ようやく更新できましたふゆいです。ギャグセンスが衰えてるとか、そういうスランプに悩まされながらもなんとか更新です。お待たせしました。
べ、別に生徒会の祝日でテンションが上がったとか、そういうんじゃないんだからねっ!
冒険する生徒会(上)
「怖くても、一歩踏み出してみる勇気! それこそが人類を繁栄させたのよ!」
超絶ロリ女子高生桜野くりむはいつものように絶壁の如き胸部をえへんと張ると、パクリ名言を堂々と言い放っていた。
「怖くても」なんてちびっこらしい発言に俺と姉さんの頬がだらしなく緩みかけるが、そこはなんとか理性を総動員して表情を抑える。こんなところで変に桜野をからかって、クリムミン摂取を中止されるわけにはいかない。SとMという反対方向にメーター振り切った精神を持っている俺達紅葉姉弟は、桜野の純粋なピュアハートを愛でることによって日々の糧を得ているのだ。……意味が被っている? そんな些細なことはどうでもいいんだよ。いいから、そんなこと言う暇があるのならとりあえず俺を殴れ。
さてさて、冗談はさておき、真面目に会議に取り組むとしよう。見れば、俺以外のメンバーは結構冷めた視線を桜野に向けている。「どうせまた面倒くさいことを提案するんだろ」的感情がひしひしと伝わってくる辺り、彼らも疲弊しているのだろう。第三十二代生徒会が発足してまだ一か月ほどだが、桜野の無茶振りにそろそろ限界を迎えてきたらしい。後は、日本国民共通の五月病が影響していると思う。信憑性は無い。だが、姉さんが言っていたから真実だ。異論は認めない。
「最近は生徒会活動もマンネリ化してきたと思うの。ここいらでそろそろ、新しい活動内容をガツンとぶち込まないとね!」
副会長以下五人中四人が活動意欲を失っている中でもまったく気が付くことなく考えを言える桜野は正直凄いと思う。
しかし、桜野は気付いていない。今の発言によって生徒会室の「やるきねぇ度」が三割上昇したことに、彼女は全く気付いていない。これ以上ない程、コンパチブルない程気付いてはいなかった。目の前で「ぐでー」と声に出しながら机に臥せっている薄幸系美少女にちらと視線を向けると、思わず溜息が漏れた。とりあえず耳元に息を吹きかけると、俺は桜野がホワイトボードにペンを走らせる姿を微笑ましく見やる。
「ひゃぁんっ! いいい、いきなり何をするのですか紅葉弟先輩!」
「んあ? いや、可愛らしい耳があったから、ちょっと出来心で」
「先輩は出来心で人の耳に息を吹きかけるような変態だったのですか!? 真冬、ちょっとガッカリです! 先輩に抱き始めていた尊敬の念を返してください!」
「そんな元からないようなもんを返してとか言われても……俺に尊敬なんて抱くから駄目なんだって」
「堂々と自虐ネタを挟まれると真冬としては反応がしづらいのですが!」
「あ、自虐キャラが被っちゃうっていう心配? そうだな。Mキャラと自虐系って、結構共通点多いよね」
「真冬を先輩みたいな変態と一緒にしないでください!」
「ちょっと! うるさいから黙ってよそこのサブキャラ達!」
『誰がサブキャラか!』
ぎゃーすか騒いでいた俺達に浴びせられる桜野の辛辣な評価。最近真冬ちゃんと一纏めで怒られている気がするのだが、それは俺の気のせいであろうか。こんなゲームしか能のない引き籠り系少女と一緒にされるなんて、俺のマゾヒストとしての矜持に関わるぜ!
(先輩にだけは絶対言われたくないです!)
顔を真っ赤にして小声で怒鳴るという離れ技をやってのけた病弱少女は、この際スルーしておく。これ以上彼女と争っても得られるのは『虚脱感』だけであり、決してプラスの物は獲得できない。彼女と知り合ってからの一か月間で俺は学んだ。真冬ちゃんとは適度に接しよう!
