ジョジョの奇妙な冒険RTAお嬢様ですわよ〜!! 作:ファニファニですわ〜!
「霧……?」
目の前の港に広がる白を通り越して灰色に澱んだ霧を見て一同皆首を傾げた。乾燥した地域でも朝方海のそばでは霧が発生することもある。
しかしこんなに濃くて禍々しい霧は初めて見た。
はじめてみた、がすぐにわかりましたわ。
「ジャスティス…」
「ひどい霧じゃのぉ…船はつけそうか?」
「そうですわね。船長の腕なら大丈夫ですわ」
「それにしても、こんな霧は見たことがない…」
アヴドゥルは少し警戒していますわね。さすが占い師ですわ!
「この港以外じゃ駄目なのか?なんか不気味で降りたくないぜ」
「いや、この港に陸路用の車が手配されている」
「そもそもジジイ、なぜエジプトに直接行かないんだ。わざわざ陸に上がるのはタイムロスとやらなんじゃないのか」
「そうですよ。ソマリ海域まで下って紅海を上がる方が早いんじゃ?」
「それは……だな……」
ジョセフはわたくしとポルナレフの方をちらっと見ます。
ええ。わたくしたちエジプト出禁ですの。故に港で見つかろうもんなら問答無用で射殺されますわ。花京院を助けるために入国したときはもう本当に、空港が火の海になりかけたんですからね。
「密入国のしやすさですわ。それ以外に理由がありまして?否…ないですわよね!!」
わたくしの有無を言わせぬ断言口調(大声)で船内は一度しん…と静まり返りました。そしてタイミングよく、船が止まります。
なんだか降りる雰囲気にしてしまいましたが、本当にみんなおろしていいんですの?ここでこの立ち込める霧が敵のスタンドだと警告し、わたくしだけ降りたほうがいいのでは?
「ちょっと待った!!」
いや待てよ!!ここでこれが敵のエンヤってやつのスタンドジャスティスでみなさんこの霧の中に出たらちょっとした傷でも体を乗っ取られて大変なことになりましてよ〜!!なんて言ったらいよいよオレか怪しまれるのではないか?
つまりオレ一人でやつを倒しに行くのが最適解…ッ!
「今度は何じゃ?」
「みなさんは船に残っていてください。わたくしが車とってきますから」
「はあ?」
「霧で視界も悪いですしね?ウンウン!そうしましょう!」
「お嬢一人で行かせるのも心配じゃのー…」
「私が同行しましょう」
とアヴドゥル。心配してくれるなんて……優しい……トゥンク…。じゃなくってぇ…。わたくしこの隙にエンヤ婆を倒しに行っちゃいたいのですけど!
「ああ、アヴドゥルがいるなら安心じゃ。ではよろしく頼む」
「う、うーーん…わかりましたわ…」
流石に不自然になるため断ることもできず、わたくしは渋々アヴドゥルと船外に出ます。
あ〜〜嫌な霧〜〜確実にエンヤ婆が待ち構えていますわ。
でもここで降りなきゃいけない理由は怪しまれる以外にもう一つ、ありますの。
この霧の下で苦しんでいるであろう巻き込まれている一般市民を絶対に放っておけませんわ。
「ノブレスオブリージュ…いえ、これは単なる正義、ですわね……」
「どうした急に」
アヴドゥルとお嬢様を送り出したジョセフ、承太郎、花京院、ポルナレフはデッキに出ておぼろげな二人の影を目で追った。
「やれやれ…まだこの船に缶詰か」
「スタンドって思うとちょっと落ち着かねーよなァ…」
ポルナレフは特に、あのフォーエバー船長の変態的側面を知っているからなおさらだった。普通女性は露骨に性的なアピールをするものを(しかもそれがオランウータン)避けると思うのだが、お嬢様はむしろそれを利用していた。
しばらくお嬢様とともに行動してて思うのは、彼女は本当にお嬢様なのか?ということだった。
「霧も相まって不気味ですね」
「あの二人は車に辿り着けるのか?」
「アヴドゥルがおれば大丈夫じゃろう」
ジョセフはくぁーとあくびをして伸びをする。そういえば起きてから何も食べていない。これから車で移動するということはちゃんとした料理を作って食べれる最後のチャンスだ。
