生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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(土下座)


邂逅する生徒会

 宮代奏。

 紅葉蓮、紅葉知弦の幼馴染にして、親友。そして、現在進行形で紅葉蓮の心にトラウマとして住み着き、私の恋路に立ちはだかっている最大の敵。水無月大雨や翡翠雲雀といった幼馴染メンバーからの又聞きではあるが、彼の人格形成に大きな影響を与えていると言っても過言ではないであろう人物。

 いつか彼女とは話をつけなくてはならないとは思っていたが、まさかこういった形で邂逅するとは夢にも思っていなかった。先入観のせいか、ニッコリと微笑みかけてくる彼女の笑顔がどこか歪なものに感じられて全身に冷や汗が浮かび始める。

 

「あ、貴女が宮代奏、でしたの……?」

「あれ? 私のこと知ってるんだ。レンかアカちゃんから聞いたのかな?」

「アカちゃん……? いえ、桜野くりむからは聞いた覚えはないのですが」

「あー、違う違う。私がアカちゃんって呼んでるのは紅葉知弦の方なのよ。紅葉の『アカ』からアカちゃん。いい名前でしょう?」

「は、はぁ……」

 

 ニコッと目を細める宮代奏とは対照的に、私はただただ虚を突かれて戸惑いの表情を浮かべていた。紅葉蓮の背負った過去であり、彼にとっても大切な存在である彼女。私や桜野くりむの告白への返事を保留している最大の原因。日頃楽観的で思いのままに行動している彼がそこまで思いつめるような相手なのだから、もう少し性格が破綻しているとか、人間的に危険だとかそういうのだと思ったのだが……予想とあまりにも違う人柄すぎて理解が追い付かない。

 どうしましょう。まさかこんなところで出会うとは思いもしなかったから、うまく対処ができませんわ。

 冷や汗が背中に浮かび始めるが、このまま黙り込んでいるわけにもいかない。今は会話を続けて、彼女と紅葉蓮の情報を少しでも得なければ。震える唇を目一杯開きながら、私は頑張って言葉を紡ぎ出す。

 

「あ、紅葉蓮とは幼馴染と言っていましたが、具体的にはどういう……」

「んー? まぁ、幼稚園からの長い腐れ縁みたいな感じかな。私、ちょっと家庭的にいろいろあってね。そんな地獄から私を救い出してくれた彼は、命の恩人というかヒーローというか。まぁ、とにかく大好きな男性よ」

「だ、大好き、ですか……」

「そ。まぁ中学の頃にちょっと色々やりすぎちゃって、今は正直微妙な関係ではあるんだけどね。あ、連絡とかはたまに取ってるよ? ただ、昔ほど仲良くはないかな」

「微妙な関係……?」

 

 首を傾げる。確かに、紅葉蓮の様子を見るに何かしらの因縁があり、今もそれを引きずっているのだろうとは思っていたが、そこまで仲が良かった幼馴染とここまで疎遠になるほどの出来事とはいったい。このことについて彼に聞こうとすると表情を曇らせて話題を変えようとするから、決して喜ばしい内容ではないだろうということは分かるが。

 本来はこういうプライバシーに関わることは聞くべきではないのだろう。本人から許可を得たわけでもない上に、その当人から直接話を聞こうとするなんて、卑怯と言われても否定はできない。それほどまでに最低な行為だという自覚はもちろんある。

 ……しかしながら、気になってしまうのだ。それは今まで培ってきた記者魂も手伝ってはいるが、なにより。

 

 自分が好きな相手のことは、何が何でも知っておきたいという、複雑な乙女心。

 

「……宮代奏、さん」

「うん? どうしたの、藤堂リリシアさん?」

 

 こちらの呼び方に合わせるようにしてフルネームで私の名前を呼ぶ彼女。紅葉知弦や紅葉蓮といった面々と旧知の仲であるという彼女の事だから、もしかしたら私の思惑や本音など党の最初からお見通しなのかもしれない。だからこそ、皮肉を込めて呼び方を真似したんだと思う。そういうことをやってのけるだろう雰囲気を、目の前の女性は纏っていた。

 だけど。いや、だからこそ。

 私は。

 藤堂リリシアは。

 今このタイミングで、彼女に向かって一歩踏み出すべきなのだ。

 宮代奏を真正面からしっかり見据える。何度か大きく深呼吸。溜まった唾を嚥下するように喉を鳴らすと、私は。

 

「失礼を承知で、お聞きしたいことがございますの」

「聞きたいこと? それは、レンやアカちゃんに関係することかな?」

「……中学時代、彼らと何があったのか。貴女が紅葉蓮に何を行い、何を残したのか。そのすべてを、私に話してもらえませんでしょうか」

 

 ――――絶対に触れてはならないだろう禁忌に、あえて自分から飛び込んでいく。

 

「……私がリリシアさんに過去の事について話さないといけない理由は? 今ここで会ったばかりの他人においそれと話すような軽い内容でもないんだけど」

「確かに、その通りですわ。私と貴女はあくまでも赤の他人で、そんな深い事情を話し合うような親しい間柄では絶対にない。ましてや、おそらくは秘密にしておきたいだろう過去を話すべき相手でもないことは重々承知しておりますの」

「ふぅん。だったら、どうして?」

 

 ツゥ、と切れ長の瞳を細めて私の方を見てくる宮代奏。蛇のようなその視線に思わず背筋に寒気を感じてしまうが、これくらいで慄くわけにはいかない。ただでさえ色々な意味で置いて行かれているのだから、多少無理をしてでも真相に迫らなければならない。それに、私は碧陽学園を代表する新聞記者だ。スクープを追い求める根性だけは、誰にも負けるつもりはありませんの!

