくれるとは思わないしな」

「仕事しない一号が何言ってんのよバカ蓮」

「直球が酷ぇ! でもストレートな罵倒ありがとうございます!」

「最近マゾヒストに磨きがかかってきましたね紅葉弟先輩……」

 

 一人興奮気味に息を荒げる俺に隣から真冬ちゃんがドン引き&冷たい視線を浴びせてくるが、今の俺にはそれすらもご褒美であるため問題はない。罵倒と冷笑、軽蔑はいくら受けても受けたりないというくらいだ。どんどん、どんどん来い!

 

(あの、紅葉弟先輩……)

(ん?)

 

 二人の罵倒を心の中で何度も反芻しながら悶えていると、真冬ちゃんが何やら神妙な面持ちで耳打ちしてきていた。桜野には聞こえないようにと言う配慮なのか、こちらに少々身を乗り出して声を潜めて話し始める。

 

(この話題って、たぶん話し合っても無駄に終わると真冬は思うのですが……)

(あー、まぁ、確かにそれはそうだよね。ちなみに真冬ちゃんはなんでそう思う?)

(えっと……やっぱり人間っていうのは好きな事には我武者羅に、欲張りになってしまうものなので……真冬達が注意したところで、今更改善するとも思えないのですよ)

(うん。俺も真冬ちゃんと同じ意見だよ。好きな事に対して一生懸命に……盲目的になっている人には何を言っても変わらない。ま、一言で言ってしまえば無駄だね)

 

 同時進行で姉さんと桜野も似たような話をしていたが、人間と言うのは自分が好きなことに対してはとても我儘になる生き物だ。趣味の延長と言うと聞こえは悪いけれど、基本的に部活動は好きでやっているのだから、我儘をやめろと言っても大人しく聞いてくれるとは思えない。そもそもが問題児ばかり集まった碧陽学園生徒達である。何よりも騒動を愛する彼らが真面目に嘆願書を書くとは思えない。真冬ちゃんもそれを分かっているから、今のような発言をしたのだろう。

 だが、それでも俺は今回の会議を止めようとはしない。

 

(最初から無駄だと分かっていても、まずは解決に向けて取り組むってことが大切だと思うんだよね。その結果意見が纏まらなかったらそれは仕方がない。大人しくお手上げして解決を放棄すればいいさ)

(そんなテキトーな……)

(いいんだよ。それが俺達碧陽学園生徒会なんだから)

 

 基本的に何もせず、その割には無駄に我儘を言いまくる集団。それが碧陽学園であり、碧陽学園生徒会だ。面白ければ万事OK。無駄だからって早々に切り捨てるのなんて、それこそナンセンスだ。

 だから今回は大人しく会議を進める。どうせこのメンバーが行う会議だから、マトモな意見なんて出やしないだろうしね。

 

(……そうやって普通の事を言っている時はそこそこカッコ良いのに……)

(ん? 下向いて何言ってんの真冬ちゃん)

「会長さーん。紅葉弟先輩が部活動対策について何か意見があるみたいなのですー」

「無視した上に俺を犠牲にしやがった!」

「んー? 何よ、蓮。なんか部活動について良い案でも思いついたの?」

 

 若干顔を赤らめて俺を人柱にした一年生には言いたいことが山ほどあるが、結果的に桜野の標的になってしまった以上このまま無視しておくわけにもいくまい。杉崎達の視線もこちらに向いているため、それなりに気の利いたことを言わないと村八分にされてしまう可能性大だ。いくら俺が真性のマゾヒストだとは言っても、さすがに仲間外れは勘弁願いたい。

 やれやれ。そうと決まればやるしかない。俺はバンっと机を叩いて盛大に立ち上がると、

 

「じゃあもういろいろ面倒臭くなってきたから、とりあえず我らが調教部に部費の大部分を回すってことで解決しようぜ!」

『予想通りの意見をありがとう! そしてしばらく黙ってろ!』

「むぎゅぅ」

 

