生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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 気が付いたら結婚していた。


暴露する生徒会(上)

 

「豊かな教養こそが、健やかな心を育むのよ!」

 

 超絶ロリ女子高生桜野くりむはいつものように絶壁の如き胸部をえへんと張ると、パクリ名言を堂々と言い放っていた。

 第一声からすでに面倒くさい雰囲気がプンプンと出ている。だが、今回この場にいるのは俺達だけではない。我らが生徒会顧問、真儀瑠先生が本日は出席してくださっているのだ。このロリっ子がどんな無茶を言い出そうが、彼女なら一言の間に説き伏せて――

 

「あ、すまん。今日は後輩達と飲みに行く約束があるからもう帰るわ」

 

『仮にも聖職者とは思えない発言!』

 

 止める間もなく生徒会室から出て行ってしまった。そんなすぐ帰るならそもそもここに顔出す必要ないだろ、とは思わないでもないが……彼女が何を考えているのか誰も分からないので放置するしかない。

 肝心の砦がいなくなってしまったことで、桜野に向き合わないといけなくなってしまった。全員が気怠そうな雰囲気を醸す状況で口火を切れるのはどうやら俺しかいなさそうだ。……こういう時にツッコミ側へ回る決意をした杉崎は後手だし、仕方ないか。

 桜野が自信満々に広げている企画書を手に取ると、軽く目に通す。

 

「小冊子『生徒会雑学』作成って……アイドルグループみたいなことやるんだな」

「そりゃそうよ! 人気投票で集まった集団なんだもの、アイドルみたいなものでしょ!」

「それに関しては全面的に同意しかない」

 

 俺と杉崎は優良枠なのでその限りではないけども。

 だが、確かに桜野の言い分にも一理ある。学園内の人気投票で選ばれた女子生徒たちはまさに学園のアイドルだ。見えないところでは非公認ファンクラブも存在するんだとか。

 そんな彼らとしては推しの秘密や雑学が手に入るのは願ったり叶ったりなのだろう。もしかしたらクラスメイトか目安箱あたりからそんな意見が来ていたのかもしれない。

 

「意外と生徒のことも考えているんだな、桜野」

「真冬も驚きました。世間のアイドル事務所にも見習ってほしいくらいのサービス精神です」

 

 俺の呟きに真冬ちゃんが神妙に頷いている。普段の彼女の行動からは想像ができないくらい殊勝だ。普段からこれくらい献身的なら俺達としても言うことはないんだが……。

 二人して彼女の成長に保護者よろしく涙ちょちょぎれる。……だが、現実はそう美談ばかりではないようだ。

 先ほどから新聞を眺めていた姉さんが番組欄のとある項目に指を突きつけ、呆れた表情で桜野に声をかける。

 

「ねぇアカちゃん。この『雑学王決定戦』って面白かった?」

「うん! 家族みんなで熱中しちゃった! やっぱ雑学は人生を豊かにするよね~」

「……そうね」

『あー』

 

 姉さんの内心を知ってか知らずか、子供のように快活な笑顔ではしゃぐ桜野。それを見てすべてを察する俺達生徒会役員たち。結局テレビの受け売りかい! いや、そうかなとは思っていたけども! 俺と真冬ちゃんの感動を返してくれ!

 

「でも会長、この生徒会ってそんな深いことありましたっけ」

「うぐ」

「そうだぜ会長さん。だいたいもう『生徒会の一存』シリーズが出ているんだし、それで十分じゃねぇのか?」

「うるさいうるさーい! もうやるって決めたんだからやるの! グチグチ言わない!」

『ど、独裁政治だ……』

 

 副会長コンビの反抗もむなしく却下される。こうなった時の桜野が絶対に引かないのは皆が知るところだ。これ以上の反論は無意味だと本人たちも分かっているだろう。……でもできれば面倒くさいからやりたくない!

 全員で溜息をつきつつも、桜野の企画を進めることに。普通に考えるならばそれぞれが自分の雑学を言い合う形式が無難なのだろうが、ここで何を考えたのか杉崎が突然手を挙げた。

 

「会長、俺から提案があるんですが」

「お、いいね杉崎積極的」

「雑学を自分たちで言うのもなんか変な話だと思うんですよね。ヤラセ感出るし」

「むむ、確かにそれは一理あるわね。本人が言うより周りの人から言ってもらった方が信憑性はあるかも」

 

 杉崎の主張に桜野だけでなく俺達も同意する。ホラ雑学ならまだしも、生徒に配布するような内容であれば真実味を帯びた雑学の方が喜ばしいだろう。あくまで生徒会公式配布という名目上、あまりにテキトーなものを配るのは立場的にもよろしくない。

 

「でも杉崎。今から全員分の雑学を募ったら時間かからない?」

「なので、まずは対象を一人に絞るんです。そうすれば最低でも六回は雑学本を出せるので、生徒側的にも新鮮味が出るじゃないですか」

「なるほど……! シリーズ化ってことね!」

「いや、これ何回もやりたくないのだけれど」

 

 姉さんのツッコミは当然のようにスルーされる。

 

「じゃあまずは一人目を決めないとね。私は生徒会のリーダーだから大トリを飾るとして、一番下っ端となると……」

『…………』

「……え、もしかして俺?」

 

 集められた視線に思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。いや、ゾクゾクはするけども。

 言われてみれば一番の下っ端は俺かもしれない。人気投票組は置いといて、杉崎は副会長だし。そうなると書記である俺が開幕スタートなのは分からないではない。

 でも、そんないうほどインパクトのある雑学が出てくるとは思えないが……。

 

