生徒会の一存~もう一人の優良枠~   作:ふゆい

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 に、二か月ぶりでございます……申し訳ございませんでございます……。
 言い訳は致しません。ただ、次回こそは遅れぬよう精進する所存でございます!


恋する生徒会①

「恋、だけじゃ駄目なのよ! 愛に昇華してこそ、ホンモノの《恋愛》なの!」

 

 

 超絶ロリ女子高生桜野くりむはいつものように絶壁の如き胸部をえへんと張ると、パクリ名言を堂々と言い放っていた。

 今回はいつになくロマンチックな名言だなと思いながらも、そういえば桜野らしくはないことに気がついたので隣でゲームに没頭していた真冬ちゃんに声をかける。

 

「桜野が恋を語るなんて十年早いと思わないか?」

「真冬的には百年経っても早いと思います。あのお子様生徒会長はどこまで年とってもお子様でしょうし」

「だよなぁ。ガキだよなぁ」

「聞こえてるわよそこの変態二人!」

『誰が変態か!』

 

 あまりにも失礼な呼称を付けてきた桜野に二人して立ち上がる。何故か他のメンバー達が冷たい視線を送ってきていたが、俺達は気にしない。杉崎と姉さんに虫けらでも見るような目をされているが、そんなことは気にしない! というか、俺にとってはご褒美でしかない!

 

「もっと見ろ、お前達!」

「会長さんに文句言う流れじゃなかったのですか!?」

「はっ。す、すまん真冬ちゃん。俺、実はマゾヒストなんだ」

「これ以上ないくらい今更なカミングアウトが来ましたね!」

 

 なんだかとっても切実な感じで溜息をつく真冬ちゃん。最近この子も俺に対して何気に酷い態度なのが気になる。まぁいいけど。逆に嬉しいからいいけど。

 俺と真冬ちゃんに逆襲を終えた(?)桜野は本来の標的であったのだろう恋の化身杉崎の方を向き直ると、ハンパなくいやらしい笑顔を貼りつけてニマニマと攻撃を始める。

 

「杉崎。恋は愛に昇華してこそホンモノの恋愛なんだよ」

「そ、そうっすね。ホンモノってのは大切なことです」

「そうだよねー」

「う……は、はい……」

「ねー」

「……ぐぅっ!」

 

 悔しそうに拳を握り込み、血涙を流す杉崎。普段好き勝手に弄っている相手なだけあって、復讐に遭うとそれなりに悔しいのだろう。それが四六時中幼稚さマックスな桜野ともなれば尚の事だ。俺だったら縄で縛られて三角木馬に乗らなきゃ気が済まないくらい腹が立つ。ご褒美だとか、そういうわけでは決してない。

 久しぶりに被害者な杉崎に、悪戯っぽい笑みを浮かべた深夏が楽しそうに絡む。

 

「仕返しされてやんのー、だっせぇー」

「うるせー。あの人たまに正論ぶつけてくるから反論できないんだよ」

「その正論にも返せるような生き方をしていないからそういう目に遭うんじゃないのか?」

「少なくとも人生三回は踏み外しているような蓮さんにだけは言われたくないっす」

「そうか。そんなにゲイサイトに個人情報を流してほしいか。よし、実行」

「全力ですみませんでした――――って、メール来た!? なんか鳴り止まないんですけど蓮さんマジですか!? マジでやっちゃったんですか!?」

「悪気はあった。誰でもよくなかった。反省はしているはずがない」

「タチ悪ぃ!」

 

 許容メール数を余裕でブッチして受信し続ける電話にあたふたする杉崎を満足げに見ながら、俺は宿題に取り組んでいた姉さんへと話を振る。眼鏡をかけて問題を解いているその姿はまさに女王様。思わず跪きそうになったのはここだけの話だ。

 

「姉さん、桜野が恋について語りたいんだってさ」

「アカちゃんに恋していいのは全宇宙で私だけよ」

「どんな規模よ知弦! ていうか、私に恋するのなんて自由じゃない!」

「はぁ? 何言っているのかまったく分からないわ。というか、理解したくもないわね」

「理不尽!」

 

