生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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 こんにちは。ふゆいです。
 オリジナル展開って難しいですね。まぁ、楽しいから良しとしましょう。
 さて、それでは早速。お楽しみください♪


駄弁る生徒会(下)

「ぐっふぅ――――――――――――!」

 

 鳩尾に度し難い激痛が走り、長机ごと飛んでいく俺。ガラガッシャーン! と耳を塞ぎたくなるほどの騒音が生徒会室に鳴り響く。あまりの五月蠅さに呆然としていた桜野は思わず耳に両手を当てている。しかし、なんだ。……俺的には、ご褒美です。

 

「れ、れぇ――――――――――――ん!」

「……ふぅ、またつまらぬものを蹴ってしまった」

「盗撮行為に対する対処が死刑レベルだな、深夏よ」

「ご、ごほっ……」

 

 呆然と立ち尽くしていた桜野が俺の方へと慌てて駆け寄ってくる中、俺の耳に二人分の新たな声が届いてきた。幸い(?)にも、どちらも俺の知り合いのようだ。というか、生徒会メンバー。

 一人は俺を蹴り飛ばした茶髪の美少女(そもそもこの生徒会に入っていることから分かることではあるが)。自身の活発さを表すかのようなツインテールが特徴的だ。

 彼女の名前は椎名深夏。二年B組に在籍する、この生徒会の副会長である。性格は先ほどの発言から察せる通り、男勝りなボーイッシュ美少女だ。……実際の所、ボーイッシュではすまない完全無欠の超暴力少女なんだけどな。人類を超越していると言われても頷いてしまいそうなほどの戦闘能力を誇る女子高生。どこの一騎〇千だと声を大にしてツッコみたい。

 そして、もう一人。深夏の暴行に対して冷静にツッコミを入れた忌々しいイケメンは杉崎鍵だ。深夏と同じ二年B組の生徒で、副会長。性格は……エロエロ大魔神。以上。異論は認めない。

 倒れ伏す俺に冷徹な視線を向けながら、深夏が溜息をついている。……ゾクゾクしてきた。

 

「遅刻したから急いで来てみれば……アンタは相変わらずの変態だな」

「違う。俺はただのマゾヒストだ。決して盗撮犯などではない!」

「蓮さん蓮さん、そこ威張るところじゃないですよ」

「黙れクズ。ハーレム語る無節操男に意見を言われる筋合いはないわ!」

「どストレートにひでぇ! そして痛ぇ! なまじ図星なだけに傷が深いわ!」

「はっ、軽いだけのチャラ男が俺にモノを言うなんて百年早いんだよ!」

「……いやいや、あたしからしてみればどっちもクズだから」

「馬鹿な!」

「自覚がねぇのかよ!」

 

 堂々とハーレム宣言しているような厨二病野郎と、崇高なるマゾヒストな俺が同列だと!? 突然下された衝撃的判決に俺は驚きを隠すことができない。なんてことだ……くっ、これだから世間ってのは!

 

「マゾヒストを自称している時点で危ないってことをまず理解しなさいよ、蓮」

「何を言うんだ桜野。自分の詳細を述べることの何が悪い! マゾだからって、他人に迷惑がかかることはないだろう!」

「現在進行形で三人にかかってるわよ、迷惑。それも割と酷く」

「…………深夏、もう一回蹴ってくれ」

「受け入れ体勢抜群のヤツ蹴っても気持ち悪いだけだから拒否!」

「蓮さん流石にそれは引きます!」

 

 あろうことか顔面真っ青にして俺から距離を置く生徒会副会長ズ。つか、おい杉崎。お前はこういうタイプのネタで最も引いてはいけない存在じゃないのか? 仮にも生徒会の誇る変態枠なんだから、そこはフォローするなりなんなりして空気を戻すべきだろう。

 