「腹が減ったのぅ…なにか作るか。お前たちも」
「おっ!いいじゃあないの。オレの故郷の朝食ご馳走しちゃうよォ〜ん」
「それはありがたい」
ポルナレフとジョセフはキッチンへ。承太郎と花京院は船外の見えるリラクゼーションルームも兼ねたホールで待つことにした。
展望スペースはすべてガラス張りになっているが一面真っ白で何も見えなくなっていた。
「スティーブン・キングの霧のようだ」
「あれは確か霧の中に怪物がいるんだったか…」
「ああ、少し不謹慎だったかな」
「いや…お嬢の方は知らねーが、アヴドゥルがいれば問題ないだろう」
「君は彼女のスタンド能力を知っているのか?」
「さあな。名前すら聞いたことがねぇ」
「……まあジョースターさんの言う通り。アヴドゥルさんがいれば大丈夫か」
そんな感じの雑談をしていると、霧の向こうに揺らめく影が見えた気がした。花京院がまず気付いたが、それを言葉にしようとした瞬間にガラスにバン!と掌が叩きつけられた。
「助けて!!」
それは老婆を背負った男だった。
「お嬢、わたしになにか言うことがあるんじゃあないかね」
「な、なんですの急に」
霧で前が全く見えない中そういう発言をされると心臓に悪いぜ。オレの動揺なんてアヴドゥルにはお見通しなんだろうな。生体探知機と化した炎がゆらりと揺れた。
「君の正体のことだ」
「ななななななんですのそそそそそんなしょしょしょ正体とか」
「動揺がわかりやすい」
「傷つきますわね、アヴドゥル…。わたくしたち2年も師弟として過ごした仲じゃありませんの。さながらウィング先生とズシみたいな」
「その二人は知らないが。勘違いしないでほしいが、確かにわたしは君という人間を信頼している。ただ君はどうかな」
「何が言いたいんですの?」
「君は大切なことをわたしたちに打ち明けていないんじゃあないか」
「ギィックゥウッ!!!ですわ」
「そんなにわかりやすいことがあるか」
なるほど、たしかに
けれども「じつはジョジョの奇妙な冒険て漫画でこれから先に起こること全部知ってたんですわ〜!だからRTAしてるんですの☆オッホッホッホッ!」と言って誰がハイソーデスカって納得できるんだよ?!
「なんて説明すればいいのやら…困りましたわね」
でも。
もしかしてアヴドゥルなら…。
そう思った矢先、突如コンテナの影から何かがぬぅっと現れましたわ!
「すわーーーーッ?!?!」
わたくしはすかさずアッパーを叩き込みます!
「なっ……」
アヴドゥルは驚き息を呑みます。ん?吐いてる?まあどっちでもいいか。
どさりと地面に倒れ込んだのは港の作業員といった出で立ちの男です。ピクリとも動きませんわ!
「わたくしついにぱんぴーを殺ってしまいましたの?!」
「いや……この男、わたしの生体探知にひっかからなかった」
アヴドゥルは男をひっくり返します。すると
「頬に穴が空いている!それにこの顔、恐怖によって死んでしまったかのような形相は…!」
「アヴドゥルッ…!お下がり遊ばし!」
男の手がぬるりと音も建てずにアヴドゥルの足へ向かって伸びていました。わたくしは慌ててアヴドゥルの首根っこを掴んで引き離します。
どう見ても死んでいるはずのその男はゆっくりと立ち上がりました。
「ウァァ……」
「これじゃミストじゃなくてナイトオブザリビングデッドですわね」
「まったく、この旅はじめての敵が動く死体とは」
しかもかなり悪いことに死体を倒してもまるで意味がない。さらに一番危惧していた事態、港の人々の巻き添えまで起こっている。
タイムはともかく、これじゃスコアにマイナス補正がかかってしまいますわ!
「船に戻るか?」
「……いえ、予定通り車まで行きますわ。だってアヴドゥル、あなたの炎ならまあ正直全然怖くないですわよね」
「ああ」
だからあなた退場させられたんですのよ。
「あなたが矛なら盾はわたくしが務めます。さあ、とっとと車をとってきて元凶を探してぶちのめしますわよ!」