アストルティア戦記2550   作:しろたく

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勇者の盟友の名前は、私が実際にDQ10内でプレイしているものです。


10.真リンジャの塔

 ヒストリカは、真リンジャの塔6Fのいつもの小部屋にいた。いつになく上機嫌な彼女は、饒舌にクロニコに絡んでいた。

 「ルーラストーンだよ、クロニコ!あれがどれだけ画期的なツールであるか、今さらながらに感嘆するところが多いのだ。君はそんなことも考えたことがないのかね?」

 「・・・・・」クロニコは口端のみの微笑をもって、完璧に聞き流す構えを取った。

 「ユーも知っているな?太古の昔に明らかとなった、異世界空間(古文書では【プランク空間】と呼ばれていた)をつなぐ時空の穴(これは確か【ワームホール】と呼ばれていたはずだ)は、瞬間移動を行うための時空定点ポイント【旅の扉】として広く知られるようになったんだ。

 おい、聴いているか?(クロニコの頬をつねる)

 よしよし、続けるぞ(クロニコにつねり返された手の甲をさすりながら)。

 もともと【旅の扉】は自然に出来たワームホールで、場所は選べなかった。しかし、約50年前に再発見された【ルーラテクノロジー】は、任意の二点間をワームホールでつなぐことが出来る画期的なものだ。この技術は、かつてのリンジャハルが開発したものなのだ。ほぼ間違いないのだよ!素晴らしい、エクセレント!!」

 息切れし、ヒストリカは床に手をついてゼイゼイと喘いだ。その様子をクロニコはじっと見つめる。反応がないので、ヒストリカはそのまま話を続けた。

 「但し、自然エネルギーをそのまま用いてルーラストーンを制御するのは、リスクが大きすぎた。実際昔は転送事故が相当多かったらしいからな。

 状況が一変したのは、エネルギーボックス発明・ルーラストーンとの連動だ。これのおかげで、ルーラストーンの挙動が安定し、ルーラは重要な移動手段となり得たんだ。

 もちろん、ルーラのエネルギー消費量は莫大だし、庶民にとってルーラストーンはまだまだ高嶺の花だが、いずれはそれも…」

 

 ルーラの話をしている最中に、まさしくルーラによる移動衝撃波が伝わってきた。ヒストリカはビクッとして外を見つめた。クロニコも釣られて外を見る。

 「誰だ?ルーラがほぼ全面的に規制されているこの時期に」

 程なくして、人影が入ってきた。茶色の髪をもつ、まだ少年っぽさを残す男。ヒストリカがこのところずっと待ち焦がれていた、勇者の盟友・プパンだ。

 「おお、プパン!我が心のフレンド!よくぞ来てくれた!!」

 満面の笑みで駆け寄ろうとするヒストリカをクロニコが押しとどめた。文字通りわしづかみにして止めたため、彼女は勢いよく前のめりになった。

 「痛い!何をする、クロニコ!!」

 「プパンさんに危害を加えるわけには行きませんからね。プパンさん、わざわざルーラで来るくらいだ。緊急の要件なんでしょう?」

 プパンは大きくうなずき、手短にことのあらましを語った。みるみるうちに、ヒストリカの顔が輝きを増す。

 「…そうか!噂や都市伝説ではないのだな!こんなことが現実に起こっているとは、この目でそれを見られるわけか!素晴らしい!!」

 大声になるヒストリカを、クロニコが終始たしなめる。

 

 突如、ヒストリカが真顔になった。

 「だがな、プパンよ。勇者姫が仰ったその目的地は、おそらく全く違うぞ。なぜそのような推測をされたのか知らんが、ドルワーム・ウルベア・ガテリアの古代3文明いずれも、ザグバン海峡の海底を開発したという記録は残していない。私の知らない古文書はないからな。間違いない」

 意外な情報に、プパンの表情も厳しくなった。

 「ではどこに?」クロニコが思わずツッコミを入れる。

 「解らんのか?陽動作戦と見せかけて正攻法。敵は本能寺にあり、だ」

 「何ですか、その本能寺って」

 「古文書で読んだ。意味は解らん。とにかく、彼の狙いはまっすぐプクランド大陸と言うことだ。

 殆ど知られていないが、プクランド大陸にはガテリア文明をもしのぐ古代文明が存在していた。その名もプーポッパン王朝、奇しくも前国王と同じ名前だ」

 ヒストリカは、ラミザが目指す本当の目的地を口にした。

 「…そうか!」

 全員の顔に緊張が走った。

 

 「プパン、君はすぐにグランゼドーラ城に戻って、このことを伝えた方がいい。私も本来なら向かいたいところだが、行っても役に立つことは少なかろう。ルーラももったいないし、ここで事態を見守ることにするよ」

 プパンはすぐさま外に出て、ルーラをかけた。たちまち彼の姿は消え失せた。

 ヒストリカは酔いから冷めたかのように、やや蒼白な面持ちで虚空を見上げていた。後ろにいたクロニコがつぶやいた。

 「…珍しくかっこいいじゃないですか、ヒストリカさん」

 「は?」

 「CW解決の切り札になるかもしれませんよ、今の話」

 「…それは、ミーが英雄になるかもしれないと言うことか?そんなことを言って、ミーをぬか喜びさせようとしてもその手には乗らんぞ、このこのこのこの」

 ヒストリカは顔を真っ赤にしながら、クロニコの頬をグリグリした。余りにも意表を突いた攻撃に、クロニコは数秒反応を忘れ、それから慌てて手を振り払った。

 「痛い痛い、そんなことより!」

 「何だ」

 「本件、黒幕はやはり奴なのでしょうか?」

 「解らん。とにかく今回のCWは、そもそもが何から何まで辻褄が合わんと言うか、デタラメだ」

 「あなたに言われたんじゃあ、世も末ですね」

 「やかましい」

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