 全員から一斉に投げつけられた学生鞄が俺の顔面を襲う。何気に角が集中的に激突してきた衝撃で、俺は為す術もなく意識を手放していく。

 

「本当にアホですね紅葉弟先輩……」

 

 最後に聞こえた真冬ちゃんの呆れたような呟きが、今回ばかりはやけに嬉しかった俺こと紅葉蓮であった。

 

 

 

 

 

                ☆

 

 

 

 

 

「おーっほっほっほ! ようやく目を覚ましましたわね、紅葉蓮!」

 

 気がつくと目の前に金髪美少女が腕を組んで仁王立ちで俺の前に立っていました。

 ……イマイチ何が起こったのか理解が追い付かない俺は思考が停止した状態ながらに彼女を見上げると、ようやく言葉らしい言葉を放り投げる。

 

「……Pardon?」

「なんですのそのやけに流暢な発音は」

「イマ、オカシイ。オレ、セイトカイシツニイタハズ。ココ、シンブンブ」

「何故急に片言になったのかは理解に苦しみますが……私はしっかり嘆願書に書いたはずですわよ? 紅葉蓮を新聞部に貸し出しなさいって」

「嘆願、書……?」

 

 聞き覚えのある単語に思わず首を捻る。確か今日の生徒会会議は部活動についてで、その中で嘆願書を扱ったような――――

 

「あいつら……! あの後結局勝手に俺をレンタルしやがったなっ……!」

「あら、勝手にだなんて人聞きの悪い。私はしっかり借用書を書いたうえで貴方をお借りしましたわ!」

「俺にとっちゃ一ミリも変わらねぇよこのスクープ大好き女!」

「な、なんですって!? 言うに事欠いて、スクープを馬鹿にするなんて……! あ、貴方なんて四六時中快楽を求めるような非生産的なクソマゾヒストじゃありませんの! 私を悪く言う資格はありませんわ!」

「この野郎! だがしかし罵倒されても俺を喜ばせる結果にしかならんぞ藤堂! はぁはぁ」

「この生徒会役員リアルに気持ち悪いですわぁーっ!」

 

 鮮やかなブロンドと大きなリボンを振り乱しながら顔を青褪めさせる新聞部部長兼俺の親友、藤堂リリシア。コイツは相変わらずリアクションが大きいのでからかい甲斐がある。知弦姉さんが桜野を虐めるのと同じような理由だが、俺がコイツにつっかかるのはからかっていて面白いからだ。変に生真面目なところがあるから楽しいんだよなぁ。

 

「とにかく! 今日は我が新聞部が……というか、この藤堂リリシアが個人的に貴方をレンタルしたのですから、好き勝手に自由に使わせてもらいますわよ!」

「オイ待て藤堂。俺の人権及び意見を少しは尊重してもらいたいんだが」

「断りますわ!」

「理不尽か! まったく意識がないままに拉致された挙句理不尽か!」

「? 今更何当然の事を再確認しておりますの?」

「そして俺に対する一般認識の酷さに絶望した! これに関しては俺の性癖云々関係なく絶望した!」

 

 キョトンとした呆け顔でさらりととんでもない暴言をぶつけてくる藤堂に驚愕が止まらない。加えて碧陽学園生徒が俺をどう思っているかも再確認できて正直悲しい。なんだ、なんだこの凄まじい扱いは。マゾ的なアレとはまた違ったベクトルの虐めを受けているような気がするぞ。これはアレか。桜野が生徒会で受けている仕打ちと似たようなものか。

 ……今度からもう少し桜野には優しくしてやろう。

 何気に日頃の行いを反省しつつも、適度に諦めを覚えてきた俺は目の前でニコニコ笑っている親友へと溜息交じりに声をかける。

 