「いや、蓮さんで出なかったらだいたいの男子は無理だろ」

「何を言う。俺は鞄を開くと麻縄が二本出てくるような普通の男子生徒なのに」

「普通の男子は鞄の中から拘束道具が出てきたりしねーんだよ! 知弦さんじゃあるまいし!」

「深夏? 今のはちょっと聞き捨てならないんだけれど」

「失礼な! 俺だってさすがに姉さんほど酷くはない!」

「これ怒っていいわよね? さすがの私も、怒っていいわよねぇ!?」

「どうしたんだよ知弦さん。更年期か?」

「ピッチピチの17歳よ!」

「あんまり怒ると身体に毒だよ。今真面目な話しているから後でね」

「っ――――! っ――――!」

「は、はわわ……あまりの怒りに紅葉先輩が見たことないほど般若顔ですぅ」

「ち、知弦さんステイ! ほら、あっちで落ち着きましょうね~!」

 

 後輩二人が姉さんを離れたところまで連れていき何やら落ち着かせていた。放課後だし疲れていたのかもしれない。姉さん無理しがちだからなぁ。

 杉崎と真冬ちゃんの頭を撫でられている実姉を尻目に、話を続ける。

 

「まぁ別に俺からスタートするのはいいんだが、どうやって集めるんだ? 一人に絞っても今からだと残っている生徒もそんなに多くないと思うけど」

「そりゃもう、蓮さんのことを誰よりも知っている人たちに聞くのが一番早いだろ」

「……なんか凄い嫌な予感がするんだが。あとなんで急にそんなノリ気なんだ深夏は」

「あたしに被害が及ばないイベントだからな! それならノリ得だろ!」

「こいつ腐っても生徒会役員だ!」

 

 びっくりするくらい輝かしいスマイルを浮かべられて指摘する気も起きない。いやまぁ、俺も逆の立場なら同じことを言っていただろうし、文句をつけるつもりはないんだが。チラと視線を飛ばすと、他の三人もだいたい似たような表情を浮かべていた。どうやらもう逃げられないらしい。

 でも、人気投票組以外の雑学なんて需要あるのだろうか。いや、それを言ってしまうと四人分しか出せなくなるので本末転倒感はあるのだけれども。

 至極もっともな疑問を浮かべたと思っているが、発案者の桜野的にはそうでもないらしい。

 

「蓮の雑学は需要あるよ! 少なくとも私は欲しい!」

「そんな真っ直ぐな瞳向けられるとボケるにボケれねぇ」

「あとリリシアも欲しいって言っていたし、知弦もなんだかんだ欲しいだろうし、こないだ会った宮代さんって人も欲しがっていたし、真冬ちゃんも資料に欲しいみたいなこと前に言っていた気がする!」

「若干数名は確実に不健全な使い方するじゃねぇか!」

「し、失礼なこと言わないでください! 真冬のはあくまで創作に使うだけです!」

「何の?

「…………び、BL」

「不健全じゃん!」

 

 マジで一ミリも擁護できる部分が無くて逆に笑う。だいたい目を逸らしながら言っている時点で弁解の余地はない。

 あと、奏のバカはいつの間に桜野に接触していたんだ。藤堂繋がりか姉さん繋がりか分からないが、俺のトラウマがあまりにも自由に闊歩しすぎだと思う。もう少し丁寧に扱ってくれても罰は当たらないと思うんだけど!

 

「まぁいいじゃない蓮。恥ずかしい雑学をたくさん言われてもご褒美みたいなもんでしょ?」

「時と場合によるんだよね! あと確実に俺がボケられないラインのメンバーが集められそうな気がしているんだわ!」

「何を言うの。もう声はかけてあるわよ」

「行動が早すぎる。え、誰に!?」

「奏と藤堂さん」

「考えうる限り最悪の二人だった!」

「そんでもって雑学出す側には私も回るわね。いやぁ、貯めに貯めた貴方の過去をここで全ツッパするのめちゃくちゃ楽しみだわぁ」

「……姉さん、もしかしてさっきのこと怒ってる?」

「え? 全ッ然怒ってないわよォ……?(ニコォ)」

「絶対怒ってる!」

 

 見るものすべてを魅了する女神のような微笑みで騙されそうになるが、額に青筋浮かべているのを俺は見逃さない。こういう表情を浮かべているときの姉さんはマジでブチギレている百パーセントだ。もしかしたら俺は明日を拝めないかもしれない。

 もう逃げられないだろうが、せめて生贄を増やしたい。先ほどから静かな後輩二人に向けて、全力のレスキューを求める。

 

「真冬ちゃん! 杉崎! せっかくだから二人も一緒に――」

「あ、真冬ちゃん。椅子は横に四脚並べといてね」

「分かりました。せっかくなら美味しいお茶も用意しますね」

「ノリノリすぎるだろ!」

 

 もう完全に招待する気満々だった。びっくりするくらいホスト側のメンタルだった。さっきまで桜野の提案に反対していた側とは思えないくらい裏切りの様子だった。

 ……どうやら本格的に腹をくくらないといけないらしい。

 盛大に肩を落としながらも、「むふー」と無い胸を張っている桜野に一言。

 

「せめて座る時には石抱責でお願いします」

「インタビューに江戸時代の拷問を要求する人はやっぱ普通におかしいんだよ!」

 

 




 次回もお楽しみに。
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