「変態枠!? いやいや、俺は誰が見ても明らかにハーレム王の主人公枠じゃないっすか!」

『いやそれはない』

「全否定! 今まで笑顔・泣き顔・恍惚の表情を浮かべていた人達が同時に真顔で全否定!」

「だって、杉崎だもんねぇ」

「碧陽学園の誇るクズだもんな」

「良くてサンドバッグ枠だろ。あたし専用の!」

「アンタらだけには否定する権利はねぇ!」

 

 なんか若干涙目で必死に抵抗の意を示しているハーレム枠(笑)がいるが、いつものように全スルー。初日に衝撃の全員告白を成し遂げた前代未聞の馬鹿野郎には、これくらいしてやった方がいい薬になるというものだ。……後で感想を聞いておこう。

 杉崎弄りに興じていた俺達だが、さすがに数分経つと飽きてしまった。桜野はゆるゆる成分全開でウサマロを頬張っており、深夏と杉崎はレクリエーションの思い出を語り合っている。かくいう俺は、宿題の真っ最中だ。……なんだこの驚くべき協調性のなさは。一応生徒会と言う集団での活動なのだから、もう少し皆でワイワイ取り組むべきではないだろうか。

 もはや救いようのない状況を打開すべく俺がうんうん頭を捻っていると、再び生徒会室のドアがガラガラと開かれた。

 

「ごめんなさい、話が長引いちゃって」

「お、遅れました」

 

 入室してきたのは、これまた美少女の二人。

 先に入ってきたのは黒髪の美少女……いや、美人と呼ぶべきか。長身かつグラマラス、いわゆる『大人のフェロモン』を全力で振り撒いている。街を歩けば、確実に万人が振り返ってしまうであろう美貌を持つこの女性は、俺が世界で最も愛している双子の姉、紅葉知弦だ。

 見た目は包容力のあるお姉様な感じの姉さんなのだが、中身は超がつくほどのサディスト。鞄の中には鞭を常備し、履いているブーツも主に標的を踏むために特化した一品。俺を始めとして、今まで何人の下僕があの靴の前に平伏してきたのか想像もつかない。あぁ、今日もなんて嗜虐的な輝きを放っているのだろう!

 そして、姉さんの背後でペコペコと頭を下げながら入ってきたのは、深夏の妹である椎名真冬ちゃん。姉は絵に描いたような活発系美少女だが、真冬ちゃんはこれまた典型的な病弱キャラである。色白で、色素の薄い黄色染みた髪。姉は茶色なのに……遺伝子の神秘を感じるな。

 この真冬ちゃん。見た目に忠実と言うか、案の定人見知りであり、生徒会が発足して二週間が経つ現在においてもこうやって少し距離を置いた挨拶をしてくる。俺達はもう少しファミリーな関係を持ちたいのだが、真冬ちゃんにはまだ難しいようだ。まぁ、急かすようなことでもないため温かく見守っていくとしよう。

 二人が席に着くと、俺はコホンと咳払いしてから姉さんの元へと歩み寄る。

 

「……お帰りなさい、姉さん」

「えぇ、ただいま蓮。……早速だけど、靴を舐めてくれない? ちょっと汚れちゃって」

「お望みとあらば」

 

 身を屈め、姉さんの足へと顔を近づける。このアングルならば下着を見ることもできる(実際、見えている)が、今の俺に与えられた使命は靴の掃除だ。ロボットのように、任務を果たさねば。

 ギラリと鈍い輝きを放つブーツにゴクリと唾を飲み込みつつも、俺は舌を出すとゆっくりと顔を近づけ――

 

「――って、生徒会室で何やってんのよこの変態姉弟!」

「あぅ」

「あら」

 

 顔を真っ赤にした見た目ガキンチョの同級生に顔を抑え込まれ、妨害された。うぅ、後少しだったのに……。

 桜野は「あわあわ」と動転している様子で俺の襟首をつかむと、ぐわんぐわん揺さぶり始めた。……って、これは酔う! 痛みじゃないから快楽にもならないし、気持ち悪い!