「それで? 俺を拉致したどこぞの新聞部部長様は今からどんな悪行を俺にやらせようとしているのですかな?」

「む。なんですのその私は悪行しかしていないみたいな誤解を与えかねない台詞は」

「人のスクープ隠し撮りして捏造染みた記事を作って生徒会に喧嘩売るような馬鹿が悪行以外の何をすると?」

「ひ、酷い言われようですわね……まぁ、八割方事実ですから否定する気も起きませんけど」

「事実を認めるならもう少し改善する努力をしてくれ……」

「それは貴方達生徒会に一番してほしい努力ですわ……」

 

 ほっとけ。

 

「まぁ今回は女子更衣室を覗かせようとか女子にセクハラしてこいとかそんな内容ではございませんわ」

「むしろ痴漢行為ばかりさせようとしたお前に驚きが隠せないわ」

「コホン。さて、肝心の内容ですけれど……私と今から放課後ショッピングをしてほしいのですのよ!」

「……さて、今日は姉さんと勉強する日だったかな」

「お待ちなさいな」

 

 すぐさま踵を返して新聞部部室を後にしようとする俺を光の速さで引き止める藤堂。今だけは人生最速で動けていた自負があったのに……コイツは相変わらず変な部分で超人的だな。 

 肩を掴む彼女の手をゆっくり外しながら、俺は適度に呆れの感情を乗せた視線をジト目でぶつける。

 

「なんで俺が生徒会後の放課後にわざわざお前の買い物に付き合わんとならんのだ……」

「あら、こんな見目麗しいご令嬢との放課後デートはご不満?」

「自分で見目麗しいとかいう自意識過剰娘なんてお断りだ」

「……本当に、ご不満?」

「のわぁっ!? 急に腕を取って胸に当てるなこの痴女め!」

「ち、痴女でも何とでもお呼びなさい! 今から私は全力で貴方を色仕掛けで籠絡する所存ですから、どうぞ反抗できるものならばその無様な男の性に逆らって見せてくださいな!」

「このっ……よりにもよってエロ方向で攻めてくるとかお前らしくねぇっ……!」

「……ぁん」

「変な声出すのやめろぉーっ!」

 

 俺の腕を抱え込むようにして上目遣いで下から顔を覗き込んでくる体勢に正直胸の高鳴りが止まらない。腕を通して感じる胸部のプニプニ感や高貴な感じがする独特のシャンプーの匂いとか、日本人離れした碧眼が吸い込まれそうな感じがしてうわぁぁ。

 ……結局、五分後。

 

「おーっほっほっほ! 結局貴方はこの藤堂リリシアの魅力には勝てなかったということですわ!」

「くそぉ……色々な柔らかさに敗北した……」

 

 そこには腰に手を当てて高笑いする藤堂とその足元で惨めに四肢を付く俺の姿があった。……うん。まぁ薄々分かってはいたけどね。男が女性の性的誘惑に勝てるわけないもんね。そんなこと杉崎を見ている時点で既に気が付いていたけどね。はあぁぁ。

 あまりにもちょろすぎる自分に半ば自己嫌悪を覚えてしまう。今度からはもう少し色々我慢するようにしよう、と心の中で固く誓いながらも、どこかそんなに悪い気はしていない自分がいた。心のどこかで喜んでいる自分がいた。

 だって……

 

「ふふっ。紅葉蓮とデートなんて……どこに行こうかなぁ……♪」

「……まぁ、いっか」

 

 普段見せない子供みたいな笑顔を浮かべてはしゃいでいる藤堂なんていう珍しいもんを見られたのだから。

 

「さぁ、そうと決まれば早速出発しますわよ!」

「はいはい。どこまでも着いて行きますよー」

 

 手を取られ、部室を後にする。

 

「……ありがとな、藤堂」

 

 俺への告白の返事を保留にされ、本来ならば恨みの対象であるはずの俺を前にしても健気に明るく振舞ってくれる藤堂に、俺はこっそりお礼の言葉を呟くのだった。

 

 

 




 ぐあぁ……ごめんなさいぃぃ……。
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