 最近百合化が著しい姉さんの桜野を見る目が非常に怖い。部屋に飾ってある桜野の写真が日に日に増えていることもあって、ちょっとずつ距離を置こうか悩んでいるのは致し方ないことだろう。いくらマゾでも、百合だけはちょっと勘弁してください。

 姉さんにまさかの「私の物」宣言されて若干引き気味だった桜野は、ここぞとばかりにホワイトボードに議題を書いて空気の流れを変えようと試みた。キュッキュと相変わらず丸っこい子供みたいな字で書かれたのは、

 

「『校内の風紀の乱れ』について、ですか……俺的にはもうちょっと性的な乱れについて議論し合いたいところですね」

「後で俺がじっくり夜まで議論してやるから今は黙ってろ元凶」

「凄い言われ様だ!」

「紅葉弟先輩! 二人で語るときには是非真冬も同席させてくださいです!」

「そしてBL脳がフルスロットル!」

 

 ノート片手に興奮する真冬ちゃんは放っておくとして。

 杉崎は馬鹿正直に反応していたが、俺、姉さん、深夏の三人は議題を見た瞬間それぞれ首を捻っていた。あまり問題にするような内容ではないと思えたのだ。

 そもそもここ碧陽学園はそこまで風紀の乱れが目立つような学校ではない。生徒の自主性を最優先としているため、生徒それぞれにそれなりの自覚とモラルが備わっているからだ。そのため、多少の微笑ましい事件はあるとしても、生徒会でわざわざ議題として取り上げるような大事件などは滅多に起こらない。

 それなのになぜ彼女は今回このような議題を提示したのか疑問に思いながらも次の言葉を待つ。

 桜野は徐々に顔を赤くしていくと、恥ずかしそうに口を尖らせる。

 

「最近碧陽の風紀が乱れてきているわ! 特に……その……せ、性が!」

「性が乱れてるってなんだよ……」

「副会長とか書記のせいかもしれないけど、カップル達のデレデレ感がエキサイトしているように感じるの!」

「呼ばれてるぞ、副会長」

「だってさ、書記」

『いや、どう考えてもお前達(貴方達)だろう(でしょう)』

 

 姉さんと深夏によるダブルツッコミによって逃げ場を失ってしまう。男同士で目を合わせて肩を落としていると、右側の変態少女が妄想を爆発させてしまってまた気持ちが荒んだ。生徒会から真っ先に追放すべきなのは杉崎や俺ではなく誰よりも真冬ちゃんなのではないかと真剣に思う。

 

「校舎内で手を繋いだりとか、腕を組んだりとか……不謹慎よ!」

「それくらいそんなに目くじら立てることかね……」

「許されざる行為なの! 学び舎たる校舎で、そんな不埒な行いは絶対に許さない!」

「どちらかというと俺の日頃の行動の方が不埒なような気がするんだが……」

『自分で言うなら直せよ』

 

 全員で言ってくるのは反則だと思う。

 しかし今回の議題、俺達と桜野の間で認識の誤差が生じているようだ。脳内年齢の違いなのか、純粋さの差なのか、俺達が言う《性》と桜野の言う《性》では限界のレベルが著しく食い違っているように感じる。

 同じ考えに至っているであろう深夏は「はーい」と手をあげると、人によっては衝撃的なことを口走った。

 

「会長さんは知らないかもだけど、最近の高校生じゃそれ以上の事なんてけっこう当り前な感じになってきてるぜ? 放課後の校舎なんかを徘徊してみろよ。キスやハグはおろか、それ以上のいわゆる性行に及んでいる生徒達だってうじゃうじゃと……」

『なにぃっ!?』

「ひゃうぅっ! そそそ、そんなのダメー!」

 

 桜野は顔を真っ赤にして大きくバツを作っていたが、俺と杉崎はそんな場合ではなかった。男子高校生として聞き逃せないことを深夏は言ったのだ。これに反応せずして、なにが童貞高校生かっ!

