生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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 ツッコミに回る時の蓮のキャラ難しすぎる。


暴露する生徒会(下)

 

「チキチキ☆紅葉蓮の雑学をみんなから聞こう選手権~!」

『いぇーい!』

「これはちょっと待て茶」

 

 普段より数人多い合いの手にさすがの俺もタジタジだ。言い出しっぺの桜野は元より、いつの間にか入り込んでいる部外者二名が馴染んでいることに驚きを隠せない。というか約一名は完全に別の学校だろ!

 

「あらお言葉ねレン。昔はあんなに愛し合った仲だというのに」

『ッ!?』

「冗談を言う時と場合を考えてくれ! 一瞬で喉元にペンを突き立てられる俺の身にもなってみろ!」

「でも今の貴方はマゾヒストなんでしょう? それなら女の子たちに虐められるのは本望なんじゃないの?」

「否定しづらい攻め方しやがって」

「今の気持ちは?」

「悔しいけどゾクゾクする」

「紅葉弟先輩、めちゃくちゃキショいです」

「やめようね」

 

 真冬ちゃんの素直な感想が今だけは心に突き刺さる。それとは別に自分の性癖が騒いでいて心が二つあった。悔しい……でも悦んじゃう!

 俺と姉さんの地雷であるはずの奏がしれっと生徒会室に呼ばれている事実に正直ビビリ倒しているが、呼んだのが姉さん本人だというのだから完全に詰んでいる。あんだけ冷戦状態だったくせにいつの間に親友に戻っていたのか謎だ。

 奏は用意されたお茶を啜りながら、いつかの記憶からは数段性格が悪くなった笑みを浮かべている。

 

「アカちゃんに呼び出されたから何事かと思ったけれど、なんとまぁ滅茶苦茶面白い催しじゃない」

「さすがは私の親友。レンをイジメる時のテンションは知り合いの中でも随一ね」

「昔の罪悪感はあるから自重はするけどね。でも、アカちゃん公認ならいくらでもイケるわよ。過去話でいいならいくらでも出してあげるわ」

「俺の意思を少しでも反映していただけませんかねぇ!?」

 

 組んではいけない二人が手を結んでいる気がしてならない。あれ、これ生徒に配布する雑学集だったよな? ストッパー役いないけど大丈夫か?

 ラスボス二人は俺がハンドリングできないから諦めるとして、呼び出されたもう一人に目を向ける。

 

「……藤堂、お前言うほど俺の雑学とか詳しく無くね?」

「あら、私が誰だか忘れましたの? 新聞部部長のアンテナを舐めてはいけませんわよ」

「それ十中八九スキャンダルじゃねぇか」

 

 嫌な予感パート2。あれ、一応お前は俺のこと好きなんだよな? まさか敵には回らないよな!?

 何やらネタ帳と思われるものをペラペラ捲っているが、何が書いてあるか気になって仕方がない。これが普段の生徒会ならマゾヒストボケで乗り切れるのだが、今回は相手が悪すぎる。ボケ倒して誤魔化せる範疇を軽く超えてやしないだろうか。

 俺の不安を他所に、今回の言い出しっぺである桜野はいつもの席でふんぞり返っている。

 

「さて、集まったことだし始めようか! 司会は一番得意そうな副会長ズにお願いしようかな」

「一番楽なポジションに収まってんじゃないよ」

「それじゃあ司会は俺こと杉崎鍵と!」

「あたしこと椎名深夏でお送りするぜ!」

「他人事コンビの前向き感が今だけはムカつくぜ」

 

 二年B組はお祭り騒ぎが好きな奴らしか集まっていないようだ。

 ちなみに先ほど「選手権」と言っていたが、一番インパクトのある雑学を披露した人には景品が与えられる形式らしい。詳細は俺だけ教えられていないものの、現在椅子に縛られている状況を鑑みるに、その答えは二秒で導き出される。正直滅茶苦茶帰りたい。

 とはいえここまで来たら腹を括るしかない用だ。俺は身体を縛られたまま足で鞄を蹴飛ばすと、中から蠟燭を取り出して頭上にポタポタ垂らしつつ、

 

