ジョジョの奇妙な冒険RTAお嬢様ですわよ〜!! 作:ファニファニですわ〜!
「助かりましたのじゃ…」
にゃーん
男の背にいた老婆はホッとした様子で椅子に腰掛けた。霧がいよいよ濃くなって何も見えなくなったところで船の明かりを見つけてなんとか乗り込んできたらしい。
「いったいいつからこの霧が?普通のことではないんですか?」
「普通?とんでもこざりませぬ…。こんな霧は初めてですじゃ…」
「異常気象か。承太郎、何か気配を感じるか?」
「いや…正直何も感じない。霧で何もかも飲み込まれちまってるみたいにな」
承太郎はじろりと二人を見る。老婆は鋭い眼光に怯えたような顔をした。どうにもきな臭い。
「婆さん、なぜ港にまでやってきた?」
「ああ、魚市場からの帰り道で、なにせ何見えんもので…足をくじき、手まで怪我してしまったところをそこの人に助けてもらったのですじゃ」
老婆の言葉に男がびくっと反応する。
「あ?!……そう、ですね。ええ。本当にもう何も見えなくてェ〜どうしようかと困ってるところにお婆さんがいて」
男はヘコヘコと、誰に対してか媚びへつらっているように言った。アラブ系ではない白人だが出稼ぎの労働者だろうか?
「待たせたなア〜二人とも!ん?なんだ?その人たちは」
「ああ、霧が濃くて困っていたみたいだ」
「へぇ〜。よくここまで辿り着いたな。全然見えねーけど港って広いよな?うっかり海に落ちなくてラッキーだったなぁ…」
「ええ、彷徨って彷徨ってやっと明かりを見つけて…」
ジョセフは承太郎、花京院のことをちらっと見た。二人はなんとも言えない、と言わんばかりに肩をすくめた。
「紅茶を多めに入れておいてよかったな。大変だったろ」
ポルナレフは労しげに二人に紅茶を入れた。本当はお嬢様とアヴドゥルのためのつもりだったがそれはまたあとでいい。男はちょっとそれを飲んで美味しいですという。しかし老婆の方はなにやらポルナレフをじっと見つめてカップを傾けようとしない。
「どうしたんだ?婆さん。どこか具合が悪いのか?」
「い…いえ。ほっとして…ついボーッとしましたのですじゃ…」
ポルナレフの気遣わしげな視線に老婆は挙動不審になる。それを見て余計にポルナレフはかまう。
「ひざ掛けでも持ってきてやろうか?粥とかのほうがよかったら作ってくるぜ」
「お気遣いなく」
「なああんた」
「ヒッ…?」
突然承太郎が男に声をかけた。男はどこか怯えている。
「ここに来る途中で怪我したんじゃあないか?」
「本当だ。大したことはできないが、手当を…」
確かに男の太もものあたりに血が滲んでいる。花京院がすかさず手当を申し出たが、男は固辞する。
「いや、大したことはありせんから」
その様子は明らかに何かに怯えていた。霧の中でなにかに襲われたのだろうか?だとしたら、老婆の方はそれに気づいていないのか。
ジョセフが続いて男にたずねる。
「霧の中でなにか見なかったか?たとえばお嬢様とごつい占い師の二人組を…」
そのお嬢様と占い師の二人組、すなわちわたくしたちはなんとか車にたどり着き、乗りこんだところですわ。視界は最悪でしたけれど、あれ以降ソンビの襲撃はありませんでしたの。
でもこれで船まで運転して戻るの嫌すぎますわ!ぜってぇー事故りますの。
「……とりあえず車出しますわね」
「ああ。頼む」
まあてもごっつい四輪駆動車なのでそこんじょそこらの障害物は乗り潰すことができますわね。ゆっくり進めばコンテナにぶつかることもありませんし。
「さっきの話ですけれど、確かにわたくしがアヴドゥル、あなたを信用してないと思われても仕方がないですわね」
「君が人の話をきちんと覚えているとはな」
「茶化さないでくださいまし。…とにかく、ちょっぴり反省してしまいましたわ。わたくしとあろうものが…!」
「悔しがるところがそこなのか」
「結論から言うと、わたくしはあなたと出会ったときからこれから起こることを知っていましたわ」