 

「ここここここは清く正しい生徒会室なのよ!? そ、それを……アンタ達はぁっ!」

「落ち着け。一旦落ち着け桜野くりむ。苦しいし、顔が近い。キスでもする気か生徒会長」

「ふざけてないで真面目に聞けっ!」

「いやいや、でもそろそろ放してあげなさいよアカちゃん。蓮の顔が、青を通り越して紫になっちゃっているから」

「変態姉弟に向ける耳は無い!」

『それはいろいろとショックだ!』

 

 俺も姉さんも自分達の性癖が多少ひん曲がっていることは理解しているが、こうやってド直球に言われると傷ついてしまう。人間、目を逸らしたくなる残酷な事実もあるんだよ。分かるだろ? 世間一般には顔向けできないような、そんな特殊な趣味が人には一つや二つある。……だから、そっとしておいてくれると嬉しいんだよ桜野!

 

「そっとして欲しい割には蓮さんも知弦さんもオープンだよな」

「え? いや、これでもセーブしているつもりなのだけれど」

「セーブしても滲み出るって……お二方、中身はどれだけダークなんですか。さすがの俺もドン引きですよ」

「四六時中性欲丸出しな童貞不能野郎には言われたくないな」

「男子高校生にその罵倒は禁句だぁああああああああああああああ!!」

 

 号泣しながら桜野の放した襟を再び掴んでくる童貞(杉崎)。気持ち悪い。美少女の桜野なら胸倉掴んでくるのも大歓迎なのだが、なんでこんなむさ苦しい野郎なんかに詰め寄られねばならんのだ。俺はMだが、あくまで美少女に責められるのが大好きなだけの純粋なMなのである。性別関係なしな、見境のない変態とは違う。俺は俺なりの信念を持ってマゾを貫いているんだ!

 

「……お姉ちゃん、なんか紅葉弟先輩がすっごく怖いよぅ」

「真冬ちゃん、そんなリアルに怯えられるとガチで傷つくからやめてくれないかな?」

「大丈夫だ真冬。こんな社会のゴミは今からあたしが焼却してやるからな!」

「誰がゴミだ! お前もう少し年上に払う敬意を覚えろよ!」

「アンタのどこに敬う部分があるってのよ。変態がよく言うわね」

 

 何気に酷い真冬ちゃんと相変わらず暴力的な深夏のタッグ攻撃に思わず冷や汗が吹き出てくる。年頃の男子にとって、女子に本気で引かれるというのは致命傷にもなり得る事態なのだ。事実、今俺は心が折れかかっている。その後に向けられた桜野の毒舌のせいで、さらに傷は深くなっているが。

 なんかいろいろとアウェー感がハンパない空気になってきたため、逃げ道を確保すべく話題を桜野の名言へとシフト。

 

「そ、そうそう。杉崎や姉さん達は、『初めての時は良かった』なんていう思い出話とかないか?」

「なんだよやぶからぼうに。宗教団体の誘いか?」

「違ぇよ! お前何処まで俺の事蔑んで見てんだよ!」

「鍵の数十倍は変態だと思って毎日接しているが?」

「……さて、話を戻そう」

「逃げましたね」

 

 う、五月蠅い! イケメンは黙ってろよ杉崎! 俺はこう見えても内心ピュアで打たれ弱いんだ!

 マゾヒストは精神面をやられると、常人の三倍の速度で傷つくのだ。Mな奴がどんな打撃に対しても鉄壁の防御を持っているとは、思うなよ!

 俺の決死の話題変換にメンバー全員が冷たい視線を送っているが、おそらくこの中で最も優しいハートの持ち主である真冬ちゃんがおどおどしながらも意見を述べ始めてくれた。

 

「え、えと……真冬はお化粧。コスメですかね」

「化粧? へぇ、真冬ちゃんでもそんなことに興味を持つときがあったんだね」

「……会長さん、真冬のことを馬鹿にしていますよね?」

「真冬ちゃん、続けて」

 

 逃げやがった。自分の体裁が悪くなってきた瞬間、丸投げして降参しやがった。なんて野郎だ桜野くりむ。自分が責められているからって、逃げるのは最低な行為じゃないのか!