「じゃあ始めてくれ」

『始められるかー!』

 

 没収された。

 

「いや、全身縛られているのに平気で人外染みた動きするのはどうなってんだよ」

「深夏にだけは言われたくないけど……」

「あたしとは違うバケモノっぷりなんだよな」

 

 怪物を見るような表情でドン引きされているが、これに関しては「お前が言うな」でしかない気はする。

 先ほどより倍くらい念入りに縛られる俺を他所に、まずは奏がトップバッターを務めるらしく意気揚々と手をあげる。

 

「はいはーい。じゃあまずは私から小手調べってやつで」

「宮代さんは蓮と付き合い長いらしいし、スタートに相応しいかもね」

「ふふん。まぁ伊達に元カノじゃないからね

 

 桜野の期待を一身に受けてご満悦の奏。過去色々ありながらもなんだかんだこの中で一番の古株だ。俺の恥ずかしいことはだいたい知っているであろうこいつは、いったいどんな爆弾を放り込んでくるのか。正直不安しかない。

 予め用意されたフリップにつらつらと何かを書いていく。滅茶苦茶悪戯っぽい笑みを浮かべ、「それじゃあ――」と裏返したそこにはこう書かれていた。

 

「雑学! 紅葉蓮はこう見えて恋愛下手なのでファーストキスはまだ未経験!」

 

『ファーストキスはまだ未経験!?』

「奏テメェコラァァァァl!!」

 

 超ド級の暴露を初っ端から投げ込んでくる幼馴染に縄を引きちぎって思わず掴みかかる。ただの暴露じゃねぇ、ド級の暴露……ド暴露だ!

 杉崎と椎名姉妹が八つ裂きになった縄を信じられない顔で見つめているが、そんなことに構っている余裕はない。現在進行形で顏を真っ赤にしている桜野と藤堂も気にかけている暇はなかった。まずは目の前の悪魔を成敗しなければ。

 俺に胸倉を掴まれながらも、奏はまったく動じた様子はない。

 

「なによ蓮。事実でしょ」

「そうだね! 事実だね! でもそれはここでさらっと言っていい内容じゃないだろ!」

「内容じゃないようってコト?」

「うるっさ! じゃなくて、もっと日常的な雑学とかを言うところだろここは!」

「雑学! 紅葉蓮は最近金髪の女性キャラにハマりがち!」

「なんで知ってんだそれを!」

「アカちゃんからのタレコミだけど」

「姉さん!?」

「いや、たまたま雑談の中でね。悪気はなかったのよ」

「どう見てもあった顔じゃん! ペコちゃんみたいに舌出してるじゃん!」

 

 一番組んでほしくない二人が敵に回っている現状に涙が止まらない。少なくとも金髪キャラのことだけは今言ってほしくなかったわ! ファーストキスについても、藤堂たちがいる前で言わないでほしかったけども!

 

「あ、紅葉蓮……」

「と、藤堂? いや、さっきの奏の話は聞かなったことにしてくれると嬉しいんだけど」

 

 顔を真っ赤にして俺のシャツを引っ張ってくる藤堂。普段は気丈に振舞っている彼女がしおらしくしているのはギャップがあって胸が高鳴ってしまうけども、今だけは素直に受け止めきれない。

 こちらにチラチラと視線を飛ばしつつ、片手に隠したフリップをおそるおそる向けてくる。

 

「ざ、雑学……藤堂リリシアは金髪美少女」

「いや何の話!? 俺の雑学ではなく!?」

「ざ、雑学! 桃色髪のキャラクターにはハマってないの!?」

「だから何の話!? そもそも桜色のキャラクターそんなにいないだろ!」

「雑学。蓮は辛い物が大好きなのでデートするならそっち方面がオススメ」

「それは確かに雑学だけども! 藤堂と桜野はこんなことメモしない!」

「雑学。蓮はマゾヒストだから肉体的ダメージには無敵だけど、羞恥心的精神ダメージにはめちゃくちゃ弱い」

「その雑学だけ現在進行形で証明されているね!」

 

 雑学というより赤裸々暴露選手権だ。しかもあまり望ましくない方向性の。

 