「…」
アヴドゥルは何も言いません。ただ黙って聞いてくれてます。車の外には灰色の霧が立ち込めています。わたくしはそれを凝視しながら続けます。
「理由は話せませんの。これを伏せていたのは、私の知っている未来通りにDIOの居場所がエジプトでないとチャートが狂うからでしてよ」
「チャート…?」
「DIOを確実に仕留めるには、ジョースター家…承太郎と旅の仲間たちが集まる今このときでなければいけなかった。…私がむやみにそれを話すことでそれが起きないことが怖かったんですの」
嘘はついてませんわ。っていうか本心ですわ。これで信じてもらえなかったら諦めてアクセルを踏みしめて海にダイブするしかないですわよ。
「なるほど…時々意味不明なことをするのはそういわけだったのか」
「わたくしそう思われてたんですのね」
アヴドゥルは笑っていました。満面の笑みではなく呆れ笑いですけど。
「このことはジョースターさんたちにも言うべきなんじゃあないのかね」
「それはだめですわ。わたくしがこれだけ引っ掻き回してるのにDIOはわたくしの知る未来通りエジプトにいる。この理由がわかります?」
「……わたしを取り逃がしてなおエジプトにいる理由と同じだな。つまり…我々がどう動こうと、DIOは脅威に思っていない。しかし一方でジョースターさんが追い始めたら刺客を放つ。DIOという男はジョースター家の人間以外まるきり気にかけていないのだ」
「ですわ。逆にジョースターさんたちが敵の手の内をすべて知ってるかのように振る舞えばあちらも出方を変えるかもしれない」
「…なるほど。我々も舐められたものだ」
「ええ、おファックムカつきますわよね」
そこでわたくしはブレーキを踏みます。視界の遮られた霧の中でもわかるほどの障害物が目の前に現れたからですわ。
当然アヴドゥルもその異常事態に気づきます。
「これは……」
「ワールドウォーゼットのエルサレムみたいですわ!!」
船の周りに人だかりですわ!!
「まさか全員撥ね飛ばすなどとは言わないよな」
「いつものわたくしならそうしますわ。でも冷静に考えると血脂でとんでもないことになりそうですし、車をおしゃかにしたらタイムが…」
「ではどうする?」
わたくしは窓の外に見えるたくさんの背中を見て5秒だけ考えます。ゆらゆら揺れてウーウーいって、まじでゾンビみたいですわね。
「わたくしたちに見向きもしてない、ということはこいつら出待ちですわ。標的は船の中…。歩いていきましょうか?」
「まったく…退屈だな」
窓の外を見ていた花京院が目を細めつぶやく。
「む、いま光が…」
「アヴドゥルたちか?」
「いや。灯台の光かもしれない。なにせこの霧だ、車のライトが見えるとは思えない」
「それにしても遅いな。何かあったと考えるべきなんじゃあないのか」
「外に出たって迷子になっちまうぜ」
「ほくのハイエロファントで周囲を探りましょうか」
「そうじゃな、それが…」
ガシャーンと音がした。老婆を連れた男が派手にカップを落としたらしい。
「す、すみませぇん。すぐお拭きしますからッ…」
男は何に怯えているのだろう。やはりどう見たっておかしい。慌てて掃除用具を探しに展望スペースから出ていった。
「やはり自分の目で一度外を確認するぜ。どうにもおかしい」
「じゃあオレも…」
とポルナレフが言ったところで老婆がおよよと泣き出した。
「おお…なんだか酷く腹が痛んできましたのじゃ…すみませぬ、ご迷惑ばかりおかけして…」
「いーっていーって、婆さん。オレがトイレまで連れてってやるからなぁ…」
「ありがとうございますですじゃ…ポルナレフどの…」
「ではぼく外を見ます」
「ああ、よろしく頼む」
ジョセフは一人で手付かずのクロワッサンとチーズをつまみ、寂しそうに言った。
「うまいのにのぉ…」
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