 

「ツッコミ待ちだろうが、あたしは全力スルーの方向でいかせてもらうからな」

「せめて殴ってください深夏さん」

 

 ボケが流されるのは精神的にも社会的も辛い。

 

「小さい頃、お母さんがお化粧しているのを見て『いいなー』って思って。誰もいない時にこっそりやってましたね。今はなんか面倒くさくてやってないですけど。あの頃は鏡見る度にちょっとはしゃいでいた記憶があります」

「化粧ねぇ。でも、真冬ちゃんは今も充分綺麗だから逆にいらないでしょ。真冬ちゃん本来の魅力を消してしまうような化粧は、無い方がいい! ですよね蓮さん!」

「同感だな。まぁ多少は化粧っ気もあった方がいいと思うけど……でもやっぱり、真冬ちゃんは真冬ちゃんなりの魅力があるんだから、余計なことはしない方がいいと思うぞ」

「……いやいや、なに男二人揃って真冬口説いてんだよ。やめろよ汚らわしい」

「嫉妬か? 相変わらず可愛いな深夏よ」

「五月蠅ぇよ歩く猥褻物陳列罪。真冬に近づくな妊娠するから」

「じゃあ深夏も妊娠させてやろうか? 大丈夫。ハーレム王たる俺の遺伝子を引き継げば将来安泰だから!」

「ニートの未来しか浮かばんわ!」

 

 真冬ちゃんを庇いつつ言い放つ深夏。まぁ確かに、杉崎の遺伝子なんざ継いだ日には人生終わる。こんな四六時中盛っているような変態は、早いとこ始末しておくべきではないだろうか。

 

「聞こえてますよ、蓮さん」

「おっと。謝らないからな、杉崎」

「謝れよ! アンタに1ミリでも悪かったって心があるなら、即効謝れよ!」

「だが断る」

「何故!?」

 

 相変わらずのオーバーリアクションが煩わしい。あぁ、早く姉さんに調教されてしまえばいいのに。

 

「……それはちょっと惹かれますね」

「あら、好感触ねキー君。でも、いいの? 私の調教は少しばかり過激だけど」

「美人のお姉さんにやってもらえるなら、どんなものでも大歓迎ですよ!」

「そう。……三日三晩飲まず食わずのまま暗室に放置されて精神を悉く崩壊させた後、全身を拘束して少しづつ蝋燭を垂らし火傷を増やす。そして、最後には死ぬ一歩手前までの激痛を伴うことになるのだけれど……それでも、キー君は私の調教を受けたいのかしら?」

「すみませんでした」

 

 目にも止まらぬ速さで頭を擦り付ける杉崎。……うん、今のは仕方ないよな。ちょっとグロすぎた。慣れている俺ならともかく、初心者もいいところな生徒会メンバーには刺激が強すぎたと思う。他の女子三人なんて、お互いに抱き合ったままガタガタと震えているし。ごめんみんな。ちょっとやりすぎた。

 生徒会室の惨状を見て、姉さんは憂鬱そうに溜息をつくと、わざとらしくポツリとこんなことを呟いた。

 

「……個別指導、始めようかしら」

『!?』

「姉さんタイム。そろそろ死人が出る」

 

 結局、その後は姉さんの恐怖により精神の崩壊した四人が戦闘不能となったので、ドクターストップということで会議は終了した。

 

 




 駄弁る生徒会、これにて終了です。……え? 終わり方が中途半端? ははは、何を言いますか。気のせいですよ。
 次回は『放送する生徒会』。ラジオだけど頑張ります。
 それでは、次回もお楽しみに♪ 
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