「解説の深夏さん、どう思われますか」

「蓮さんが受け身なの珍しいから新鮮で見ていて楽しいわ」

「そこのバカ二人覚えておけよ」

 

 先輩に対して敬意のけの字も持っていない副会長ズへは後程制裁を加えるとして。

 先ほどの勢いで調子づいたのか、四名はそれぞれ凄い速度でフリップにペンを走らせていく。

 

「雑学。蓮はホラー映画を見ると未だに一人で夜トイレに行けない」

「高校三年生の威厳をいきなりぶち壊しにくるのやめよう姉さん!」

「雑学。蓮は手を繋ぐ時に照れすぎて『世間では手を繋ぐのがトレンドらしいよ』とか訳の分からないことを言い出したことがある」

「やめろ! 本気で恥ずかしい暴露じゃねぇか!」

「ざ、雑学! 蓮の好きなお菓子は暴君ハバネ〇!」

「ここにきて雑学らしいのきたけど逆に浮いているぞ桜野!」

「雑学! 紅葉蓮は普段は気怠そうにしているけれど、寝顔はめちゃくちゃ可愛い!」

「藤堂だけ方向性がおかしいんだよな! もっと新聞部らしいスキャンダラスな内容にすべきじゃねぇの!」

「いや、紅葉弟先輩がそれを言いますか」

「そうだけども!」

 

 真冬ちゃんの冷静なツッコミが突き刺さる。でもあそこはあぁ言わないと嘘じゃん!

 各々が雑学を上げ連ねているが、内容があまりにも聞くに堪えない。このままでは俺の羞恥心が悲鳴を上げてしまう。暴力にはいくらでも付き合えるが、これ以上晒し者になるのはごめんだ。

 選手権と言っている割に勝負がつく様子もないし、このまま終わりの見えない罰ゲームに付き合わされ続けるのも避けたい。

 この中で一番仲間に引き込みやすいのは……桜野か。

 参加者たちは雑学を上げ連ねることに熱中しているため、一人呼び寄せても気づかなさそうだ。彼女の肩を叩き、輪から離れさせる。

 

「桜野、カモン」

「なによ蓮。今ちょうど百個目の雑学が出るところだったのに」

「もうそこまでいくと半分はガセだろ。じゃなくて、これ以上は俺のメンタルがもたないからいい感じに終わらせてくれないか?」

「えー?」

「頼む! このアホなイベントを終わらせてくれるなら何でも一つ言うこと聞くから!」

 

 手を合わせて頼み込む。正直桜野の我儘の体でもなければこの場が治まるとは思えない。奏と姉さんは悪ノリしまくっているし、藤堂は張り合って引く様子もないし。

 桜野は納得いかないとばかりにしかめっ面を浮かべている。……が、少し考える素振りを見せると、思いついたように耳打ちしてきた。

 

「分かったわよ。じゃあ今週末に私とデートね」

「え。いや、それはさすがに……」

「ふーん、嫌ならあと三時間は続けてもいいけど」

「さっ……!? わ、分かった分かった! なんでも連れて行くから!」

「よろしい」

 

 打って変わって満面の笑みを浮かべる桜野。完全にやらかした感が否めないが、こればかりは致し方がない。背に腹は代えられないってやつか。

 

「もう飽きちゃったからこの選手権中断! その代わりにこの後蓮の奢りでファミレス行くわよ!」

「お、俺のお小遣いィー!」

「せっかく面白くなってきたところだったのに」

「まぁもう時間も遅いしお開きにしましょうか。いいストレス発散にもなったしね」

「酷すぎるだろ」

「わ、私としては紅葉蓮の秘密がたくさん知れて有意義でしたけれども」

「頼むから忘れてくれよな」

 

 なんやかんや有耶無耶に収束しそうで何よりだ。その代わり、完全に避けられないイベントが発生してしまったが。

 そろそろ色んなことの決着をつける時が来ているのかもしれない。軽口を叩き合うクラスメイト二人を眺めながら、俺は人知れず溜息をつくのだった。

 

 




 四散編もあと少し。
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