 彼女の威圧的とも取れる視線を精一杯の虚勢で受け流すと、私は自慢の胸をえいやと張って自信満々正々堂々己の気持ちをぶつける!

 

「私が……私が、紅葉蓮のことを一人の男性として慕っているからに決まっていますわ!」

「…………」

「……あ、あれ?」

 

 返ってきたのは予想だにしない静寂。確かに自分でも相当無茶な言い分だとは分かっているが、まさか一言も返ってこないとは思わなかった。何か間違えてしまっただろうか。普段から打てば響くような会話の応酬の中で生活してきたから、こういう無視やスルーは苦手ですわー!

 一人あわあわと目を白黒させる私。しかし、ひょんなことから私はようやく本来の平静を取り戻す。

 

「……ふふっ」

「はい?」

 

 不意に聞こえた、小さな笑い声。その方向に視線をやれば、口元を押さえて静かに肩を震わせる宮代奏の姿。まさか笑われるとは思っていなかった私はポカンと間が抜けたように口を開けたまま呆然と立ち尽くすしかない。それなりに見栄を切っただけに、少々恥ずかしさで顔から火が出そうだ。

 おそらくは顔が真っ赤になっているであろう私を置いてけぼりにしたまましばらく笑っていた宮代奏だったが、ひとしきり笑い終えると目の端の涙を拭いながら再び会話を続ける。

 

「ごめんなさいね。まさか、堂々とそんなことを言うなんてまったく予想してなかったから、つい」

「う……は、恥ずかしいのは承知で言ったのですから、蒸し返されると困りますの」

「そう? 私は可愛いと思ったけれど」

「か、可愛いって……」

「ふふ。そうやって恥じらう姿も可愛らしいわね。どおりでレンが揺らぐわけだわ」

「ん? ん!? い、今なんと……」

「それはなーいしょ。いいわ、貴女の啖呵と素直さに免じて話してあげる。ただ、あの姉弟には話したことは秘密にしておいてくれない? バレたら後で何をされるか分かったものじゃないもの」

「それはまぁ……なんとなく分かりますの」

「でしょ?」

 

 半ば焦るかのように引き攣った笑みを浮かべる宮代奏。彼女の心配は至極もっともだ。あの超弩級サドマゾコンビが本気を出せば、軽く意識が飛ぶ以上の拷問が待っていることなんて想像に難くない。むしろ、どんな地獄が待っているかを想像したくもない。無駄に凸凹や緩急がはっきりしているだけに常人の精神ではまず間違いなく耐えられる気がしない。

 私が想像していることを目の前の彼女も想像したのだろうか。互いに視線を交差させると、労うように肩にポンと手を置き合う。おそらくは彼女も私と同様に苦労してきたのだろう。変な仲間意識が勝手に私の中で芽生えていく。あぁ、苦労人仲間がついにここに……。

 しばらく健闘を讃えあっていた私達ではあったが、さすがに迷子センターのど真ん中で込み入った話をするわけにもいかない。宮代奏は同僚らしき女性に休憩に入ることを伝えると、そのまま一旦更衣室に向かう。なぜか、私の手を引っ張りながら。

 

「……あの、着替えるだけなら私を一緒に連れて行く必要はないと思うのですけれど」

「一人じゃ寂しいでしょ? それに、せっかくだから親睦も深めたいじゃない? ほら、仲を深めるためには裸の付き合いも大切って言うし」

「着替えるのは貴女だけですし裸になんてなりませんわよ!?」

「ふふっ。今だから言えるけど……実は私、バイなんだ」

「どこまでも紅葉知弦にそっくりですわー!」

 

 ふふふと不敵な笑みを顔全体に張り付けながらゆっくりと私を更衣室に引きずり込んでいくバイセクシャル宮代奏。なんとか助けを求めようと周囲に救援要請を出すものの、迷子センター内における力関係の主軸を彼女がどうやら握っているらしく、全員が全員さっと私から視線を逸らしてしまう。先程私にセクハラまがいのイタズラを仕掛けていたたっくんなるお子様でさえ、宮代奏に睨まれて全身を竦ませてしまっている始末だ。彼女、今までどういう所業を繰り返してきたのだろうか。興味は湧くが、経験はしたくない。

 抵抗虚しく、ずりずりと地獄の釜が開けられていく。

 

「い~や~! だっ、誰か助けてくださいましー!」

「ほらほらぁ、優しくしてあげるから力を抜いてぇ」

「全年齢対象の作品で誤解を生むような発言は控えてくださいですのー!」

 

 身の危険及び貞操の危機を感じながらも、更衣室の扉は閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

                ☆

 

 

 

 

 

 一方その頃、迷子状態の紅葉蓮はというと。

 

「お姉さんすみません……そのすべてを見通すような麗しい瞳で、俺の事を虫けらを見るかのように見下してくれませんか?」

「は、はい?」

 

 どこかで見たことがあるような、巫女服が似合いそうな茶髪の女性にSMプレイを提案している最中だった。

 

 

 

 

 

 




 ……はい、更新です。一年ぶりです。それも大して話進んでおりません。土下座物ですね、はい。
 ごめんよぉー! 本当はこんなに待たせるつもりはなかったんだけど、いかんせんいろいろ取り込んで(意味深)たんだよぉー! ……はい、ごめんなさい。怠慢です。謝る以外の選択肢はございません(吐血)
 次回は、もう少し早く更新したいなぁ(フラグ)

 こんなマトモに更新もしないダメダメ作者ですが、これからもお付き合いいただけると幸いです。うぅ。
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