俺達を怒鳴りつけて満足したのか、桜野は非常に明るい笑顔を浮かべるとホワイトボードを盛大に叩いた。
「生徒会の新しい活動を模索しましょう!」
「じゃあ早速業者に頼んで三角木馬と水車を――――」
「深夏!」
「任せろ会長さん。変態は拳で黙らせるに限る!」
「ありがとうございます!」
最初から一応予測済みだったのか、俺の提案を遮るように叫ぶ桜野である。彼女からの指示を受けて立ち上がった狂戦士は目にも止まらぬスピードで俺の鳩尾を貫いた。先程までの無気力っぷりが嘘のような機動力である。こいつはやはり野放しにしていては人類の為にならない気がする。
腹部を中心に鈍痛が全身へと広がっていくが、俺はこの十七年間で培ってきたスキル【
「それ以上余計なことを言ったら除名するわよ、蓮」
「申し訳ございません会長様。私は貴方の忠実な下僕です」
「よろしい」
音速で桜野の前に跪くと、手を取って頭を垂れる。手を握った瞬間に桜野が素で頬を赤らめていたが、それにはあえて触れずに俺は彼女への忠誠を誓った。除名だけは、マジで勘弁してください。
一通りの騒動を終え、席に戻る。どうやら今の騒ぎで全員がようやく会議に臨む決心をしたらしい。放っておいては巻き添えになることを察知したのだろう。腐っても生徒会役員である、その危機察知能力は他の追随を許さない。……まったく嬉しくない能力だけどなっ!
全員が気合を入れたところで、杉崎が今回の会議内容を軽く纏め始める。
「それで……生徒会の新しい活動内容を考えるってことっすよね?」
「そう! 我らが第三十二代生徒会だけの、オンリーワンなアクティビティを始めるの!」
「いや、アクティビティはまた意味が違うと思いますが」
やけに楽しそうな響きがする活動だ。同時に、なんて地雷臭がする活動なんだ。
「ちなみに、会長はどんな活動をやりたいと思っているんですか?」
「私? 私はねぇ……やっぱり世界征服――」
「さて深夏。次はお前の番だ」
「最後まで聞いてよ杉崎! 最近貴方私に対して冷たすぎない!?」
「そんな馬鹿な。俺はいつでもどこでも愛する会長の言葉に耳を傾ける努力を全力で行っているつもりです」
「そ、そう? でもその割には、私の発言を片っ端から遮っているように思うんだけど……」
「何を仰いますか会長。不詳私杉崎鍵は、性欲とエロスと欲望で構成されているこれ以上ない程の純粋生物なんですよ! そんな俺が、会長の妨害をするはずなんてありません!」
「まったく信じられないよ! というか、逆にもっと信じられなくなったよ! ある意味生物史上最大の汚点だよ杉崎は!」
「ははは。会長は冗談が上手だなぁ」
「これが冗談に聞こえるのなら耳鼻科に行くことをお勧めするね!」
へらへらと笑顔で桜野を弄り続ける杉崎は心底幸せそうだ。息切れ寸前で肩を上下させているちびっこ会長に萌えを感じているのかもしれない。まぁ桜野自身も杉崎との会話を楽しんでいる節があるから、迷惑ではないのだろう。今の時間で俺達も思考を整理できるし、メリットは多分にある。……その度に姉さんから異様な密度の嫉妬オーラが放出されるのだが、そちらに関しては不干渉ということで。
「最近知弦さんに対しての対応が巧みになってきたよな、蓮さん」
「まぁ地球一のシスコンを自称する俺でも、あの人のバイセクシャルっぷりに毎度毎度付き合うわけにはいかないからなぁ。縛られて鞭打たれるくらいが許容範囲だよ」
「いや、それは一般的に言うと結構な範囲じゃねぇか? あんまり常識的とは言えない性癖なんだが……」
「何を言う。俺と姉さんはこれ以上ないくらいWIN-WINな関係じゃないか」
「そんな相互利益な関係があってたまるか!」
「またまたぁ。深夏だってシスコンでレズなんだから、毎晩真冬ちゃんとムフフなことしてんだろぉ?」
「ぶっ! あ、アンタはまだラジオネタを引っ張ってくるのか!? ていうか! 蓮さんの書いた台本のせいでクラスメイトに盛大な誤解されてんだからな! 宇宙姉弟とか、どうしてくれるんだよ!」
「なんだ、すっかり有名人じゃないか」
「一ミリたりとも望んでない方向だけどなっ!」
「それよりも急に巻き込まれた真冬の扱いに異論を唱えたいのですが!」
真冬ちゃんが何やら騒ぎ立てていたが、俺達の耳には届かない。