 俺達はそれぞれ顔を見合わせると、勢いよく立ち上がって高らかに叫ぶ!

 

『その話、詳しく!』

「黙りなさい! そして座りなさいそこの馬鹿二人! ウチの風紀が乱れてきているのは貴方達のせいだって言ったばかりでしょっ!」

「馬鹿なっ! 俺はこんなにも潔白なのに!」

「マゾが今更なにを言ってるのよ!」

「会長俺は!? 俺はピュアでクリーンな高校生ですよね!?」

「アンタが一番ドピンクでしょうがこのおバカ!」

「なんてこったい!」

 

 衝撃の事実だった。碧陽学園真面目で誠実ランキング第一位の自覚がある俺としては、痛恨の極みだった。別に男根とか切り取られていないけど、痛恨の一撃だった。

 

「くそぅ、こんな腐った世の中俺が粛清してやる……!」

「蓮、どうせ無理だから諦めなさいな」

「でも姉さん! こんなのってないよ! 俺だって潔白さを証明したいよ!」

「大丈夫。貴方は私から見てもこれ以上ないほど骨の髄から腐っているから♪」

「身内から追い打ちを食らうのは予想外だったぜ!」

 

 唯一の味方だと思っていた姉さんに裏切られ、俺の精神はもうズタボロだ。遊〇王的に言うなら〇賀のライフはもうゼロだ。それでもモンスターカードを引き続ける姉さんはやっぱりサドだと切に思う。

 そして深夏から衝撃的なカミングアウトを受けた桜野は、やっぱり顔を赤くしたまま想像通りの台詞を叫びだす。

 

「こ、今後そんな破廉恥な行為に及ぶような馬鹿な生徒達がいたら、問答無用で退学よ! 退学! 学校をどういう場だと思ってるの!?」

「そりゃあもちろんフラグを建てる場――――」

「杉崎は黙ってて! マヤ文明の予言が当たるまで!」

「地味に長い!」

「じゃあ俺の意見は――――」

「蓮は地球が滅ぶまで発言禁止!」

「せめて何かボケてから発言を遮ってくれよ!」

 

 最近口を開く前に存在を否定されているような気がして滅入ってしまう。なんだよぅ、クラスじゃ藤堂のヤツに弄られるから生徒会じゃ桜野を虐めようとしているだけなのにぃ……。

 

「いや、悲劇のヒロインぶって落ち込んでますけど、紅葉弟先輩の考えてることってぶっちゃけ悪役ですからね?」

「キミは意外とズバズバモノを言う子だね真冬ちゃん。当初の病弱キャラはどこに置き忘れてきたんだい?」

「真冬は確かに病弱キャラですが、最近では毒舌キャラも視野に入れているのです!」

「そうか。つまり真冬ちゃんは藤堂ばりのサブヒロインを目指しているというわけか。いつ出番がなくなるのか気が気でないけど、キミが自分で望むのなら止めはしないよ。じゃあね」

「なんか壮絶な勘違いをされている気がします!」

 

 主要メンバー脱却を決意した哀れな一年生が何やら吠えていたようだが、俺はあえてその発言を全てスルーしておく。こういう面倒くさい腐女子はマトモに相手するとロクなことにならない。後は杉崎辺りにフォローを任せて、俺はみんなに罵倒してもらうとしよう。

 だが、未だに勢いの衰えない桜野は独裁者のように演説を続けている。

 

「見つけたら退学! 噂を聞いても退学! 学校は学ぶ場であって、愛を確かめる場ではないのよ!」

「……アカちゃんの言い分も分かるけど、少し落ち着きなさいな」

 

 桜野が一人で暴走する中、やはりというかなんというか、ストッパー役を買って出たのは我らが知弦姉さんだった。

 

 

 




 次回もお楽しみに♪
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