基本巻き込まれ体質な椎名姉妹が周囲に誤解されるのはいつものことだが、以前のラジオ回では相当の被害を被ったらしい。深夏に関しては女子からの告白数が五倍に膨れ上がったそうだ。大量のラブレターとプレゼントを抱えた深夏が教室に乗り込んできたときは、さすがの俺もマジでビビった。変態クラスと名高いE組生徒ですら軽く戦慄するほどの光景だったということを、ここに書き記しておこう。
深夏弄りを充分楽しんだので視線を桜野達に戻すと、何やら杉崎と姉さんが彼女を全力でからかっている場面だった。なんでも、「ブレインストーミング」が言えないとか知らないとかいう内容で弄っているらしい。高三らしくない奴だとは思っていたが、ブレインストーミングを知らないとは思わなかった。来年大学生なのに大丈夫なのかアイツは……。
「うぅ、ぶれ……ぶれすみ……」
「一年生の真冬ちゃんでも知っているのに、もしかしてアカちゃん知らないの?」
「し、知ってるもん! ぶれいんすとーむにゃむにゃくらい、知ってるもん!」
「言えてませんよ会長」
「あぁもぉ……うるさーい! いいからさっさと意見出して! じゃあまずは蓮から!」
「何故そこで急に俺……」
最近桜野から一番手に選ばれる頻度が高すぎるような気がする。や、別に緊張感とプレッシャーは心地良いから構わないんだけどさ、それにしても高頻度すぎるだろう。
まぁ愚痴っていても仕方がない。親友が困っているのなら助けるというのが友情と言うものだ。この場の空気を作り上げるべく、俺はゆっくりと立ち上がると、全員の視線を全身に浴びながら澄ました顔で盛大に言い放つ!
「碧陽学園のカリキュラムに、『調教学』を組み込もうぜ!」
『これ以上ないくらい蓮さん(蓮、紅葉弟先輩)らしく、かつとんでもない意見を放り込んできただと!?』
俺のあまりにも素晴らしい提案に姉さん以外のメンバーの顔が硬直していた。そういう系に免疫のない桜野は勿論の事、多少は知識のある椎名姉妹、そして知識だけは一丁前な童貞野郎杉崎までもが驚愕の表情を浮かべている。……姉さんだけは、全力で俺の側に立つ気満々だったが。
「なんだ皆。そんなに俺の発案が衝撃的だったか?」
「色んな意味でね! でも絶対にプラスの意味じゃないけどね!」
「何を言う桜野。人間ならば誰しも多少のSっ気とMっ気を持っているもんなんだぞ。だから、そいつを解放してやれば碧陽学園はもっと暮らしやすい学園になる!」
「アンタら姉弟だけでしょうがっ! これ以上この学園に女王様と奴隷を増やしてたまるか!」
「腐女子とレズビアン、ハーレム野郎に違法ロリの集まりに言われても説得力なんてない!」
「地味に反論しづらい核心を突くのはやめなさい! 杉崎はともかく、私達をそんな括りで呼ばないで!」
「いやいや! 俺もできれば擁護の方向でお願いしたいですけどねぇ!」
「ダメよキー君。貴方は私のモノなのだから、問答無用でこっち側♪」
「何故だろう、今だけは知弦さんの誘惑を身体が全力で拒絶している!」
恐ろしい輝きを灯した瞳で杉崎を見つめる姉さん。獰猛な肉食獣でももう少し穏やかであろう迫力に、杉崎だけではなく他の女子勢までもが全身を震わせている。かくいう俺も、震えが止まらなかった。……性的な意味で。
結構魅力的な意見を放り込んだつもりだったが、この流れでは可決されることはまずあるまい。自分で言っておいてなんだが、一般人である彼女達には少々ハードルが高すぎたのだろう。次からはもう少し気を付けなければ。桜野でもかろうじてついていけるほどのマゾっ気で行くことを心に決めておく。
俺のターンが終了したので、流れは自然と攻撃側に立っていた姉さんへと移っていた。ある意味で俺より恐ろしく、あらゆる意味で俺以上に濃いキャラを携えた女王様を前にして、俺達は自然と息を呑んでしまう。……あれ、これって確か生徒会の会議だよな? なんで普通に意見聞くだけなのにこんなに緊張してんだろうか――――あぁ、キャラが濃いからか。
一人で変に納得してしまいながらも、姉さんの方へと耳を傾ける。なんだかんだでブレインストーミングという形式上、どんな意見でも聞く必要があるからだ。批評が禁止されているので、彼女の意見から話題を発展させていかないといけない。これは基本的に俺と杉崎の役目だった。
姉さんは優美に髪を梳くと、全ての物を魅了する微笑みを零し、女神様のような慈悲深い表情で柔らかに発言した。
「やっぱり、ゾンビを放つのがいいと思うのよね」
――――いや、それはマズいんじゃないだろうか。
次回も続きます。